求人 NEW

つくる人活かす人食べる人
それぞれの間に橋をかけて
喜びを分かち合いたい

人はどんなときに、やりがいを感じるだろう。

まず思い浮かぶのは、自分の仕事がだれかのためになっていると感じられたとき。

たとえば、自分のつくった料理をおいしそうに食べてくれる。さらには、食べた人から感想の言葉が返ってくる。その手触りを感じられることが、モチベーションに大きく関わるように思います。

今回紹介するのは、人と人、人とモノの間をつなぎ、その手触りを伝えるような仕事です。

奈良県宇陀郡曽爾村(そにむら)。

人口1300人ほどのこの村では、地域おこし協力隊の制度を活用したさまざまなチャレンジが行われてきました。

そのひとつが、官民共同で立ち上げた農林業公社。村の農業と林業を未来に継いでいくために、お米や野菜のブランド化や薬草の栽培、製材所の復活などに取り組んでいます。

今回は、この農林業公社で村内の野菜や薬草、オリジナルの加工品の販路を開拓していく地域おこし協力隊を募集します。3年の任期後は、独立してもいいし、希望に応じて公社で働き続けることもできるとのこと。

田舎暮らしに興味がある人や、生産者と近い距離で仕事をしたい人にとっては、面白い仕事だと思います。



名古屋駅から近鉄特急に乗り名張駅へ。曽爾村は、そこから車で30分ほど走った先にある。

市街地から山間部に入り、川沿いにくねくね続く道を進んでいくと、曽爾の集落が見えてきた。

最初に向かったのは、村の中心部にある曽爾村役場。協力隊の取りまとめをしている企画課の課長、間井谷(まいたに)さんに農林業公社のことを教えてもらう。

「役場に勤めて35年くらいになるんですが、入った当時は人口が3000人以上いてね。今は1300人と、半分以下になってしまった。高齢化も進んできて、村の中心産業だった農業と林業も苦しい状況が続いているんです」

目に見えて進んだのが、農地の荒廃。担い手不足から、手付かずの土地がどんどん増えていった。

そこで5年前に官民共同で立ち上げたのが、曽爾村農林業公社。村の農林業の課題解決と後継者育成を目的にしている。

お米や野菜をブランド化したり、大和当帰(やまととうき)という薬草の栽培を始めたり。さまざまなことに挑戦してきた。

今回募集する人に担ってほしい販路開拓も、そんなチャレンジのひとつ。

奈良市内の飲食店向けの定期便や、オンラインストアの開設、村内向けマルシェの開催など、すでに取り組んでいることもある。一方で、都会のお店に向けた販路がまだまだ少ないという。

今後は、全国各地の販売店にも販路を広げることで、曽爾の美味しい野菜や薬草をより広く届け、農家に収益を還元できる仕組みをつくっていきたい。

「農林業公社が設立されて5年になりますが、僕の感覚からすると、まだ目標の3割くらいだと思っていて。村のなかだけだと限界があるので、新しい発想を持ち込んでほしいと思っているんです」

長年移住促進に力を入れてきた曽爾村は、協力隊の活動が盛ん。村の補助を活かして新規就農者も増えてきているので、この勢いを落とさず、さらに村の農業を元気にしていきたい。

「曽爾の人は、新しい人をすごく気にかけるんです。毎日のように野菜を持ってきてくれたりしてね。そういう関係性を受け入れて、地域に馴染める人だったら、楽しみながら活動してもらえると思いますよ」



続いて向かったのは、役場から道を挟んで向かい側にある「そにのわの台所katte」。シェアキッチンが併設されていて、加工品を製造・販売したり、ワークショップを開いたりすることができる。

中に入ると、机やコンテナに野菜がたくさん並んでいる。

「こんにちは!」と、作業の手を止めて迎えてくれたのが、katteの運営コーディネーターを務める森さん。

「公社では、奈良市内の飲食店向けに村内の野菜を出荷する『テロワール便』や、『そにのわマルシェ オンラインストア』での野菜、加工品の販売を行なっていて。今日は村の農家さんから集めた野菜を仕分けて届ける日なんです」

テロワール便は、週の始めに野菜リストを飲食店へ送り、木曜日に発注に応じて野菜を準備・配達する。オンラインストアの定期便や野菜セットも、おなじく木曜日に準備しているのだとか。

話を聞いているあいだも、農家さんが代わる代わる野菜を持ってきては、ちょっと立ち話をして帰っていく。

ほうれん草やトマトといった村の主要作物以外にも、緑や白ナス、ベビーリーフなど、ちょっと変わった野菜も多い。

「特徴のある野菜を求める飲食店さんも多くて。農家さんにとっても、『こういうものつくってみたんやけど』っていう野菜をきちんと売ることができる、貴重な販路になっているんです」

野菜のほかにも、規格外のトマトとゆずなどを使ったトマトソースなど、村オリジナルの加工品も販売。単品だけでなく、いろんな組み合わせのセット商品も売り出している。

「たとえば去年の冬は、曽爾の寒熟ほうれん草とゆずポン酢をセットにした、ほうれん草しゃぶしゃぶセットをつくったんです。これはすごい人気でしたね」

「農家さんも、『今年はこれがいっぱい採れたんやけど、売れやんかな?』って、困りごとを持ち寄ってくれることが多いので。それに応えるような売り方ができないか、いろいろ考えながら取り組んでいます」

新しく入る人も、まずは森さんや大西さんと一緒にオンラインストアを担当するところから始めるといいと思う。農家さんの売りたいものと、販売先で求められているもの。両方を知り、フィードバックすることで、販路はどんどん広げていけそうだ。

また、村では大和当帰という薬草も栽培しており、今後ハーブ園もつくっていく予定。それらも巻き込んで、野菜や加工品とのセット商品をつくるのもいいかもしれない。

たとえば、都会にあるこだわった食品を扱うスーパーとかでも、もっと曽爾村の野菜を扱ってもらえるかもしれないですね。

「そうですね。村には農薬を使わない有機農法でつくっている人もいるので、いろんな需要に応えられるんじゃないかなと。売り先が増えたら農家さんのモチベーションも上がるし、なにより収入の安定につながると思うんです」

森さんが曽爾村にやってきたのは昨年のこと。旦那さんがトマト農家として就農したのがきっかけだった。

曽爾村での暮らしはどうですか?

「暮らしやすいですね。車で30分行けばまちにも行けるし、便利な田舎っていう感じです。近所の人もめちゃくちゃ気にかけてくれて、優しいんですよ」

「あっ、でも草引きは大変ですね。家の周りの草引きしてないと、『いつやるんや?』ってすぐ言われちゃう(笑)。だから草引きめちゃくちゃ大事です」

よくもわるくも、地域の人との距離感が近い環境。都会暮らしが長い人にとっては新鮮かもしれない。

その関係性ごと暮らしを楽しめる人だったらいいのだろうな。



そんな話を隣で作業しながら聞いていたのが、森さんと同じく移住者で、有志のサポーターとして農林業公社に関わっている大西さん。

「都会でマンションに住んでたら、壁挟んで隣に誰が住んでいるかわからないじゃないですか。でもここでは、壁のない関係っていうのかな。仕事とプライベートの境目も、あってないような感じなので。そこは意識して来てもらったほうがいいかなと」

「あとは、野菜がめちゃくちゃおいしいです。つくってる人の顔を知っていると、こんなにおいしくなるんやなって。スーパーで野菜買わなくなりましたもん(笑)」

いくつかの野菜を手に取りながら、この白ナスがおいしかったんですよ、とうれしそうに話してくれる大西さん。

日々の食卓が豊かになるのも、この仕事の魅力のひとつかもしれない。

「農家さんやお店の人、幅広い方々と関係性を築いていかないといけないので、臆することなく飛び込んでいけたり、人付き合いが苦じゃない人のほうがいいやろうなと思いますね」

野菜をつくる人、売る人、活かす人、食べる人。畑から胃袋まで、これほど網羅的に野菜に関われる仕事って、きっとなかなかない。

料理家さんと組んだり、自分でも野菜をつくってみたり、パッケージをデザインしたり、国内だけでなく海外に目を向けたり。野菜のことはなんでも知りたい、伝えたいという人が向いていると思う。



最後に話を聞いたのは、農家の山下さん。先ほど大西さんが手に取っていた白ナスの生産者さんだ。

山下さんは4年半前に移住してきて、無農薬の有機栽培で野菜をつくっている。

「もともと大阪で飲食をしていたんです。どこか涼しいところに行きたいなっていうのがきっかけで、曽爾村がいいなと。農業もできたらいいな、くらいの気持ちだったんですが、いろいろな村の補助もあったのでチャレンジしてみようと」

農業を始めてみて、どうですか?

「まあ、好きじゃないとできないっすね(笑)。ほんまに儲からないっていうか、一生懸命働いても、病気で作物がだめになったら収入がない。頭ではわかっていたけど、実際に体験するとなかなかしんどいなって」

山下さんは無農薬で野菜を育てているため、病気や虫の影響を受けやすいそう。

それでも試行錯誤を重ね、小松菜や水菜などの葉物を中心に、独自の販路や農林業公社のテロワール便で販売している。

「うちの野菜は有機JASの認証をもらっているので、普通の野菜より付加価値をつけて売れるんです。新しい人が売り先を探してくれたら、ぼくらも張り合いが出るので。一緒に成長していきたいですね」

「どんな人がいいかっていうと… そうやね、芯を持っている人がいいかな」

芯を持っている人。

「そう、自分の考えをはっきり言える人。たとえば、こんな野菜ありますか?って聞いてくれるだけじゃなくて、こういう売り方をしたいからこんな野菜をつくってほしい。そこまで言ってくれるような人がええと思うんです」

「村にあるものをとりあえず売るんじゃなくて、農家を引っ張って新しい野菜や売り方をつくっていくような。僕らのケツを叩くくらいの気持ちで来てくれたらうれしいですね」

農家さんは、1年を通してなにをどれくらいつくるか、毎年計画して作付けに臨んでいる。

たとえば、来年の冬に鍋野菜セットを売り出したいとすると、農家さんに1年前から話を通しておかなければ、安定して売り出すことができない。

先々のことまで、常に考えを巡らせていくことが求められる。

最初はうまくいかないこともあるかもしれないけれど、農家さんも一緒に考えてくれるし、森さんや大西さんなど、村に移住してきた人たちもたくさんいる。一緒に試行錯誤するなかで、新しい道が拓けていくと思う。

「僕ら農家も、ばしっと言ってくれたほうが、おっしゃがんばろ!って気になるんでね。もちろんひとりじゃなくて、一緒に考えて切磋琢磨していきたい。いっぱい考えて、ちゃんと結果を出して。そして一緒に喜びたいですね」



「販路」というのは、単純に売り先のことを言うのではないのだと思います。

どんなものを世に出したいか。そして、どんなものが求められているのか。その二つの視点を持って、橋渡しをする。

その橋の上で、出会った人たちと喜びを分かち合うような仕事だと感じました。

(2021/8/12 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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