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「社会が変化するときこそ、新たな空間が求められるし、建築家としての職能が問われる。建築は社会をデザインする仕事やと思うんです」
そう話すのは、STUDIO MONAKA共同代表の岡山さん。
STUDIO MONAKAは、京都と沖縄に拠点を構える一級建築士事務所です。
自分たちだけでなく、その場所で日々過ごすお施主さんや地域の人たち、各分野の専門家、つくり手など、さまざまな人を巻き込みながら場所の可能性を問い、見出していく。
そして、建築という手段で形にする。ときには“建てない”ことも。
そんなスタンスで実績を積み、事業領域も規模も拡大しています。
今回は、MONAKAの基軸となる設計部門のチーフからアシスタントまで、幅広く募集します。
先の見えない、誰も答えを知らない状況をおもしろがって、新たな価値を生み出していきたい。そんな人を求めています。
京都駅からバスに揺られること40分ほどで、千本北大路という停留所に到着。
通りをはさんだ向かいの団地の一角に、テント屋根が見える。
奥がMONAKAの事務所で、手前はパブリックスペース。長机と観葉植物が並び、入って右手の壁にはカラフルな絵が描かれている。
壁際には囲碁のセットがそっと置かれ、足元を2匹の猫が通り抜けていく。ゆるやかにひらけた雰囲気が心地いい。
ここでまずは共同代表の岡山さんに話を聞いた。
お会いするのは3回目。取材のたび、スタッフのみなさんから「岡山には脳が3つあるんです」とか「フットワークとコミュニケーション力の塊」といった声を聞いてきたのだけど、だんだんその意味がわかってきた。
いつ会っても溌剌としていて、何かおもしろいことができないかと胸を膨らませているような方。
「最近またおもしろい人捕まえて。まず会ったら塩なめさせてくれて、カカオ一粒食べて、コーヒー飲んで、またカカオ食べて、彼のフルコースを味わってからコミュニケーションがスタートするっていうアーティストさん。好きなんですよ、そういう癖強めの人」
STUDIO MONAKAは、同じ専門学校出身の岡山さん、森田さん、仲本さんという3人の共同代表で2016年に立ち上げた一級建築士事務所。
京都と沖縄を拠点に、さまざまな建築を手がけてきた。
「最近だと農業倉庫をリノベーションしたり、畑を使った事業のフィールドをつくったり。あとは福祉事業所に入ったり、お医者さんと一緒に新しい診療所をつくったりと、農や福祉に関わるプロジェクトが増えてますね」
「MONAKAのお客さんは、『これやりたいんだけど、どうしたらいい?』っていうところからのスタートが多くて。すでにあるブランドを体現するんじゃなくて、ブランドの軸から一緒につくっていく。そこがおもしろいところやと思うんです」
クライアントが本当にやりたいことは何で、なぜそれに取り組むのか。
根っこにある想いを掘り下げ、その実現のためにどんな空間が必要か?という発想からハードをつくっていく。ブランディングやまちづくり、コミュニティマネジメントに通じるような考え方だと思う。
それもあって、事業の幅も規模も、どんどん広がっている。
コロナ禍で止まっていた住宅需要も復活しはじめ、最近は週に4、5件の問い合わせがあるようなラッシュ状態なんだとか。
「農業や福祉、組織論とか、そっちにも片足突っ込まざるをえなくなってきて、どんどん複雑性が増してきていますね」
「ただ、事業領域や規模がどれだけ広がっても、ぼくらの着地点は建築。実務的な設計ができる人を増やしていくことが急務だと思っています」
そこで今回、会社の基盤をより強化していくために設計スタッフを募集したい。
チーフアーキテクトとしては、アトリエ系の設計事務所に5年以上勤め、プロジェクトの切り盛りを経験してきたような人がいいとのこと。
設計・監理を中心としつつ、岡山さんのように新規事業やプロジェクトの立ち上げに伴走する機会も出てくる。空間を一緒に形にしていく職人や作家はもちろん、農業や福祉の専門家、編集者やデザイナー、カメラマンや地域の人たちなど、いろんな立場の人たちとチームを組んで連携しながら、プロジェクトを前に進めていけるような人に加わってほしい。
そこまでの経験はなくとも、設計事務所などに3年以上身を置いてきた人はアーキテクト、建築関連の学校を卒業している人は補助的な役割からはじめるジュニアアーキテクトと、幅広く募集中。インターンからスタッフになった人、リモートで働く人もいるので、目指したい方向が近い人はまず会って話してみるといいと思う。
「ブームに乗りたいとか、派手な何かをつくるとか、そういう話ではなくて。ハレというよりケの場所をつくるなかで、新しい日常をデザインしていきたいですね」
そんな岡山さんと一緒に働くスタッフのみなさんは、どんな人たちだろう。
続けて話を聞いたのは、ちょうど入社して1年になる水田さん。
大手ハウスメーカーで集合住宅の設計を5年経験したのち、アトリエ系の事務所を経てMONAKAへ。
これまでの職場と比較して、MONAKAでは仕事の進め方が大きく異なるという。
「たとえばハウスメーカーの場合、細かく分業化されていて。そのほうが効率はいいんです。ただ、あまり自分の頭で考えなくてもできあがっちゃうから、『これわたしがやらなくてもいいんじゃないかな』って」
「MONAKAでは分業化されていることはまずないですね。プロジェクトごとに担当して、お客さんへのプレゼンも代表と一緒に自分でやりますし、現場の進行に応じて打ち合わせや図面を修正していく現場監理も担当します」
他方、アトリエ系事務所の場合だと、事務所によっては所長の決定権がかなり大きい。そのぶん事務所としての色や個性は色濃く出るけれど、個々人の裁量は限定的。
MONAKAでは、立ち上げフェーズは岡山さん、収束フェーズは森田さんがサポートにつくものの、担当者に委ねられる部分が多く、やりがいも責任も大きいそうだ。
たとえば、水田さんが今担当しているのが、中古物件をリノベーションして家族3人で住みたいというお客さん。
そこはもともと二世帯で住んでいた住宅なので、全体に手をかけようと思うと倍のお金がかかる。いかに建築的によく見せながら、コストを絞るかが課題だった。
「断熱を気にされていたので、大きな家のなかで移り住んでいくような提案を最初にして。冬はしっかり断熱したゾーンで過ごして、夏の暑い時期には別の部屋で過ごす、みたいな」
「そういう自由なアイデア出しって、学生のころはよくやっていたんですけど、実務としてお客さんにどうでしょう?って伝えるとか、所長にぶつけてみる、みたいな経験はなかったんです。だから最初は怖くて、打ち合わせの前日とかはすごいお腹痛くなっちゃって」
授業課題で模型をつくるのとは違いますよね。実際にそこで暮らす人がいるわけですし。
「住まれてからのことを想像すると、なかなか手が動かせなかったりして。けど、建築ってやっぱり決定の連続でできあがっていくので。こういうふうにつくっていくんだなっていう実感が持てて、いい経験になっています」
それと並行して取り組んできた新築住宅では、大まかな仕様を決める基本設計のみならず、施工業者に詳細部分まで伝えるための実施設計も担当。これも水田さんにとってはじめての経験だった。
「部材の長さから何から全部チェックした物件が、現場で組み上がって形になっていく。天井が通常よりも人ひとり分くらい高い箇所があって、お施主さんと見上げながら、わあすごいな!みたいな話を一緒にできたのはうれしかったですね」
「人それぞれ合う合わないはあるでしょうし、お客さんが何を求めているかにもよるので、どれがいい・わるいって話でもないんですけど。わたしはMONAKAでの働き方は、新しい経験も多くて大変だけど、おもしろいなと思います」
最初はスピード感のゆるやかな住宅案件を担当することが多いそう。そこから熟練度や希望に応じて、店舗や大規模な空間、場合によっては沖縄の案件など、より幅広いプロジェクトを担っていくことになる。
水田さんは、どんな人と働きたいですか?
「わたしよりしゃべる人のほうがいいなと思います。愉快なムードメーカーみたいな人」
隣で聞いていた征矢野(そやの)さんは、「どんな人でも」とのこと。懐が深い。
学生時代のインターンシップからMONAKAに関わっていた征矢野さん。
卒業後、2年間別の設計事務所で働くなかで、じつは建築から興味が離れていったという。そこからなぜMONAKAへ?
「将来的に医療系の研究者になりたくて、大学に行きたいと思ったんです。もともとMONAKAは出入りしていて、みんなのことも知っていたので、『午前中は勉強したいので、午後お仕事させてください』っていう相談をして」
「入ったのが半年前。でも直近は忙しいこともあって、わりとフルコミットしています」
さまざまな働き方・関わり方の人が増えていくことは、岡山さんたち経営陣も前向きに捉えている。
フランス人スタッフのニコラスさんは、夏の時間をパートナーと一緒に沖縄で過ごしたいと社内でプレゼン。実際に1ヶ月のワーケーションを実現したそう。
「最初はもちろんびっくりしますよ」と岡山さん。
「まあでも、おもしろくて。彼フランス人なんで、働くことと余暇とか家族の時間に対する感覚がフラットなんですよね。彼がいることで余白が生まれるというか。カルチャーの幅も広がって価値観もゆるまっていく。ほかにも育休中のスタッフもいるし、子連れ出勤もありやと思っています」
そんな環境は、征矢野さんにとっても働きやすいみたい。
「基本的に代表3人は、ノーは言わなくて。やってみたら?っていう精神もあるでしょうし、失敗しても問い詰められたりしないので、やりやすいんですよ。広く受け入れてくれているんだなっていうことは、しみじみ感じますね」
最後に、共同代表の森田さんにも少し話を聞かせてもらった。
岡山さんが広げ、各スタッフが形にしていくプロジェクトのまとめ役を担っている。
「ボスとスタッフっていうふうに切り分けたくないんです。変化があったことに対しては柔軟に対応していきたいし、それはお互いさまやと思っていて」
お互いさま。
「ごめんけど土曜日出てほしいとか、ぼくらからちょっと無理をお願いすることもあるし、逆に相談があればなるべく受け入れたい」
「お施主さんに対しても、単純に要望を聞いて設計する仕事は少ないですね。たとえば飲食店の立ち上げなら、ぼくらも飲食店をはじめるつもりで設計していきます。社内外ともに、自立したフラットな関係性を築いていける人と一緒に働きたいなと思っています」
慣習や常識を前提にせず、まっさらな目で向き合ってみる。
これは、建築に対しても、人や仕事に対しても、MONAKAのみなさんが大事にしていることだと思います。
その都度、目の前に現れるものと向き合い、形にしていく積み重ねのなかで、いいなと思える風景を少しずつ増やしていく。それが岡山さんの言う、社会をデザインする仕事なのかもしれません。
(2021/10/10 取材 中川晃輔)
※撮影時はマスクを外していただきました。