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今では世の中で当たり前になっているものも、初めからすんなりと受け入れられたものは少ないかもしれません。
たとえば、車が登場したときも、それが馬車に取って代わるなんて想像できなかったそうです。時代をつくっていくものも、最初は非常識なことでした。
システムリバースも、常識を疑う会社です。
「こんなやり方ができるんじゃないか」と工夫を重ねて仕事をつくってきました。東京・江戸川区葛西と宮城・仙台にオフィスを構え、学校や保育園、公園など公共施設の補修・改修工事を手がける会社です。
「公共施設の補修」と聞くと、壊れた設備をただ直すだけと思うかもしれません。けれどシステムリバースでは、持続的に使えるように壊れたものをよみがえらせる工法を日々編み出しています。それは地球にも財布にもやさしいもの。
今回は、施工管理から営業までを担うセールスエンジニアを募集します。実際の現場に立ち会い施工内容を見て、あらゆる困りごとを解決する施工法を提案できる営業マンになってほしいそうです。
システムリバースには施工や営業が未経験の人でも、はじめにしっかりと学べる環境や研修が揃っています。
決められたやり方、業界のルール、商慣習。そういったものを痛快に乗り越えていく会社です。
東京メトロ東西線の葛西駅。駅前の大きな環七通りを渡って、歩くこと7〜8分。見た目は普通のマンションの一室に、システムリバースのオフィスはある。
靴を脱いで、スリッパをはいて中へおじゃまする。打ち合わせスペースはあるけれど、今日はみなさんが普段、働いているデスクに座ってお話を伺うことに。
代表の後藤さんは、明るくて気さくな方。システムリバースを立ち上げる前は売れっ子のファッションデザイナーだった。
「デザインした服はほんっとに売れたの(笑)。たとえば、布帛のポロシャツなんて、誰も考えなかった。でも売れすぎて忙しくなったら、体調を崩しちゃって」
40代で転職を決意した後藤さんが飛び込んだのは、未経験の建設業界だった。そこで後藤さんはメタクリル樹脂(以下MMA)と出会う。
MMAとは早く固まる・長持ちする・寒さに強いといった特徴を持ち、「プラスチックの女王」とも呼ばれる素材。看板や水族館の水槽のガラス、人工関節の接着剤など幅広く利用されていたけれど、建設業界では馴染みがなかった。
「MMAって面白い素材なのに、建設業者のほとんどが知らなかったんだよね。そしたら1年半ほど勤めた会社が倒産しちゃって。自分は建設のことはあまり詳しくないけど、MMAの一点集中なら建設業界で営業ができるんじゃないかと思って」
MMAの研究を重ね、その特性を活かし補修メインの工法を提案する、システムリバースを立ち上げた。自分でカタログをつくり、企業や役所に飛び込み営業を繰り返していった。
すると、役所の人が公園施設の不具合に困りごとを抱えていることに後藤さんは気づく。
「トイレや遊具のちょっと壊れたところを直すには、塗装とか左官とか専門職に頼む必要がある。でもそうすると時間も手間もかかる」
「建設会社は、とにかく施工費が大きい工事を取りたがる。だからそういうちょっとした工事をやる業者が少ないんだよね」
もし公園の遊具に不具合があって誰かがケガをしたら、役所の担当者は責任を問われる。しかしその不具合をすぐに直してくれる業者がいなかった。
「うちはプロがやらない、本当にみんなが困っている小さな仕事を複合的にやっていこうと思って」
MMAはアルカリや酸にも強く汚れにくく、環境や生き物にも優しい。あらゆるニーズに対応できるというメリットがあった。
「暗くて汚い公園のトイレも、MMAで床や便器をきれいにすれば、臭いまでなくせるんだよ。これはオンリーワンだね。うちしかできないね」
今では「困ったときのシステムリバース」とも呼ばれ、役所から「こんな補修もお願いできますか」と相談を持ちかけられることも。
「でも、まだまだ困っている人はいるから、もっとうちの工法を広めていかなくちゃいけない。施工のベースはできたから、どうやってこのやり方を世の中に広めていくかの営業をしていく段階に入ったと思っているよ」
これから入る人は、現場の施工もやるんですか?
「実際の現場はやらないけど、施工自体に立ち会って、見て触って経験しないと実際の施工を知らないで営業だけ行ったって、説明にリアリティがないじゃん」
現場を経験するから、お客さんのニーズに合わせた最適な提案ができるようになる。
ただ、未経験でも大丈夫とのこと。常務の郷間さんも、建築業界にいたけれど営業の経験はまったくなかった。
建設会社や清掃会社などを転々としていたところ、知人に声をかけられシステムリバースに入社。最初の1年はアルバイトだった。
「建設業でも働いていたから珍しい材料の使い方をしていたのがわかったんです。面白い会社だなと思いましたね」
たとえば、と教えてくれたのが雨漏りの補修。
システムリバースが雨漏りの補修に使うのは「止水剤」というもの。止水剤は通常、トンネルや地下鉄など地下の壁から出てくる水を止めるために使われることが多い。
地下の漏水は、どこから水が入ってきたのかわからないが漏れているところはわかる。そこから止水剤を注入して隙間を埋めていき、漏水を止めていく。
「でも雨漏りも同じで、原因がわからないことが多いんです。それなら地下と同じように漏れてるところから止水材を入れれば、必ず水を止められるって発想で使ってるんですよ」
「建設業界って、仕様書通りに施工することが多いんですけど、うちは小さな工事が多いからあらゆる材料をどこにでも使ってみるんです」
最初は施工がメインだった郷間さん。もっと給料を上げたいと考え、営業を担当して自分で仕事を増やしていきたいと後藤さんに申し出た。ところが最初は全然うまくいかない。
「社長と同じように営業しているつもりでも、全然仕事が取れないんですよ(笑)。知識も浅いし、質問をもらっても答えられない。恥ずかしい思いをして、よく営業から帰ってきましたね」
1年続けても成果に繋がらずに悩んだ郷間さんは、営業のやり方について後藤さんに相談する。
「仕事を取りに行こうとするより、カタログを見せて『こういう工法をやってますよ』って自分を知ってもらえばいいんだって言われました」
見せてくれたカタログには、施工前後の写真が並べられている。文字は少ない。
公園の遊具、手洗い場、トイレなどのビフォーアフターがよくわかり、文章を読み込むよりも、何ができる会社なのか直感的に理解できる。
後藤さんに言われた通りに役所に行って、多くを語らずにまずカタログを見せてみた。
すると、習志野市から一件、見積もり依頼が届く。
「公園灯の根元の補修についての依頼でした。公園灯ってよく犬のおしっこがかけられて、根元だけ腐食してしまうんですね。根元以外は修理の必要がなくても、そこだけを直す業者がいなかったから、結局公園灯自体を変えることが多かったんですよ」
根元だけの修理なら工期も短く、金額も安く済む。その一件を皮切りに、修理依頼が増えていく。
「『これどうしたらいいんだろう』って悩んだときに連絡くださいって、会社のイメージをつけておくんです。そうすると自分たちが過去にやったことがない補修方法に出会えるんですよ」
お客さんが実際に困っていることから、新しい工法も生み出していく。営業だけじゃなくて施工も担当しているから、最適な工法を考えてお客さんに提案することができる。
「僕のイメージですけど、建設業ってどこも同じやり方なんです。うちは説明書にないやり方も試してみる。挑戦できることもうちの会社の肝ですね」
もう一つ、後藤さんの教えで面白かった営業方法がある。
「代表から『今やっている工事は困っている人がいるから依頼がある。きっと同じことで困っている人が他にもいるはずだから、その人に届くように今日やった施工を次の日別のところに営業していくんだよ』って言われて、それを繰り返しましたね」
たとえば、幼稚園のプール開き前にプールの補修をしたら、次の日に別の幼稚園にも営業する。同じようにどこもプール開き前だから、すぐに依頼をいただけるのだそうだ。
次に話を伺った田中さんは、日本仕事百貨の記事を読んで7年前にシステムリバースの仙台支社に入社した方。
前職は自家焙煎のコーヒー豆を販売する仕事をしていた田中さんは、施工も営業も全くの未経験だった。
「娘が小学校に入るタイミングで、給料に見合った楽しい仕事がないかなってネットで探したんです。ものづくりに興味があったので仕事内容も面白そうだし、給料も悪くない。仙台に営業所もあったのでやってみようかなと」
入ってみて、ギャップはありましたか?
「想像していたより営業はしましたね。施工が中心かなと思っていたんですが、ノルマはないんですけど営業しないと自分の仕事がない状況だったので」
入社してはじめの3ヶ月間は、東京本社で施工の研修を受けた。
「最初は先輩の現場について施工を学びました。簡単な現場なら1年くらい経てば、一人で行けるようになると思います」
遊具などの塗装は簡単な現場の一つ。さらにMMAを使った補修も加わると作業の難易度は上がる。
「仕上がりがきれいじゃないということで、もう一回施工し直したこともありましたね。やっぱりはじめは手助けがないとできないと思いますね。あ、手助けは今もありますけど(笑)。」
入社当初より回数は減ったものの、今でも週に1、2回は営業に回っているという田中さん。宮城県警への営業がきっかけで、現在は宮城県内の留置所の鉄格子の補修もしているのだとか。
「古くなって腐食した鉄格子を直す方法に困っていたそうで。牢屋を新しいものに変えようとすると莫大なお金がかかるんですよね」
MMAを使って鉄格子を補修すると、そこから信号機の補修の依頼にも繋がった。
車が接触して塗装が取れたり、根本が曲がったりしてしまった信号機の補修を月に5、6本行っている。
「営業も施工もしたり、パソコンで管理とか見積もりもつくったりもします。本当に仕事の内容が幅広いので、それをあんまり苦にならずに楽しめる方がいいかなって思いますね」
最後に後藤さんが「最低の売上、最高の利益が良い」と話していたのが印象的でした。普通は売上も伸ばしていきたいと思うけれども、「仕事量は少ないほうが良いから」と聞いて、なるほどなと思いました。
常識が正しいとは限らない。後藤さんはこれからも新しいやり方を発明していくのだろうなと思いました。
(2022/4/19取材 小河彩菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。