求人 NEW

香りを聞く、
香りでつながる
伝統と現代のあいだで

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

和の香りの専門店、麻布香雅堂(こうがどう)。

室町時代発祥の香りを愉しむ芸道「香道」の道具から、美術館やコスメブランドなどとのコラボレーション商品、馴染みのあるお線香や香り袋まで、さまざまな商品を扱っているお店です。

伝統を守りながら、現代の暮らしや文化と融合させることで、香りの可能性を積極的に広げてきました。

今回募集するのは店舗スタッフ。

香りについての知識や経験は求めません。接客や事務作業、お掃除など、まずは日々お店を運営するための仕事に、丁寧に取り組んでくれる人を求めています。

そこから仕事の幅を広げ、香りの奥深い世界を探求していくことも、もちろん可能。まずは香雅堂がどんなお店か知ってほしいです。

 

地下鉄の麻布十番駅から歩いて5分ほど。

賑やかな商店街を抜け、あたりにはお店よりもオフィスや住宅が多くなってくる。落ち着いた雰囲気の通りの一角に香雅堂を見つけた。

お店に一歩足を踏み入れると、マスクをしていてもいい香りに包まれたのがわかる。

「どうも、ご無沙汰してます!」と迎えてくれたのは、代表の山田悠介さん。

お会いするのは前回の取材以来。気さくな雰囲気は、一見敷居の高そうなお店といい意味でギャップがある。

香道の教室で使用している2階の和室に案内してもらい、話を聞く。

香雅堂は、1983年に山田さんのお父さんが開いたお店。

茶道・花道と並び、室町時代に発祥した日本三大芸道のひとつ、香道。

香りのもととなる天然の香木のかけらを、熱した炭と灰の上で焚くと、ほのかに香りが漂う。

香道では香りをかぐことを「聞く」と表現する。かすかな香りを聞いて、味わうのが、香道の愉しみ方。

京都の香木店生まれのお父さんから、跡を継いだ山田さん。ここで生まれ育ったとはいえ、香りに強い興味があった訳ではなく、香道を習ったのも働きはじめてから。

だからこそ先入観なく、客観的にこの業界を捉えている。

「この世界って、基本的には閉じられてきたものだと思っていて。だからこそ魅力的にも見えます。お香やお茶、伝統文化の本場ってやっぱり京都なんです。そんななか、東京にいる僕たちだからできることって、外に開いていくことなんじゃないかなって」

外に開いていく。

「今までお香の世界と関わりのなかった人たちとつながることで、業界に新たな価値が生まれていく。そういう立ち位置が、自分の性格にも合っていると思うんです」

その言葉通り、山田さんは香りを接点に、さまざまなコラボレーションに挑戦。

香りに焦点を当てたお茶やお菓子、テキスタイルブランドのサシェ、美術館や博物館、写真展のグッズなど。香りで新しい試みをするなら香雅堂、と声をかけてもらえるようになっている。

最近は、糸井重里さんが主宰する「ほぼ日」ともコラボレーション。

「おちつけ」という言葉をテーマに、香木といくつかの材料をブレンドし、オリジナルの香り袋を製作。山田さんいわく、ほかにはない香り、とのこと。

「僕らだけだったら、絶対に選ばない材料の組み合わせなんです。でも担当の方と話すうちに必然性が見えてきて、ほぼ日さんと香雅堂が組むとこうなるんだって発見がありました」

「お香の可能性が開かれていく活動と僕らは、すごく相性がいいと思っています。本当に、いろんなことやってるなー!って思いますよ。ただ、伝統をないがしろにするような仕事はしないよう、伝統と現代とのバランスは常に意識しています」

今回募集するのは店舗スタッフ。どんな役割になるでしょう。

「僕はプレイングマネージャーとして、経営とのバランスをとりながら、和の香りの可能性を広げていくためのいろんな挑戦をしていて。ほかのスタッフ二人が、日々お店をまわすための、めちゃくちゃ幅広い仕事をやってくれています」

開店準備や販売接客、オンラインや電話での受注や発送、イベントの準備、売上管理など、仕事の範囲は多岐に渡る。

今後スタッフの一人が産休に入る予定で、そのポジションを補うためにも、新しい人には無理のない範囲で早めに入社してほしいそう。

「まずは、お店がお店としてまわっていけるように。お茶を出したり、掃除をしたりといった、細かい作業一つひとつを粛々とできる方を求めたいです」

「地味に聞こえると思うんですけど、特殊なお店なので、やりがいを感じられる人はいるんじゃないかな。コラボレーションでいろんな人とやりとりをしたり、サンプルで香りをかいでみたり。すごく単調な日々ってことでもないのかなあ。絶対とは言い切れないですけどね」

まずはお店を安定的に運営していくことが第一優先。アルバイトでも構わないので、何かしらのお店で働いたことがある人に来てほしい。

加えて「文化的なこと」に興味のある人だと、楽しみを見つけやすいのでは、と山田さん。

「お香そのものがとりわけ好きでなくても、全然いいんです。ただ、もうちょっと範囲を広げて日本文化や美術、もちろん海外のものでもいいんですけど、ざっくり言ってしまえば“文化的なこと”に興味がある人。そういう人のほうが、面白みは感じられると思います」

取引先の美術館や博物館の人と関わりを持てたり、普段の生活ではなかなか見ることのない香木や香道具に間近で触れることができたり。

日々の仕事に自分なりの興味関心を見つけられると、長く楽しく続けていけると思う。

「あと言っておくべきこととしては、ちょっと特殊な会社だと思います。メンバー全6名のうち、4名が私・妻・両親という、ファミリービジネスなので。その環境を柔軟に理解してくれる人だとうれしいです」

 

働く人たちは、どんなふうに感じているんだろう? 教えてくれたのは、入社して10年になる酒井さん。

「家族経営の小さなお店という感じで、普通の会社と雰囲気は違うと思います。ただ、プライベートの用事を頼まれるようなことはないし、不自由さはないですよ」

「スペースの問題で、バックヤードが狭かったり、服を吊るせるロッカーがなかったり。そういう不便さはあるけれど、お店の面積が変わることは絶対ないですから(笑)。そのへんはわかっておくといいのかなと」

 

店舗責任者をつとめる酒井さん。お店の仕事に加え、香道の体験教室の運営なども担っている。

お客さんは、どんな人が多いですか?

「最近は30代くらいまでの若い方が多いですね。コロナ禍になってから換気のために入り口のドアを開けているので、外にもいい香りが広がるんです。『前は敷居が高い感じがして入りにくかった』っておっしゃる方が、ふらっと来られることが増えましたね」

「やはり敷居が高そうに見えるお店なので。入ってきた方がホッとできるというか、緊張しなくてもいいような雰囲気づくりと、常識的な言葉づかい。そういうところからはじめてもらえればと思います」

香道の先生や詳しい年配のお客さんも訪れるものの、一人で対応するのがむずかしい場合は、酒井さんたちにどんどん頼っていい。

初めて香りの世界に触れる人も、あまり不安にならずに飛び込んでみてほしい。

仕事内容は幅広いものの、時間内で終わる範囲で取り組んでいるので、基本的に全員残業はしない。プライベートの時間を確保しやすいことは、長く働き続けてこられた理由のひとつだそう。

「あくせくしないで働けるのがいいですね。それに、日々いい香りに囲まれて働けるのは幸せですよ。ここで働いてから、天然の香木の香りを知って。人工の香料をたくさん使うお香は強いなと感じるようになりました。天然の香りは、穏やかで不思議なんですよ」

 

酒井さんと一緒にお店をまわしているのが、日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した松本さん。今回募集する人は、これから産休に入る松本さんの後任になる。

大学院で日本美術史を研究したのち、4年ほど前に新卒で入社した松本さん。今回も、新卒での入社も歓迎だそう。

「伝統文化に関わりながら、新しいものを取り入れて変化していくような世界で働きたいなと思ったのが入社のきっかけです」

研究を通じて香道のことは知っていても、ほとんど知識はなく、香りについては入社後に一から学んでいった。

「事務仕事の経験もなかったし、最初はずっと緊張しっぱなしでした。香りを覚えるのも、すごく大変でしたね。お客さんに説明できるようになるまでは、仕事の合間に写真とメモをとって覚えていました」

香りの説明って、どんなふうにするんですか?

「初めての方には、癖がなくてさっぱりしていますよとか、畳の井草の香りのイメージです、とか。たとえば今お店で焚いているのは、女郎花(おみなえし)という香りで。夏らしい爽やかな香りですね」

この香りは、暦に合わせた月ごとのお香が届くサービス「お香の定期便」の、8月の香りとしてつくられたものだそう。

松本さんは、お香の定期便に関する業務をほぼ一人で対応。毎月100件ほどある梱包と発送、お客さんからの問い合わせ対応などは、これから入る人に引き継ぐことになる。

「人によってプランが違ったり、お香のほかに同梱するものがあったり、住所が変わったり… 気をつけなきゃいけない部分の多い仕事ですね。細かいところに目が届く方だとありがたいです」

ご自身も、お家でもお香を楽しんでいるんですか?

「それがたまに焚くくらいで。言っていいのかわからないですけど(笑)、プライベートではあまり香りには触れてないんです。仕事とプライベートをきちんと分けたいタイプっていうのもあって、あまり持ち込まないですね」

「香りのことを知るのは楽しいんですけど、のめり込むほどではないというか。それくらいの付き合い方が仕事しやすいなって、個人的には感じています。事務仕事も多いですし、お香のことだけやりたい人だとむずかしいのかなと思います」

仕事にきちんと取り組むのは大前提。でも、香りとの関わり方はそれぞれでいい。

その寛容さが、きっと働きやすい雰囲気をつくっているんだと思う。

松本さんは、香雅堂のチャレンジングな姿勢をどう感じていますか?

「いろんなことをやっているなあといつも思いますね。伝統を守りつつ、それを絶対とはしない社風なので、その柔軟性は入社したときから変わらずいいなと思っています」

「お香の定期便も、言ってしまえばサブスクなので。すごく現代の感覚に沿っているなって」

たしかに! お香のサブスク、ですね。

「学生のころから生活に根ざした文化が好きなんです。何百年も続いてきたものをどう現代社会で残していくか、どの文化も模索していますけど、香雅堂のやっていることもそうですよね。時代に合わせながらどう変わっていくのか、そういう部分も含めて伝統文化は面白いし、好きですね」

伝統を大切に守りながら、現代の価値観と調和させていく。

そんな香雅堂の柔らかなあり方は、働く人にも何かを押し付けることのない、良い環境を生み出しているように思います。

このお店の雰囲気を大事にしながら、ともに前進させてくれる人を、お待ちしています。

(2022/8/23取材 増田早紀)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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