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林業×植物×おもちゃ
どう遊ぶ?どうつくる?
みんなが夢中になれる場所

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

なにかを一緒につくったり、体を動かしたり。

遊んでいるときは楽しいし、そのときの吸収力や発想って、ふだんより冴えてる!と感じることも多い。

日々遊ぶような気持ちで働くことができたら、もっと楽しく、いい仕事ができる気がします。

高知県佐川町。

高知市の西にあるこのまちは、NHK朝の連続テレビ小説「らんまん」のモデル、牧野富太郎博士の生まれ故郷として有名です。

まちのおよそ7割を、森林が占める佐川町。個人で伐採から搬出までおこなう自伐型林業に積極的に取り組むほか、最新鋭の工作機器で自由にものづくりができる「さかわ発明ラボ」を開設するなど、ユニークな視点で林業振興に取り組んできました。

そしてこの夏、新たに誕生するのが「佐川おもちゃ美術館」。植物や林業をテーマに、子どもも大人も、佐川の自然を身近に感じられるような空間がつくられます。

おもちゃ美術館のはじまりは、東京。木のおもちゃを中心に、大人も子どもも楽しめるおもちゃが数多く展示されているのが特徴です。木と地域の文化を伝えていく場として共感を集め、いまでは全国に11のおもちゃ美術館があります。

今回は、佐川おもちゃ美術館で働く運営スタッフを募集します。日々の運営業務のほか、イベントの企画運営、SNSでの広報など、この場を盛り上げていくための仕事を自ら考え、実行していきます。

地域おこし協力隊としての採用のため、3年後の定住を目指しつつ、希望があればそのまま働き続けることもできます。働く人自身も、ここでまちとのつながりをつくりながら、暮らしの拠点を築いていく時間になるはず。

自らも楽しみながら、笑顔をつくっていく仕事です。

 

佐川町へは高知駅から鉄道で1時間。特急を使えば30分でアクセスできる。

4月初旬の高知はすっかり春。日なたを歩くと、汗がじわっとにじむ。

城下町として栄えた佐川町には、かつての商家や酒造が昔の姿を残す。山も近いけれど、高くそびえるというよりは、裏山感があって、なんだかひらけた雰囲気。

駅から車で5分ほどはなれた場所では、町内初の道の駅が建設中。佐川おもちゃ美術館は、道の駅に隣接する形でつくられている。

中に入ると、おもちゃ美術館のスタッフのみなさんが「こんにちは~!」と、明るく迎え入れてくれた。

どんな施設になるんだろう?そんな話を聞かせてくれたのは髙野さん。

おもちゃ美術館を主宰するNPO法人「芸術と遊び創造協会」の方で、ふだんは東京にいながら、全国にあるおもちゃ美術館の立ち上げや運営をサポートしている。

林業に力を入れている佐川町。ただ伐るだけでなく、木を身近に感じられる環境があることも、林業を盛り上げる力になるんじゃないか。

そんな想いから、佐川おもちゃ美術館の構想が始まった。

地域の木材を使うことはもちろん、遊びやおもちゃを通して、人と人がつながり、地域の魅力を感じられる場所をつくろうとしている。

「わたし自身は、仕事ではじめて佐川町を訪れて。植物への愛があふれたまちだなと思いました。いまでこそ牧野博士が注目を浴びているけれど、地域では昔からずっと愛されている方で」

日本中を駆け巡り、1500もの新種を発見・命名した牧野富太郎博士。日本植物学の父とも呼ばれていて、生まれ故郷の佐川町では、博士にゆかりのある植物で公園がつくられるなど、まちの偉人として愛されてきた。

ヤマザクラやケヤキ、センダンなど。博士が発見・命名した植物には身近なものも多い。

「おもちゃ美術館では、博士が発見した何種類かの木でつみきをつくって、それぞれに木の名前を印字しようと思っていて。木目を見ると、これとこれは全然違うねとか、ちょっとした発見がたくさんある。シンプルな形だけど、遊びが広がるようなおもちゃをつくりたいなと思ってます」

佐川の山をイメージしたフロアで、博士ゆかりの植物採取を体験したり、高知の郷土料理をままごとでつくったり。

これはなんだろう?なにでできているんだろう?自ら手にとって触ることで、自然や地域への興味も芽生えていく。

オリジナルのおもちゃは、地元の作家さんが中心となって制作している。

「バイカオウレンの花の独楽は、発明ラボのみなさんに制作をお願いしていて。館内にある電動糸のこを使って、木からおもちゃをつくるワークショップも開催してもらおうと思っています。おもちゃって、つくるところから楽しいんだよって伝わるといいなと」

おもちゃ美術館で特徴的なのが、運営スタッフのほかに、「おもちゃ学芸員」と呼ばれるボランティアスタッフがいること。

おもちゃの遊び方をレクチャーしたり、来場者と一緒に遊んだりする存在で、髙野さんいわく「遊ぶことが仕事」。ほかのおもちゃ美術館では、「この学芸員さんと遊びたい!」と通うお客さんもいるのだとか。

佐川おもちゃ美術館でも、町内外の81人がすでに登録している。「おもちゃが好き」「子どもと遊びたい」「まちの力になりたい」など、さまざまな想いを持つ人たちとともに、佐川おもちゃ美術館をつくっていく。

新しく加わる人は、お客さんの受付管理や、学芸員さんのシフト管理など日々の運営に必要な仕事のほか、SNSでの情報発信、イベント企画など、おもちゃ美術館を盛り上げていくための仕事にも取り組む。

「最低限の仕事はあるけれど、それ以外は本当に自由にやってほしいと思っていて。たとえば、まちで知り合った人を講師に招いてイベントをつくってみるとか。そういう楽しい発想から、佐川だけの魅力が詰まったおもちゃ美術館がつくられていくと思うんです」

「企画が得意だったらその強みを活かすこともできるし、コミュニケーションには自信があります!って人なら、学芸員さんとお客さんをつなぐところで力を発揮することもできる。その人らしさをどんどん活かしていってほしいですね」

施設は館長のほか、4月から加わった2名のスタッフと今回新しく加わる人で運営する予定。髙野さんは施設のオープン後も、オンラインを中心に運営に伴走していく。最初は悩むことも多いだろうから、なんでも気軽に相談してほしいと、髙野さん。

 

3月には、オープン前の予行演習として、「木育キャラバン」と呼ばれる、おもちゃ美術館を体験できるようなイベントを開催。SNSでの発信が反響を呼び、町内外から2日で800人ものお客さんが訪れ、大盛況に終わったそう。

その日の様子を教えてくれたのは、館長の岡﨑さん。生まれも育ちも佐川町で、今年の3月までは町の保育園で先生をしていた。

「つみき一つでも、ドミノにしたり、建物をつくったり。崩れても何度でもやり直す。自分たちが想像している以上に、子どもたちはいろんな遊び方をする。熱中して、半日だけの滞在予定が一日になってしまった、と話すご家族もおられました」

印象に残っているシーンがあるという。

黙々とドミノをつくっている年中さんくらいの女の子。1時間くらいかけてつくって、いよいよ倒そう!というときに、通りがかった小さな子どもが誤って倒してしまった。

お母さんとその子が「ごめんね」と言うと、女の子は「いいよ」と一言。見守っていると、つくり直したあとに、「つくりなおしたき、大丈夫~!」と、親子へ声をかけていたそう。

「全然知らん人とも、おもちゃを通じてこんなコミュニケーションもとれる。おもちゃの力ってすごいなと感じましたね」

「木の力なのか、おもちゃの力なのか、わからんけど」と前置きして教えてくれたのは、視察に訪れた東京おもちゃ美術館でのできごと。

「美術館に入る前はすーっとした表情のお父さんが、中に入ったら『これ、やったことある!』って言って、お子さんより夢中になっちゃって(笑)。あ、こんな表情もするんやって」

「なんかね、おもちゃ美術館にいると、あれも触ってみたい、次はあれで遊びたいって気持ちになるんですよ。本来人間が持っているものを揺さぶってくれるっていうか、戻してくれる場所なんかなって思います」

「美術館」という名前にも、大人も気軽に来られる場所になってほしいという願いが込められている。

同じ空間で過ごしているうちに、お客さん同士が一緒に遊んだり、子どもの様子を見守りながら、ちょっとした会話を交わしていく場面もあるかもしれない。

「学芸員さんは子育てを終えた年齢の方も多いので、自分のときはこうやったよとか、子育ての話をしてくれる方もいると思うんです。あんまり説教くさいと嫌がられるやろうけど(笑)、頼れる人たちがいると思えるってすごく大事で」

「子どもと向き合っていると、イライラしちゃうときもある。ちょっと肩の力を抜ける時間や空間があるだけで、『やっぱり子どもって可愛い!』って思えると思うんです」

ふだん、子どもに触れ合う機会が少ない人にとってはエネルギーや気づきをたくさんもらえる時間になるだろうし、それが誰かの役に立てていると感じられたら、さらにうれしい。

「いろんな人に楽しんでもらいたいけど、まずはまちの人が『おもちゃ美術館があってよかった』と思える施設にしたいですね」

やってみたいことがあるという岡崎さん。

「保育士をしているとき、園舎を建て替えることになって、材料になる木を伐る現場を子どもたちと一緒に見させてもらったんですね。あのときの木の倒れる音と、匂いが忘れられなくて。そういうのって、きっとずっと記憶に残ると思うんです」

「林業家さんの格好もレンジャーみたいで、とっても格好よくって。林業ってあんまり身近な仕事じゃないけど、知ってみたら興味を持つ子どももいるかもしれない。丸太伐りのワークショップとか、林業に触れてもらえる仕掛けもつくれたらと思っています」

佐川だからこそできる体験を、地域の人とともにつくっていく。

まちのなかには、おもちゃ美術館のことをまだよく知らない人も多いし、かかわるきっかけがないと感じている人もいるかもしれない。新しく加わる人は、地域で暮らし、コミュニケーションをとるなかで、まちの人も巻き込んでいけるといいと思う。

一方で、きちんと美術館を運営していくためには、来場者を増やしていくことも大事。足を運んでみたくなる仕掛けをつくることも、より多くの人に届くようなPRを考え実行していくことも大切な仕事になる。

「情報発信、自分らはどちらかというと苦手な分野なので、得意な人が来てくれるとうれしいです」

「私たち運営のスタッフも、この4月からようやく全員揃ってスタートしたところです。これから一緒につくりあげていこう!って気持ちで臨んでもらえたらと思います」

 

記事では紹介できなかったけれど、どの運営スタッフさんも、学芸員の方も、「オープンがすごく楽しみ」と笑顔を滲ませていたのが印象に残っています。

自然と人のエネルギーがぎゅっと詰まった空間。ここでなにかをしてみたいと思ったら、ぜひ力を発揮してほしいです。

(2023/4/4 取材 阿部夏海)

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