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素材に歩み寄りながら
じっくり見つける
お菓子の表情

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

春には桜、冬は柑橘。毎月変わる季節のケーキは、全部食べてみたいけど、食べきれない。

大切な人のギフトにクッキーを。自分へのご褒美には大好きなモンブランを。

おいしいお菓子がたまに生活を彩るだけで、幸せな気持ちが増していく。

パドゥドゥのお菓子を食べているとき、しみじみとそう感じます。

「PAS DE DEUX(パドゥドゥ)」は、埼玉県さいたま市にある洋菓子店。

材料のほとんどが国産で、添加剤も基本的には使わない。自然や生きものを大切に考え育まれた素材を厳選し、その味を最大限引き出せるようなケーキや焼き菓子をつくっています。

今回は、お菓子づくり全般を担う工房スタッフを募集します。

経験はあるに越したことはないけれど、それ以上に大切なのは、パドゥドゥの考え方に共感できること。

じっくりと腰を据えて、素材と向き合うお菓子づくりに取り組んでみたい人に、このお店のことをもっと知ってほしいです。

 

パドゥドゥがある東大宮駅までは、埼玉の中心地・大宮から電車で5分ほど。

駅前のロータリーから続く道で、たくさんの帰宅途中の高校生とすれ違う。きっと近くに高校があるんだろうな。

まちの日常を感じながら歩いて5分ほどで、パドゥドゥに到着。

立派な木々が植えられ、緑が生い茂る駐車場。その隣の建物の、少し奥まったところに入り口がある。

中に入ると、焼き菓子がディスプレイされた空間。そばには、冷凍のケーキの見本とレジが並ぶ。

奥にある、イベントなどで使うガラス張りのスペースで、元気に迎えてくれたのが、ブランドディレクターの河合さん。

お母さんが30年以上営んできたパドゥドゥを引き継ぎ、リブランディングをして5年になる。

河合さんがブランドを任されてから、パドゥドゥは店頭に大きなショーケースを置かなくなった。

「ケーキ屋さん」と聞いてイメージするような、いっぱいのケーキが並ぶ光景はなく、生のケーキは原則予約制。予約なしで購入できるのは、日持ちする焼き菓子と冷凍のケーキのみだという。

すべては、大切な材料を無駄にしたくないから。

「うちで使っているのは、平飼いの鶏の卵や、自然栽培の果物。食材を分けてくれる生産者さんや、それを生み出してくれる生きものや植物のことを考えると、無駄にしないのは当たり前のことだと思っています。このやりかたが、わたしたちにとっても気持ちがいいんです」

「ストイックに感じるかもしれないけれど、現場はクリエイティブなんですよ」

パドゥドゥのケーキは見た目も美しく、それを伝えるWebページなどのデザインにも力を注いでいる。

象徴的なのが、東京・清澄白河にある期間限定のコンセプトショップ「RURI」の存在。お菓子のほかにもお茶やグラスの販売や、お酒とのペアリングイベントなどもおこなっている。

「お菓子の味わいはもちろん、見た目のデザインや香り、いろんな切り口からの表現を探求しながら、食材やつくり手に興味を持ってもらえる場にしたいと思っていて。毎月企画を立ててイメージカットを撮影して、世界観をつくってきました」

商品の企画からパッケージ、Webサイトまで。パドゥドゥでは、ブランドにかかわるすべてを社内のクリエイティブディレクターとチームを組んでつくりあげている。

スタッフ全員の顔が見える規模だからこそ、丁寧にコミュニケーションをとりながら、お菓子の味から見た目のデザインまで、一貫性を出すことができる。

そんなものづくりを経験できるのは、工房スタッフにとっても新鮮な楽しさがあるはず。

 

「すごく丁寧で、芯が通って凛とした、村上さん自身を表すようなお菓子をつくるんです」と河合さんが熱く紹介してくれたのが、シェフの村上さん。

正社員2人、パートタイムスタッフ1名の工房を取りまとめている。

お菓子づくりの仕事に携わって20年以上。

もともと10年ほど前に1年間パドゥドゥに在籍していて、河合さんがブランドを引き継いだタイミングで再び働くように。

今のパドゥドゥの味は、すべて村上さんがつくり出している。

「パドゥドゥのケーキは、王道のものとは違うんです。たとえ経験が長い人でも、馴染むにはきっと時間がかかると思います」

10年前、村上さん自身もその経験をした。

「柑橘の下処理をしたことがなかったり、無添加の材料で安定して生地を焼くのがむずかしかったり。10年もこの仕事をしてきたのにって、ちょっとショックでしたね。素材に対して、できてないことがたくさんあったんだって気づきました」

パドゥドゥでは、創業当初から純生クリームを使用。添加剤が入っていないので、泡立てるにはコツがいるそう。

完成品を使うお店が多いフルーツピューレのような副材料も、果物を丸ごと仕入れて、皮を剥くところからすべて手作業でつくっていく。

「別のお店では、完成品のピューレの味に合わせていろんな風味を足しながら、ケーキをつくっていくことが多かったんです。でもパドゥドゥでは、まずベースになるピューレの味から自分で決められて、そこに何を足すのか、何も足さないのか、すべて自由に考えることができる。それが本当におもしろくて」

「材料の状態にあわせて、こっちが歩み寄って味の振り幅を決めている感じです。今年の柑橘は酸味が強めだからこうやって活かそうとか、毎回アプローチが変わるので勉強になりますね」

材料に歩み寄る。

そう話す村上さんが特に印象に残っているのが、高知県黒潮町の「入野砂糖」との出会い。

伝統製法でつくられる黒糖の一種で、サトウキビの栽培から精糖、その販売まで、一軒の農家さんがおこなっている。

村上さんたちは実際にサトウキビ畑を訪れ、夜通し釜で炊き続ける作業も見学。

毎月開催するクッキーの量り売りイベントで、入野砂糖を加えたクッキーを販売したところ、大人気だったそう。

「いつものレシピで砂糖を変えただけなのに、味の振り幅がグッと変わって。すごく奥行きがあって、口溶けがよくて、最後に余韻が残る。一口の中にストーリー性があって、これまで使ってきたいろんなお砂糖のなかでも、衝撃的な味でしたね」

「ちゃんと使いたいって、背筋がシャキッと伸びるような気持ちになる材料です。生産者さんの顔が見えるのはすごくありがたくて。現地に行くと、そのあとのお菓子づくりで確実に意識が変わります。余すところなく使い切りたい、おいしくつくりたい、とより感じますね」

日々素材と向き合いながら、それを活かす表現を探るパドゥドゥのものづくり。基本的には「引き算」で、いかに少ない材料で素材そのものの味を引き立たせるか、と考える。

新しく入る人は、まずは村上さんがつくりあげた味を再現できることを目指していく。

「まず素材をよく知って、扱えるようになることに時間がかかります。数年だけ経験を積みたいという人よりは、長く腰を据えて深めたいという人のほうが、パドゥドゥには合っているんだろうなと思います」

きっと長い道のりだとは思うけれど、ものをつくるのが好きで、その背景まで知りたいと思う探究心があれば、興味が尽きることなく取り組んでいけるはず。

 

村上さんとともに働くのが、入社2年目の吉田さん。パドゥドゥ一番の若手で、唯一の男性スタッフだ。

製菓を学んだのち、最初に入ったお店では、3年間で厨房から販売接客まで幅広く経験。

その後、オープニングスタッフとして働いたお店で焼き菓子の製造を中心に力をつけ、昨年2月にパドゥドゥに入社した。

「転職を考えたときに、次はちょっと変わった、挑戦的な取り組みをしているお店がいいなと思って調べていました。日本橋三越の催事に行ったとき、パドゥドゥが出展しているのをたまたま見つけて、『求人サイトで見たお店だ』って。そのときは、結構高いなあと思って買わなかったんですけど…(笑)」

実際の雰囲気を知ったことで興味を持ち、予約をしてこのお店までケーキを買いに来た。

初めて食べたのは、モンブランと、季節商品のキャラメルりんごムース。

「一口食べて、めちゃくちゃおいしいなと思いました。モンブランっていろんなお店にありますけど、自分はコテコテといろんな材料を使うよりはシンプルなほうが好きなので。使う材料のシンプルさは、実際に入ってからよくわかりました」

工房全体の日々の動きとしては、午前中は予約の入っているケーキの製造、午後は仕込みや焼き菓子の製造をすることが多い。

経験を活かして、焼き菓子を窯で焼く工程を主に担当している吉田さん。クッキーはギフトとして贈られることが多い人気商品なので、責任も大きい。

味はもちろん、おいしそうな見た目に焼けているかも重視している。

「シェフには、本当にしっかり見てもらっているなって感じますね。『吉田くんは社員だからここまでわかっていたほうがいいよ』って、よく言われていて」

「ここに入るまでは、”つくる”という部分だけが自分の仕事だと思っていたんです。今は包装担当のスタッフとも積極的にやりとりをしたり、発注を任せてもらうようになったので自分が関わらない材料のことも把握したり。お菓子をつくる以外の部分にも気を配るようになりました」

担当の垣根を超えて、みんなで積極的に意見を交わすことで、より効率のいい動き方を考えたり、無駄やロスを減らしたりと、柔軟にやり方を変えることができている。

パドゥドゥ全体を一緒によりよくしていきたい。そんなふうに思える人なら、きっと気持ちよく働くことができると思う。

今年の夏は、生のケーキに挑戦するという吉田さん。村上さんの姿勢を素直に吸収してきたことで、着々と仕事の幅を広げています。

興味を持ったら、まずはぜひパドゥドゥのお菓子を食べてみてください。

この味を心からおいしいと思えること。それがこの仕事のスタートラインであり、働くうえで何よりも大切なことだと思います。

(2023/5/25取材 増田早紀)

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