※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
世間で求められるものは、常に移り変わってゆく。
そのスピードは、自分が生きてきた30年と少しを振り返っても、より速まっているように感じます。
変化に柔軟に対応していかなければ、どんな企業も生き残っていけない。ただ、人が何を求めているのかだけを見ていたら、ありきたりなものしかつくれない。
“Change needs into wants.(必要とされるものを、欲しいものへ)”
そんな理念を掲げ、4代にわたって焼きものをつくり続けてきたアイユーという会社があります。
2代目までは窯元、いわゆるメーカーとして器をつくっていました。その後、高度経済成長期を過ぎ、焼きものの売り上げが落ちてゆくなかで商社へと転換。
自社で器を焼く機能は手放したものの、時代性と元メーカーの視点をかけ合わせ、オリジナルブランドの器を多数生み出しています。
近年はその企画力が認められ、アーバンリサーチのような大企業からの注文を受けたり、長崎駅やホテル、百貨店などでタイルを使った内装をプロデュースしたり。OEMの問い合わせも年々増えているそうです。
今回募集する人の役割は、明確には決まっていません。
器の企画や営業をやりたい人、ECや店舗の運営に関心がある人、商品の検品や梱包といった裏方の仕事に携わりたい人。
どんな人であっても、まずはさまざまな仕事を経験してもらいつつ、得意なことや興味関心、適性に応じて関わり方を一緒に考えていきます。
どこかに軸足を置きつつ、ほかの人の業務をサポートしたり、社内で日々コミュニケーションを重ねたりしていくことは欠かせません。
小規模な商社ならではの自由度の高さ、携わる業務の幅広さを柔軟に楽しめる人を求めています。
バリエーション豊かな焼きものの産地として知られる長崎県波佐見町。
窯業関連の会社が集まるまちの中心部から、少し離れたところにアイユーの本社はある。目印は「a」の看板。
40年ほど前までは窯元として器を焼いていた。最盛期は別の場所にも工場や事務所があって、300人ほどが働いていたそうだ。
今はパートスタッフを含めて5人という小さなチームで、自社プロダクトやOEMの商品を企画・販売している。
もともと絵付け場だった部屋は、改装してショップに。これまで手がけてきた商品がゆったりと並ぶ。
ショップの隣には事務所と、検品や梱包をおこなう作業スペースがある。
スタッフのみなさんに混ざって商品を拭いているのが、代表の小柳さん。
過去に2回取材していることもあって、リラックスした雰囲気で迎えてくれた。
以前は東京でアパレルの販売員をしていた小柳さん。服が好きで、自分のお店を持ちたいと漠然と思っていたそう。
ただ、ファッション業界を見渡したとき、よほどのコネクションや熱意がなければ通用しないことを実感。そんなタイミングで先代のお父さんに呼ばれて、12年前に家業へ戻ってきた。
「扱うものが服から陶器に変わるだけで、販売や流通の考え方は同じだろうと」
「それに器なら、自分の好きなお店に商品を置かせてもらったり、注文を受けて一緒にものをつくったり。広がりもあって、ある意味おもしろいんじゃないかと思ったんです」
ユニバーサルデザインの考え方でつくった「eシリーズ」や、機能性に加えて老若男女問わず使える丈夫さとシンプルさを追求した「motte」、陶磁器デザイナー・石原亮太さんの手描きの鳥をモチーフにした「Bird」など。
もともとがメーカーだったこともあり、アイユーでは先代からオリジナル商品を数多くつくってきた。
そんななかで小柳さんのアパレル経験を活かしてつくったのが、「ORIME」というシリーズ。ヘリンボーンや鹿の子など、生地の折り目を器の柄に落とし込んでいる。
雑貨店やライフスタイルショップなどでもよく取り扱われていて、2019年にはアーバンリサーチとコラボレーション。ヘリンボーン柄の限定色の器を制作した。
ここ数年はOEMの受注が年々伸びているそう。既存製品の色を変えたり、ロゴマークを加えたりするセミオーダーだけでなく、型からオリジナルでつくるフルオーダーの問い合わせも増えている。
そのほか駅やホテル、長崎に新しく誕生したアミュプラザ新館でのタイルを使った内装プロデュースなど、食器以外の相談も舞い込むように。
つくっているものの幅広さにも驚くし、これらの企画営業を今は小柳さんひとりで担っているというから、さらにびっくりだ。
「“あなたの仕事を一言で”って言われたら、とても表しきれないですね。波佐見焼の商社でも、規模の大きいところは部門が分かれています。うちみたいな小さな会社は、ひとりが全部を見ていく。なんでも経験できるのが大変さであり、売りでもあるかなと思います」
取引先は百貨店や器の専門店、セレクトショップなどさまざま。海外向けの輸出もある。
OEMの注文が入れば、どういうものをつくりたいかのヒアリングをして、納期や予算を考慮しながら、デザイナーや職人との打ち合わせを重ねて形にしていく。
納品が重なるときには出荷作業を手伝うこともあるし、電話を受けたり、県外のイベントに出店したり、ショップのお客さんに対応したり。
小さなチームであるがゆえに、一人ひとりに幅広い働きが求められる。
「今回はあまり職種を狭めずに募集したい」と小柳さん。その背景について、こう話す。
「過去の採用は、前職の経験やスキルをもとに、自分の決めつけから入っていたところがあって。それは即戦力としての期待の裏返しでもあったんですが、意外性や柔軟性がなかったなと、振り返ってみて思うんです」
今回はまず3ヶ月〜半年ほど、いろんな仕事に携わってもらいたい。
そのなかで適性を見ながら、一緒に役割や働き方を考えていくようなイメージをしている。
「商社の仕事って、言葉で説明してもなかなか想像がつかないんですよね。自分も帰ってきた当初はわからないことだらけでしたし、いまだにメーカーさんと話したり、現場に足を運んだりするなかで、毎日1個ぐらいは知らないことが出てくる世界なんです」
電話対応ひとつとっても、磁器か陶器かという基礎的な知識から、波佐見焼の歴史やマニアックな技術の話、職人さん一人ひとりの忙しさ具合や得意不得意まで。
幅広く把握していないと、お客さんからの質問にうまく答えることができない。
ただ知識を蓄えるだけではなく、いろんな人と積極的に話して教わる。食わず嫌いをせずに、まず何でもやってみる。そんな姿勢が大事になってくると思う。
「日々取り組んでいくなかで、自分に向いていること、やりたいことも見えてくるはず。だから最初に思っていた役割と変わっても、ぼくは全然OKだと思うんですよね。それが本当の適性だと思うので」
社会人としての節度をもったコミュニケーションができれば、経験は問わないとのこと。
一緒に働く仲間として、ほかに求める要素はありますか?
「挨拶、あと笑顔。大きくはこの2点かなと思うんです。仕事が最初からできなくても、できるようになる努力をしていれば、あとからいくらでも力はついてきます」
「人物像としては、彼女が理想なんです」
小柳さんがそう言って紹介してくれたのが、スタッフの山本さん。農業とアイユーの二足のわらじを履いてパートタイムで働いている。
「前はアパレル系の仕事をやっていて、いろいろあって辞めてしまったんですけど。接客業は続けたくて、求人を探していたらアイユーを見つけたんです」
「面接を受けたときに、社長もスタッフさんもいい方で。仕事内容を聞いて、向いてるかなと思って入ったという感じですね」
当初焼きものにはまったく興味がなく、販売の仕事という点だけを見て応募した山本さん。
お隣の川棚町出身ではあるものの、波佐見焼ってなんだろう?というところからのスタートだった。
「焼きものって、なんとなく古臭いイメージがあったんです。だけど波佐見焼は、ポップな色や柄があって、生活に取り入れやすいなって。アイユーで働きはじめてから、ほかのお店に行っても焼きものを見るようになりましたね」
じつは山本さん、2年ほど前に一度アイユーを離れていた。
「祖父母がやっている農業を継ごうかなって想いがあって。体力も心配だし、継ぐ人もいない。なんとかしたいなって思っていたんです。それで一旦退職して」
一時は農業に専念していたものの、アイユーに長く勤めていたスタッフが続けて退職するタイミングがあり、人手不足のヘルプで今年の春からまた働きはじめたという。
午前中は畑へ、午後からアイユーに出社するスタイルで関わっている。
「週5で来ることもあれば、社長に来てほしいって言われたときだけ来るとか、不定期ですね。農作業が忙しい時期は、そっちを優先させてもらっています」
今回募集する人はできるだけコアに関わってほしいものの、相談次第で多様な働き方ができると思う。
現在山本さんが主に担当しているのは、検品や出荷。
作業場では商品を並べ、検品しながら拭き、箱に入れていく。
「大変なところでいうと、器が重いので力はいりますね。緑のカゴ、サンテナっていうんですけど、あれいっぱいにお茶碗を詰めるとかなり重くて」
お客さんによって入れ方の希望が違ったり、商品にシールを貼ったり貼らなかったり、個人の注文で贈りものの希望があれば、ラッピングをすることも。
単純作業のなかでも、意識するポイントはいろいろある。
山本さんは、どんな人がこの会社に合っていると思いますか。
「自分の気持ちや意見をちゃんと伝えられる人。何か思うことがあって、伝えた結果としてよくなることなら、自分のなかに留めていたらもったいないじゃないですか」
自分のなかでぐるぐる考えてしまうより、思ったらすぐに言えるほうがいい?
「うんうん。自分も前はあまり言う人じゃなかったんですけど、仕事の優先順位とか、ちょっとおしゃべりが多いよとか。途中から意見も言えるようになりました。そういう人のほうが気持ちよく働けると思います」
年齢層は70代の会長ご夫妻から20代のスタッフまで幅広い。
とはいえ、上下関係が強いというよりは、フラットで程よい距離感だという。
小さなチームで働くうえでは、仕事内容はもちろん、社内の雰囲気や一緒に働く人と波長が合うかどうかがとても重要です。ピタッとはまれば、力もついて裁量も広がり、できることが増えてどんどん楽しくなっていくはず。
まずはアイユーのみなさんと出会って、一日でも一緒に働いてみてください。
(2023/10/31 取材 中川晃輔)
インターン内容について
代表の小柳さんが日々どんなふうに仕事を進めているのか、一緒に体験します。打ち合わせに同席したり、窯元を訪ねたり、検品・出荷を手伝ったり。何に取り組むかは、進行中の案件によって変わります。
また、後半日程(4、5日目)には、実際に商品企画を立てるワークショップも予定しています。