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標高1400メートルの広い高原。大の字になって、見上げる空は広くて青い。
おもいっきり深呼吸する。なんて気持ちいいんだろう。
今回の舞台は、長野県・南相木村(みなみあいきむら)にある立原高原。
夏は深緑の木々のなかを風が抜けていき、冬は澄み切った空気が肌にツンと沁みていく。
空気が澄んでいてきれいだからか、都会で感じる暑さや寒さと違って、なんだかいやじゃない。そう感じる場所だと思います。
そんな立原高原にあるキャンプ場で、運営を担う地域おこし協力隊を募集します。
所属は、村の観光産業を担っている、第三セクター「南相木村故郷ふれあい公社」のアウトドア事業部です。
春から秋にかけてのオンシーズンは、受付での接客やコテージの清掃が主な仕事。冬のオフシーズンは、施設の管理をしつつ、お客さんが楽しめる企画を考えることも業務の一つ。
休日は、目の前にある御座山や八ヶ岳へ山登りに行ってみたり、近くの温泉でゆっくり過ごしたり。
アウトドア好きな人はもちろん、雄大な自然のなかで、リフレッシュしながら働いてみたい人にはピッタリだと思います。
東京駅から新幹線に乗って、長野県の佐久平駅まで北へ進んでいく。
そこから車で1時間ほど、南に降りていくと南相木村がある。
村にはスーパーがないため、隣の小海町まで買い物に行くことが多いそう。
まず向かったのは、南相木村役場。
南相木村は、県内のほかの地域に比べて積雪は少ない場所なのだとか。ただ、山に囲まれているため、冬は日照時間が短く寒さは厳しい。
役場の前には、先週の大雪で積もった雪がまだ残っていた。
中に入り、話を聞いたのは、村長の中島さん。
立原高原キャンプ場を運営している「南相木村故郷ふれあい公社」の代表でもある方。
気さくに話してくれて、笑顔が印象的。
人の手が加えられていない山林が、村の総面積の9割以上を占める南相木村。村の特産物であるマツタケのほか、レタスや白菜など高原野菜が育てられている。
人口は900人ほど。少子高齢化が進み、基幹産業の農業は担い手不足に悩んでいた。
人を呼び込むため、観光の底上げをしていく必要があるのではないか。その想いで平成12年に立ち上げられたのが、南相木村故郷ふれあい公社。
2021年からは、地方創生事業の実績がある株式会社さとゆめが加わり、地域活性化のために伴走している。
また、観光へ力を入れるとともに、大切にしたいのが住民の福祉面。ふれあい公社の取り組みとして、はじめにオープンしたのが「滝見の湯」という温泉施設だった。
御座山で登山をしてきた人や、村内にあるダムや滝めぐりをしにきた人など。村内外の人たちの癒しの場となっている。
そんな滝見の湯がオープンする以前からあったキャンプ場。観光面をより強化するため、2023年4月から南相木村故郷ふれあい公社が管理・運営を担うことになった。
「南相木村に来る途中には、軽井沢町や御代田町みたいなリゾート地があって。わざわざここに来るお客さんは少ないんです」
「ただ、村に足を運んでくれる人には、手つかずの自然が評判で。それをうまく村外に発信できたらいいんですけど、私たちだけではなかなか難しいんですよね」
村の魅力を発信するためにも、地域おこし協力隊を活用して、外から人材を呼ぶことに。
すでに移住者の先輩がキャンプ場で働いていて、昨年は夏季限定でテントサウナをオープン。たくさんの人が村に足を運ぶきっかけとなった。
新しく協力隊として働く人も、キャンプ場で面白い仕掛けをつくり、村の観光を盛り上げてほしい。
「滝見の湯やキャンプ場、ほかにも南相木村には観光の資源がたくさんあるんです。点と点を線でつないで、面にしていけたらなと思っています」
次に向かったのは、役場から車で20分ほどに位置する立原高原キャンプ場。
途中には、村の観光スポットの一つの立岩湖がある。シナノユキマスやワカサギが生息していて、冬場は穴釣りを楽しむことができる。
この日も、ご近所の人たちが自前の釣り竿を持って集まっていた。
立岩湖から一本道を進んでいくと滝見の湯があり、さらに山道を登っていくと、立原高原キャンプ場に到着する。
標高1400メートルに位置し、敷地にはコテージが19棟、オートキャンプサイトがと林間キャンプサイトがある。管理棟の隣にはつつじ園もあり、開花を目掛けて来る人も多い。
「ここ見晴らしがいいでしょう。今、ここにサウナ小屋をつくっているんです」
そう話すのは、キャンプ場スタッフの藤城さん。背後には御座山の山頂が目線の高さにあって、空の色がいつもより濃く感じる。
2022年に東京から南相木村に移住し、昨年の4月から立原高原キャンプ場で働いている。今回、協力隊となる人の先輩になる方。
昨年の夏に盛況だったテントサウナのアイデアは、藤城さんが出したものだそう。
キャンプ場のオンシーズンは4月から11月まで。管理棟での接客と、コテージやサニタリー室の清掃などをおこなう。
オフシーズンは施設のメンテナンスをしたり、薪づくりをしたり。藤城さんのようにアイデアを出して形にするなど、オンシーズンに向けて備えていく。
「僕がサウナ好きってこともあって。見晴らしもいいし、ここでサウナに入れたら気持ちいんじゃないかと。それでアイデアを出したら、みんないいねって言ってくれて。自分たちでDIYしてサウナ小屋をつくっています」
ほかにも、昨年からSNSでの発信をはじめたり、キャンプ場の予約を大手サイトに掲載したりすることで、これまで南相木村のことを知らなかったキャンパーたちが訪れるようになった。
「ここは、近隣のキャンプ場に比べて静かに過ごせる穴場として選ばれているんです」
「オンシーズンはコテージが埋まるほどのお客さんが訪れるんですが、敷地が広いので、ガヤガヤしていなくて。ゆったりと過ごせる場所だと思います」
今はサウナ小屋のほか、キャンプ場のロゴを作成している。
新しく来る人も、村の観光を盛り上げるためのアイデアを求められることもあるかもしれない。けれど藤城さんのように、自分の好きなこととキャンプ場の仕事をうまく掛け合わせることができたら、楽しく働けると思う。
スタッフは4名いて、そのうち2人は関東、関西から移住した協力隊の方たち。移住のきっかけで共通しているのは、南相木村ならではの自然が好きなこと。
「夫婦ともに山登りが好きで。八ヶ岳とかこの辺りに来たことはあったんです。子どもが生まれたことをきっかけに、地方への移住を考えはじめました」
「移住してからは、隣の小海町で働いていたんですが、会社の事情で辞めることになって。そのとき、南相木村のご近所さんに相談したら、数日で話が広まって(笑)。それで、キャンプ場の仕事を紹介してもらって、ここで働くことになりました」
実際に暮らしてみていかがですか?
「不便かもしれないと思っていたことは、案外不便じゃなかったですね」
「たとえば買い物とか。都内に住んでいても、お店に行くのに10分くらいはかかりますよね。ここも距離は離れているけれど、車で走らせたら割とすぐにスーパーに着くんです。ほかに必要なものがあれば、ネット注文で簡単に頼めるし。車の音とか騒音もないから住みやすいですよ」
人口が少なく静かな村。地区ごとに清掃活動や集会などが定期的におこなわれていて、人と人のつながりは強い。
ご近所の方の手を貸してもらうのは、よくあることなんだそう。
「昨年末、帰省して家をしばらく空けている期間があって。そしたら、家のボイラーが凍ってしまってお湯が出なくなってしまったんです」
「自分では、どうしてもうまく直せなくて。ご近所さんに声をかけたら、ゾロゾロとたくさん見にきてくれました(笑)。『直るまで、うちのお風呂使っていいよ』って言ってくれる人もいて。そんなことが日常茶飯事です」
ときには、「この前あそこにいたでしょ!」と声をかけられることもあるのだとか。
人と人との些細なやりとりを、自然に楽しめる人が合っているんだろうな。
最後に話を聞いたのは、村役場の総務課で働く鈴木さん。
長野県出身で、4年前にJターンで移住した。移住などの相談窓口も担当しているため、鈴木さんと関わる機会もあると思う。
祖父が住んでいたこともあり、南相木には幼いころからよく来ていた鈴木さん。進学のため一度上京したものの、馴染みあるこの村で働くことに。
「上京する前から、長野に戻ってくるつもりだったんです。やっぱり人混みにはなれなくて、帰ってきましたね(笑)。地元よりもここは人口が少なくて、静かだなって感じます」
「それが自分には合っているけれど、村としては課題でもあって。人口が少なくなると、お店も減っていきます。役場の近くに複数あった商店も、気づいたら1つだけ。住民へのサービスの供給が減っているんです」
充実したサービスを提供するためにも、人口を維持することは重要な課題。
そのために、村では子育て世代の移住促進に力を入れている。
村内には、保育園と小学校が1つずつ。小学校では、親子留学の受け入れやオーストラリアの姉妹校へのホームステイの実施など、独自の教育制度も整えている。
その甲斐もあって、小学校に通う児童の親御さんの半分は、Iターンで南相木村に来た人たち。また、移住の体験を希望する人も定期的にいるのだとか。
村には、移住定住促進施設が2軒ある。その内1軒は、100年以上前の古民家を改装した建物。
希望があれば数日から1週間滞在できて、滞在期間中は希望があれば役場の職員が村内を案内してくれる。
「いきなり移住ってハードルが高いと思うので、まずは体験に来ていただいて、ここでの生活を感じていただけたらと思います」
「不安ごととか、なんでも聞けるように相談窓口を設けているので、移住前でも気軽に頼っていただきたいです」
普段はインドア派の鈴木さん。毎年5月に開催されているイベントが楽しみなんだとか。
「ここ周辺の5市町村で100キロ走るウルトラマラソンがあって。コースは山道が多くてかなり過酷なんです」
「参加される人は高齢の方も多いんですけど、どんどん追い越されるんです。すごいなって。いろんな意味で鍛えられる場所だと思います(笑)」
娯楽や情報がスマホやパソコンで手軽に手に入れられる今。身体を動かして、自分なりの楽しみを見つける。そこに面白みがある場所なんだろうな。
長野県のなかでも秘境と呼ばれるこの村には、自分のリズムで暮らしを楽しんでいる人たちがいました。
生活も仕事も。足を動かし、手を使って、おもいっきり汗をかいてみてください。
(2024/02/09 取材 大津恵理子)
南相木村故郷ふれあい公社では、事業プロデュース会社のさとゆめが採用支援に関わっています。どのような考えで、地域おこし協力隊という制度を活用しているのか。コラムで紹介しています。
3月21日には、さとゆめの横山さんと一緒に、東京・清澄白河のリトルトーキョーでしごとバーを開催します。配信もあるので、よければ覗いてみてください。