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自分の持ちもののなかに、お気に入りや、こだわって選んだものはありますか?
たとえ小さな雑貨や食器でも、それがあると家で過ごす時間がちょっといいものに感じられる。
洋服や鞄なら、身につけて外出する日は心なしか明るい気分になる。
一つ二つと特別なものが増えていくと、自分を取り巻く暮らし全体が豊かになっていくように感じます。
日本の職人がつくる選りすぐりの逸品を、ECと実店舗で販売する藤巻百貨店。
今回は、新たに生まれる「顧客体験」に特化したチームのメンバーを募集します。
サイトや実店舗での発信、商品企画、イベント運営など。社内のさまざまな取り組みと横断的に関わりながら、よりお客さんがワクワクする体験を形にするのが仕事です。
販売促進やマーケティングの経験があれば役に立ちますが、未経験でも大丈夫。
初動のフットワークの軽さや、計画を立てて遂行する力が大切です。「飲み会の幹事をやるのが好きな人、よく任される人」には適性がありそう、とのことです。
あわせてコンテンツ制作の編集者、商品企画・管理・バイヤー、クリエイティブ・デザイナーも募集します。
藤巻百貨店の店舗があるのは、東京・神宮前。
若者や海外からの観光客で賑わう神宮前交差点から歩くこと5分。人通りが落ち着いてきたころ、オフィス併設のショップに到着する。
窓際のテーブルで話を聞かせてもらうのは、藤巻百貨店を運営する株式会社caramoの代表、中村さん。
「今度新しくYouTubeをはじめる予定で、明日が初回の撮影なんですよ」
何度も取材をしているけれど、会うたびに新しい挑戦がはじまっている。
今回のポジションも新たな試み。中村さんの右腕として動く機会が多いので、今回はお一人で話を聞くことに。
藤巻百貨店は、元伊勢丹の名物バイヤーとして知られていた故・藤巻幸大さんとともに、中村さんが立ち上げた。
メインターゲットは35〜50歳代の男性で、主な商品はバッグや財布、ファッション、日用雑貨、飲料や食品など。
日本の職人がつくる優れたプロダクトを選び抜き、写真と文章で丁寧にその魅力を伝え、販売してきた。
2012年にサイトをスタートし、2015年から株式会社caramoとして運営するように。
「今年10周年を迎える節目のタイミングなので、運営体制も含めていろいろ見直しているところなんです」
「おかげさまで業績は順調に推移しています。サービスには力を入れているので、お客さんの満足度も高い。でもうまくいっているからこそ、ピリッとしたものが足りてないんじゃないかなと、ふと思って」
ピリッとしたもの?
「業績がよくてうまく回っていると、目の前の業務を当たり前にやっていれば日々が過ぎていく。本質まで深く考えて仕事をするって、できていないんじゃないかなって」
「スタッフはみんなすごく真面目できちっとやってくれます。いいことだけど、やっぱりどこか安定してしまう。うちを選ぶお客さんはこだわりがある人たちだから、期待されているのは『もっと自分たちを楽しませてくれよ』っていうことだと思うんですよね」
お客さんの「知りたい」という気持ちや「感動」を湧き立たせられる、ワクワクするサービスづくりを徹底したい。
うまくいっている今だからこそ、あえてもう一歩上を目指し、お客さん目線でサービスを磨いていこうとしている。
そのために新たに生まれるのが、「顧客体験編成室」。
今回募集する人を旗振り役として、中村さんと、コンテンツ制作・商品企画・マーケティング・店舗など、各部署の代表者で横断的にチームが組まれる予定。
「“編成”という言葉は、テレビ局の仕事のイメージです。季節や時間帯を複合的に見て、より魅力的な番組づくりをするように、僕らもより戦略的に、統合的に、顧客体験を考えていきたい」
たとえば、サイトと実店舗の連携を強めて、Webで特集中の商品を店頭の目立つところに並べたり。
マーケティングと連携して、どのタイミングでの広報がより購買につながるかを分析して計画を立てたり。
組織が小さいころは自然に連携できていたことも、成長するにつれて部署ごとの動きが強まり、意識的につなげる必要が生まれている。
その役割を、顧客体験編成室で担っていきたい。
「0から取り組むというよりは、より鮮明に打ち出す、というイメージが近くて。今までなんとなくできていたものの枠組みをカチッと決めて、戦略的にやっていく」
「メンバーのキャパシティや実力に合わせてやることを決めるのではなく、やりたいことが先にあって、それに合わせてどんな布陣で取り組むか、という視点で企画をしていきたい。どの業務でも、うまくこなすことよりも、顧客体験を優先して考える。それを社内で浸透させていかないと、今のいい状態をキープし続けられないと思うんです」
今回入る人は、商品紹介のコンテンツづくりのような実働はない予定。データ分析やリサーチなどを重ね、「ワクワクする顧客体験」を実現するイベント・特集の企画立案や、各取り組みの進行管理を進めていくのが主な仕事になっていくそう。
社内を巻き込む仕事なので、部署ごとの状況を把握し、メンバーといいコミュニケーションをとって働きかけていくことも大切な仕事になる。
全体が見えないとむずかしそうですが、まず何からはじめるんでしょう?
「もちろん、まずはうちの会社をよく知ってもらわないといけない。各部署の仕事を学びながら、僕の右腕のようなかたちで動いてもらうのが一番早いと思います。経営者に近いポジションで、会社のサービスをトータルに構築していくことを、おもしろいと思ってもらえたらいいなと」
「でも、実はむずかしいことはあまり求めていなくて。基本に忠実にやっていけることが大事なんです」と中村さん。
「たとえば飲み会の幹事をよくやる人なら、適性があると思っていて。『今度飲み会やろうよ』『いいね』って話になっても、ちゃんと計画まで立つことってあんまりないじゃないですか」
たしかに… そうですね(笑)。
「ひと転がり目をつくるって簡単ではなくて。それが自然にできる人って、すごく貴重なんですよ」
「仕事で言えば、何か新しいことをやろうと決まったときに、『自分がやります』って率先して計画を立てて、メンバーや予算を決めて、たたき台をつくること。そこまでやったら、周りのみんなも必然的に動きますから」
幹事に限らず、気づいたら取りまとめ役になることが多いという人。気づいたことを放っておかずに改善しようと思える人。
そんな、いい意味で「おせっかいな人」なら、実務経験に関わらず求められる資質はきっと備わっているはず。
「なにか課題を見つけたときに、解決のためにこういうことができそう、という目線を持てる人だといい。お客さんに対しても社内に対しても、そういう視点で考えられることが大切だと思います」
こんなアウトプットを形にしてほしい、という具体的なイメージとして中村さんが挙げてくれたのが、「江戸切子桜祭り」。
藤巻百貨店が毎年4月に開催しているイベントで、今年で7回目を迎えた。
「毎年恒例になって、来場者数は安定しているものの、職人さんたちも社内にも慣れが出はじめていて。よりよいイベントにするために、起爆剤になる企画が今年は必要だと思いました」
中村さんが提案したことのひとつが、Webでの事前プロモーション方法のアップデート。
これまでは職人さんの紹介のみだったところを、より細分化し「この職人さんの目玉商品はこれ」と商品まで明確に伝えるコンテンツに変えた。
するとその商品を目掛けてお客さんが訪れ、売り切れが続出したという。
「来場者は例年通り3日間で4000人くらいだったんですが、売り上げが大幅に伸びました。目当ての商品がすでに売り切れだったとしても、購買意欲があるからほかの商品の購入にもつながりやすいんです」
「詳細情報まで書かなくても、ページの仕上がりには違和感は出ません。でも商品の詳細があれば、お客さんはさらに多くの情報を知れてうれしい。そういった当たり前のことを徹底して、サービスを研ぎ澄ませていけば、うちの品物はもっとよく見えるはずだと思っています」
長年働くメンバーからすると、新たなやり方を取り入れるのは大変かもしれないけれど、お客さんの視点を第一につくられたアウトプットは、成果にもつながりやすい。
今回は中村さん自身が主導したものの、将来的にはその役割を新しく入る人が担っていってくれたらうれしいそう。
顧客体験編成室の発足に加え、このタイミングで社内の評価基準も変えていきたいと中村さん。
どんな背景があるんですか?
「うちの評価制度の根幹には、『頑張って成果を出した人を正しく評価する』という考え方があります。つまり、どんどん成長し、大きな役割を担う方には、機会をどんどん与えて報酬もアップしたいと」
今回もこれまでも、藤巻百貨店では未経験者OKで採用してきた。ただ、入社して安心してしまい未経験者の雰囲気を抜け出せない人と、どんどんスキルを積んで戦力になる人に分かれていくという。
「一定の習熟期間中にしっかりとスキルを身につけてもらうことって、会社にとっても重要じゃないですか。でもそうならない人もいた。だから、その基本方針に従って会社も工夫していく。習熟を自然としてしまうような仕組みを設けるべきなんじゃないかと考えています」
イメージしているのは、「先輩」として、会社のことや仕事の進め方を伝える人を新人スタッフにつけること。
些細な社内のルールから、会社が大切にすること、顧客の正しい理解など、ナレッジをちゃんと伝えていく先輩役をつくり、会社の土台を固めていく。
新人にとってはロールモデルになるし、伝える側にとっても自分の理解が深まり、将来的にマネージャーのポジションにもスムーズに移りやすい。
「本当は上司がそうするべきなのですが、聞きづらいこともあるかもしれない。もっとラフな関係性をつくれるといいのではと考えています」
先輩役に積極的に取り組む人に対しては、報酬も連動していく仕組みにしていくそう。
「僕らのサービスは、お客さん目線と言っても単に迎合するわけじゃありません」
「お客さんの期待を上回る施策の実現と同時に、『自分たちもしてやったり!楽しかった!』って感情が動かないと、おもしろくもなんともないじゃないですか。そう感じられる人をもっと育てるための教育プログラムにしていきたいと思っています」
「お客さんがものを買おうと思ったときの最初の選択肢になりたい」と、中村さん。
同時につくり手にも、ものを売るなら藤巻百貨店がいいと思ってもらう。
お客さんとも職人さんとも、これまで培ってきたいい関係性をさらに強めていくのが、今のフェーズなのだと思います。
ガラッと大幅に変えるのではなく、より高みを目指すために土台を固め、サービスを磨き上げていく。
求められているのは、これまでの藤巻百貨店にリスペクトを持ちながら、新たな風として前向きに取り組んでいける人。
常によりよく変わり続けようという姿勢を持ち続けられることが、藤巻百貨店が成長を続けている理由なのだと思います。
(2025/05/19 取材 増田早紀)