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温泉街の奥のほう
新しい風が吹いてくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ここの植物はぼくが剪定しているんですよ。こっちはヤマボウシ、あれはフジですね。今年は咲きませんでした。足元に咲いている紫の花はミヤコワスレ、頭上はモミジです。紅葉もきれいですけど、今みたいな新緑の季節もいいですよね」

うつくしく手入れされた旅館「奥の湯」の中庭を、代表の音成(おとなり)さんと歩く。

経営者でありながら、植物の剪定もする音成さん。まかないの買い出しも、経理や労務も、なんでもやる。

新しいことにも挑戦する。

旅館の人手不足や長時間労働をなんとかしようと、3000坪の敷地を取得し、8棟のレストランからなる食の拠点「Au Kurokawa」を立ち上げ。現在はパンとコーヒーを扱うお店「Au Pan & Coffee」のみ営業していて、残る7店舗のリーシングにも奔走中。

淡々としているようで、働く人のことをよく見て、考えている。“思い立ったが吉日”とばかりに新しいことに手を伸ばしては、半ば呆れられながらも人がついてくる。

そんな音成さんと一緒に、これからの奥の湯をつくっていく人を募集します。

主に担当してもらいたいのは、奥の湯のフロント。予約管理や電話対応、チェックイン・アウト時の接客と、事務所やロビーの清掃などが日常的な仕事です。

Au Kurokawaが本格稼働しはじめれば、旅館と連携する機会も増えてきます。レストランのスタッフが急病で人手不足のときはヘルプに入ったり、芝生の手入れをしたり。

音成さんがそうであるように、いろんな仕事に携わりたい、新しいことに挑戦したいという人を求めています。

 

熊本・黒川温泉。高速の出口や空港からも離れた山のなかに、30軒の旅館が点在している。

「黒川温泉一(いち)旅館」というコンセプトのもと、バラバラだった案内看板のデザインを統一したり、黒川のすべての露天風呂に入れる「入湯手形」をつくったり。地域全体をひとつの旅館と見立てて力を合わせることで人気を集め、今では年間100万人が訪れる。

そんな黒川温泉全体を流れる田の原川の上流にひっそりと佇むのが、今回の舞台となる奥の湯。

周囲をかこむ鮮やかな新緑が心地いい。

地元を離れ、タイ・バンコクで歯科クリニックを開業していた音成さん。先代のお父さんから頼まれて、帰国したのは7年前のこと。

「家業ですし、田舎が好きなので。いつか自分が継ぐだろうとは思っていました」

「昔は人手不足とかっていうのは全然なかったんですけど、帰ってきて経理や人材管理に関わるようになって、これはきついなと。このままでは続けられない。じゃあどうしよう?と、ずっと考えてきました」

大きな課題のひとつが、食。

一泊2食付きが当たり前の旅館業界。一方で、和食の料理人は年々減り、インバウンドや若年層を中心に、宿泊スタイルは多様化している。人手不足が進むなかで夕食を提供しようと思うと、長時間労働は避けられない。

食にまつわる“当たり前”が、さまざまな課題を生んでいるんじゃないか?

そこで、旅館に泊まりつつ、食事は近隣の飲食店でとってもらう「泊食分離」ができないかと考えた音成さん。

黒川周辺には朝晩に営業している飲食店がほとんどなかったことから、8棟のレストランからなる食の拠点「Au Kurokawa」を立ち上げる

現在は第一号店の「Au Pan & Coffee」のみ営業していて、残りの7棟はリーシングを進めているところ。阿蘇名物のあか牛や地元産の野菜を扱うお店が入る予定。

このエリア全体が本格稼働しはじめると、旅館のあり方も変わるという。

「夕食はAu Kurokawaでとっていただいて、旅館でお出しするのは朝食のみにしようと思っています。旅館の仕事はフロントと清掃が主になる。早番と遅番でシフトを組めば、長時間労働も解消できます」

旅館の朝食にはAu Panのパンと、地元の食材を使ったスープやサラダなどを提供。外国人観光客だけでなく、日本人でもパン好きの人は増えているから、満足度にもつながるはず。

「なかには『和食がいい』という声があることもわかっているんですが、それを言い出すと何もできなくなるので。和食はAu Kurokawaで楽しんでいただくことにして、旅館として生き残るために、できるところから変えていかないといけません」

今回は、これからの旅館のあり方をともにつくっていく人を募集したい。

奥の湯のフロントをメインで担当しつつ、Au Kurokawaの運営にも補助的に関わる場面が出てきそう。

たとえば8棟のお店同士をつなぐイベントやマルシェの運営を手伝ったり、草刈りをしたり。Au Panのスタッフが風邪をひいて休んだときには、ヘルプに入ることも。

Au Kurokawaを専属で管理・運営する担当者はひとりいるので、その方と協力しながら足りないピースを埋めるような、柔軟な働き方ができる人を求めている。

「マルチタスクをこなしていける人。それから、決まりきっていないことを楽しめる人に来てもらいたいですね。この先どうなっていくか、ぼくも明確にはわかっていないので」

次々と新しいことに挑戦していく音成さん。決められた枠のなかで仕事をしたい人だと、一緒に働くのは大変かもしれない。

スピード感はあるものの、周りを置き去りにしているわけではない。むしろ音成さんは、一人ひとりのことをよく見ている人だと感じる。

「食材代や人件費を抑えられたら、上がった利益は従業員に還元するのが一番いいとぼくは思っていて。給料を上げて、いい人に長く働いてもらえるようにしていきたいんです」

 

そんな音成さんが信頼を寄せているひとりが、現場責任者の竹内さん。

高知県出身で、奥の湯では2017年から働いている。

「阿蘇の大観峰や外輪山、あれに一目惚れして移住してきました。旅館の仕事は、目まぐるしい毎日ではあるけれど、飽きはしないので楽しいですね」

フロントに立ちつつ、現場責任者としてマネジメントも担当している竹内さん。今回募集する人との接点も多い。

どんな流れで一日を過ごしているのか聞いてみる。

「朝出勤したら、夜間に来ている予約情報の整理と、チェックアウトの準備をします。それと並行して事務処理をしたり、チェックイン予定の方のアレルギー情報を厨房に伝達したり、朝食がはじまればヘルプに回ったり」

「チェックアウトの時間帯からお見送りをして、終わったあとは清掃。昼休憩を挟んで、チェックイン前にお部屋の確認をします。フロントに立っている間も電話やネットで予約が入ってくるので対応して、夕食の時間がある程度決まったら、厨房に伝える。デスクワークをしつつ、足も動かす仕事ですね」

Au Kurokawaが本格稼働すれば、夕食を旅館で出さなくなるため、負担は軽減される。

一方で、宿泊者の情報を各レストランとどう共有して連携していくかは今後の課題。新しい予約システムの導入や、それに伴うオペレーションの組み直しなど、考えることは山積みだ。

「本当は、マネジメントよりも接客がしたいんです。名前を覚えていただいて、『あなたに会いにきたよ』って言ってくださるリピーターさまもいらっしゃいます。お客さまと接する時間をもっと増やしたいんですよね」

これから入る人の適性や希望によっては、マネジメントや事務方の仕事を竹内さんと分担していけるといいのかもしれない。接客についてはしっかりと学べる環境があるので、未経験でも大丈夫とのこと。

どんな人と働きたいですか?

「理想は視野が広い人ですね。いろんなことをやるので、飽き性の人が来てくれるとちょうどいいかもしれません。退屈はさせないと思います(笑)」

チームで働くうえでは、報告・連絡・相談も重要。

持ち場を離れるときは、どこへ何をしに行くかを伝える。お客さんから電話を受けたら、顧客データ管理システムにいつ・誰が・どんな内容を聞いたか記録する。

お客さんに対してはもちろん、一緒に働く仲間に対しても、「これをしておいたら助かるだろうな」と想像を膨らませて動けるといい。

 

「後藤さんは頭の回転も早いし、視野も広い。インターハイレベルのバスケットボール選手だったので、その経験が活きているのかもしれません」

そう言って紹介されたのが、昨年7月に入社した後藤さん。

出身は熊本市内。自然のある場所に行くことが好きで、黒川温泉にもたまにドライブに来ていたそう。

「冬場に灯る『湯あかり』に一目惚れして。いつか黒川温泉で働きたいなって気持ちは、ずっとあったんです」

前職をやめるタイミングで見つけたのが、Au Pan立ち上げ時の求人

面接を経て、音成さんから「旅館の仕事に興味はありますか?」と声をかけられ、奥の湯で働くことに。

思っていた仕事と違うな、とは思わなかったんですか?

「たしかに違う形にはなったけど、ここでも働く楽しさは見つけられるだろうなって自信があったので。人生一度きりですし、挑戦したいと思ったんです。今となっては旅館業にはまり込んで、楽しくやらせていただいています」

以前は事務の仕事をしていて、接客は未経験からのスタートだった。

「日々学ぶことだらけです。お客さまに今話しかけていいタイミングなのか、そもそも話したいお客さまなのかな、とか。人と話すのは好きでしたけど、日常会話とは違いますし、お客さまもいろんな方がいらっしゃる。正解がないんですよね」

そんななかで指針となっているのが、先輩の竹内さんの存在。

リピーターさんのなかには、「竹内さんの電話対応がよくて通うようになったんだよ」と話す人もいるそう。

「電話一本でそこまで引きつけられるのがすごいなと思いますし、何より、仕事が大好きなんだろうなと伝わってくるんです」

「自分のなかでがんばってると思っても、もっとがんばっている人が近くにいるので、わたしももっとやりたいなって思える。お客さまをお出迎えする動き、お声がけ、表情、態度… 全部を学ばせてもらっています」

入社してまだ1年も経っていないものの、気になったことは伝えるようにしている。

たとえば、清掃のポイントについて。

「露天風呂の照明にくもの巣がついていたんです。従業員は福利厚生で毎日お風呂に入れるので、そのときに見上げたら目に入って。あれをきれいにしたら、もっといい気持ちになるだろうなと思って、すぐに言わせてもらいました」

奥の湯のスタッフはほとんどが20〜30代。入社歴にかかわらず、思ったことは言いやすい環境だそう。

新鮮な目線だからこそ、見えることもあるはず。これから入る人も、気づいたことは臆せずどんどん共有してほしい。

「1ヶ月に1回の休館日明けには、全員で集まってミーティングをします。旅館のおもてなしは全員でやっていくものなので、それぞれ思ってることが違えば、お客さまにも伝わってしまう。みんなで意識を揃えることは心がけています」

接客も、清掃も、旅館業のあり方も。

代表の音成さんをはじめ、現場のみなさんも「これからは何が必要だろう?」と模索している姿が印象に残りました。

なんでもやってみて、役割や意味合いを再定義していく。このチームの試行錯誤が風穴を少しずつ広げて、いつか黒川温泉に新しい風を吹かせるんじゃないか。そんな予感がします。

(2025/05/14 取材 中川晃輔)

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