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仕事は、自分にしっくりくるものであってほしい。
お金のため、誰かのため、自分自身の成長のため。目的はそれぞれでも、せっかくたくさんの時間を費やすのだから、自分の仕事に誇りを持ちたい。
千葉県木更津市に、そんな仕事を生み出しながら、自分自身もすこやかに働ける場所があります。

「地域作業所hana」は、精神や知的に障がいのある人たちが働く場所。
ハワイ語で“仕事”を意味する“hana”という名前には、「仕事に無理やり当てはめるのではなく、一人ひとりの個性に合わせて仕事をつくりたい」という想いが込められている。
今回は、hanaの製菓部門で働く正社員を募集します。福祉の経験や知識は問いません。
パティシエが監修した焼き菓子を利用者さんと一緒につくりながら、生産スケジュールを考え、販売まで手がける仕事です。
福祉の仕事は、過酷というイメージがあるかもしれません。
ここでは、障がいのある利用者さんも、スタッフも、“納得感を持ってきちんと稼ぐこと”が第一。負担を軽減して健全に働く環境を、日々追求しています。
hanaがあるのは千葉・木更津。
都心から東京湾をぐるっと回るように電車で向かうなら、およそ1時間半。今回は、横浜からアクアラインを渡る直行バスに乗ることに。
木更津駅から歩いて10分ほど、小学校の向かいにhanaを見つけた。
迎えてくれたのは、hanaを運営するNPO法人コミュニティワークス代表の筒井さん。

「前回取材していただいたのが9年前。ずいぶん経ちましたね…」と少し照れながらも、気さくに話をはじめてくれる。
「コロナ禍は本当に大変でした。利用者さんの働く場を守るために、補助金を活用しながら、必死で知恵を絞りましたね。幸いなことに、コロナ直前に立ち上げたお弁当の事業が大きく伸びて、支えられました。あの時期を乗り越えたからこそ、今新しい挑戦をはじめたいと考えていて」
「最近は地元での採用が中心でしたが、今回は新しい仲間と出会えたらと思っています」
hanaの始まりは19年前。
横浜で生まれ育ち、東京の大学で学んでいた筒井さんは、地域活性化のプロジェクトに誘われて木更津へ訪れることに。駅前の空きビルで、市民の起業を支援するサポートセンターを運営していた。
地域の人々と関わるなかで、障がいのある方やその家族から、相談を受ける機会があった。
「関わりのある方の息子さんが障がいを持っていて、当時は働く場がほとんどなかった。福祉の知識はありませんでしたが、この地域に仕事がないなら自分でつくりたいという想いから、hanaを立ち上げました」
以来、「私も働きたい」という声に応えるように、事業を拡大。
hanaから車で15分の「ナチュラルカフェ+ショップhanahaco」を開いたり、そこで人気だったお弁当を事業化したり。
現在では内職、製菓、縫製、カフェ、弁当の5部門を運営。内職部門では英字新聞を再利用したエコバックの作成や、お菓子の梱包作業などさまざまな仕事を生み出してきた。

「私自身、大きなビジョンがあったわけじゃないんです。その都度必要に応え、利用者さんと一緒に仕事をつくってきた感覚ですね」
筒井さんがhanaをはじめた当時、全国の就労支援施設で働く障がいのある方の工賃はとても低く、月給の全国平均は1万4000円台、時給にするとたったの190円だった。
社会制度の整備や工賃の見直しは進んでいるものの、現在でも月の全国平均は2万3000円ほど。
「障がいがあるというだけで、仕事をして稼ぐということが難しくなるなんて、おかしい。誰もが、働きたいと思った時に、当たり前に働くことができて、きちんと稼げる場があるべきだと思うんです」
「私だって、明日事故に遭って障がい者になるかもしれない。そんなとき、月2万3000円しかもらえなかったら生活なんてできない。だから、利用者さんが努力に見合った賃金を得られる仕組みをつくりたい。それが、私たちの使命です」
19年間、利用者さんの工賃向上のため、売り上げを増やす試行錯誤を続けてきた。
たとえば、製菓部門ではマザー牧場を含む卸先の開拓や、東京、大阪の百貨店での催事出店といった販路拡大。さらにカフェはお弁当の部門ではSNSを活用し、積極的に発信。地域内での認知も広がり、売り上げを伸ばすことができた。
結果、時期や部門によって、月7〜8万円を稼ぐ利用者さんも出てきたそう。
「でも、まだまだ低い。もっとできることがある」
利用者さんの賃金をさらに上げるため、製菓部門では商品開発の強化や直売店舗の開設を目指している。

「僕らスタッフの給料は、利用者さんの工賃が上がっても大きく変わるものではない。けれど、だからといって『そこそこでいい』なんて人は、ここでは合わない。一人ひとりに寄り添いながら、もっと良くしていこうと挑戦できる人と一緒に働きたいですね」
「いずれは直売店舗の立ち上げにも携われる可能性があるし、自分たちのアイデアで新しい仕事を生み出せる。それって、ワクワクすることだと思います」
今回の募集は、製菓部門の正社員。今は製菓部門のマネジメントの役割を筒井さんが担っている。
「最初は私と一緒に仕事を覚えてもらい、徐々に利用者さんのサポートやスケジュール管理を引き継いでいってほしい。パートさんや正社員同士の連携も心強いから、未経験でも安心して飛び込んでほしいですね」
筒井さんに案内され、1階の厨房を見学させてくれることに。

この日は、スペインの伝統菓子である「ポルボローネ」というお菓子をつくっている。
壁には、イラストや文字で書かれたレシピや工程表が貼られていて、作業しやすい工夫が厨房のあちこちに感じられる。

厨房では、3人の利用者さんが作業に励んでいる。ある人はバターを四角に切り、デジタルスケールで丁寧に計量。別の人は生地をコロコロと丸め、成形している。
利用者さんのそばで進捗を確認したり、「次はこれお願いね」と声をかけたりしているのは、パートの芹口さん。人によって声のかけ方も工夫しているように見える。

芹口さんは、hanaに来て3年半。
「前職は介護士でやりがいはあったけど、人の命を預かる責任や体の負担が大きくて。福祉の仕事は続けたいと思っていたところ、ネットでhanaのお仕事を見つけたんです。『一人ひとりに合わせた仕事をつくる』という考えに惹かれて、電話をかけました」
「採用されてから今日までは、あっという間で。なんだか、もっと長くいるような気持ち。いろんな経験ができるし、スタッフも利用者さんもみんな優しいんです。毎日色々ありますが、その都度周りの方たちがフォローしてくれて、乗り越えてこれたので、辞めたいと思ったことはないですね」
1日の仕事は、9時から始まる。利用者さんが来る前の1時間で、厨房の掃除や道具の準備、作業の段取りを整える。
10時から利用者さんが加わり、納品などのスケジュールに基づいて作業を割り振る。15時ごろから片付けや検品を始め、16時にすべての作業を終える。利用者さんが退勤したあと、スタッフは残りの時間で事務作業や終礼をして帰る。
「早めに進むと時間に余裕ができるけど、だらだらすると残業になっちゃう。利用者さんが定時に気持ちよく帰れるよう、先を見ながら調整しています」
「頭をフル回転させて、『これが終わったら、こっちの作業をお願いしよう』って、パズルを組み立てるような。気づいたら『もう16時!』って、あっという間に過ぎますね」
利用者さんとのコミュニケーションに加え、資材管理や卸先の業者とのやりとりもこなす。マルチタスクが求められるけれど、先を読みながら動くのが好きな人には、きっと楽しいと思う。

「予想外のことも起きますよ。つまみ食いしちゃう人もいれば、気が進まないのか仕事が手につかない日もある。そんなときは急かすことはせず、ゆっくり声をかけて。その人のペースに合わせると、だんだん仕事がスムーズに進むんです」
「ささいなことで利用者さん同士が言い合いになることもあるけど、そんなときはほかのスタッフにすぐ相談。チームで支え合えるから安心です」
伝え方には気をつけながら、時間をかけて関係性を築くことが何より大切だと感じている。
「急にお互いが慣れることはありません。障がいの有無に関係なく、人と向き合うって、時間をかけて一つひとつ積み重ねていくものだと思うんです」
ときには、家庭の話や最近の出来事をたくさん話したい利用者さんも。
「聞いてもらうだけでうれしいみたい。『お父さんがね』とか、楽しそうに話してくれるんですよ」
「『明日いないの?』とか言われると、ちょっとしたことだけどうれしいですね。私としては、利用者さんが元気に仕事に来て、怪我なく、嫌な思いせずに帰ってくれれば、それで幸せなんです」
最後に内職部門で正社員として働いている小幡さんに話を聞くことに。
hanaで働きはじめて、6年目。社員さんのなかでは、長くて10年を超えて働く人もいて、小幡さんはもっとも若手にあたるそう。

新卒で、横浜の社会福祉法人に就職。2年間、主に重度の知的障がい者を支援するグループホームや入所施設で働くことに。
次第に、夜勤を含む負担の大きい業務や生活との両立がむずかしくなり、地元に戻ることを決意。次の仕事を探していたときに、hanaのホームページやSNSが目に留まった。
「ホームページがすごくおしゃれだなって。Instagramもちゃんと更新されていて、写真も素敵で。すぐに電話で問い合わせをして、ご縁をいただけました」
採用前には、施設を見学。筒井さんが車で案内してくれて、hanaだけでなく、カフェや弁当部門の事業所を全部見せてもらったことも、安心材料だったという。

「利用者さん一人ひとりが、ちゃんとプライドを持って仕事に取り組んでいる。クセが強いというか、おしゃべりが好きな人が多くて。会話しながら仕事ができるのが、今までの職場にはなかった楽しさですね」
大変だなと感じることはありますか?
「hanaの利用者さんは、20代から70代まで幅広い。なかには仕事経験者もいれば、ここではじめて働く人もいる。言葉に敏感な方が多くて、ときには、ちょっとした一言で落ち込んで休んでしまうこともある。利用者さんにかける言葉にはすごく気をつけています」
「対等な仕事仲間としてときには厳しいことも言うけれど、『ありがとう、助かってるよ』『シール1枚でも、積み重ねることで仕事やお金につながっている』など、感謝や働きがいを実感できる言葉を伝えて、前向きに働けるように心がけています」
スタッフの残業は長くても1時間くらいで、きちんと定時で帰る。その秘訣は、スタッフ同士のチームワークだ。

「役割分担がうまくできていて、困ったときは『大丈夫?』と声をかけてもらえる。逆にほかのスタッフが苦手な部分は私が引き受けたり、みんなで協力して進めています」
「終礼では、利用者さんの様子を話したり、大変なことも共有したり。相談しやすい雰囲気が、働きやすさにつながっています。これから入る方も、困ったことがあればなんでも相談してほしいです」
障がいのあるなしに関わらず、誰もが誇りを持って働ける社会を目指す。
ここでは、利用者さんとスタッフが同じ目標に向かい、納得感を大切に日々を積み重ねています。
興味が湧いたらぜひ話を聞いてみてほしいです。自由であたたかい空気のなか、hanaのみなさんが迎えてくれるはずです。
(2025/07/28 取材 田辺宏太)


