1日に取り入れる水分よりも、呼吸で取り込む空気のほうが、ずっと重くて量も多い。
食べものや水にこだわるように、毎日を過ごす場所の空気も健やかで、心地いいものであってほしい。
株式会社天然住宅は、住む人にも環境にもやさしい、自然素材の家づくりを提案してきました。
床材や柱、建具など、目に見えないところも含めて100%国産の無垢材を使用。さらに、断熱材に羊毛、接着剤には米のりなど、有害化学物質をできるだけ使わないのも特徴的です。

今年の3月、東京・立川に地域と繋がる新しいオフィスが完成しました。
「自然素材の循環する建築を、もっと当たり前にしていきたい」
そのビジョンをともに形にする、設計職のメンバーを募集します。
木造住宅の設計業務に3年以上経験がある人が望ましいです。
これまでの経験を活かして、人も森も守る建築にチャレンジしてみたい。そんな人ならぴったりの場所だと思います。
西武新宿線の武蔵砂川駅から住宅街を歩いて7分ほど。
T字路の角にある黒色の開放的な一軒家が、今年の3月に完成した新しい事務所。
周りには植物がのびのびと生えている。外観の写真を撮っていると、ご近所さんらしき人が植物を眺める姿も。

中は吹き抜けの空間。大きな窓から陽が差し込み、ふんわりとやさしい木の香りに包まれる。
「合板を使っていないので、いわゆる新築の匂いがしないんです。入ったときに、木のいい香りがするとか気持ちいいとか、自然と受けとれる心地よさがあると思います」
代表の田中さんも自然体でやわらかな雰囲気を持つ方。1階のダイニングで話を聞く。

「庭で野菜を育てたり、今後は、ペレットストーブや太陽光パネルを設置したり。持続可能な暮らしを体現する場所になったらいいなと思っています」
「新しい事務所ができて、天然住宅の第2章が始まったなと。ここから新たにチャレンジしていきたいですね」
天然住宅のはじまりは2008年。建材によるシックハウス症候群が深刻な社会問題になっていた当時、田中さんのお父さんが一般社団法人として立ち上げた。

広告業界などを経て入社した田中さんは、2019年に株式会社に組織変更するタイミングで代表を引き継ぐ。
「『森を守って健康長持ち』というこだわりは、創業から変わっていなくて。日本の森林の多くが、使われずに荒れ放題になっているんです」
「森を守るために、木を適切に使う。そのインパクトが最も大きいのが、住宅建築。だからこそ、山のそばよりも、暮らしに近い街の中に拠点を構える意味があると思っています」
国産材であることはもちろん、森を健康に保つため、宮城県の栗駒などの林産地と直接つながり、適切な価格で木材を仕入れている。
希望する施主がいれば一緒に山へのぼり、自分の家の柱になる木の伐採を体験してもらうこともあるという。

「目の前にある木を伐って、それが自分の家の梁や柱になる。お客さんは喜んでくれますし、山の実態を知ることで木に対する眼差しが変わります。愛着も満足度も、違うものになるんです」
山と街をつないできた天然住宅。昨年、この先10年のビジョンとして『自然素材の循環する建築を、もっと当たり前のものにしていきたい』と掲げた。
「これからは建築の棟数自体を増やして、社会へのインパクトを広げていきたい。新オフィスのあるこの多摩エリアの地場産材を使ったり、地域の人を呼んでイベントを開いたりと、地域に根ざすことにも挑戦していきたいです」
「僕らは、持続可能な暮らしを体現しているけれど、強制したいわけではない。天然住宅の建築を通して、お客さんもスタッフもその人らしい生活をしてほしくて。そこに共感してくれる人と一緒に働きたいですね」
設計チームは現在3名。前身の会社から長年チームを支えてきたのが小野寺さん。

新卒でアトリエ事務所に入社し、公共施設などの設計をしていたものの、労働環境が合わず転職先を探すことに。
もっと自分が納得する働き方や、社会に貢献できるような仕事を探して出会ったのが、天然住宅の前身となる設計事務所だった。
天然住宅の設計は、最初から最後までお客さんと直接やり取りを重ねるため、個人の裁量は大きい。
「一般的な住宅だと、数え切れないくらいのビニールクロスから選ぶ必要がある。でも、天然住宅で扱う素材は厳選されているので、選択の迷いは少なくて。お客さんも天然住宅の考えにリスペクトをしてくれるので、こちらも期待に応えたくなるんです」
印象に残っていると紹介してくれたのが、5年ほど前に担当した東京・葛飾のフルオーダー住宅。
通常3ヶ月〜半年ほどの設計期間を、約2年かけて形にしていった。

「ご依頼主は、季節ごとに飾るものを変えるほど掛け軸がお好きな方で。『颯爽とした和室のある家をつくりたい』とご依頼いただいたんです」
颯爽とした和室、ですか。
「おもしろい表現だなって僕も思ったんです。どんなものなのか、ヒアリングを重ねて、図面に落とし込んでいって」
完成したのが、大開口の窓が特徴的な和室。大きな装飾があるわけではないシンプルなデザイン。でも凛とした存在感がある。
床の間にある床柱は、香節(こぶし)丸太という古くから数寄屋づくりを表現する木材のひとつで、お客さんと一緒に選びに行ったものを使用。

設計をすり合わせていくなかで、和室は8畳にすることや、玄関の位置など、お客さんの譲れない部分もあった。用途や構造的に問題がないかを確認しながら、一つひとつおさめていった。
「深く信頼してもらっているぶん、『任せるよ』と言っていただけるところも多くて。鬼瓦のデザインまでさせてもらったんです」
「時間がかかった理由は、一緒に過ごす時間が楽しかったというのもあるかもしれないですね(笑)」

設計の仕事は、図面を描くだけでなく、法規の確認申請、施工担当や職人さんとの金額のすり合わせ、タイトな決済スケジュールへの対応など、マルチタスクも多い。基本的に定時であがることができるけど、決算月などは残業が発生することも。
また、全体で12人という小さな規模感のため、部署を横断して仕事を進めることもあるという。
「社内に施工管理も営業もいるので相談はしやすい環境だと思います。新しく来てくれる方は、私の下に付くというよりは、お互いに高め合える仲間でありたいですね」
「天然住宅は社会に必要な会社だと思っています。だからこそ絶対に潰れちゃいけないし、今の社会のルールのなかで、しっかり売上を立てていく必要がある。責任感を持てる方と働けたらうれしいです」
もう一人の設計メンバーの神山(こうやま)さんは、もともとオフィス内装の会社や工務店で働いていた方。

入社前は「国産材や合板不使用の家は、価格が高い」というイメージがあった。
ところが栗駒の山を訪れたことで、認識が変わる。
「山に、使われない木が山積みにされて捨てられている現実を目の当たりにして、衝撃を受けました。価格が高い理由、そしてなぜ私たちがこの木を使わなければいけないのか、その本質に目を向けられたことは良かったですね」
居心地のいい家づくりはもちろんのこと、森に対してできることは何かを考えて働く。
今年引き渡した、神奈川・相模原の個人住宅のエピソードを教えてくれた。
「特殊伐採をされている方で、『地元の森林組合と付き合いがあるから、地域の木材を使って家を建てられないか』とご相談をいただいたんです」
「丸太の柱をリビングに立てたり、外観のデザインにガルバリウム鋼板の赤色を入れてツートーンにしたり。『ここで、この素材を使って建てたい』という想いに寄り添えるのは、うれしかったですね」

当時はオフィスが完成していなかったため、お客さんの自宅へ何度も足を運び、打ち合わせを重ねた。予算や構造の制約のなかで、夢と現実の折り合いをつけるむずかしさは常に伴う。
「私の意見を押し付けるのではなく、住まわれるのはお客さん。その方が一番気持ちよく暮らせる選択ができるように、後押しをする。簡単ではないですが、だからこそやりがいがありましたね」

その眼差しは社内にも向けられている。
「会社がもっと良くなるために、天然住宅を多くの人に知ってもらうために、自分に何ができるか。そういうベクトルを向けている人が多いので、同じ気持ちで動ける方が合うと思います」
たとえば、毎年4月に代々木公園で開催される「アースデイ」への出展。建築現場で出た端材を活用し、子どもたちが自由に木工を楽しめるイベントの企画・運営を、部署の垣根を越えて全員で行っている。
「ここでの働き方は、自分の暮らしの延長線上にある感覚なんです。事務所の植物の手入れをしたり、備品を整えたり、掃除をひとつするのにも気分が上がって」
「以前は仕事とプライベートをきっちり分けたいタイプだったのですが、今は気持ちをフラットに、過ごす時間そのものを楽しくしたいと思うようになりました」
天然住宅では、リモートワークも可能。新オフィスができてからは、出社することも増えた。
何か相談したいときは、メンバーが揃う日に出社したり、月に2〜3回のミーティングのときに聞いたり。逆に誰もいない日は集中して作業するなど。裁量を持って働き方を調整している。
「記事で天然住宅のことを知ったとき、『自分の暮らしが整っていないと、お客さまに対して良い提案はできない。自分の生活が豊かな人ほど、豊かな提案ができる』という言葉に惹かれて」
「いまもお庭の畑で野菜育てたいと言えば、やらせてもらえているんです。ちょっとしたアイデアも口にすれば、『いいじゃん、やってみようよ』とすぐに背中を押してもらえる。社風はいいですね」

家の基となる木は、長い時間をかけて材として育つ。その材を使って、手がけた家が100年後も残っていく。
健やかな空気をつくること。森の循環の一部になること。その人らしい住まいを実現すること。どれも責任感がありながら、天然住宅のメンバーのやわらかい笑顔が印象的でした。
誇りを持って自分の仕事だと言える、そう感じながら働ける環境だと思います。
地に足をつけながら、目指したい社会をつくっていきませんか。
(2026/06/18 取材 大津恵理子)


