第2回「地域の欲しいパンをつくる」

tikugo_1_2

こんにちは。日本仕事百貨のナカムラケンタです。

九州は福岡県。その南に位置する筑後(ちくご)で暮らす人たちに、「移住」のお話を聞いています。

今回は第2回目です。

color_botan_01color_botan_02
color_botan_03color_botan_04
color_botan_05color_botan_06

前回に引き続き、「モナパン」というパン屋さんを営む吉岡夫妻に話を伺います。

とにかく自分のパンが焼きたい、という思いから、縁あって移りすむことになったお二人。今回は移住してからのお話です。

tikugo_line

―どんなパン屋さんをつくろうと思っていたんですか?

吉岡亮次さん(以下、亮次さん) こういう田舎だと、ちょこっとだけパンを焼いて提供する、というお店があると思うんです。

monapan05

―本当に自分の売りたいものだけを、自分のペースで提供しているような。

亮次さん そうですね。自分もはじめはそんな風に考えていたんです。けどそうはなれなくて。お客さんがアレ食べたい、コレ食べたいって言うんです。それを吸収して自分なりにアレンジしていったらどんどん種類が増えちゃって。でもそのおかげでお客さんに来て頂いていると思います。

あとはちょこっとだけ自分の好きなパンを提供するくらいだったら一人でもできると思うんですけど、うちは人を雇っているんですね。その分、売上げも必要なんです。でも一緒に働く人がいてよかったなあ、と思っています。

―よかったんですね。

亮次さん そうなんです。従業員さんからたくさん学ぶんです。たとえば接客ですね。大手とか都会のお店では得られないことを教えてもらいました。

monapan06

―たとえばどんなことですか?具体的に教えてください。

亮次さん 挨拶するときに「いらっしゃいませ、こんにちは」と「こんにちは、いらっしゃいませー」ってちょっと違うんですよね。入ってきたときに「こんにちは」から入ると返事をくれたりとか。

上手になってくると、サラリーマンがお昼ごはんに来ているときは「お疲れさま」とか、使い分けが上手。家庭をちゃんとされている人なんでしょうね。

―地域と人、そして美味しいパンがうまく融合しているようです。コミュニケーションから生まれたメニューもありますか?

吉岡麻衣さん(以下、麻衣さん) ありますよ。あんドーナツ、それに塩バターフランスが人気ですね。

monapan07

亮次さん もともとサンドイッチもやるつもりなかったですもん。うちはパン屋だって。けどやってみたら、調理パンないの?ってお客さんが来てくれて。

「こんなものをつくってほしいんやけど」って言ったときに「無理です」って言ったら、すごい残念そうな顔をする。こっちも人が少ないので、何でもかんでもつくれない。でも、やっぱりお客さんの喜ぶ顔が見たい。

―このあたりは福岡市内などからも、カフェ巡りをするような人たちが訪れるようなんですけど、地元のお客さんとの割合ってどれくらいでしょうか?

亮次さん 半々くらい。結構外の人も多かったりするんですけど、平日は地元の人のほうが多いですよ。はじめは外から来る人も少なかったですけど、雑誌にのるようになって増えましたね。

麻衣さん 地域のいろんな年代の経営者の人たちと出会って話をすると熱い思いを持っているんです。うきはを盛り上げたいと思っている人たちが多いんですね。そこに救われたところがある。みんなで力を合わせればなんとか盛り上がるかなって思いました。

亮次さん 個々のお店がお客を抱えていると思うんです。それぞれが頑張れば、自ずと地域にも人は増えてくる。

monapan08

―地元のお客さんはどんな方々がいらっしゃるんですか?

麻衣さん 夕方になると、お向かいのお母さんとか。散歩がてらにお年寄りが来たり。あとはOLさんのランチとか。すべての年代が来てくださる。パンの種類が多いし、地元の声を聞いて幅広くやっているから、誰が来てもお目当ての物が見つかるようです。

亮次さん カレーパンも人気ですよ。

麻衣さん 地元の人は入ってすぐに「カレー」って頼んで揚げているうちに選んで、お会計と同時に揚げたてを渡したりしています。一番人気はラスクなんですよ。ラスク屋さんにすれば?って言われることもあるけど、それは絶対嫌だって(笑)。

亮次さん 自分としてはハード系のものも売りたいんですけど、地元の方にも召し上がっていただくには食べ方をきちんと提供しないとダメなんです。外はかりっとしていて、中はもちっとしている。トーストするとさくっと歯切れがいい。試食いただくとわかるんですけどね。

monapan09

―これから地域に移住してみたい、という方に何か話したいことはありますか?

亮次さん まずは飛び込んできて欲しい。そして、孤独にならないように。自分を過度にアピールするということとは違うのですけど、コミュニケーションが大切ですね。たとえばこっちの人は筑後川と耳納連山が宝物なんですよ。この街に住んでいる人はこの街が好きで。まずはそれをちゃんと聞いてみたり。

元気計画さんのところから来てもらえれば、いろいろ紹介してもらえるんでしょうし。近所のおばちゃんでもいいから挨拶するところから始めて、まずは顔を覚えてもらって。田舎って広がるのが早いので、一週間経ったら全員知っていたり。

―噂話とか広まりそうですね。

麻衣さん ちょっと大変なこともあるけれども、それで助かっている部分もあります。そうしないとやっていけない思いもある。うちも「通信」とかを出しているんですね。

―通信?

麻衣さん 家族のこととか、パンへの思いとか母がまとめてくれて。プライベートなことも噂になる前に先に通信で言っちゃいます。

monapan12

亮次さん 毎月発行しているんですよ、月はじめに。これ目当てに来てくれる人もいる。おかあさん、わりとうるっとさせるのが上手なんですよ。本読むのが好きでね。はじめは僕が書いていると思われて「文才があるね」と言われているけど(笑) たしかに「ぼくが」って書いているし。おかあさんに代筆してもらっている、ってことなんでしょうね。

ほかのパン屋にもそういうものがあるけど、ほとんど店のことだったりする。うちのは逆で、店のこと2割、家族のこと8割。だから飽きないんですよね。

あとはとにかく派手なことはせんようにしとこうと思っています。けど1回だけ1周年、っていうのをしちゃった。

―1周年記念のイベント、だめなんですか?

麻衣さん たくさん来てくださったんですけどね。こそっとやるほうがいいかもしれませんね。

亮次さん やれる範囲で来てくれるお客さんを大事にする事が大切なんです。いろんなところからお客さんにいっぱい来てもらえるのがいいと思っていたけど、長く地元の人にも愛されるお店になりたい。顔が見えるような。

―顔が見える。

亮次さん まずは目の前のことを大切にしている。周りばかり見たら大変。

monapan11

―いい人たちが住んでいる地域なんでしょうね。ここでの暮らしはどうですか?

亮次さん あんまり無駄遣いせんかもしれないです。買い物しなくなったかも。でも横のつながりでちょこちょこ外食するようになった。来てくれたら、今度はこちらから行く、みたいな。でもそういうことは無駄じゃない。

麻衣さん 医療と教育が十分ではないかもしれません。でも教育とか、自分でよくしていけばいいなと思っています。

あとは足を伸ばすことに慣れないといけないなと思っている。久留米とか行くにも時間かかっちゃうから。そういうのを苦にせずどこかに行くことに慣れないといけないなと思います。

亮次さん 盆地なので、夏は湿度が高くてこもっている。冬は雪が降ることもある。この街の人にとっては愛すべきことなのでしょうけど。

外から来たぼくらにとって愛すべき街になるには、まずは友達をつくることが先決だと思うんですよ。友達ができて楽しくなってから、愛すべき街になるのかな。もちろん商売も大事なのだけど。やっぱり人とつながることが街を好きになるカギかな。

あと、ラーメンがおいしいですよ(笑)

tikugo_line

今は地域で素敵なお店をはじめたい人が増えていると思う。家賃や生活費が安いから、じっくりと自分のやりたいことが着実に実現できるということもあるのかもしれない。インターネットもあるから、人を遠くから呼びやすくなったこともあると思う。

でもいろいろな地域を訪れて感じることは、うまくいっているお店は、地域との関わりがしっかりしていると思います。それはお客さんとのつながりもあるし、同業者とも仲がいい。これが基本になっている。

だから移住してみたかったら、「土地」を訪ねるとともに「人」とつながるのがいいのかもしれません。「人」で選ぶ移住です。まずはそこからはじめてみるのがいいと思いますよ。

tikugo_line

モナパンのお二人と別れて、今度は筑後川を少し下流に向かいました。目的地は田主丸。一度は地元を離れたけれども戻ってきて、酒蔵とワイナリーを営んでいる若竹屋の林田さんを訪ねます。

icon_maeicon_tsugi

ちくごを歩いて感じたこと、そして日本中で出会った生き方・働き方を共有する時間を福岡でつくることになりました。もし地域で働くことに興味がある方がいらっしゃったらぜひいらしてください。参加者同士が出会い、話をする時間もあります。

1月13日(祝・月)福岡天神にて開催「いま、ローカルで働く」

imalocaldehataraku

1日時
 平成26年1月13日(月曜日・祝日) 14時~17時(13時半受付開始)

2会場
 アクロス福岡 円形ホール(福岡市中央区天神1丁目1番1号)

3入場料
 無料 ※事前の参加申込が必要です。

4定員
 100名

5内容
 第1部 講演  14時~15時
 『テーマ:生きるように働くということ』
 講師;ナカムラケンタ氏((株)シゴトヒト代表取締役)

 第2部 パネルディスカッション 15時10分 ~ 16時10分
 『テーマ:ローカルで働く・暮らす』
 ファシリテーター;江副直樹氏(ブンボ(株)代表取締役)
 パネラー;ナカムラケンタ氏 他  

 第3部 みんなのローカル談義 16時20分~17時
 『テーマ:ローカルの現実を知る/リアル田舎暮らし大解剖』

6参加方法
 【インターネット】
 下記入力フォームにお進みください。
 申込画面

 【ファックス】
 FAX申込フォームに記載のうえ、FAX 092-643-3164筑後田園都市推進評議会事務局(福岡県広域地域振興課)までお送りください。
 FAX申込フォーム
 ※電話・Email等での参加申込は出来ません。

7応募締切
 平成26年1月10日(金) 17時まで

8お問い合わせ
 筑後田園都市推進評議会事務局 (福岡県広域地域振興課)
 電話:092-643-3177
 FAX:092-643-3164
 Eメール:koiki@pref.fukuoka.lg.jp