第6回「移住しなきゃわからないこと」

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こんにちは。日本仕事百貨のナカムラケンタです。いよいよ最終回。

前回に引き続いて福岡県内から筑後(ちくご)に移住した川口さん夫婦のお話を聞きます。もともと映像会社に勤めていた二人。

今回はテカラという雑貨屋さんをオープンし、見知らぬ土地での暮らしがはじってからのお話です。

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―うきはに暮らすことになって、家を見つけて。自分たちの手で改装して、住みはじめてどうでしたか?想像と違っていたこともありそうですけど。

川口竜也さん(以下、竜也さん) はじめに感じたのは「地域の人たち」のことですね。

全く知らない土地じゃないですか。だから、最初は細々と暮らすのかな、と思っていました。そしたら改装しているときから周りの方がけっこう来てくれる。興味を持たれて、野菜とかお米を持ってきてくれたり。すごい不安はあったんですけど、とても良くしてもらった。

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竜也さん 今まで実家で暮らしていたときは、家事とかご近所付き合いって、親がやっていたんですよ。今こうやって自分たちが住むと、村の「出ごと」とか自分で行くことになる。

―出ごと?

竜也さん 清掃活動とか。溝さらいとか。今までそういうことやったことなかったけど、大切なんだな、って思いました。コミュニケーションの場だから。村の祭りにも参加しました。自分たちがいるのは千代久区で。その中でまた分かれていて、全部で七組あって、ここは七組なんです。

―七組の中に何軒あるんですか?

竜也さん うちを含めて13戸。移住してきたときがちょうど担当のときでした。

―担当?

竜也さん 世話人みたいな感じになるんですよ。たとえば清掃活動などがあるときに会計報告したり、神社を開けて準備しておいたり。祭りのときには「しめ縄」つくったり、土俵つくったり。子どもが相撲取るからね。やること多いですよ。引越してからすぐに担当だったから、「大変なときに来たね~」って言われた。

―それは大変そうです。

竜也さん 今思えばすごく楽しかったですよ。まず「村入り」っていうのがあるんです。神社の前で挨拶してね。そのときは大変だな、と思っていたけど、最近は村の出ごとが楽しくて。終わってから地域の方とお酒飲んだりしてね。

消防団とかもありますよ。ポンプの使い方とか訓練する。消防の大会もあるんです。消火活動には、現場にかけつけて火を消す一連の作法みたいなのがあって。

―作法ですか。

竜也さん ほんと茶道みたいな。決まった型があって。ホースの持ち方にしても、ホースを広げる動作とかもすごく細かく決められていて、大会が近づくと週1で練習ありますよ。

―みなさん、年齢は高いのですか?

竜也さん そうですね。若い方でも10歳くらい上で。同世代はまずいない。みなさん、いろいろなことを知っていらっしゃるから、野菜をはじめたらおばあちゃんに教えていただくこともありますよ。この奥に畑があるんですよ。“ハタケブ”というのもつくっていて。

―ハタケブ??

竜也さん はじめ、ひとりだと畑の管理に手が回らなかったんですよ。やりたい!という人もいたので、“畑部”を結成したんです。自分たちで食べるにも多いから、お客さんや友だちに分けたり、ベーグルと交換してもらったりしていますよ。

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川口美香さん(以下、美香さん) ここは横のつながりが濃いです。移住してきている人も多いし、ピンポイントでいい人とつながっているのかもしれないけれど。

柳川に嫁いで5年間住んでいましたが、その5年間でできた友達よりもこっちに来て1年目でできた友達の数のほうがはるかに多くて付き合いも深い。そういう土地柄なのかな、って思います。

―移住するときにネックになるのが、知り合いがいないことですよね。でも誰でもうきはに住んだら友だちが増えるんでしょうか。

美香さん 私たちは、お店をやっている、ということもあるかもしれない。知らない人でもオープンに受け入れる空間を持っているのは大きいです。

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美香さん お客さんとお店の人の関係でしかないこともあるし、発展して友だちになることも。出会ってすぐに遊びに行くことになったり。

―話しかけやすいんですかね。

竜也さん ぼくは人見知りなんですよ。おかげさまで本当に多くの人に出会ってよくしてもらってて。まさかこうなるなんて想像もしてなかった。

美香さん やっぱり一人じゃできないことばかりですし。自分の中であれやりたい、これやりたい、って思いつくこともいっぱいあって。

畑部もそうなんですけど、駅伝部もつくったり。はじめはホノルルマラソン見ていて、自分も走ってみたい、というのがきっかけなんです。それで走りはじめたら、お客さんから「近くで毎年駅伝やってるよ」って教えて下さって。ほかにも「うちの妹が陸上部で走っていたから話しとくよ」とか。

そうしてメンバーが増えていって、駅伝にも2回参加しました。その中で結婚したり、引越した人もいたので、今はまたひとりなんですけど。(笑)また走る人、募集したいな。

竜也さん でもこの前そういう話したら、メンバー増えそうですよ。ここは思ったことが実現できる場所なのかな。

―思ったことが実現できる場所。

美香さん できる人がどこかにいる。「アースデイやりたい!」って2年前に言ったら、「東京のアースデイでスタッフやってた人いるよー」とか。やりたい、っていうと経験のある人だとか、それをスキルとして持っている方と出会えたり、紹介してもらえたり。さらに人を巻き込みながらやっていくと、自然に知り合いが増えていく。

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―お金を産まない仕事も含めて、働くことは地域の大切なコミュニケーションなんですね。でも手を挙げるとやること増えちゃいますよ。大変じゃないですか。

美香さん 面倒なことになりそう、と思う人はいないのかもしれませんね。

―はじめはちょっと強制的に出ごとなどに参加されるのだろうけれど、それがいいのかもしれない。半信半疑ではじめてみると楽しい。楽しいからまたやろう、って思うのかも。

美香さん たしかに楽しいですね。

竜也さん 今やりたいことをやっている。理想の生活になってるんじゃないかな。

僕はカレーがすごく好きで。つくるのも好きなんですよ。スパイスから。一人で本読みながらつくっていて。九州ちくご元気計画の講演でカレー番長という方がいらっしゃったんです。そしたらその方とお仕事できることになったり、ぼくのカレー好きが広まって、みんなで一緒につくることになったり。

お米つくっている方、野菜つくっている方、ワインのソムリエの方… そういう人の集まりでつくるカレーってすごく楽しかった。カレーの会みたいな感じで今もどんどん広まってる。本当に楽しいんですね。場所も公民館を借りればいいし、どこでもはじめることができるから。

―思い立ったらはじめることができる。場所とか、人とか、資源とか、あるんですね。

竜也さん あると思う。できないことなんてないんじゃないのかな、って。

―逆に都市には人が多いのに、そういうつながりが希薄な気がします。

竜也さん つながりが深いと思う。たとえば、この辺りのお店は、どこもDMがたくさん並んでいるんですよ。でも、都会に行くとちょこっとしか置いてなかったりするでしょ。

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竜也さん それって「何でだろう?」って思ったら、街の人から言うと、他の店はライバル、よそ者は置いたらダメ、っていうのがあるみたいで。逆にこっちは他のお店のものだったり、生産者のリーフレットとかがたくさんあるので、そういうのを見ると田舎は横の繋がりを大切にされてるのかな、って。

今うちでマップをつくっていて。移住してきたときからお客さんに「この辺りでほかに良いとこないですか?」ってよく質問されるんです。だから手書きで簡単に地図をつくって。それが今は形になってきて、色んなお店を掲載させて頂いている。Vol.5になりました。

そしたら「コピーさせてください」ってなるんですよ。だからちゃんとつくろうと思って。それで1万部印刷しようと思ったら「うちもやりたい」「うちも1口出す」って、みなさんから印刷費が集まってくる。掲載されてないところも手を挙げてくれて。「10口出すよ」とか。

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竜也さん そういう小さな幸せというか楽しさが積み重なってきて、もっと色々とやりたいな、って。何かやれば、また返ってくるからね。お金もなんとかなっている。選ばなければ、仕事もありますよ。

―やっていて楽しいし、ちゃんと返ってきたから、損得を考えなくなる。いい予感がしてきますね。もし移住しようか迷っている人がいたら、どんなことを話しますか?

美香さん 私は何でもだけど、飛び込んでみないと見えてこないことってたくさんあると思う。やってみて失敗してダメだったら帰ればいいので、まずは来てみる!のが良いのかな。色んな人が「良いよ」って言っても、決断するのはその人自身じゃないですか。いつでも帰ろうと思えば帰れるし、やり直そうと思えばやり直せると思うから、まずやってみるのが一番良いんじゃないかと。

竜也さん あとは移住する前に色んな人と会ってみる。お店に行って、ちょっと話聞いてみたりだとか。世間話でもして。自分たちも自分たちから話しかけるほうではないけど、話かけられるから心をどんどん開いていってる自分がいる。やっぱり人かなあ。

あとね。耳納連山が良いんですよ。守られているというか。仕事で遠くに行って高速で帰ってきたときに見えてくると、最近ほっとするようになりました。

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テカラをあとにして、まだ少し時間があったので小嶋さんと周辺を少しドライブしてみた。連れてきてもらったのは「みのう山荘」。耳納連山の中腹にある日帰り温泉。

露天風呂に入ると、ちくごが見渡せた。いいなあ。はじめて訪れた場所なのに、なんだかより身近に感じる。ここで住んでいる人たちのことを知ったからかな。

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移住しようと考えていたら、まずは「人」に会ってみるのがいいと思うんです。だから気になるところがあったら、ぜひ訪ねてみてください。そしてお店などに入って、声をかけてみてください。きっと話してくれると思いますよ。

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ちくごを歩いて感じたこと、そして日本中で出会った生き方・働き方を共有する時間を福岡でつくることになりました。もし地域で働くことに興味がある方がいらっしゃったらぜひいらしてください。参加者同士が出会い、話をする時間もあります。

1月13日(祝・月)福岡天神にて開催「いま、ローカルで働く」

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1日時
 平成26年1月13日(月曜日・祝日) 14時~17時(13時半受付開始)

2会場
 アクロス福岡 円形ホール(福岡市中央区天神1丁目1番1号)

3入場料
 無料 ※事前の参加申込が必要です。

4定員
 100名

5内容
 第1部 講演  14時~15時
 『テーマ:生きるように働くということ』
 講師;ナカムラケンタ氏((株)シゴトヒト代表取締役)

 第2部 パネルディスカッション 15時10分 ~ 16時10分
 『テーマ:ローカルで働く・暮らす』
 ファシリテーター;江副直樹氏(ブンボ(株)代表取締役)
 パネラー;ナカムラケンタ氏 他  

 第3部 みんなのローカル談義 16時20分~17時
 『テーマ:ローカルの現実を知る/リアル田舎暮らし大解剖』

6参加方法
 【インターネット】
 下記入力フォームにお進みください。
 申込画面

 【ファックス】
 FAX申込フォームに記載のうえ、FAX 092-643-3164筑後田園都市推進評議会事務局(福岡県広域地域振興課)までお送りください。
 FAX申込フォーム
 ※電話・Email等での参加申込は出来ません。

7応募締切
 平成26年1月10日(金) 17時まで

8お問い合わせ
 筑後田園都市推進評議会事務局 (福岡県広域地域振興課)
 電話:092-643-3177
 FAX:092-643-3164
 Eメール:koiki@pref.fukuoka.lg.jp