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まちづくりと言っても、さまざまな仕事があると思います。都市計画をつくったり、施設や店舗を建てる仕事もあれば、それらの運営や、イベントを通じたコミュニティづくりの仕事もある。
どれか一つの領域を専門にするのも選択肢の一つ。
一方で、もしも不動産開発から企画制作、現場運営まで一貫してまちづくりに取り組みたいと考えているのなら、PODという会社があります。
PODは「現代版家守(やもり)」という手法を用いて、エリアの開発からイベントなどの運営まで、持続的な成果を上げていく仕組みづくりのために、幅広い仕事を手がけています。
今回募集するのは、都市計画・施設計画のプランニングや、建築・店舗等の開発・デザインに関わるプロデューサーとアシスタントディレクター。さらにこれらの現場の運営業務を担う人も募集します。
淡路町駅から徒歩5分ほど。家紋やロゴのような壁画が目を引く建物が見えてくる。
エレベーターで8階へ上がると、シェアオフィス「REN BASE」に到着。
ここは、ビルのオーナーとPODが管理・運営を行っていている。
打ち合わせスペースの一室で、共同代表の神河さんと橘さんに話を伺った。
神河さんは、六本木ヒルズの立ち上げなど大手不動産会社で開発プロジェクトマネージャーとして、大小さまざまな規模の不動産開発やエリアマネジメントにも携わってきた。
一方の橘さんは、市町村や商店街をフィールドに地域活性化をプロデュースしてきた方。
「PODは、異なる領域で培ってきた我々二人のノウハウを融合することで、店舗開発から大規模開発、エリア活性化にまちづくりまで、一貫して考えることができる会社になったんです」
そう話すのは、神河さん。
再開発だけ、イベントだけ、というように「点」で関わるまちづくりには継続性が生まれにくい。
だからこそ、はじめから継続して関わることが大切だし、そのためには幅広い経験と知識が求められている。
さらにまちづくりを持続可能なものにしていくためには、そのエリアで働いたり暮らしたりする人たちが当事者となり、関わっていくことが大切になってくる。
PODは、そんな考えを持ってまちづくりやエリア活性化に取り組んでいる。
代表的なプロジェクトの一つが、東京・中野のオフィスビル「中野セントラルパーク」の運営プロデュース。
警察大学校跡地を再開発してできたオフィスビルが中心で、大企業の本社やサテライト拠点、飲食店など多様な人々が働いている。また、隣には緑地公園と大学もあり、地域の人も訪れる場所。
PODは、着工のタイミングでターゲットやコンセプトを再設定するところからはじめ、運営をみこした追加の設計変更にも携わった。
今は、運営を担っている。オフィスビルで働く人たちと地域とをつなぐために、PODのプログラムマネージャーが入り込み、企業やテナントの垣根を越えて中野の街を飲み歩く活動などもしている。
回を重ねるうちに参加者たちの中から自主的なクラブ活動も誕生したそう。
たとえば、広場でマルシェを開く人たちもいれば、オフィスエントランスの一角を使って野菜などを育てている人たちもいる。
大切にしているのは、地域の個性を伸ばすこと。
「最近で言うと、大宮駅東口の市街地再開発事業のパンフレットもそうですね。大手広告代理店が企画すると、せっかく大宮の再開発なのにイラストの描き手には都内の人が起用される場合が多いです」
PODでは、なるべく地元のクリエイターや企業を起用するように動く。
写真のパンフレットでは、地元で独立したばかりだった女性イラストレーターの方を地域の人から紹介してもらい、起用した。
「とはいえ、持ち味や得意・不得意もあるなかで、目的に合う形にもっていかなきゃいけない」
「たとえばこんな感じって、私たちのイメージに近いイラストを見てもらい、『この絵とあなたが描くイラストを結婚させて子どもが生まれたらどんな絵になるだろう?』と投げかけたり。そういうプロデュース・編集もします」
ひとつの実績が生まれれば、それがポートフォリオとなってその人の次の仕事の依頼につながるかもしれない。
個人だけでなく、イベント制作会社やデザイン事務所など、いろいろな地域の会社にどんどん仕事をお願いしていく。
「内部でできる仕事かもしれないけれど、あえてそうします。必要なのは、エリアにいる人たちが社会経済を回していくこと。我々は、そのエコシステムをつくることに尽力するんです」
そんな運営方法を、神河さんたちは「現代版家守(やもり)」と表している。
家守とは、不動産の管理・運営から、入居者の誘致や入居後のサポート、まちの運営にも携わる人のこと。
現代では入居者が大企業であったり、不動産や街のあり方も多様化しているため、マーケティングや情報発信などより幅広い役割・能力が求められている。
つまり、不動産やまちづくりに関わるなんでも屋さんと言えるかもしれない。
今回募集する人は、入社したら神河さんや橘さんのアシスタントとしてプロデューサーの仕事を学ぶところからスタート。
都市計画、設計、デザインや現場運営等も知っていきながら、ゆくゆくはひとりで複数のプロジェクトを遂行してもらうことを想定している。
具体的に、仕事はどういうふうに進んでいくのだろう。
「たとえば今だと、竣工を10年後以降に予定している都心の大型開発の企画をいくつか進めていて」
「15年後とか20年後のライフスタイルってこうなってるんじゃないの?と掘り下げて考えながら、そのオフィスに入居するターゲット像を緻密に設定したり。その人たちはどんなシーンを喜ぶのかと動向を調査しつつ、企画を組み立てたり、施設やデザインに求められる要件を整理することもします」
調査や企画のため、現地に行って地域の人たちをお酒を呑んだりしながら、自分の肌でまちのことを感じることも大切だという。
街中を歩く人たちの服装から職業やライフスタイルを想像したり、その人の好みの空間やデザインについて議論したり。屋外をフィールドに、仕事と暮らしの境目がないようなことを日常的に意識しながら過ごす。
ほかにも、行政や開発会社に対する提案書や設計図を元に利用シーンのCGを作成することもある。
いろんな引き出しが求められる仕事だと思う。
神河さんが、いつかこんな人に育ってほしいと紹介してくれたのが、元同僚で契約プロデューサーの竹内さん。
年の半分は海外にいるということで、今回はプロジェクトのあるジャカルタからSkypeを通して話を聞くことに。
竹内さんはもともと、建物をつくる仕事がしたいと、大学時代から建築を学んできた方。
卒業後は設計事務所に勤めたり、デベロッパーで働いていたそう。
いろいろな仕事を経験しているなかでも、大切にしている仕事のあり方は変わらないという。
「今、社会が何を求めているか。この事業がどうなったら次のステップにいけるか。広くものごとを見て、建物や街をバリューアップするために今の仕事がどうあるべきかと考えながら、ずっとやってきました」
20代後半では、マンションプロデュースを手がける。
オーナーが資産活用を考えるとき、メンテナンス性が良い建物だったり、確実にニーズがある建物をつくってほしいという依頼もある一方で、「町をバリューアップするために土地をどうしたらいいかを考えてほしい」と相談を受けることもあった。
「たとえば、いいお店をつくることで、その場所を好きになった人が街に住むようになるかもしれない。エリアのイメージが良くなることで、オーナー自らが所有する資産の価値も上がっていくという考え方なんです」
「僕が思い描いていた建物をつくる仕事は、まさにそういう要望に応えるための建築プロデュースや事業ディレクションだと思っています」
たとえば前職のときには、カンボジア・プノンペンの高層ビルをプロデュースすることがあった。
そのままでは他のビルと差別化できない。そこで竹内さんは上層階1000㎡のフロアに、レストランとしてもホテルとしても利用できる空間をつくることに。
そのままでは一般的な高層ビルだったものが、外資企業のリピーターやインバウンド旅行客等、都市をリードする人々が集まる名所になったそう。
さらに、ビル全体の資産価値も、開発段階での原価から、オープン時には1.4倍に、2年後には2倍にまでも上昇したという。
今はフリーランスで、国内外のホテル開発プロデュースや建築デザインのディレクションを手がけている。
PODでは、歌舞伎町の再開発事業で、かつて1500席の日本最大スクリーンを誇った映画館を建て替えて、エリアに新しい経済活動をつくるような複合施設の開発にも携わっている。
「僕としてはPODの仕事は、神河さんや橘さんがつくった試合に参加させてもらっているという感覚です。大きな組織の中にいるよりも、いろんな視点で考え、自ら新しいものをつくっていくチャンスがここにはあると思っています。ぜひそのチャンスを掴みにきていただきたいです」
最後に紹介したいのは、前回の日本仕事百貨の記事を読んで入社した長谷川さん。もともとアパレル業界に勤めていた方。
「アパレルの仕事から、もっと大きな仕事がしたいという考えに変わっていったタイミングで記事を見つけて。惹かれるものがあったんです」
「でも、何をやっている会社なのかよくわからないまま面接に来たというのが正直なところでした」
経験もないところからスタートし、今では橘さんのアシスタント業務をしているそう。行政の案件について調べ物をしたり、提案資料を作成したり。少しずつ勉強しながら日々取り組んでいる。
「神河も橘も、社員に対して本当にフラット接してくれます。むしろ女性やアパレル業界からの視点で意見を求められることも多く、正直な意見を伝えられるので、とても働きやすいですね」
まちには多様な人がいる。
まちづくりの仕事も、エンジンをかけていく段階からハンドルを細かく切り替えていく場面までさまざま。
だからこそ、一つの見方ではなく、いろんな視点から柔軟に考えていくことが求められると思います。
都市計画や設計の経験がなければ、最初は長谷川さんの言うとおり、なかなか分かりにくい仕事かもしれません。
でももし、まちを動かすエンジンをつくったり、エンジンをかけて一緒に走っていくような取り組みに興味が湧いたら、ぜひ詳しい話を聞いてみてください。
(2018/03/02 取材 後藤響子)