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思い出つくり人
宿泊から滞在へ
京町家コンシェルジュ

小説家の随筆を読んでいると、よく温泉地に逗留して執筆活動しているくだりが出てきます。

行きつけの宿だから、主人も毎年その時期に来ることを心得ていて、親しく接してくれる。

通い慣れた場所で時間もたっぷりあるから、焦って観光することもない。宿で少しのんびり過ごして、気分転換に近くを散策したり。

仕事を理由にそんな時間を過ごせることもそうだけど、旅先で「おかえりなさい」と言ってもらえるような関係性が、とてもいい。

毎年戻ってくる場所。

来春京都に、そんな宿泊体験のできる場所が誕生します。

プロデュースしているのは、町家のリノベーションを数多く手がけてきた建築不動産の会社・八清。

今回募集するのは、この宿泊事業のために新しくできる八清の関連会社「株式会社suiTTe(スイット)」の運営責任者と副責任者。スターティングメンバーとして、宿泊のマネージメントに関わる人です。

これからつくりあげていく事業なので手探りの部分も多いですが、その分自分たちで決めていける自由もある。

文化も、歴史も、自然も豊かな京都で、自分らしい「おもてなし」を一からつくっていく仕事になると思います。



京都駅から地下鉄に乗り換え、四条駅へ。路地を歩いて5分ほどで八清の事務所に到着。

最初に話を聞いたのは、八清の専務取締役・西村直己さん。

西村さんは、株式会社suiTTeの社長も兼務しながら事業をまとめていく。

これまでも住宅だけでなく町家を生かした旅館事業をプロデュースしてきた八清。そのなかでも、今回は新しい業態でのチャレンジになる。

「きっかけは9年前に住宅として京町家シェアハウスのプロデュースを経験したことでした。時間や空間をシェアすることで、場所をもっとおもしろく使う方法があるんじゃないかと思うようになったんです。新しい宿泊施設は“タイムシェア”という方法で運営していきます」

タイムシェア。日本ではまだ馴染みのない言葉かもしれない。

「簡単に言うと、ひとつの施設を複数のオーナーが共同で所有し、期間を区切って交代で利用できるサービスです。アメリカでは、専用の法律もあって登記の仕組みなども整っているんですよ」

共同の別荘のようでもあるけれど、掃除やメンテナンスは管理会社が行うので、利用中はゲストハウスやホテルに近いスタイルで過ごせる。

これまで八清がプロデュースした宿泊施設は、いずれも外部の管理会社に委託して運営してきた。

どうして今回は関連会社を立ち上げて運営することにしたのだろう。

「お客さんがうちの施設でどういう体験をして、どんな思いで過ごしているかっていうことにも直接関わっていかないと、ほんまの価値がある町家はつくれないと思うんですよね」

本当の価値。

「訪れた人が“お客さん”ではなくて、京都の中に入り込んで時間を過ごせるように。八清の京町家がその入り口になったらいいなと思うんです」

京都のまちはコンテンツに溢れていて、ふらりと遊びに来たとしても退屈することはない。

一方で“一見さんお断り”といわれるように、伝統文化や地元のディープな部分には、気軽には踏み込めないハードルもある。

スタッフが介在して接客できる事業だからこそ、もっと京都を身近に感じてほしいと西村さんは考えている。

「“お茶屋の女将さん”のように、宿のスタッフがいろいろ教えてアレンジできたらいいですね」

ということは、ここで働くのは地元に詳しい人がいいのでしょうか。

「今回は2人採用する予定なので、1人は地元の人がいてくれるといいですね。そしたらもう1人は地元じゃなくても、ホテルや接客の経験がある人とか。お互いに補い合って、ひとつの宿をつくっていければいいので、応募してくださる方の組み合わせ次第ですね」

当面、接客など日々の実務はその2人だけで行うので、宿を自ら運営していく感覚に近いかもしれない。

もちろん西村さんをはじめグループの同僚として八清の社員が仲間になるので、京都の町のことや業務のこと、わからないことは相談しながら運営していける環境にある。

旅館運営のノウハウは、現在八清の宿を受託運営している会社からも聞くことができる。

「立ち上げなので、100%こっちで用意したものを押し付けるより、入ってきてくれた人が決められる余白を残したい。それを重荷に感じる人もいるかもしれないけど『よっしゃ、自分の色に染めてやる!』って、やりがいを感じてくれる人もいると思うんです」



来年3月のオープンを目指して、一緒に準備を進めていくことになるのが、八清の小川さん。

「12月には建物が竣工するので、1月からは準備や業務トレーニング、2月には試泊やプレスツアーと、これから年度末にかけて忙しくなりますよ」

宿ができるのは、高台寺と御所東の二カ所。

高台寺は、八坂神社、清水寺にも近く京都らしい風情のある観光地が多い。御所東は、もともと武家屋敷があったエリアで、少し落ち着いた京都の顔が見られる場所。

「基本は京町家なんですが、純和風ではなく、『数奇』がテーマで色使いやデザインに遊び心があります。あとは住宅ではなく宿として使うために、本来の町家にはない空間の工夫もしています」

たとえば、室内の収納。

町家にはエレベーターがないので、荷物を二階の寝室に持って上がらなくていいように、一階にスーツケースごと収納できるクローゼットを設けている。

お客さんの使い勝手はもちろん、荷物を階段にぶつけて、建物が傷んでしまうことを防ぐことにもなる。

もうひとつのこだわりは広いお風呂。

「今回の宿は、少し贅沢な雰囲気を演出しようというコンセプトがあったんです。せっかくなら普通の住宅では体験できないものを提供したくて」

町家の吹き抜けを生かした浴室は、広さも一般的な住宅の約4倍。

家にいるような安心感と、宿泊施設ならではの非日常感。住宅でもホテルでもない。タイムシェアの宿だからこそ、共存できるのかもしれない。

日本ではまだ前例の少ないタイムシェア。

小川さんは、日本人のライフスタイルに合わせて利用しやすいように仕組みづくりにも心を砕いてきた。

「基本的に、お客さんには一年のうち7日間を購入してもらうんですが、一週間まるまる京都で遊べる人なんてなかなかいませんよね。だから、3日しか泊まれない人も、残りの4日が無駄にならないようなポイント制を組み立てています」

毎年同じ季節に、ここに帰ってこられる宿。

お客さんとも長期的に関わることになるので、顔や名前を覚えて信頼し合える関係を築いていく必要がある。

「ホテルマンみたいにきちんとしているより、家族のように温かく接してくれる人のほうがいいのかなと思います。それに宿があるエリアは『連棟』といって、柱一本を共有して隣同士の家が建っているので、ご近所さんともお付き合いしていくことになるし」

京都の中心部、古くからのコミュニティに入っていくというとちょっと背筋が伸びる気もする。

「まずは、挨拶と掃除だけできれば大丈夫ですよ。家の周りを掃除する “角掃き(かどはき)”をしているうちに、ご近所とも自然とお付き合いができます。古いお寺さんもあるから、積極的にいろいろ教えてもらうといいかもしれません」

宿で働く人たち自身が、京都の街に入り込んで地元の人に馴染んでいく。

地元の人の暮らしを知ることで、従来の旅行にはない楽しみ方を見つけることができるかもしれない。

「宿には小さいキッチンがあるので、地元の食材を買ってきてお客さん自身で調理もできますし、料亭からシェフを呼んでつくってもらうこともできます。お茶やお花の先生を呼んで、宿でお稽古事をしてもいいし。ここだからできることをわたしたちも探っていけたらいいですね」

とはいえ、まだマニュアルもない新しい事業。

最初は、日々の業務を滞りなく行うだけで精一杯になるかもしれない。

「まず必要なのは予約管理と受付、あとは日々の掃除などの建物管理です。最初から完璧じゃなくても、日々の気づきから改善できることもあるので『お部屋に挿花があったらいいかな』とか、『こんな散策コースをご案内できたらいいな』とか、少しずつサービスを充実させていけたらいいと思うんです」

これまで、タイムシェアのプログラムづくりから、設計・予算管理まで、ほぼひとりで担当してきた小川さん。2年前、企画部からタイムシェア担当に突然任命されたときは、あまりの急展開に戸惑いもあったのだそう。

「どんどん新しいことに挑戦していく会社なので、2年後には全然違う展開になっているかもしれない(笑)。好奇心を持ってやってくれる人なら、めちゃくちゃ楽しいと思います」



変化を楽しむ。

八清で30年以上働いている松本さんも、そんなふうに働いてきたひとり。

松本さんは、これまで八清でプロデュースしてきたほかの宿泊事業を担当してきたので、これから入る人も、運営のことで相談をしたり、助言をもらったりできると思う。

新しい事業に関わる大変さも、楽しさも知っている人だ。

「9年前にはじめた『京宿家』も京町家の一棟貸しの宿泊施設だったんですが、そのころはそんな形態の宿が世の中にそんなになくて。まったく未知の世界でした」

京宿家の場合、マネージメントは別の会社に委託していた。

とはいえ、マニュアルもない状態からのスタート。松本さんが設備の不具合などに対応することも多かったのだとか。

「夜中に突然お湯が出なくて呼び出されたり。大変といえば大変ですけど、そういうイレギュラーなことを楽しんでるのかな。全然マンネリじゃないというか。物件ごとに場所も違えば設備も違うし、どんどん新しいことが起きるというか」

「それに、実際に現場に行って自分で確認するからこそ、いいサービスをつくっていけると思うんですよね」

もちろん、この先ずっとオープニングスタッフの2人だけで運営していくことはできないので、運用開始時にはアルバイトなどのサポートを入れることになる。

メンバーが増えたときのためにも、まずは自分で掃除など日々の管理業務を経験して、マニュアルを整えていく必要がある。

宿泊業の運営に関わったことがある人なら、経験が役に立つことも多いはず。

「僕たち八清の人間は、設備や建築のことは知っていても、サービスのことは詳しくない。だから、むしろ教えてほしいというか。新しく入った人が自分の視点や経験でサービスやマニュアルをつくっていってほしいんです」

「まずは自分なりの仕事の中の楽しさを見つけてもらえたらと思います」



今の仕事の中で「こんなことができたら」と思いながら、組織の中で実現しにくかった挑戦も、この新しい宿なら実践してみるチャンスがあるかもしれません。

これからはじまる新しい宿。ほとんどゼロからのスタートです。

余白の大きさを自由だと感じられる人なら、ここで自分の仕事をつくっていけると思います。

(2018/10/5 取材 高橋佑香子)

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