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「どんなことがやりたい?」
そんなふうに問いかけられたとき、はっきりと答えられる人はどれだけいるだろう。
自分の内面と向き合って、やりたいことを見つけ、それに向かって動き出す。言葉にするのは簡単だけど、実際に動き出せる人は多くないと思います。
もしやりたいことがあって、「今までの自分を少しでも変えていきたい」という気持ちを抱えているなら、子どもと一緒にその問いに向き合ってみるのもいいかもしれません。
子どもたちに、自分でやりたいことを見つけ、形にする力を身につけてほしい。
そんな想いから、キンダリーインターナショナルというアフタースクール(学童施設)では、ワークショップや課外活動など個性的なプログラムを実施しています。
今回募集するのは、ここで働くスタッフ。東京都の勝どき、豊洲、明石に校舎があり、それぞれを行き来することになるそうです。
教育分野のバックグラウンドは必要ありません。大切なのは、子どもと対等な立場で向き合い、一緒に成長していきたいという気持ちです。
都営大江戸線の勝どき駅。地上に出てすぐ目の前にある公園では、親子連れや保育園の園児たちが遊んでいる。周りはオフィス街なのに、のどかな雰囲気だなあ。
公園を通り抜けて歩くこと数分、学習塾や教育関連の施設が集まるビルの2階にある、キンダリーインターナショナルの勝どき校に到着した。
出迎えてくれたのは、代表理事の森さん。子どもたちが来る前の静かな校舎で、話を聞かせてもらった。
森さんが、もう一人の理事である赤井さんと事業を立ち上げたのは、7年前のこと。
時代が変化しているにもかかわらず、自分たちが子どものころからほとんど変わらない学校教育のあり方に危機感を覚えたことがひとつのきっかけだった。
「決められたカリキュラムに受け身で取り組むだけでは、これからの世界を生き抜く力は育めないんじゃないかと。学校をつくるのは難しくても、放課後の時間で子どもに関わることなら、自分たちにもできると考えました」
大切にしているのは、子どもたちが自分自身と向き合うこと。
たとえば、放課後やってくる子どもたちは、まずその日の自分の状態をグラフにする「Today’s Feeling」を記入することからはじめる。
「今日どんな一日だったか、何が楽しくて何が嫌だったか。抱えていたものをアウトプットすることで思考が整理されて、自分と向き合えるようになるんです」
自分と向き合う経験を重ねることで、心の中にあるやりたいことや大事にしていることに気づき、それを言葉にできるようになる土壌がつくられていく。
その後は、MiEP(ミープ)と呼ばれるワークショップを毎日実施。現場のスタッフによる持ち回りで企画運営している。
60分程度の遊びから学ぶプログラムで、レゴで街をつくってみたり、グループディスカッションをしてみたり。さまざまな活動に取り組むなかで、学校の成績や人との比較ではなく、自分らしい強みや好きなことがわかってくる。
「近い将来、単純作業やルーティンワークはロボットやAIに取って代わられるとも言われていますよね。そうなったときに、人間に求められるのはクリエイティビティ。自分の頭で考えて新たな価値をつくり出す力なんです」
クリエイティビティは大人になって急に発揮できるものではない。だからこそ、子どもの時期からそういった力を育むことが必要になる。
「0から1を生み出すことにもっと力を入れていこうと、今年度から新しく『探求対話コース』を設けました」
0から1を生み出す力を育む。一体どんな内容のコースなのだろう?
教えてくれたのは、入社4年目になる小山田さん。探求対話コースの担当で、これから入るスタッフにも、このコースに力を入れて取り組んでほしいという。
「簡単に言うと、何をやるかは子どもたちが全部考えます。みんなで輪になって『今週は何をやってみたい?』『最近みんな何が気になっている?』って漠然と話し合うことからはじまります」
学校では時間割が決まっているし、塾や習い事でも課題を与えられることが多いはず。
普段とは違うやり方でも、うまく進んでいくものでしょうか?
「最初はみんな戸惑って、『わかんない…ゲームかな…』みたいな感じ(笑)。それでもいいんですよ。ゲームのどこが面白いのか言葉にしたり、何かやりたいことを思いついたら実際にやってみたり」
「考えて、体験して、振り返って。それを繰り返すなかで、『自分はこれが好きかも』っていう方向性がだんだん見えてくるんです」
週に一度は校舎の外に出て、身体を使う体験も行っている。
最近は「釣りをしたい」という希望があり、みんなで釣りに出かけた。仕掛けや釣り具から自分たちでつくり、どんな餌がいいのかも実験してみたそう。
「魚は全然釣れなかったんですけど、カニがたくさん釣れて。そうしたら、一人の子がカニの標本をつくりたいと言い出しました。それを聞いて、可哀想と言う子もいれば、勉強や研究のためならいいと言う子もいたんです」
意見の違いを受けて、翌日、小山田さんは対話の時間を設けた。
牛や豚は食べるのに、なぜカニを可哀想だと感じるのか。可哀想だと思う線引きはどこなのか。国によっても考え方に違いがあるんじゃないか…。
正解のない問いを投げかけると、子どもたちからは多様な意見が返ってくる。
「小学生の発達段階だと、自分と違う考えの人がいることがまず大きな驚きになるんです。だから『そんな意見もあるの!?』って、対話を通じて徐々に視野が広がっていって」
最終的には「動物は可哀想と思う人がいるから」と、カニの代わりに葉っぱで標本をつくることで、みんなが納得したという。
対話の方向性によって、どのような形で帰結するかは大きく異なる。一緒に時間を過ごすスタッフにとっても、答えがないことの面白さを日々実感できる、貴重な機会かもしれない。
とはいえ、まだまだめずらしい学びのスタイル。小山田さんは、戸惑うことはないのでしょうか?
「たしかに自分が小学生のころは、こういう機会はほとんどありませんでした。感覚としては、子どもたちに何かを教えているつもりはないんですよ」
「わからないことは一緒に調べればいいし、知っていることはお互いにシェアする。『よくわからないけど、これは面白いよね』って探っていく感覚は、わたしも子どもたちと同じです。同じ目線で、みんなで試行錯誤していければいいのかなって」
大人だから教えなきゃいけない。何かやってあげなきゃいけない。そういう考えは必要ない。
フラットな関係で、一緒に新しいことに取り組んでいく仲間のような感覚を持てるといいと思う。
次に話を聞いた寺井さんは、アルバイトスタッフから社員になった方。働きはじめて2年になる。
もともと教育を学んでいて、ここでは哲学や算数を活用したワークショップを担当している。
「僕は、自分が納得できないことは子どもに伝えたくないと思っていて。たとえば自分が子どものころから、『みんな仲良くしましょう』って言葉にモヤモヤしていたんです」
ケンカしている子どもがいたら、つい言ってしまいそうな言葉ですね。
「でもキンダリーでは、無理に仲良くしようとは誰も言いません。時間が解決してくれることもあるから、お互いの気持ちを伝え合った上で、もし嫌いなままならそれでもいいという考えです」
子どもの自主性を尊重する環境だからこそ、スタッフが考えることも必然的に多くなる。
危険を伴いそうな遊びに子どもが興味を持ったとき、どこまでならやらせていいのか。ケンカがはじまったとき、どのタイミングから仲裁に入るべきなのか。
大人としてどう介入していくか判断に迷ったときも、自分の信じる通りにまずやってみることが大事なのかもしれない。
「違和感があるけどやらなきゃ、ということがない環境は、働くスタッフとしてもありがたいなと思っていて。もし何かおかしいなと思うことがあれば、ほかのスタッフにも相談しやすいですし。自分の気持ちを大事にしながら働けているように思います」
実は入社したばかりのころは、プライベートでうまくいかないことが重なり、うつに近い状態だったという寺井さん。
教育関係の仕事をしたいという思いはあったものの、最初は外に出ることも苦痛なほどだった。
だんだんと勤務日数を増やし、今年から正社員に。徐々に責任ある仕事も担うようになった。
「ここで子どもと向き合ったり、スタッフに向き合ってもらったりするなかで、がんばれるって気持ちが戻ってきたことが、自分にとってはすごく大きな変化です」
「子どもと遊ぶのってすごく体力が必要なので、誘われても気が乗らないときは『ごめん、無理』って言うこともあって。この前は子どもから『てらっち、超めんどくさがりだよね』って言われたから、『うん、そうだよ』って(笑)」
等身大ですね。そのほうが「自分の気持ちは正直に言っていいんだ」って、子どもたちも気づけそう。
「そうですね。こういう大人もいるんだって、思ってもらえればいいのかな」
ときに弱い部分も見せながら、素直に子どもと向き合う。その飾らなさが、スタッフのみなさんの共通項かもしれない。
「子どももスタッフも、自分に嘘をつかないでいることはとても大事です。自分が何にモヤモヤして、何に興味を感じるのか。今の状態を認知できなければ、先には進めませんから」
そう話すのは、理事の赤井さん。
この日は出張で熊本県にいるとのことで、オンラインで画面をつないで話を聞いた。
代表の森さんとともに立ち上げから関わってきた赤井さんは、たくさんの子どもたちやスタッフに向き合ってきた。
慣れないうちは子どもとの関わり方で悩むこともあるかもしれないけれど、赤井さんはきっと親身に相談に乗ってくれると思う。
「キンダリーで一緒に働くなら、『一歩踏み出す勇気』を持ちたい人がいいなと思うんです」
「変わりたい、チャレンジしてみたいって気持ちがあること。実際にはまだ踏み出せていなくてもいいんです。恐怖やリスクを考えて、今まで動けなかったという人も、ここで時間を過ごすことで気持ちの整理ができていくと思います」
子どもに向き合うことで、必然的に自分自身とも向き合うことになる。
大人になってから自分を変えることのハードルは高いかもしれないけれど、どんどん成長していく子どもたちの姿から、きっと力をもらうことができると思う。
子どもたちとともに、自分自分も成長していきたい。
そう思う人なら、ここで過ごす放課後の時間は、きっと実りあるものになると思います。
(2019/12/10取材、2020/6/19再募集 増田早紀)