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世界一のハンカチ屋さん

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

自分が心からいいなと思えるもの、もらってうれしいものは、どんなものだろう。

そんな自分たちの実感を大切にしながらものづくりをして、目の前の人に向きあって販売する。そうして、少しずつ輪が広がっていく。

オールドファッション株式会社はそんなふうに、ハンカチを中心に身近なものをプロデュースしてきました。

ハンカチ専門ブランドの「H TOKYO」「swimmie」をはじめ、天然繊維でつくられたトランクスに靴下、竹・紙・布でつくる房州うちわやナイトシャツなど。

どのアイテムも、それぞれに自分たちの考えが生かされるよう、身近な職人さんと一緒につくっています。

今回募集するのは、東京駅周辺で新たにオープンする新店舗に加え、日本橋と上野の「OLD-FASHIONED STORE(オールドファッションストア)」と、三宿と丸の内にある「H TOKYO」の販売スタッフです。


訪れたのは、パルコヤ上野店に入るOLD-FASHIONED STORE 上野店。

店内に一歩足を踏み入れると、色とりどりのハンカチが目に飛び込んできた。

無地にストライプ、チェックにドット。なかにはアーティストのイラストや作品がプリントされたユニークなものも。

本当にいろいろなハンカチがあるんだな、と思わず一つひとつ見入ってしまう。

「どうぞ、お手に取ってご覧ください」

そう話しかけてくれたのは、代表の間中(まなか)さん。

物腰も語り口も丁寧な方。一枚一枚のハンカチについて、静かに、目を輝かせながら話してくれる。

店内に並ぶ商品は、間中さんたちスタッフの「あったらいいな」というアイデアから生まれたもので、ほとんどがオリジナル。

「今はものを選ぶとき、ブランドで選ぶ方法と、品質で選ぶ方法がある気がします。もちろんブランドものもいいんですけど、僕は素材やデザイン、品質で選びたいなと思っていて」

間中さんがこの会社を立ち上げたのは、およそ10年前のこと。

それまでは大手量販店で、販売や輸入生産管理の仕事を経て、バイヤーとしてハンカチの仕入れを担当していたそう。

ただ当時は、こんなハンカチが欲しいと思っても、出来上がったデザイン画から選ぶことしかできなかった。

「ぼくは生地もデザインも自分が心からほしいと思えるハンカチをつくりたくて。それをコツコツ広められたらと思うようになりました」

生地選びから縫製まで、すべての工程を自分たちの目で確認しながら。

そのためには、自分たちの考えを理解してくれるパートナーが必要だった。

間中さんは、どのような人が、どのようにものづくりをしているのかを知るために、生地屋や縫製工場を一軒ずつ訪ねて回った。

「今使っている生地は兵庫・西脇や静岡・浜松、インポートだとイタリアやスイスのものですね。どれもとても細番手の糸で織っていて、一から生地をつくることもあります」

縫製は横浜の工場で。当初から付き合っている工場は、ひと家族にご近所のパートさんを加えた4、5人が集まって縫っているそうだ。

まっすぐな縫い目と、きれいに収まった四隅からは、縫い手の高い技術と気遣いが伝わってくるそう。

とはいえ、海外の工場に頼めばもっと安く速くつくれる気もする。

そう尋ねると、しばらく考えたのちこう答えてくれた。

「ぼくは出来るだけ身近な人と一緒にものづくりをしたいんです」

「もちろん品質がいいからという理由もあるんですけど、何かがあったらすぐに顔を見て話し合える安心感、というのかな」

たとえば、昔はよく縫製職人さんから「この生地はきれいに縫えないから」と断りの手紙をもらったそう。

そのたびに職人さんを訪ねて、なんとかお願いして縫ってもらった。はじめはしぶしぶだけど、きれいに縫えるよう工夫を重ねて、縫製を受けてもらえるようになった。

顔が見える距離感だからこそ生まれるやり取りだと思う。

「ぼくは顔を見て話すということが一番大事だなと思っていて。一枚のハンカチのために、手を動かしている人がいる。お店は、少しでもその風景が伝えられる場だったらいいなと思っています」

商品を手渡す前に一つひとつ丁寧にアイロンをかけているのも、そんな理由から。お願いをすればその場で刺繍を入れてもらえるし、ハンカチがほつれたときは、無償で直してくれる。

「ぼくたちのやっていることって、面倒で遠回りなんです。今はなんでもインターネットで買えるし、そもそもハンカチを持たなくても生活できるかもしれない」

「だからこそお店は、ただものを売るだけの場ではいけないなって。商品に触れたり、スタッフと会話したり、そうした楽しみを提案できる場でありたいと思います」

間中さんは、今後この会社をどんなふうにしていきたいのでしょう。

「そうですね… 背景のあるものづくりする、というのかな。自分たちが本当にいいと思えるものに寄り添いながら、その価値を伝えていきたい」

「やっぱり今までもこれからも、目指すのは世界一のハンカチ屋なんです」


間中さんの隣でにこにこと頷いていたのは、エリアマネージャーを務める佐々木さん。この日は、店長を務める丸の内店から来てくれた。

「緊張しちゃうから、メモをつくってきたんです」とふわりとした笑顔で教えてくれる。

新卒で入社したベーグル店で6年半ほど働いたのち、転職を考えはじめる。オールドファッションは、偶然通りかかった催事をきっかけに興味を持ちはじめた。

「もともと雑貨やハンカチを見ることが好きで。ここは色々な種類やデザイン、それに刺繍も入れられるのがすごく素敵だなと感じました」

「入ってみて驚いたのが、意外と忙しいんだなって。とくに繁忙期の3月はずっとレジにいるか刺繍を入れるかという感じで、在庫管理や検品も同時進行でやっています」

ハンカチは、ひと月に10から20種類ほどが入れ替わる。

なかには一枚の絵のように広げて楽しめるものも多い。そのためいちばん最初に苦労したのはディスプレイだったという。

「畳んでしまうと一部分しか見えないのに、どうやったら魅力が伝わるんだろうって。ただそれって、自分次第でまったく違う表情や印象を見せることもできるんです」

「そう気づいてからは、周りのスタッフとも『このハンカチは、こう畳むと可愛い!』と一枚一枚広げながら考えるようになりましたね」

そして販売スタッフのいちばんの仕事が接客。

お客さんとの会話はもちろん、ふとした仕草からもどんな商品を求めているのかを考えて提案する。

「商業施設の中のお店だと、偶然お店に寄る方もたくさんいらっしゃいます。お店を構えるからには商品の良さも体感してほしいし、売り上げも考えます。でも無理に勧めてもいけないな、とも思っていて」

では、どのように接客しているのでしょう。

「いちばんは自然に見ていただくことかな。時間が許す限りゆっくりと回っていただいて、手に取っていただいた商品のストーリーを伝えています」

商品のストーリー?

「はい、素材の良さはもちろん、デザインされた作家さんのこと、縫製職人さんのこと。一枚一枚のストーリーを、会話のなかでそっとお伝えするんです」

「するとお客さまの顔もパッと輝いて『じゃあこのハンカチもそうなのね』と興味を持ってくださって。どんどん世界が広がっていくんです」

そのためには、知識が欠かせない。有志のスタッフが集まった「ハンカチ研究会」では、生地の産地や縫製工場、商品の一つであるうちわの工房も訪ねているそう。

「ただ目の前のものを売るんじゃなくて。知れば知るほど、ほかにもこんなものがあるんです!と伝えたくなっちゃうんですよね」


オールドファッションのハンカチは、一般的なものよりも少し高い。それでも選ばれているのは、佐々木さんたちスタッフの姿勢も大きいのだと思う。

刺繍のメッセージ内容も、お客さんと会話しながら考えることが多いそう。誕生日や記念日といったお祝いごとはもちろん、イベントの景品まで。

用途や好みに合わせて、色や書体まで提案する。

そうした関わりのなかで、スタッフ一人ひとりにファンが着きはじめているという。

「数日前も、常連さんが手土産のお茶を持って静岡から来てくださって。海外のリピーターさんも、来日のたびにお店に寄って『今日も持っているよ』とポケットからハンカチを出してくれるんです」

「なかにはわたしたち店舗スタッフの案やイラスト、それにお客さまの声から生まれるハンカチもあって。商品が一つ出来上がるたび、できました!ってお届けできるのがうれしいです」


最後に話を聞いた上野店スタッフの石渡(いしわた)さんは、落ち着いたトーンで、一言ひと言じっくり選びながら話してくれる方。

前回の日本仕事百貨の記事で入社するまでは飲食店で働いていた。もともと布が好きで、ハンカチは身近な存在だったそう。

「記事を読んで、つくっている現場を理解して販売するお店なんだなと思って。新店を一緒につくりあげていくのも楽しそうだなと思うようになったんです」

「応募する前に、お店も見に行きました。近くにいたお客さんが『ミシンがある!』って喜んでお店に入っていったのが印象的でしたね」

ただ、同じ販売職でも飲食店と小売店ではポイントも異なってくる。

働きはじめたころは、戸惑いを感じることも多かったそう。

「飲食店は、入店してもらえたら必ず買ってくれる。でもこのお店に来てからは、ほかのことに気を取られているうちにお客さまがすっとお帰りになることもあって。どこがダメなのかなって落ち込むことも多かったです」

「まずは少しずつお客さまを知ろうと思いました。たとえば猫のキーホルダーを持っていたら、お渡しするときに『猫がお好きなんですか?』と聞いてみたり。そのなかで信頼関係を築けたらいいなと思って」

たとえ同じハンカチでも、お客さんの様子を見て距離感を見極めたり、説明する内容を変えたりする。

そのバランスは、まだ探っているところだ。

石渡さんが印象に残っているお客さんを教えてくれた。

「この春、初任給でご両親にハンカチを贈りたいという方がいらっしゃって。誰かにものを選ぶという意味ではほかのシーンも同じなんですけど、ああそっか、初任給かってすごくほっこりしました」

「毎日の仕事は大きく変わらないです。でもそのなかで、誰かが誰かのためにものを選ぶ姿を見守れるのはすごくいいなって思いました」


取材を終えて、石渡さんと一緒にハンカチを選ぶことに。

選んだリネン生地のハンカチは、10年ほどで味が出てくるのだそう。縫製も手で行なっているため、1時間にわずか3枚ほどしかつくれないという。

そう説明してもらったあとに、四隅までアイロンをかけて袋に詰めて渡してくれた。

一つひとつ、自分たちの目で確認しながらつくったものを、目の前の人に説明して届ける。

ここで働く人たちは、そんな素朴な関わりを編んでいるように感じました。

(2018/6/4 取材、2020/6/25 再募集 遠藤真利奈)
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