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テキパキやらなきゃ
100年後に間に合わない
醤油蔵の仕事論

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「相手が100求めているなら、120で返してやりたい。それは奉仕の心とかじゃなくて、どっちかっていうと『どうだ、見たか!』みたいな感じ。ははは…」

そうやって朗らかに笑うのは、小豆島の蔵元ヤマロク醤油で働く皿田さん。

最初は、ただ家が近いからという理由で選んだパート先。だけどお給料をもらって働くからには、それ以上の仕事を返したい。むしろ、そうしないと自分が気持ち悪いと思うようなタイプの人だ。

やることがなくて、何度も時計を見てしまう日より、たくさんのタスクをテキパキこなした一日のほうが気持ちいい。

ヤマロク醤油では今、そういう感覚を心地よいと思える人を、切に求めています。

ヤマロク醤油は小豆島で150年つづく醤油蔵。木桶で醸造された醤油は、味も香りも格別です。一方で、この伝統的な製法による醤油は、今や全体の1%しか流通していません。

和食に欠かせない本物の醤油を、100年後の未来に繋げようと取り組んでいるのが5代目の山本康夫さん。たった1代で、厳しい経営状態から業績を立て直してきました。

今、事業自体は順調なのですが、働く人がなかなか続かないという課題を抱えています。

決して過酷な労働環境というわけではありません。地域の基準に照らしても、給与条件は悪くない。きちんと成果を出せば評価もしてもらえる。

ただ、醤油の製造はとてもデリケートな仕事なので、妥協が許されない。つねに自分と厳しく向き合う必要があると思います。

皿田さんのように、そこに張り合いを感じているスタッフもいます。難しいと感じるかどうかは人それぞれだと思うので、まずは読んでみてください。



瀬戸内海に浮かぶ小豆島。

フェリーで向かうルートはいくつかあるのだけど、今回は岡山側から土庄港を目指す。

港からは、路線バスに乗り換え。島の外周をぐるりと回り込むルートで1時間ほどバスに揺られながら、2年前に蔵を訪ねたときのことを思い出してみる。

ヤマロク醤油の蔵は、住宅街の一角にある。誰でも、予約なしで見学できることもあって、観光のお客さんもよく出入りしていた。

薄暗い醤油蔵には、年季の入った木桶が並んでいて、香ばしい匂いがする。醤油ができるまで3年。桶の周りについた菌の結晶が、その時間の経過を物語っていた。

伝統の製法に欠かせない木桶。今はその桶職人も少なくなってきている。そこで山本さんたちは、醤油だけでなく、木桶の製造も自分たちで手がけるようになった。

ただでさえ忙しいのに、なぜそこまで。そんな疑問に山本さんは、「しんどくても、おもろいことを選ぶ。それが私の判断基準です」と話してくれた。



バスを降りて川沿いの道を歩いていく。

あれ、ここで合っていたかな?と不安になりかけたところで、「ヤマロク醤油、この先」という看板が見えた。

ああ、こういうのも山本さんらしさだなあ、と思う。相手が今何を感じているか、いつも想像して次のアクションを考えている人なのだ。

そうやって、先回りして仕事をしていく感覚をスタッフにも身につけてほしいと思うものの、なかなか難しいと話していた。

今回はどう伝えようかなぁ…と、考えながらしばらく行くと、醤油の香りが漂う蔵に到着。

ビニールで仕切られた出荷場を覗くと、スタッフのみなさんが瓶のラベル貼りをしていた。

代表の山本さんは、暑さと激務でお疲れの様子。床に倒れこんで休んでいた。コンクリートが冷たくて気持ちいいのかもしれないが、さすがにちょっと心配になる。

しばらくして起き上がり、地面についた汗のシミの形を見て「ウナギイヌみたいだな」と言っている。

山本さん…(笑)。厳しいだけじゃなく、こういうユーモアもある人なんだけど、とにかく相当疲れているらしい。なんとか、ここでうまく働ける人が見つかるといいのだけど。

まずは、ベテランスタッフの皿田さんと話をしてみることに。

「私はもう9年目になりました。今うちは康夫さんを除いてスタッフが8名。1人は正社員で、私も含めたあとの7名がパートです。今はちょうど夏休みなので、地元の学生さんが短期で手伝いに来てくれています」

ヤマロク醤油の仕事は、醤油の製造だけでなく、出荷、小売、観光客の案内と、多岐にわたる。一番の要となる製造の部分は、今ほとんど山本さんが一人で担っている。

「食品を扱う仕事なので、小さなミスも許されない。だから康夫さんも仕事に対してシビアにならざるをえないところがあって。仕事をきちんと覚えるまでは、注意される場面も多いと思います」

注意されても理解できなければ、だんだん仕事を任せてもらえなくなる。

今は主戦力として蔵を支える皿田さんも、仕事をはじめた当初は「このままでは自分の仕事がなくなってしまう」と、焦ったことがあったという。

ラベル貼りや出荷作業などをしているときも、それに没頭しすぎず、まわりの気配を感じて動く。言われたことだけでなく、次に来る仕事を予測して段取りを進める。

自分のことだけでなく、全体を効率よく進めるにはどうすればいいか、視野を広げていくことが大切。

もともとは都市部で編集者として働いていた皿田さん。まったくの異業種だったおかげで、かえって馴染みやすかったという。

「パートの面接を受けに来たとき『あなたの経歴は一切役に立ちませんよ』って言われて、『そうでしょうね』って思いました(笑)。だけどやるからには一生懸命やろうって」

「変なプライドを持ったままでは、新しい仕事が身につかないし、何か注意されたときに余計に傷ついてしまう。ここで仕事をしていくうえで大事なことは、今まで守ってきた飾りや鎧を捨てて、一回自分をゼロにしてみることかもしれないですね」



2年前からパートで働き始めた高木さんは、まさにそんなふうにゼロから入って、あっという間に仕事を覚えてしまった。

もともとは関東で働いていた高木さん。バスケットボールのコーチとして働く彼氏と一緒に島に移住し、自分の仕事を探していたときに、たまたま出会ったのがここだった。

新人さんがまず担当するのは、瓶のラベル貼りやダンボールの組立作業。慣れてきたら、観光客の案内や直売所のお会計、出荷などの業務を覚えていく。

「私は結構大雑把な性格なので、ラベル貼りは手こずりました。最初、何も考えずにやっていたら、康夫さんがストップウォッチ持ってきて、これで時間を測りながらやってねって。そのときは『こわ〜っ』って焦りましたけど(笑)、そうか、急ぐのは当たり前だよなって気づいて」

ひとつの作業をスピーディにこなすだけでなく、いくつものタスクを気にかけながら仕事を進めるのも、ここでは大事なこと。

はじめは難しいかもしれないけれど、まずは先輩たちの動きをよく観察し、真似して動いてみるといい。

「私は以前、調理の現場で働いていたので、『一個一個じゃなくて、ついでに何かする』感覚が染み付いていて。たとえば、お会計しに行って戻るついでにゴミを捨てるとか。せっかちなので、なんでも効率よく進めたいっていうところはあるかもしれませんね」

性格や今までの経験もマッチしていたのか、入社してからどんどん仕事を覚えていった高木さん。3ヶ月目には、蔵に入って醸造にも関わりはじめた。

今、山本さん以外でその仕事を任されているのは高木さんだけ。

頼りにされているんですね、と言うと「必死です」と明るく笑う。

「今でもダメ出しされることはありますよ。気を抜いたらすぐバレる。ただ、康夫さんは注意するときも、ちゃんとその理由も一緒に教えてくれるので、わかりやすいです。それに、頑張り次第で評価もしてくれるので、私にはこの働き方が合っている気がします」

「ここは醤油をつくるだけじゃなくて、見学に来たお客さんの楽しそうな顔も見られるのがいいところ。何より、自分が関わった醤油が商品として出荷されていくのを見ると、すごいことを手伝わせてもらっているなって思います」

気負わず、シンプルにアドバイスを受け入れて成長してきた高木さん。一方これまでは、山本さんが求めるレベルに至らず、醸造に関わる前にやめてしまった人も少なくない。



山本さんは、この状況をどう思っているんだろうか。

「今うちはすごく生産性が高い。それは醸造の部分をほとんど私ひとりでやっているからこそ出せるクオリティです。どれだけ仕事ができる人でも、誰かと一緒にやるとなると、はじめは生産性が落ちる。だから、成長のスピードがゆっくりの人には、とても現場の仕事を触らせられないんです」

シビアでドライな意見のようだけど、これまでヤマロク醤油が手間のかかる伝統製法でも利益を上げてこられたのは、山本さんのこういう戦略的思考があったから。

もともとヤマロク醤油では、売り上げの4割弱を観光関連の収益が支えていた。にもかかわらず、コロナ禍においても売り上げはほとんど落ちていないという。

「みんなコロナで先が見えなくなったって言うけど、逆に未来が予測しやすくなったんですよ。世の中の考え方が両極端になったから、人の行動が読みやすい」

昨年、はじめての緊急事態宣言が発令されたときは、巣ごもりがはじまる前に、急ピッチでギフト用の商材を企画。GW前にわずか3日で発送まで完了したことで、大きな打撃を免れたという。

状況に応じて臨機応変な対応をしていくためには、現場のスピードを落とすわけにはいかない。

売り上げを落とし経営状態が悪化することは、自社だけの問題ではなく、この醤油を未来に伝えていくという大きなミッションにも影響するからだ。

だからヤマロク醤油には、手取り足取りスタッフの教育をしている余裕がない。ある程度自分で考えて動く、応用力が求められる。

「この仕事、経験者で入ってくる人はまずいないでしょう。知らないことをするんですから、できなくて当たり前。だけどまあ、叱られ慣れてない人にとっては、厳しい仕事かもしれないですね」

100年後の未来を見据えて、常に先を考えて動いてきた山本さん。

同じように、長い目で価値を考えられる人なら、必ずしもこの職場を厳しいとは感じないのではないかと思います。

自分が誰かに褒められることよりも、もっと大きな目標に向かってテキパキ働きたい。そう思える人ならいい仲間になれるはず。ぜひ一度小豆島を訪ねてみてください。

(2021/8/3 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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