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いい道具と
ともに生きていく

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

庖丁にまな板、フライパン、鍋。

日々使うのに、意外と吟味せずに買ってしまいがちな料理道具。どんなバリエーションがあるのか、何に着目して選んだらいいのか、わかりにくい側面もあるかもしれません。

「道具ひとつで、料理のしやすさや美味しさが変わる。うちで扱う道具は、どれも間違いなくそんな体験をさせてくれるものです」

そう話すのは、釜浅商店の庖丁売場でマネージャーを務める阿部さんです。

浅草・合羽橋道具街にある釜浅商店。明治41年の創業から、この場所で料理道具を販売し続けてきました。

今回募集するのは、庖丁の販売スタッフ。外国人のお客さんが多いので、英語に堪能な人を求めています。日常会話が問題なくできれば、ビジネスでの使用経験は問いません。

お客さんは、プロの料理人から家庭で料理をする人までさまざま。それぞれに合ったかたちで接客をしていきます。

ほかにも、庖丁を研いだり、手彫りで名入れをしたり。日々庖丁と向き合い、その魅力を伝えていく仕事です。

 

地下鉄銀座線の田原町駅から歩いて5分ほど。合羽橋道具街に入る。

長年プロ向けに料理道具を販売してきたこの場所。一般のお客さんが増えた今でも、小さなフロアに食器や道具が所狭しと積まれた専門店も多い。

釜浅商店は、そのなかでもかなり大きな売場を持つお店。

向かって左側が、鍋やフライパン、かまど、ボウルなど多種多様な商品を扱う料理道具売場。右側は庖丁売場で、庖丁まわりの道具に特化している。

今回募集するのは、庖丁売場で働くスタッフ。

2年前に建て替えられた新しいビルにおじゃますると、ショーケースや棚にずらりと庖丁が並んでいる。これほどの数の庖丁を見るのは初めてだ。

店内を見回していると、マネージャーの阿部さんが出迎えてくれた。

「本当にたくさんありますよね。私も入社したころは全然違いがわかりませんでした」

もともと釜浅商店の取引先のショップで長年働いていた阿部さんは、半年前に庖丁売場のマネージャーとして働きはじめた。

今取り組んでいる大きな仕事のひとつが、庖丁売場のリブランディング。

現代表の熊澤大介さんを中心に、釜浅商店がリブランディングに取り組みはじめたのは約10年前。デザインを一新するとともに、自分たちが本当に良いと思う道具だけを選び、届けるその姿勢を、「良い道具には良い理(ことわり)がある」というコンセプトで表現した。

「ずっと『良理道具』をテーマに掲げてきたんですけど、あらためて、いま庖丁を売る意味、私たちとして伝えたい庖丁の役割を見つめ直そう、ということになりました」

この10年ほどで、合羽橋では刃物屋さんが何倍にも増えている。高単価で場所もとらないという参入しやすさと、外国人観光客の需要が大きいことが理由だという。

「そんななかで釜浅商店としては、あらためて日本製のプロダクトの魅力と、庖丁が永く使える道具だということをしっかり発信していきたい。手入れをしながら道具を使っていきたいという方々に、共に生きる庖丁として届けていきたいと思っています」

質の良い庖丁を、永く大切に使ってほしい。

選ぶサポートだけでなく、研ぎ方などのメンテナンス方法も伝えていく。自分で手入れをしながら道具とともに生きていくことの楽しみを、もっと多くの人に知ってほしい。

「庖丁って、大切に使えば30年も40年も使えるんです。そんなこと、みんなあまり知らないじゃないですか。すごく身近なものなのに、あまり考える機会がないんです」

「ここに並ぶものも一見違いがわかりにくいけど、実はどれもすごく個性的です。その面白さを、新しい目線で編集して伝えていく必要があると思っていて。その発信拠点になれたら良いなと思いながら、少しずつ動きはじめています」

阿部さんが喩えに出したのはコーヒー。数十年前まではよく知られていなかったシングルオリジンのような専門用語も一般的になり、自分で豆から挽いて飲む人も多くなってきた。

そんなふうに少しずつ、こだわりの庖丁を永く、正しく使う文化を根付かせていきたい。

「もちろん、プロのお客さまに信頼してもらえる接客も大切です。でも、わかる人にわかればいい、というスタンスじゃなくて、広く知ってもらうことは重視したい。そのちょうどいいバランスは、やりながら探していきたいと思っています」

 

永く大切に庖丁を使うとき、欠かせないのが研ぎ。切れ味の悪くなった庖丁は、砥石で研ぐことで復活させることができる。

店頭での研ぎを担当しているのが、入社7年目のジェレミーさん。

お客さんの庖丁研ぎを随時受け付けている釜浅商店。難易度の高いものは、つくり手の職人さんに依頼するものの、基本的な研ぎは店内でジェレミーさんを中心に行なっている。

「ただ、受けられる数には限りがありますし、これからは簡単な研ぎであればお客さんが自分でできる、ということをどんどん伝えていきたいんです」

実際に研ぐ様子を見せてもらう。

シャッシャッと音を立てながら、スピーディーに動く庖丁。本当に自分でできるんでしょうか。

「多少切れ味を良くするだけなら、そんなに難しくなくて、誰でもできるんですよ。お客さんの怖いと思う気持ちがなくなるよう、庖丁研ぎのワークショップを毎月開催して、研ぎの良さを伝えています」

「私はずっと、自分の手を動かす仕事がしたくて、研ぎのおかげでそれが実現できています。実際に庖丁はつくらないけど、毎日料理人をサポートする仕事ができているのは、よかったなと思っています」

もともとは料理人やパン屋さんを目指していたこともあるというジェレミーさん。

フランス出身で、日本語と英語も堪能。ワーキングホリデーで来日し、そのまま日本で働き続けられる仕事を探していた。

偶然合羽橋を訪れたときに、釜浅商店で求人の張り紙を見つけて応募。当時はパリへの出店準備中で、フランス語が話せるスタッフを募集していたそう。

「僕の場合は、入社してから、毎日フランス語が話せる先輩に特訓してもらいました。説明書を日本語からフランス語に翻訳する宿題が出て、朝一番でテストして。そのおかげで、2週間で全部覚えられましたよ」

「釜浅商店には、勉強好きな人が合っていると思います。扱う商品数が多いので、初めは覚えることが多いですが、知識の幅が広がればお客さまにお伝えできることも増えていきますよ」

それぞれの庖丁の特徴や使い勝手はもちろん、産地やつくり手のこと、メンテナンス方法など、頭に入れるべき知識は限りない。

特に今回入る人は、日本語と英語両方でそれを覚えていく必要がある。とはいえ、専門用語はそれほど多くないそう。

「釜浅商店の仕事の大きなメリットは、毎日ちゃんと仕事をすれば、つまらないと思う日がないこと。お客さんが一人ひとり違うので、人と話すのが好きな方はすごく楽しめると思う。毎日同じことの繰り返し、なんてまったく思いません」

「デメリットは、道具が良くて買いすぎてしまうことと、みんな食べるのが好きだから太ることだね」と笑うジェレミーさん。

初めて庖丁が売れたのは、もじゃもじゃの髪の毛で眼鏡のイタリア人のお客さん、と教えてくれた。買ってくれた商品は今でも覚えているという。

コロナ禍にはじめたZoomでのオンライン接客では、画面の向こうのオーストラリアのお客さんが、友人とワインを飲みながら庖丁を選んでいたのがおもしろかった。

いろんなエピソードを、昨日のことのように話してくれる。

「お客さんのほしい商品が決まっていても、頼まれたものをただ出すだけではなくて。用途を聞いてもっといいと思うものがあれば必ず薦めます」

「少し値段の高いものでも、職人さんのことや、一つひとつの工程を教えてあげたら、数万円が安いと感じてくれる方もいる。マニュアルをリピートするのではなく、自分の言葉で話せるのがすごく大事だと思います」

 

コロナ禍で海外のお客さんのほとんどはメールやオンラインでの接客になったものの、今は少しずつ店舗の客足も戻りつつある。お店に外国人のお客さんしかいない、という瞬間もあるくらい。

ジェレミーさんとともに、英語での接客の中心を担っているのが、小峰さん。

7年ほど前に料理道具売場に入社し、庖丁売場に移動してからは5年ほど。

「もともとは空港のグランドスタッフでした。新しいことにチャレンジしたくて転職活動していたときに、ここで英語が話せるスタッフの募集を見つけて」

「当時は、自炊は好きっていうくらいで、特別料理にこだわりを持っていたわけではありませんでした。英語を使う仕事がしたくて入ったんですけど、働くうちに得意料理も増えて、確実にスキルアップしたなと思いますね」

お客さんは、プロと一般の割合が半々くらい。

新しく入る人は、まずは一般のお客さんに同じ目線で寄り添うことからはじめ、だんだんとプロに対応できるような知識と接客スキルを身につけていく。

「プロの料理人でも、明確にほしいものが決まっていない方もいて。どんな作業に使いたいのかヒアリングして、実際にハンドルの形や重さ、使用感を確かめてもらいながら提案していきます」

たとえば、肉を切るための庖丁を探しにきたお客さんには、「牛刀」という種類の万能庖丁をまず検討する人が多い。でも実は、「筋引」という刃幅の狭い庖丁のほうが、肉を専門にするには使いやすい。そう説明すると、もともとの予定を変えて筋引を選ぶ人も多いという。

長く付き合ってもらうものだから、お客さんの要望と自分の知識を照らし合わせて、最適な一本をともに選んでいく。

さらに釜浅商店では、その場で名入れにも対応しているので、自分だけの一本としてより愛着を持ってもらうことができる。

アルファベットの場合は電動の機械で、日本語の場合は金槌を使って手彫りしていく。

「自分で接客して、名前入れますか?って尋ねて、その場で彫って。一連でできるのは強みですね。外国人のお客さんが、あえて漢字を当てて名入れすることもありますよ」

「研ぎも同じで、その場で研いで実演することができるんです。実物のパフォーマンスをもって伝えられるのは、釜浅商店の強みだと思います」

ベースにあるのは、接客。とはいえ、その延長線上に研ぎや名入れなどの技術を積み重ねることで、コミュニケーションも深まっていく。

働く人には、そんな技術の習得にも好奇心を持って取り組んでいってほしい。

「ここにあるのは、食べることを楽しむ、そのためにしか使えない道具なんです」

マネージャーの阿部さんは、そんなふうに話していました。

料理や食べることが好き。その気持ちからはじまる仕事だと思います。

ここで、たくさんの知識を吸収しながら、料理道具の魅力を広めていってください。

(2022/7/4取材 増田早紀)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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