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やさしいチーズは
おおらかな人の手から

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ここ数年、自宅で料理をする機会が増えました。

そのときに気になるのが、どういった食材や調味料を選べばいいのか、ということ。以前は値段や味の好みで選ぶことが多かったのですが、いろんな会社を取材するうちに、裏面の成分表示を見てから買う習慣が身につきました。

いろいろな判断軸があるなかでも、添加物がどれほど使われているのかという点は、やっぱり気になる。自然の素材だけでつくられたもののほうが、食べるのも安心だし、身体にも心地いい気がします。

今回紹介するのは、無添加のおいしい食材を活かすことで、今治を中心としたしまなみ地域を活性化していこうと挑戦している人たちです。

株式会社ありがとうサービスは、愛媛・今治に本社を構える会社。

モスバーガーやブックオフなど全国チェーンのフランチャイズ事業を中心に手がけています。

3年ほど前からはフランチャイズ事業に加えて、温浴施設の指定管理や、チーズ工房、ハム工房の運営など、さまざまな事業を引き受けるように。

そうして事業の幅を広げていくなかで生まれたのが、「しまなみサンセバスチャンプロジェクト」。

スペインのサンセバスチャンを手本に、しまなみ地域にある素晴らしい景観や、豊かな食、温泉など。一つひとつの資源を単独で扱うのでなく、つなげていくことで、しまなみ地域の地方創生を目指すプロジェクトです。

今回募集するのは、そのなかでも要となる、ものづくり職に携わる人。日本では数軒しかない、ナチュラルチーズをつくる「チーズ工房醍醐」で働く人です。

経験はなくても大丈夫。一緒に働く人も、学び始めて1年で一通りの作業ができるようになっているようです。

無添加のものづくりに興味がある人や、地方創生に関心があるけどなにから始めたらいいかわからない人。そんな人に、ぜひチャレンジしてほしいです。あわせて、地方創生事業部のスタッフも募集します。

 

向かったのは、松山空港から車で1時間半ほど走った先。西予市野村町の「ほわいとファーム」という施設。

ほわいとファームは、酪農で有名な野村町の牛乳を使ったスイーツやソフトクリームなどの産品を販売している場所。

門をくぐると広々とした広場が広がっていて、奥にはソフトクリームと書かれたのぼりが。少し坂を降りた先にはドッグランがあり、ヤギも飼育されているみたい。

「チーズ工房醍醐」は現在、愛媛県の内子町にあり、来年の4月をめどにほわいとファームに移設される予定だ。

まず話を聞いたのは、ありがとうサービス地域創生事業部の部長、深澤さん。

この日は今治で仕事があるとのことで、オンラインでつないでもらった。

「ほわいとファームはもともと、売店と公園だけじゃなく、レストランも営業していて、地域の人にとっても思い入れのある場所だったんです」

「今レストランは休業していますが、建物を改修したのちに、来年の4月くらいからオープンしたいと思っています」

ほわいとファームは、20年ほど前につくられた施設。市が運営し、2年ほど前にありがとうサービスが運営を引き受けることに。

深澤さんは2年前に入社し、地方創生事業の事業部長として、サンセバスチャンプロジェクト全体を統括している。

「僕はもともとブックオフに勤めていて、西日本の支店長も経験させてもらっていました。ありがとうサービスもフランチャイズでブックオフの店舗を多く手がけていたので、なにか会合があるときによく井本社長と話していたんですね」

「会うたびに、『愛媛でこんなことをやっとるんや』って話をされていて。いい温泉と身体に優しい食べ物があって…。サンセバスチャン計画のことを、ずっと話してくれたんです」

話を聞いていた深澤さんは、一度見に行きたいですと、しまなみ地域を井本社長と巡ったそう。

「すごく覚えてるのが、今治に桜井海岸というきれいな海岸があるんですけど、そこにはサウナのような石風呂があって。それを再生したいっていう話をしながら、海を眺めてたんですね。そのときに、この計画ってなんか楽しそうだなって思ったんです」

「説明しづらいんですけど… 正直言って深く考えずに、楽しそうだからっていうのと、事業としてはまだまだこれからっていう段階の、荒地を耕すところから時間をかけてやっていくっていうことが、自分の性分に合っていると思ったんですよね」

実際に携わってみてどうですか?

「新しいことばかりで、個人的には楽しいです。お客さんの反応もリアルタイムで見えるし、改善したことが数字に表れるまでの時間も短い。ものづくりも施設運営も、伸び代はすごくあると思っています」

「今度内子町から移転するチーズ工房醍醐はもちろん、おいしい牛乳を使った商品や添加物を控えたハムやソーセージとか。おいしくて身体にいいものを楽しんでもらえるような場所にしていきたいですね」

ほかにも、広場にはハーブ園をつくって、ハーブを使った商品をつくっていきたい。ワークショップなど、見て食べるだけでなく、お客さん自身に体験してもらえる仕組みも考えているところ。

「勉強熱心で好奇心のある方がいいのかなと思います。あとはうちの会社名にもあるように、お客さんにありがとうって言ってもらえることを喜べる。人のために汗をかける、みたいな。そんなマインドが大事だと思いますね」

 

話がひと段落したところで、ほわいとファーム内を見て回ることに。

案内してくれたのは、ほわいとファーム支配人の宇都宮さん。施設ができた20年前から働いている方だ。

「最初はね、野村の牛乳を使っておいしいものをつくるっていうのがコンセプトだったんです。井本社長とはもともと面識があって、地域のおいしいものやきれいな景観を活かして、地域を盛り上げていくという考えに、すごく共感していたんですね。なので、今一緒にお仕事させてもらっているのもご縁だなと感じています」

ほわいとファームの経営が厳しくなった直接のきっかけは、2018年に起きた西日本豪雨。水害の影響で一時休業せざるを得なくなった。

それでも職員の尽力もあり、レストラン以外は営業を再開。もともと草っ原だった場所にドッグランをつくるなど、人を呼び、継続して運営する努力を続けてきた。

とはいえ、災害後から客足は減少していて、ここ数年は施設の維持管理もむずかしい状況に。そこで運営に手を挙げたのが、ありがとうサービスだった。

「観光拠点としての役割と、職員の雇用、そしてものづくりの技術。それらをなんとか残したいという思いを井本社長に伝えて」

「地域の子どもたちが野村の復興を思って歌った『野村の歌』のなかに、『ほわいとファームのソフトクリーム』を入れてくれていたんですよね。それだけ、地域の子どもたちにとっても思い入れのある場所なんだって実感して、これはやめるわけにいかんし、逃げるわけにもいかんぞって。未来のためにやらなあかんって、気持ちを新たにして復興に取り組んでいます」

宇都宮さんは引き続き施設支配人として関わり続ける予定。地域のことにも詳しいので、なにか困ったことがあれば力になってくれると思う。

 

最後に話を聞いたのは、チーズ工房醍醐で働いている加藤さん。新しく入る人は、加藤さんと一緒にチーズづくりに取り組むことになる。

今回は移転前の内子町に行くことができなかったので、オンラインで話を聞いた。

大学院までは魚の研究をしていたという加藤さん。一人暮らしで料理をするようになってから、添加物などが気になるようになり、より自然な味わいの食品や調味料を選ぶようになったそう。

食関係の会社に絞って就活するなかで、ありがとうサービスを選んで入社した。

職種はものづくり担当。ハム、ソーセージづくりなど、いくつかあるなかで、加藤さんはチーズ工房醍醐に配属された。

工房といっても、醍醐を立ち上げた職人とパートさん数人でつくっているため、規模はとても小さい。加藤さんは今、チーズづくりを教わっているところだという。

ものづくりのなかでも、チーズってすごく特殊なイメージがあるんですが、やってみてどうでしたか?

「そうですね… 最初、すごく感動しましたね」

感動した。

「醍醐でつくっているのは、日本ではまだマイナーな、固めるための酸を使わず、乳酸菌だけを使ったナチュラルチーズなんです。製法も工業的というよりは、家庭でつくっているような感じで。自分の好みに合ったものづくりができるなって思いました」

ナチュラルチーズとは、乳酸菌を発酵させたチーズのこと。日本で見かけるチーズのほとんどは、ナチュラルチーズを熱で溶かし、殺菌して再び固めることで保存性を高めたプロセスチーズなのだそう。

チーズ工房醍醐で販売しているチーズは、カマンベール、モッツァレラ、セミハード、リコッタの4種類。

新鮮な牛乳を低温殺菌して、乳酸菌を入れる。そこに液体を固めるための凝乳酵素を添加し、固まり始めたら型に詰めて保管。

それぞれのチーズで発酵、熟成させる時間が異なり、長いものだと1年熟成させるチーズもあるそう。

1年間チーズづくりを学んできて、一通りの作業はできるようになったという加藤さん。

ほわいとファームでは加藤さんが中心となってナチュラルチーズづくりをおこなうため、新しく入る人は加藤さんから学んでいくことになる。

醍醐のような手法でナチュラルチーズをつくっている工房は、国内では数えるほどしかない。一つひとつのチーズにこだわったものづくりをしたい人にとっては、貴重な経験と知識を得ることができる環境だと思う。

「僕がうれしいなと思うのは、食べた人の感想を聞けたときですね。最近だと4月に新宿の高島屋の催事に出させてもらって、売り場に立ったんです。そのときに『おいしかったよ』と言ってもらえたときは、やっぱりうれしかったですよね」

加藤さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「そうですね… 性格が細かすぎないほうがいいかもしれないですね」

繊細なチーズを扱うなら、細やかな人のほうがいいのかなと思っていました。

「ヨーロッパとかはそうなんですけど、チーズってもともと大雑把な人がつくっていたらしいんです。というのも、発酵のタイミングって、その日の気温とか湿度によって全然ちがうし、牛の体調によって牛乳の性質も変わる。発酵の仕組みは未知のことも多いので、まだまだ勉強していかないと、と思っています」

「なので、マニュアル通りにつくりたいっていう人だときついんじゃないかな。その時々に応じて、最適な方法を探って手を動かす。おおらかな気持ちで向き合える人だったらいいなと思います」

 

愛媛で動き出している、やさしい食と人をつなぐプロジェクト。まだまだ始まったばかりだからこそ、ゼロイチでつくっていく面白さがあると思います。

おいしいものを食べて喜んでもらう。そのうれしさを分かち合える人を待っています。

(2022/9/1 取材、2023/10/10 更新 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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