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こわくないIターン
移住してから
考える移住

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移住を考えるとしたら、どんな点が気になるだろう。

まずは働く先。仕事がないと生活できないので大事。

それから家探し。地域によっては不動産屋がなく、人づてに探さないといけないところもあるから気になる。

あとはコミュニティ。知らない土地で気軽に話せたり相談できたりするような人がいるかどうか。

それらが揃っていれば、移住のハードルはぐんと低くなるように思います。

宮崎・椎葉村。

日本三大秘境のひとつで、豊かな自然や昔ながらの暮らしが今も残っている村です。

KATERI WORKは、椎葉村にある6つの事業者で構成される協同組合。

今回は、KATERI WORKで働く人を募集します。

本人の希望や適性を考慮して、半年ごとに働く先を決めていきます。お菓子屋さんや採石場など、業種はさまざま。週休3日で働くこともできます。

時間の融通が利くので、農的な暮らしをしたい人は暮らしと仕事のバランスを取りやすいと思うし、地域で起業したいと考えている人は準備期間になると思います。

 

椎葉村があるのは宮崎と熊本の県境あたり。今回は熊本空港から車で向かうことにした。

1時間30分ほど走ると国見トンネルに入る。思ったよりもかなり長く、後から2.7kmもあることがわかった。

ようやく抜けると、傾斜の急な山々が現れる。

車道はその谷間を縫うように伸びていて、一車線になることもしばしば。いつ対向車が来ても対応できるように気をつける。

ようやくひらけた場所に着いた。ここが椎葉村の中心部。

村に着くと、KATERI WORKで代表理事を務める上野さんが迎えてくれた。

もともと地域おこし協力隊として椎葉にやってきた方で、いまは合同会社ミミスマスを立ち上げ、複数の事業を展開している。

「ミミスマスを立ち上げてから、仕事の創出をしてきました。というのも、椎葉の求人って偏っていて。林業か役場職員か福祉関係か、みたいな」

「東京のように総合職として働くような場所がない。移住を考えている人たちから、『なかなか仕事が見つからない』って声をもらっていたんです」

地域に仕事がないのであれば、外から仕事を持ってくればいいのではないかと考えた上野さん。ふたつのことに取り組んだ。

ひとつは、村外の企業に在籍しながら椎葉へ移住してくる人を募集するというもの。もうひとつは、アウトドアアプリを運営する株式会社ヤマップと協定を結び、山岳ガイドの弟子を募集するという内容だった。

「ひとつめは応募者が集まらなかったんですけど、ふたつめの山岳ガイドは決まって。今も椎葉で頑張ってくれているんです」

「このふたつのプロジェクトを通して、椎葉村では、土着性のある職種のほうが、わざわざ移住してみようと思ってもらえることに気づきました」

そんなとき、お世話になっていた役場職員の方から、「特定地域づくり事業協同組合制度」について教えてもらう。

人手不足に悩む複数の小規模事業者が、協同で組合を設立。移住者や地域住民を雇用し、季節ごとの労働需要に応じて、各事業者のもとへ派遣するというもの。

実際に椎葉の事業者に話を聞いてみても、年間を通じた雇用を生み出すのはむずかしいけど、繁忙期に人手を求める声は多かった。

そこで上野さんは、椎葉村複業協同組合(通称:KATERI WORK)を立ち上げる。

「かてーり」は椎葉の方言で、農作業などをお互いに助け合うという意味。

6つの事業者で構成されていて、お菓子屋、採石場、キャビアの養殖場、観光協会、老舗旅館、そしてミミスマス。

「僕のなかで、この6社はすごく地域の会社って感じがしていて。キャビアの養殖も椎葉のきれいな水があってこそできる事業だし、老舗旅館の鶴富屋敷さんも、ここでないと泊まることができない旅館」

「ミミスマスも自主事業で地元の茶葉を使った商品を開発しています。ここじゃないと体験できない職種というのは、大きなポイントだと思うんです」

新しく入る人は、希望と適性を考慮したうえで6つの事業者のうちいずれかに派遣される。事業者は半年ごとに継続・変更を検討していく。

さらに半年のなかでも、ひとつの事業者で働く期間は最大で8割。メインの事業者で4ヶ月ほど働き、残りの期間はほかの事業者で働くイメージだという。

「組合を経営させていただく身として、ふたつ視点があります。ひとつは、事業者のための組合であること。6事業者さんのビジネスに貢献することが、まず第一です」

「もうひとつは、来てくれる方のキャリアに貢献すること。たくさんの選択肢のなかから椎葉を選んでくれるわけじゃないですか。人手不足の解消のためだけじゃなくて、その方と一緒に育っていきましょうということは、組合員の皆さんに伝えていることです」

 

続いて、今回とくに人を求めているというふたつの事業者を訪ねることに。

まず向かったのは、お菓子屋「菓te-ri」。

ここは、椎葉夫妻が切り盛りするお店。

代表の椎葉昌史さんに話を聞く。

「ここはもともと実家のそば屋で、隣にお菓子屋があります。僕は30歳のときにUターンで帰ってきたんですね。でも、平成14年に台風が来て観光客が減ってしまって。ここを人気店にするぞってめちゃくちゃ頑張っていたんですけど、4年ぐらいでこのままじゃ無理だって気づきました」

「加工品って時間と距離を超えるじゃないですか。それでそばのフロランタンをつくってみたら、結構それが売れて。お菓子の売り上げも見通しが立ってきた2019年に、お店をつくることにしたんです」

「伝統食の継承とリブランディング」を大切にしている菓te-ri。

そばを使用したフロランタンにしたのも、もとは椎葉の伝統食材であるそばを絶やさないため。

また、椎葉に限らず宮崎県の生産者ともつながり、その地域ならではの食材を活かして商品をつくっている。

お店の看板商品は、地元宮崎の食材を生かしたバターサンド。

栗の渋皮煮をラム酒で漬け込みペーストにしてサンドした栗―ムバターサンドや、日向夏を使用した爽やかさが特徴の日向夏バターサンドなど。

味はもちろんのこと、パッケージも可愛らしい。

はじめは地元や宮崎市内で話題になり、オンラインショップをオープンしたことでさらに多くの注文があった。

こうしたお菓子づくりは、新しく入る人の仕事のひとつ。

たとえば、生地を焼いたり、クリームを絞ったり、出来上がったお菓子を梱包して発送したり。製菓の経験がなくても、誰でも簡単に始められるとのこと。

「もしその人がもっと関わりたいと思ってくれるなら、催事へもついてきてほしいし、商品開発も手伝ってほしいですね」

最近も、全国展開するスーパーマーケットや大手航空会社のグループ会社と、商品開発を進めているところ。

「忙しいですけど、未来しかないですよね、面白いです」

お菓子づくりを担当しつつ、お店での接客と販売も担当することになる。人と話すのが好きな人だと入っていきやすいと思う。

また、将来は自分でお店を持ちたい、商品開発もしてみたいという人にとっては、昌史さんのもとで学べることは多そうだ。

今回の求人で面白いのは、仕事と暮らしのバランスを自分で調整できること。

仕事に打ち込んでもいいし、暮らしに重きを置いてもいい。

椎葉での暮らしについて聞いてみた。

「神楽のコミュニティに入っていて。地区ごとに異なる舞をするんです。上椎葉地区では、12月の2週目に夜神楽祭というものがあって」

名前のとおり、前日の夕方から次の日の朝まで、夜通しで神楽を舞うお祭り。

「椎葉厳島神社は厳島神社の分社で、夜神楽のときだけ社殿から神さまを外に出して、神さまに楽しんでもらえるように舞を踊ります。僕も舞いますし、笛や太鼓の役割もあります」

「年に一回、神さまと向き合うというか、目に見えない何かに感謝する時間があると、心が真ん中に戻ってくるんです」

心が真ん中に戻る。

「日々仕事や育児やいろいろあるけれど、夜神楽祭の一日だけは何もかも忘れて、ただただ一年間の感謝を思う。その時間が僕のなかでは大きいですね」

椎葉には、夜神楽のほかにも昔からの営みが残っている。

たとえば、鯉農法を実践している地域の農家さん。

緋鯉を田んぼに入れて、稲につく虫たちを食べてもらう。また、鯉が田んぼのなかを泳ぐことで水が濁り、その結果、雑草が生えにくくなるという。

稲を収穫したあとは、地域の親子向けに鯉を捕まえるイベントを開催。五感を活かして遊べる時間も提供しているそうだ。

伝統的な焼畑も残っていて、それを守り抜いているコミュニティもあるとのこと。

仕事と並行して農的暮らしにも挑戦してみたい人は、いろいろなことを学べると思う。

 

菓te-riから車で15分ほど移動し、国見興業で代表を務める那須翔太さんにも話を聞いた。隣は奥さんの直子さん。

「僕らは川から砂利を採石してきて生コン用の骨材と、路盤材という道路の下地になるものに加工しています。生産量で言うと、一日あたり大体320トンかな」

ここに派遣される人は、採石してきた砂利から木の枝やゴミをひたすら拾うのが仕事。

「現場で路盤材の上にコンクリートを流すとき、中に溜まった気泡を抜くために振動をかけるんです。路盤材のなかに空き缶や木屑が入っていると、コンクリートと混ざって耐久性に影響するので、なるべく取る必要があって」

もともと福祉関係の仕事をしていた翔太さん。14年前に家業の国見興業に戻ってきて初めに取り組んだのが、ゴミ拾いの作業だった。

「初めは、なんでこんなことしてるんだろうって思ったこともありました」

「そのうちだんだんと、自分の仕事がどこにつながっているのか分かってきて。ゴミ拾いも考え方を変えればいい運動になるし、それでお金ももらえたらいいかって思うようになりました」

そのほかにも、石を砕く機械の修理に挑戦したり、大型免許をとって運搬をしたり。発想を転換して仕事の幅を広げたことで、面白さも感じるようになった。

基本的には、コツコツと一人で向き合う作業。

たとえば、少し心が疲れているとき。頭で考えるよりも体を動かしていたほうが、体調も良くなっていく感覚がある。少しペースを落として働きたい人にとっても、いいかもしれない。

「今、この川砂利から骨材をつくる業者が少なくて。椎葉は台風や土砂崩れの影響もあるので、需要はかなりあります。実際に修理や改良された道を見ると、役に立てたんだなって思いますよね」

今回は、ふたつの働き方を紹介しました。ほかにも事業者はあるので、上野さんと相談して決めてみてください。

住まいについては、組合で責任を持って家探しをしてくれるのと、椎葉では地域おこし協力隊が多く活動していたり、上野さんが経営するミミスマスのスタッフもいたりするので、困ったら気軽に相談できます。

また、図書館を活用したコミュニティスペースや自給自足を目指すシェアハウスなど、面白そうな取り組みもあります。

まずは移住して、いろんな仕事を経験しながら自分の理想の暮らしを考える。柔軟に考える時間を持つことができる仕事のように思いました。

(2023/09/27 取材 杉本丞)

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