ベルトに穴が一つもないのに、腰回りにピタッと心地よく留まる。
金具の摩擦だけで留める仕組みになっていて、座ったときや食事のあとでも、指先ひとつでちょうどいい位置に調整できる。
ECサイト「藤巻百貨店」をのぞくと、つくり手の技術に感心しながら、使うイメージが湧いてくるのが面白い。
ほかにも、開いたときの雨音が心地よい職人手づくりの傘や、使い込むほど手に馴染む天然藍染めの革財布など。もののよさだけでなく、使う風景が浮かぶような言葉や写真とともに並んでいます。

運営もとは、株式会社caramo(カラモ)。日本各地の逸品を届けるECサイト「藤巻百貨店」をはじめ、職人とともに生み出すオリジナルブランド「CENTENA(センテナ)」、それらの商品を取り扱う実店舗も展開しています。
今回募集するのは、ECサイトの記事ページを企画・制作するコンテンツエディター。
純粋にものが好き。さらに、どう伝えれば画面越しのお客さんへ伝わるか、よりよく改善し続けたいという探求心があれば、経験は問いません。
昨年caramoのオフィスは、神宮駅前から渋谷駅の近くへ移転した。
オフィス街にあるビルの6階。扉を開けると、目の前に藤巻百貨店の商品が並ぶショールームがあり、その隣がオフィスだ。
ハンガーラックにはたくさんのサンプルが掛けられ、奥には物撮り用の撮影スペースが。
撮影で使う素材を探す人もいれば、オンラインでミーティングする人も。各々がテキパキと作業している。

ショールームで商品を眺めていると、代表の中村さんが迎えてくれた。
「今、着用しているこのジャケットはCENTENAの新商品なんです。肩パッドがないからサクッと羽織れる。ジーンズにも合うカジュアルジャケットです」
いつも取り扱っている商品を着こなして、聞くと丁寧にこだわりを教えてくれる。

藤巻百貨店は、元伊勢丹の名物バイヤーとして知られた故・藤巻幸夫さんと中村さんが出会い、日本の優れたものづくりを世に届けるために14年前にスタートした。当時、独自のプラットフォームでECサイトを立ち上げることはめずらしかった。
日本の逸品を掘り起こし、発信し続けるなかで広がった取引先は、約500ブランドほど。その目利きとものづくりのネットワークを生かし立ち上げたのが、自社ブランドの「CENTENA」だ。
たとえば、江戸切子のワイングラス。
江戸切子はロックグラスやぐい呑が主流である一方、和食や日本ワインにあわせて一から開発した。ワイングラス特有の細い脚がないため、洗うのも楽になる。斬新なアイデアを形にするために、さまざまな職人とのつながりを持つのもcaramoの強み。

さらに、価値をまっすぐに届けるため、扱う商品は値引きをせず、すべて定価で販売している。
「職人も、自分たちが心血を注いだものを安売りされたくはないはずです。だから価格の安さではなく、『価値がある』と納得して手に取ってもらいたい」
藤巻百貨店が目利きした商品を紹介することで、お客さんは良いものと出会える。
そして実際に使ってもらい、毎日の暮らしを豊かにしていきたい。
「『このグラスでお酒を飲んだら、毎晩の晩酌がどれだけ美味しくなるか』『この服を着たら、商談で自信が持てるかもしれない』というワクワクや期待感を疑似体験してもらうこと。それが僕らのつくるコンテンツです」
「ものが余る時代だからこそ、選ぶことそのものを楽しんでほしいんですよ」

独自の目利きだけでなく、行動データや購買データから先読みし、サイトやコンテンツ、商品のあり方を柔軟に変えてきた。
「いい商品でも、革の厚みが何ミリだとか、重さが何グラムだとか、ものの情報なら職人さんに聞けばいい。コンテンツエディターの仕事は、商品を使うことでお客さんの暮らしがどう変わるかを、お客さんの目線に立って考えることなんです」
その結果、ECサイトの売上は前年同期比で約120%、店舗と合わせた全体の業績も右肩上がり。
「自社ブランドのCENTENAも好調で、新規のお客さんも増えてきました。当面の目標は、定期的にサイトを訪れてくださるファンを増やしていくこと。コンテンツはお客さんと商品の一番の接点なので、そこを磨き上げることは、会社としてさらに強化していきたいと思っています」
中村さんは、どんな人が向いていると思いますか?
「ライティングは未経験か、少し触った程度で型にはまっていない人のほうが活躍していたりします。経験があっても、自分の表現にこだわりすぎず、商品やターゲットに合わせて柔軟に表現を変えられる人のほうがいいですね」
「一生懸命に試験勉強をしたら、終わったあとすぐに答え合わせをしたくなるじゃないですか。それと同じで、自分で工夫して書いたものがどう届いたのか、数字を見てワクワクできる人にはおもしろい環境だと思いますよ」
入社して半年のECコンテンツエディターの田中さんは、コンテンツ制作は未経験だった。
前職は百貨店で約13年間、紳士服の販売やバックオフィスの業務を経験してきた方。

「百貨店で働く前から、編集やライターには興味があったんです。でも経験がなく採用まで至らなくて。知人に相談したら何か1つのものや商品に詳しくなれると、その知識が活かせるかもしれないと言ってくれて。それで百貨店に就職しました」
「ある程度、経験を積んだので転職しようと。そこで出会ったのがcaramoでした」
ECコンテンツエディターは、執筆だけでなくデータ分析から撮影ディレクションまで一気通貫で手がけていく。
商品ページは、ほとんど毎日更新。内容は、週に1回開かれるバイヤーや商品MDチームとの定例会議で詰めていく。
「普段から電車の中吊り広告や雑誌のキャッチコピーを見るときに、なぜこの言葉を使っているんだろうと考えるようになりました。わからない部分は周りのスタッフに聞きますし、ターゲットに近い親世代の生活を観察したりとヒントをもらいながら、ピンとくる文章を組み立てます」
田中さんが印象に残っていると紹介してくれたのが、江戸切子の新商品のページ記事だった。
切子界で名の知られた職人を父に持つ息子の新しい作品。販売するなら藤巻百貨店で扱ってほしいと職人側から声がかかり、初めて取り扱うことになった。

「切子は知っていたけれど、正直どこを見ればすごいのか、わからない状態でした。社内にある過去のページを見て工程やつくり方を学んだり、お店に展示されているグラスを眺めたり。自社製品を使ったりもして」
江戸切子についての知識を深めつつ、職人にも直接電話で話も聞いた。
「そこで知ったのは、職人になる前、デザイン専門学校で絵画から立体造形まで学んでいて。当時夢中になっていたのは、生き物や空想上のクリーチャーだったそうなんです」
一般的に青色や赤色で、竹、菊など決まった文様が入っている江戸切子。今回取り上げた江戸切子は、漆黒の背景に神秘的な月が浮かぶ斬新なデザインだった。

職人のこれまでの経歴や独特な感性がデザインに表れている。そう感じた田中さんは、職人自身のストーリーと独自のデザインに焦点を絞ってページを構成することに。
グラスが秘めた表情を伝えるため、撮影も工夫。漆黒のグラスにウィスキーを注ぎ、カットされた月の模様が黄金色に浮かび上がるさまを鮮やかに切り取った。
「商品がもともと持っているポテンシャルを、自分たちで引き出してお客さんに届けられるのは、大きなやりがいですね」
公開した翌日には、数字として顧客の反応がはっきりと返ってくる。反応が鈍ければ、タイトルを変えたり写真を差し替えたり、すぐにアップデートしていく。
隣で聞いていた枡田さんは、商品MDで、企画や開発にも携わっている。
数字や反応が返ってくるおもしろさを教えてくれた。

「田中さんと一緒にコンテンツ制作をした、スウェットパンツもそうですね。最初は商品の良さを網羅しようと『着心地がよくてシルエットも綺麗』と文章にして。写真も仕事着風のカチッとしたコーディネートを合わせていました。でも、いくら形が綺麗でもスウェットで堅い職場には行かないですよね」
「休日にだらしなく見せたくない人、という像を新たに見立てて。写真も休日のシーンに寄せ直して、『美脚シルエット』と見せ方をシンプルに絞りました。そうすると、購入数が上がったんです」

コンテンツエディターのほかに、CENTENAをはじめとする商品の企画・生産・在庫管理を担う商品MD、マーケティングやPR、実店舗のスタッフ、代表の中村さんなど、部署の垣根を越えて何度も言葉や見せ方を練り直していく。
「たとえば、『これは希少なイタリアンシュリンクレザーを使っていて』と提案したとしても、お客さんからしたら『で、それの何がすごいの?』となってしまいますよね」
「そこをコンテンツエディターが『使っていくとこんな風に風合いが育っていって、愛着が湧くんです』と、訳してくれる。私たちが職人さんから集めてきた専門的な情報を、お客さんに届く言葉へ変換してくれる翻訳家がコンテンツエディターなんです」

試行錯誤を重ねるチームの仲間として、どんな人が向いているのだろう。
「ものが好きなのはもちろんですが、それ以上に人が好きな人が向いていると感じます。自分がお酒を飲めなくてもお酒を愛する人が好きだったり、自分とは違うタイプの人たちの生活を面白がれたり。人の暮らしに興味を持てる人なら、職人さんの熱量を届ける面白さを存分に味わえるはずです」
ものの魅力を深く知り、使う人のことを考えてコンテンツを編集する。
他部署とも連携して、販売の仕方まで関われるのも大きな魅力だと思います。
戦略的にコンテンツを考え、職人的に言葉や写真を編集していく。
ここでの経験は、自身を成長させるものだと思います。
(2026/10/05 取材 大津恵理子)


