買いもの

人の生き方、働き方から
ものを選ぶ

日本仕事百貨の中嶋希実です。今、このWebサイトで買いものができるように準備を進めています。

日本仕事百貨で買いものができるようにしたいと考えはじめたのは、1年ほど前のこと。

準備が整う前に、どうして日本仕事百貨に買いものページをつくるのか、これまで考えてきたことを言葉にしてみようと思います。

  
もう10年以上前の話になりますが、学生時代の私は部活でテニスばかりをしていました。日に焼けて真っ黒だった私のあだ名は「ケニア」。今考えると、あんまりいい呼び名ではないですね。

勝手に親近感を感じるようになってアフリカに関するテレビ番組を見てみると、当時さかんに取り上げられていたのは貧困問題のこと。それがきっかけで、大学では国際協力について勉強することにしました。

大学で知ったのは、私たち日本人が輸入する食べものをつくるために、世界で困ったことが起きている、ということでした。

東南アジアからやってくるプリプリのエビは、マングローブの環境を破壊した養殖場で育てられていること。チョコレートは、児童労働をせざるを得ない環境の子どもたちがとったカカオからできていること。そうして人件費を抑えてつくったチョコレートは、日本のスーパーに格安の値段で並び、飛ぶように売れていること。

自分が日々の生活でどんなものを選び、なにを買うのか。

のんきな大学生活を送る自分でも、1つ1つの選択が巡りめぐって社会を変えていくんだということを知りました。

とはいえスーパーに行って「正しいもの」を買おうと思っても、どんなものを選んだらいいのかわかりません。

産地は書いてあるものの、どんなふうに育てられたエビなのかを知ることはむずかしい。フェアトレードやオーガニックなど、指標となる言葉はあるものの近くのスーパーにはあんまり売っていないし、毎日買うには値段もちょっと気になるところ。

結局買いものをするときには、値段や見た目くらいしか選ぶ基準を見つけることができませんでした。

  
その後、縁あって日本仕事百貨に関わるようになり、あっという間に6年が過ぎました。ほんとに、あっという間です。

世の中にはさまざまな仕事があって、いろんな生き方をしている人がいる。知れば知るほど、どんどん視界が広がるような6年間でした。

取材をしているときには、まるで本を読んでいるような感覚になることがあります。話を聞きながら、自分の生き方と照らし合わせてみたり、取材後に考えごとをしたり。

なかでも考える時間が長くなるのは、やっぱり社会の課題に配慮しながらものをつくったり、売ったりしている人に会ったとき。

  
オーガニックコットンの生地を販売しているパノコトレーディングの池上さんが話してくれたのは、肩肘張らずに生きる姿勢でした。

「生産者にも、地球にも、着ていただく人にも。極力だれにも迷惑をかけない仕事をしたくて」

正直につながる/パノコトレーディング 池上貴美さん

社会のために動くというより、自分にできる範囲のことをする。なるべく迷惑をかけないような生き方や選び方をすることなら、私にでもできるかも。

今でもこの池上さんの言葉は、ふとしたときに思い出す言葉です。

  
その後しばらくしてから取材に行ったkurkkuは、オーガニックな消費や暮らしのありかたを提案しているプロジェクト。ストイックに課題に取り組むというよりは、おいしさやデザインも大切にして、気持ちよく選べる食べものをつくっています。

やっぱり買うものの選び方に関わることしたいな、と思ったのは、ずっとkurkkuの活動を続けてきた小林さんの話を聞いたことがきっかけでした。

「『今の世界、なんか変だよね』っていうのはみんなどこかで思っているわけで。課題を解決しようと閉鎖的に突き詰めるのではなくて、現実の社会に関与、影響が生まれていくような動きをしたい。それが、僕がやる意味だと思うんです」

欲望、循環、未来/kurkku 小林武史さん

取材をして、そのまま転職しようかとちょっと迷ったのが正直なところ。自分はやっぱり、こういうことに関心があるのかも。

そんなときに、ふと自分の身の回りにあるものを見渡してみました。

環境にくわしい友だちが使っているのを真似したステンレスボトル。一緒に働くスタッフが個人のプロジェクトで仕入れるコーヒー豆。取材で話を聞いていたら思わず買ってしまった服。

身の回りにあるものは、目の前にいる人を手がかりに選んだものが増えていました。

「好きだな」と思う人がオススメしてくれるものは、結果として社会に配慮してつくられたものが多いことも、気に入っている理由の1つかもしれません。

人をきかっけにものを選ぶようになって、私の選び方は少しは健やかになったように感じています。

  
徳島県神山町ではじまったフードハブ・プロジェクトのみなさんがつくる食べものが好きなのも、入口は人だったように思います。

「日常をよくしていきたいんですよね。おいしい、こんな食べ方があるんだ、地元の野菜を買って家でもつくってみよう。そうやって家庭料理というか、日常がよくなっていく。結果として農業も続いていく」

「引き続き、順調に問題だらけ(笑)そのなかで最善をつくせている状態っていうのかな。当初考えていたコンセプトから、根底にあるものはなにも変わってない。こんないいチームはないと思える仲間にも恵まれています」

料理が人を人たらしめる/Food Hub Project 真鍋太一さん

フードハブ・プロジェクトで働く人たちは、みんなで笑いながら、険しい山に登っていくような挑戦をし続けている。

もちろんご飯がおいしいことが一番ですが、ここに行きたくなる理由は、なにより働く人たちの姿勢なんじゃないかと思っています。

気持ちのいい人たちがつくるものは、気持ちがいい。

せっかくお金を使うなら、気持ちのいいほうに使いたいなと思うんです。

  
日本仕事百貨では、これまでいろいろな生き方・働き方を取材して文章にすることで伝えてきました。

条件だけでなく、働く人の生き方や働き方から仕事を選ぶ。

ほんの少しですが、今までとは違う仕事の選び方を提案できたんじゃないかな、と思うことがあります。同じように、生き方や働き方から買うという選び方も紹介できるんじゃないか。そう思って、日本仕事百貨で買いものができるようにしたいと思いました。

どんなものを並べるのかはまだ検討中ですが、まずはこれまで取材で会ってきた人たちが関わるものから紹介していけたらいいな、と思っているところです。

  
伝え方を考えたとき、私たちがいいと思うものを押し付けるのではなく、いろいろな考え方があることを伝えたい。自分に合うものを、その人がちゃんと考えて選んでもらうことができるようにするためには、どうしたらいいだろう。

そんなことを考えていたときに取材したのが、ReBuilding Center JAPANの東野華南子さん。

「机が欲しいって言ったら、ちょうどいいサイズの机を自分でつくってくれる。デザインも大きさもお金も妥協せずに、欲しいものは自分でつくる。なんて豊かなんだろう、これが自由なんだなって思ったんだよね」

「世界って自分たちでつくれるんだっていうのを目の当たりにして。私は東野さんと暮らすことで、世界を因数分解して見ることができるようになった。欲しい暮らしは自分でつくれるってことの心強さを、みんながもう少し持てる社会になったらいいなって」

正しく、楽しく、たくましく
ReBuilding Center JAPAN 東野華南子さん

私も味噌づくりを自分でするまで、味噌がなにからできているのかよくわからないまま食べていました。

みんなで手前味噌づくりをすることで味噌がなにから、どんなふうにできているのか知ることができた。なにを基準に味噌を選ぶのが自分に合っているのかもわかるようになったんです。

記事で紹介するだけでなく、そうやって1つずつ身の回りのものを知るような機会も、イベントなどでつくっていきたいと思っているところです。

 
こんなことを考えて「日本仕事百貨で買いものができるようにしたい」と言い出したものの、私自身に物販の経験はありません。不器用なので、きれいに梱包ができる自信もありません。

秋には少しずつはじめられたらいいなと思っています。1つ1つ手探りで、日本仕事百貨らしい選び方を考えていきたいです。

(2018/8/21 公開 中嶋希実)

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