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The future is in nature

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ルオム」というフィンランド語の言葉があります。

意味は“自然に従う生き方”。普段から森を身近に感じ、森とともに生きるフィンランドの人々は、根っこにルオムの考え方を持ちつつ暮らしているんだそうです。

この考え方を取り入れ、群馬県北軽井沢の地で実践してきたのが、有限会社きたもっくのみなさん。

今回、この会社の一員として仲間に加わる人を募集します。

まずはきたもっくの運営するキャンプ場「スウィートグラス」で働き、ルオムという生き方や北軽井沢のことを知り、そして自分と向き合う。

その後は本人の希望や適性に応じて、きたもっくの展開するさまざまな事業に関わっていくことになると思います。

美しくも厳しい。そんな自然とともに生きる人を求めています。

 

同じ「軽井沢」という名前でも、軽井沢駅があるのは長野県、北軽井沢は群馬県。軽井沢駅から北軽井沢までは、バスで40分ほどかかる距離にある。

渋谷駅から北軽井沢直通のバスも出ていて、景色の移ろいを感じながらゆったり4時間かけて向かうのもいい。

現地に到着すると、木を眺める男性の姿が。代表の福嶋さんだ。

このあたりの木は、キャンプ場をつくりはじめたときに植えたものだそう。

「木と同じ時間スケールで成長していく。それってわりと、いいんですよ。持続可能な…とか言うんでしょうか。違いますかね?」

出会って早々、飾らない人だなと感じる。

10年かけて、1000本以上の木をひとりで植えたそう。

「ここはもともと採草地だったんです。当時の写真を見せたら、みんなびっくりだよね。えー、これがここかよ!って」

スウィートグラスの開業から25年。木が成長して根や枝を伸ばすように、きたもっくの事業も独自の発展を遂げてきた。

「おおもとには、“人が心地いい場をつくるにはどうしたらいいか”というテーマがあります」

たとえば、すべての施設に設置されているのが薪ストーブ。

火のあるところに人は集まり、団欒のひとときが生まれる。それもガスや電気と違い、火をおこしたら、そのあともじっくりと時間をかけて育てていく。

「そこに人と自然の適正な関係が生まれる。そうして『あさまストーブ』というひとつの事業が生まれました」

とはいえ、薪がなければストーブもただの鉄の塊になってしまう。

「じゃあ今度は、キャンプ場周辺の建材にならないような雑木広葉樹をどう活かすか。それから今は、木を伐る人も足りていない。だからうちには薪のある暮らしを提案する『あさまの薪』という事業もあるし、木を伐る部隊もいます」

ほかにも、キャンプ場から車で5分ほど離れた広葉樹の広がる「ルオムの森」には、木と親しむ樹上体験施設「スウィートグラスアドベンチャー」がある。その一角に佇む築97年の洋館を修復し、ブックカフェやレストラン、ショップとして運営もしている。

すべてが有機的につながって、心地いい場をつくるために機能している感じ。

それは自然の生態系にも似ているような気がする。

「もちろん社会も人をつくるけれど、ベースは自然が人をつくるんだなって。ここに生きてると思うんですよね」

きたもっくのスタッフは、絶えず1年間のサイクルを意識しているという。

「たとえば、浅間山が雪をかぶったら1ヶ月後にこのあたりも降るな、っていうような短いサイクルもそうですし、夏が過ぎれば翌年の夏をどうするか考えはじめます。ほら、地球は1年かけて太陽のまわりを一周するでしょ?それって自然なことなんですよ」

ただ、そのサイクルを身につけることは容易ではない。

とくに冬季は寒さも厳しく、採算に合わないというのが一般的な考え方。6年前までは、スウィートグラスも休業していたそう。

「でも、浅間高原の生活を表現するなら、冬の素晴らしさを紹介できないのは片手落ちだし、どこか間違っている。そう考えたんです」

思い切って冬季も開業してみると、たくさんの人が訪ねてきてくれた。

今では売り上げも冬季開業前の2倍以上になり、スノーシューを履いて雪山を散策するイベントなど、冬ならではの取り組みも行っている。

「年間通したスケジュールを立てられるようになったのは、すごく大きいことです。資本の原理ではなく、生活スタイルを中心に組み立てたから実現できたことだと思います」

仕事をする上でも、根っこにはこの土地での暮らしがある。

「1年間のサイクルを一通り経験し終えるまでは、ぼくたちもじっくり待ちます。肝心なのは、1年経ったあと、自分の生活実感のなかからサイクルを掴めるかどうかなんですよ」

農家のように自然と向き合う生業に関わってきた人であれば、その感覚は身近なものかもしれない。

とはいえ、経験はなくても大丈夫。1年間しっかりと向き合い続ければ、ここでの生活の厳しさも良さも見えてくる。

「今は新しい会社の形を模索していて。いい会社は世の中にたくさんありますけど、“理想”と言えるところはないんです。だったら自分たちでつくろうということで、三章からなるコンセプトブックをつくっています」

第一章は「ルオム」、第二章は「ルオムテラー」。自然に従う生き方を体現することについて綴ってある。

そして第三章のテーマが「The future is in nature」。直訳すれば“未来は自然のなかに”という意味だ。

これについては、福嶋さんもまだ模索中なのだそう。

「なぜ年間9万人もの人がキャンプ場に来るんだろう?と考えていて。普段の疲れを癒しにくるとか、単純な娯楽には当てはまらないんです」

たしかに。食べ歩きして、温泉に入って、という観光とは別物のような気もする。

「なぜなのか、はっきりとはまだ分かっていません。でもね、ひとつ言えることがあって。人間ってすごく小さいんです」

小さい。

「それを卑下する必要はないけれど、人間の小ささを知っておくことは、豊かに生きるためにはとてもいいことで。ここだと浅間山がそれを教えてくれるんです」

このあたり一帯の大地は、数百年に一度の噴火によって何度も塗り替えられてきた。今も活動を続ける浅間山が噴火するのは、明日のことかもしれない。

「浅間山の強さに比べたら、人間の力なんて話にならない。だからこそ、力を合わせないといけないよね。ここは浅間山のおかげで、そういう感覚が強く素朴に生まれる。その素朴な感覚が、人を育てるんですよ」

社会のなかでは、どんなスキルがあるとか、どれだけお金を持っているとか、分かりやすい基準をつくって比べてしまうこともあると思う。

けれども、自然は人間そのものの小ささを教えてくれる。身をもってその小ささを理解している人こそ、強い人なのかもしれない。ふと、そんなことを思った。

 

スウィートグラスのマネージャーを務める玉井さんは、北海道出身。

故郷の十勝と北軽井沢は、似ているところが多いという。

「浅間山に対する感覚は、十勝だとヒグマに対して抱いていましたね。圧倒的な存在が身近にいるというのは、今思えば大事な感覚でした」

「それとこっちに来て思ったのは、空が似てるなと。『十勝晴れ』って言うんですけど、ほかでは見たことないですね」

もともと釣りが大好きで、北海道の自然とともに育ってきた玉井さん。

大学院まで化学を専攻し、関東の大手メーカーの研究職に就くも、長くは続かなかった。

「研究者にとってはこれ以上ないような環境だったんですけどね。探求するベクトルを自然に対して向けたかったんです」

そんなある日、たまたま日本仕事百貨できたもっくの記事を見つけたそう。

「面接のとき、たしか社長が狼の話をしてくれたんですよね。自然や動物について当たり前のように楽しく話せる環境がうれしかったんです」

玉井さん自身は釣りをきっかけに、自然との距離を縮めることができた。

この場所にも同じく、人と自然との距離を縮められる可能性を感じたという。

「キャンプ場には、普段自然から離れて暮らしている方もたくさんいらっしゃいます。この空間やここに流れる時間には、訪れる人たちをぐぐぐーっと惹き込む力があるんです」

その最初の接点として、接客には力を入れている。

「入ったばかりのスタッフには、『思ったより接客業ですね』と驚かれることもあります。でも、ホテルのようにもてなす接客とは違っていて。通りすがりに挨拶をしたり、困っている人に話しかけたり。あまり“お客さま”として接しすぎるのもよくないと感じます」

明確に役割分担がされているわけでもないので、一人ひとりがさまざまな仕事に関わる。

毎朝森を歩き、撮影した写真をブログにアップする人もいるし、人手が足りなければカフェや樹上体験の助っ人にまわることもある。

「柔軟性はかなり求められると思います。社長も、一日経ったら180度違うアイデアを持ってきたりするので。最初はびっくりしますけど、それだけ考えた結果をしっかりと受け止めたいですよね」

 

「ルオムの森」で働く桑田さんも、多様な働き方をしているひとり。

「肩書きとしてはカフェ店員なんですけど、ツアーを組んだり、イベントを企画運営したり、かなりマルチにやらせてもらってます」

本場の北欧デザインに触れるため、フィンランドに6年間住んでいたことがあるという桑田さん。

帰国後の生き方を考えながら日本仕事百貨を読んでいると、「ルオム」という言葉が目に留まった。

「なんでフィンランド語が載ってるの(笑)?と気になって。実際に来てみたら、こんな面白い社長がいて、大自然に囲まれた環境がある。まさに興味の塊でした」

自然豊かな環境ゆえに、大変なこともある。

「冬はマイナス15度、まず生命力が試されますよね(笑)。この間は台風のせいで大きい看板が倒れたり、倒木したり。通常の仕事に加えて突発的な作業が入ることもあります」

「イベントを開いたって、雨が降る日も、寒くて景色どころじゃないときもあります。ただ、それも含めてルオムなんですよね」

 

取材の翌日、ちょうど桑田さんの企画しているイベントがあるということで、そのまま一泊して参加することに。

ツリークライミング体験や羊の“はるちゃん”の毛を紡いだ糸でブローチづくり、旬のりんごを使ったジャムづくりやオカリナコンサートなど、内容はさまざま。

予約制のワークショップもあるけれど、ふらっと来て楽しむこともできる。

「紅葉狩りをしたり、薪ストーブを眺めてきれいだなと思うとき、それはもうルオムを感じてるんですよ。感覚的にわかることをイベント化して共有することで、自然に一歩近づくきっかけになるかなと思っています」

福嶋さんは「ここに来ると未来が見えるんです」と言っていました。

森は何かをわかりやすく教えてくれはしないけれど、今の自分と向き合い、未来へと進む力をくれるような気がします。

この森から、どんな未来が見えるでしょうか。

(2017/10/27 取材 中川晃輔)

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