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「なるべくものを持たないミニマリストみたいな暮らし方は、単なる流行ではなく、徐々に広がっていくんじゃないかな、と最近思っているんですよね」
そう話すのは、リノベーションの家づくりを手がける株式会社ウダツの宮島さん。
何を持つかではなく、どんな時間を過ごすか。そんな豊かさを求める暮らしの価値観は、ウダツの家づくりにも重なるような気がします。
音楽の趣味を楽しめる家、フリーランス夫婦のための家、ペットが走り回れる家。
リノベーションによって古さを払拭するだけでなく、「ここならできる過ごし方」をデザインして提供してきました。
わずか10名足らずのメンバーで、物件の仕入れからリノベーションの企画、施工管理、売買まで一貫して行う会社のなかで、今回は職人さんと連携して家づくりを進めていく建築チームのスタッフを募集します。
建築現場での経験は不問ですが、設計や営業など建築や不動産に携わる仕事の経験があれば、きっと馴染みやすい。「家づくりのことを全部知りたい」という人には、手応えを感じられる仕事だと思います。
近々、新しい「働き方」も取り入れる予定とのこと。楽しみな気持ちで1年ぶりに事務所を訪ねました。
株式会社ウダツの事務所は、六本木駅から歩いて5分もかからないところにある。大通りから飲食店が点在する路地へ入り、小さなビルの3階へと階段をのぼっていく。
代表の宮島さんは「最近どう?」と、変わらない笑顔で迎えてくれた。
いつもは現場に出ている人も多いこの事務所。今日はなんだかスタッフさんの姿が多いような気がします。新しく入った方もいるんですね。
「そうなんですよ。ありがたいことに、最近案件の受注が増えていまして。手が足りないくらいで」
もともと不動産業界で働いていた宮島さん。
中古物件の仕入れから、企画、リノベーションをして、お客さんに届けるところまで自社で一貫して行う株式会社ウダツを立ち上げたのは、2010年のこと。
アフターサービスまで自分たちで行うので、無垢材など、経年変化しやすい素材でも安心して提案できる。素材の風合いにこだわったシンプルな空間づくりが、デザイン面での強みでもある。
宮島さんたちの家づくりは、まず物件の特徴や立地をよく観察するところからはじまる。その条件を生かして「どんなライフスタイルの人にマッチする家がつくれるか」と考えていく。
家族構成や職業などの表面的な要素だけでなく、趣味や価値観、ときには子どもの教育方針まで、かなり具体的に想像をふくらませていく。
「僕らが仕入れる物件は、主に40〜50年前のもの。当時は4LDKみたいに、部屋数の多さが『売り』だったんですよ。でも、最近は子どもも減ったし、個室より大きいリビングのほうがニーズがあるんです」
住む人を限定するようなデザインは避けつつも、宮島さんたちのつくる空間はただシンプルなだけではない。そこから具体的な暮らしを想像させるような、さりげない仕掛けが施されている。
「最近は大きなリビングに“小上がり”をつけることが多いんですよ。床からちょっと高さがあって、上でゴロゴロしてもいいし、壁際を掘りごたつみたいにすれば、子どもの宿題など、ちょっとしたデスクワークに使うこともできる」
タブレットで一緒に動画を観たり、子どもの様子を見ながら隣で仕事をしたり。
大きなテレビを囲む家族の「定位置」があるリビングではなく、「止まり木」的なフリースペースのある空間なら、家族がそれぞれのペースで同じ時間を過ごせそうですね。
「そうなんです。大きいリビングとかメゾネットタイプの物件だと、最終的な販売価格が新築物件と変わらないこともある。それでもうちで中古の物件を選んでもらえるのは、『ここなら自分たちらしい暮らしができる』っていうイメージを持ちやすいからだと思うんです」
アートを飾るための壁のくぼみ、大きめの植物も育てられそうなタイル張りのサンルーム。
公園の緑を借景したダイニングには、どんな料理を並べようか…。
ウダツの物件を住処に選ぶ人たちは、ハードとしての空間だけでなく、思い描いた「時間」を買うような気持ちで暮らしをスタートさせているのかもしれない。
「僕たちは、インテリア雑誌に出てくるような暮らしではなく、ごく普通の人たちが理想の暮らしを叶えられる家を提案したい。家電の配線がごちゃごちゃしないとか、散らかっていたものが片付くとか、趣味の道具をたっぷり収められるっていう、細かな便利さの積み重ねが暮らしの満足につながると思うんです」
「ただ、人は収納が増えるとその分だけものを増やしちゃうところがあって。1年後とかに話を聞きに行くと、結局収まりきらずに空間が狭くなってきているっていう話もよく聞きます」
わかります。自分のものを詰め込んでいくうちに、何もない状態で内見したときとは、ギャップが出てしまいますよね(笑)。
「そうそう。せっかくなら、買ったあとも気持ちよく暮らしてほしいから、たとえばアフターケアとして、片付けや収納のコンサルが受けられるサービスはどうかなとか。今いろいろ考えているんですよ」
宮島さんたちが提案する暮らしの豊かさは、小さな「気づき」を集めてできたもの。
小さいチームだからこそ、スタッフ一人ひとりが自分の気づきを活かせる場面も多いはず。
今回募集する建築チームのスタッフは、家づくりにどんなふうに関わっていくんだろう。現場監督の小松田さんにも話を聞かせてもらった。
前職で住宅のリフォーム営業の仕事をしていた小松田さんは、3年前にウダツに入社し、未経験から現場の仕事をスタート。
現場の掃除、図面や見積もりの作成補助などのアシスタント業務を経て、2年目からは現場の進行を担う監督として働くようになった。
「中古の物件は現場ごとに状況が違うので、施工の仕方も毎回異なります。最初は現場で職人さんの仕事を見たり、話したりしながら、違いを覚えていきました」
大枠となるデザインやコンセプトを決めていく企画チームに対して、現場の建築チームの工夫が生きるのは、配線や配管など目に見えない部分。
ウダツの家づくりはシンプルなデザインだからこそ、配管類を妥協すると天井が下がったり床が上がったり。最終的な仕上がりに影響が出てしまうことも多い。
「職人さんから『設計通りにできない』って言われても、それをそのまま企画側に報告するのでは意味がなくて。『これならできますか?』って別の方法を考えて職人さんに確認して、それをまた企画・設計チームに提案するのが私たちの仕事です」
なんだか通訳者みたい。
現場とデザイン、立場が違う人の間に立ってコミュニケーションをとっていくいうことは、お互いの仕事のことをよくわかっている必要がある。大変かもしれないけど、それだけ家づくりのことを全部吸収できる現場っていうことですね。
「いろんなことに興味をもって、言われなくても『私これやります』って自分から言ってくれる人のほうが成長できると思います。私も最初のころは、間違えて謝って、間違えて謝っての繰り返しでした」
いつかは、自分でなんでもできるように。
毎回の積み重ねで、少しずつ引き出しを増やしていける。続けていくことで、自分の成長を実感できるのはいい仕事だなと思う。
今年で3年目になる小松田さん。実は、今度新しい働き方に挑戦しようとしているところ。
「結婚して引っ越すことになって。新居はここから車で二時間くらいかかる場所なので、リモートワークで働いてみようと思っています」
毎日通勤するのは難しいので、ミーティングや現場には必要に応じて自家用車で通い、あとは自宅でデスクワークをしたり、アシスタントと連携して現場と連絡を取り合ったり。
“現場”監督がリモートワークというのは、ちょっと新鮮な感じもするけれど、この体制が確立できれば、都内だけでなく地方など遠隔地でも仕事の幅を広げていけるかもしれない。
代表の宮島さんも、この挑戦を応援してくれているのだそう。
「こんなふうに最初から最後まで、自分たちで家づくりを進めていける仕事って、ほかではなかなかない。せっかく3年続けた仕事なので、働き方を変えて続けていけることになって、よかったなと思います」
ライフステージが変わっても、自分で責任を持って働き続けられる。分業体制が確立されている大きな組織では難しくても、ここなら仲間と相談しながら働き方をカスタマイズしていけるのかもしれない。
ウダツの建築チームは4人のうち3人が女性という、この業界では少し珍しいチーム編成。唯一の男性スタッフである光畑さんにも話を聞いた。
入社から1年半。現場での経験を重ねていくうちに、より細かいところに気づく機会が増えたという。
「平面図を見ただけではわからないような壁の出っ張りとか、素材が変わるところの接合部とか、そういったところが以前より見えてくるようになりました。1年半続けていても、本当に毎回未経験のことに出会うので、仕事に飽きることがないですね」
前職では同じリノベーション業界で、設計を担当していた光畑さん。
同時に何件ものプロジェクトを分業で担当していくなかで、もっと現場を知りたいと思うようになり、ウダツに入社。
「今は同時に3件ずつくらい動かしていて。前職のころに比べると数は少ないけど、一つひとつの案件がすごく濃いなって思います。僕と同じように分業で物足りないと感じている人がいたら、一緒に現場に関わってもらいたいですね」
それぞれの現場は、監督とアシスタントを中心にチームで動いていく。
取材中も事務所のあちこちで、相談や確認の声が聞こえた。
「相談や決定のスピード感は大切だなって思います。現場で判断できずに職人さんの手を止めてしまうと、効率を落としてしまうので。コミュニケーションの工夫はどんどん進めていきたいですね」
そんな社内のコミュニケーションだけでなく、お客さんの声を聞くチャンスもあるのが、ウダツならではの環境。
最近光畑さんは、ウダツの物件を買って暮らしている人のところに話を聞きに行ったのだそう。
「実際の暮らしを見せてもらうと、次の仕事のヒントにもなります。企画して、答え合わせをして、っていうふうに繰り返しながら家づくりに携わっていけるから、引き出しも増えていくというか」
炊事や洗濯など、生活者としてのニーズは配管や電気などの工夫につながる。
たとえばロボット掃除機など使う家電の種類によって、ちょうどいいコンセントの位置や数なども変わってくるのだとか。
小さな気づきから、楽しい暮らしの時間をつくる。よろこぶ相手の顔が見えてくると、それがまた新たな気づきの種になる。
家づくりのすべてに関わることで身につく広い視野を、自分の武器として仕事に生かしていきたいと思う人なら、成長できる現場だと思います。
(2020/1/14 取材、2021/8/31 再募集 高橋佑香子)