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いのち、おいしさ
想像、循環、未来

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「人間も自然の一部で、循環の一部なんです。ここで体感してもらうことで、世界と自分がつながっていることを想像できる。そうすると、未来はもっとサステナブルなものになっていくはずなんです」

そんな気づきを、食や自然に触れてもらうことで伝えようとしているのがKURKKU FIELDS(クルックフィールズ)

KURKKU FIELDSは、昨年11月に千葉・木更津にオープンしたサステナブルファーム&パークです。

広大な敷地では農業や酪農、養鶏などが行われていて、訪れた人は農業体験をしたり、おいしいものを食べたり、アート作品を鑑賞したり。自然のなかでいのちの循環を感じ、自分の暮らしを考えるきっかけが生まれる場所です。

農場として耕してきた10年を経て、誰でも訪れることのできる施設としてオープンを迎えたものの、場づくりはまだまだ発展途上。ダイニング、ベーカリー、タイニーハウスの運営など、場内のさまざまな施設で働く仲間を探しています。

  

東京から木更津のKURKKU FIELDSへは、アクアラインを通れば1時間ほどで行くことができる。

日本仕事百貨の取材で、まだなにもなかった時期からお邪魔しているこの場所。ようやくオープンを迎えたという知らせを聞いてから訪ねるのは、今回がはじめて。

入口のゲートをくぐると視界がひらけて、いくつかの飲食店が並ぶ先に色鮮やかなアート作品が見える。小川の向こうではヤギが散歩していて、耕された畑が広がっている。

のどかな風景のなかにクリエイティビティがちりばめられた空間に高揚感を覚えつつ、最初に話を聞かせてもらったのは代表の小林武史さん。音楽プロデューサーであり、「ap bank」や「Reborn-Art Festival」などを手がけてきた方。

「やってみないとわからないことが多かったから、オープンしてほっとした部分もありつつ、改善の余地があるところも見えてきました。考え続けて、もっと“いのちのてざわり”を感じられる場所にしていくことがミッションだと思っています」

小林さんがこの場所の構想をはじめたのは10年以上前のこと。音楽活動をしながら、社会課題に取り組む団体を支援する「ap bank」や都市でのサステナブルな消費について問いかける「kurkku」など、環境や社会について一人ひとりが考えて生きていくきっかけをつくり続けてきた。

世界各地で起きるテロ、戦争、あふれる難民。エネルギーや環境の変化、広がる経済格差。大量につくることを優先する農業。

わたしたちがニュースを通して知る社会の課題は途方もなくて、どこか現実味がないように感じることがある。

けれど普段わたしたちがなにを買って、なにを食べるのか。一つひとつの選択が、巡り巡ってこれらの課題につながっている。

それはつまり、一人ひとりが未来を変えることができるということ。

「自分たちがなにを食べて生きているのか。商品として手にとるだけでなく、生産にまで意識が届くように。いのちの循環を可視化できる場所をつくろうとはじまったのが、このKURKKU FIELDSです」

「おいしいものを食べて、自然のなかにいる心地よさを感じる。その体感のなかに、いろいろな気づきが散りばめられている。いろいろな方に来ていただいて、自然や循環、サステナブルな生き方を考えるようなきっかけの場所にしたいんです」

場内にはオーガニックファームが広がり、水牛やヤギ、鶏の飼育もしている。この場所で育てた食材を使うダイニング、ベーカリーやシフォンケーキショップ。さらには里山で捕れたジビエを使ってソーセージなどをつくるシャルキュトリー、タイニーハウスの並ぶ宿泊施設に加えて、さまざまなアート作品が点在している。

「まだまだ完成ではなくて。気軽に立ち寄れるカフェや、長期で滞在できるような施設があってもいいかもしれない。この場所を訪れるきっかけに音楽があったり、未来を考えていくトークをしたり。できることは、まだまだたくさんあると思っています」

  

訪れた人が循環を感じられるきっかけのひとつが、さまざまな種類の野菜を育てているエディブルガーデンでの農業体験。

この場所を担当している有吉さんに、作業の合間をぬって話を聞かせてもらう。

「両親が農家だったんです。子どものころから畑を手伝って、土を触ったり匂いを嗅いだりしながら育ちました。地道な作業をすることで植物たちが姿を変えていくことが楽しくて、ずっと農業を仕事にしようと考えていました」

とはいえ農業以外の世界も見てみたい。そう考えた有吉さんは、青年海外協力隊としてネパールでの活動。帰国後は種苗メーカーに就職した。

「前職では植物を観察してデータを集め、新しい品種をつくっていました。おもしろい仕事でしたが、やっているうちに違和感を感じるようになって。人が生きていくための農業、本来の循環の流れから少し外れているような感覚があったんです」

「世界全体でみても、効率を優先した農業や種の問題など、本来の目的が本来のものとは違う方向へ向かっているような気がしていて。あるべき循環を畑のなかから考え、伝えてける農業従事者になりたいと思ったんです」

そう考えていたときに日本仕事百貨の記事が目にとまり、昨年の9月からここで働くことになった。

それまでエディブルガーデンをつくってきたチームに加わり、メンバー3人がそれぞれ得意なことを活かしながら、さまざまな体験プログラムを企画、運営している。

「採れたての野菜はこういう味がするんだとか、こんなふうに実るんだとか。スーパーに並んでいる姿は知っていても、どう育つ野菜なのか知らない人は多いんです。農業体験でカブを収穫して、その場でかじっちゃうような子どももいますよ。ふだん土に触れることのない人たちに、発見がある機会をもっと増やしていきたいですね」

ワークショップと聞くと華やかな仕事にも感じるけれど、仕事の大半は土を耕し、野菜を育てること。

どんな肥料を入れると土地が豊かになるのか、どう水が流れるとおいしい野菜が育つのか。場内でオーガニックファームを運営する農地所有適格法人「耕す」のメンバーとも相談しながら、どんな畑をつくるかを考え実践している。

「レストランから出てくる生ゴミをどう畑に戻していくのか、循環の和をつくる方法の検証もしています。おいしい野菜をつくって、レストランを通してお客さんに届けていく。生産現場と消費の現場がこれだけ近い距離にできるからこそできることを考えていきたいですね」

  

見晴らしのいい場所にあるダイニングでは、エディブルガーデンの野菜やシャルキュトリーでつくったソーセージ、平飼いで育てた卵など、この農場で育てた食材を使った料理を食べることができる。

この日のオススメは、期間限定の「水牛の三種チーズとじゃが芋のピザ」。

客席から見える窯で焼き上げたピザを頬張ると、これまで食べたことのないシャキシャキしたじゃがいもの食感と、チーズの濃厚な香りが口に広がる。

店内には平日にもかかわらず家族連れなどでにぎわっている様子。

そのなかをテキパキと歩きお客さんに声をかけているのが、ホールをメインに担当している八巻さん。

これまでいくつかの飲食店で、9年ほど接客の仕事をしてきた方。そんな経験を持ちつつも、本人いわく、人見知りなんだとか。

「しゃべるのがそんなに得意ではないんですよ。料理を通してお客さまと話すきっかけは自然と生まれるし、自分に知識があれば楽しい会話ができる。それが魅力でこの仕事を続けているんだと思います」

「地産地食をベースにしたお店で働いていたときに、農家さんの食材に対する想いとか、野菜を育てる苦労を知りました。僕自身がより生産現場に近いところで経験を積むことで、もっとお客さんに伝えられることがある気がしてここに来ました」

ダイニングでは、前回の取材で話を聞かせてくれたシェフの森本さんが腕をふるっている。

フレンチや和食などのジャンルにとらわれず、素材の状態をよく見て料理をつくっていく話がとても印象的だった。

「森本さんの料理は味が、おいしいのはもちろん、身体に染みていくような食事なんです。相手の体調を考え、つくるものを変えることもあって。料理に対する情熱が強くていろんなことを試していくので、僕も新しい発見が多いです」

ダイニングを訪れる人の興味は人それぞれ。

KURKKU FIELDSのコンセプトに共感して訪れる人もいれば、おいしいお店があるからと料理を食べに来る人、オープンを聞きつけて地元の人が来てくれることもある。

さまざまな目的のある人たちに対して、どんなふうに接しているんでしょう。

「まずはおいしく食べていただくことが大事だと思っています。その様子を見ながら、どういう背景があるのかをお伝えするようにしていて」

「簡単な紹介で終わることもあれば、裏にあるミミズコンポストや畑をご案内することもあります。お客さまとの関係がダイニングのなかで完結しないところが、この場所のおもしろさだと思います」

  

体感するところから、自然との関わりや循環に気づく。

今後その大きな役割を担っていくのが、タイニーハウスでの宿泊プログラム。

KURKKU FIELDS全体のマネジメントも担当している新井さんに、宿泊施設について話を聞かせてもらう。

「毎朝鶏が鳴いて、ベーカリーではパンを焼きはじめ、牛舎で搾乳をしてチーズをつくる。畑から食が生まれる瞬間を体感していただくために、ここで朝晩を過ごす宿泊のプロジェクトを定常的に運営していきたいんです」

宿泊できるのは、タイニーハウスと呼ばれる小屋が5棟並ぶ場所。

今はさらに新しいものを、ワークショップに集まった参加者とともにつくっているところ。この場所にはどんなものがあるといいか、一緒に考えながら進んでいるそうだ。

「これからの豊かさを考えてたとき、たくさんのものを所有することとか、大きな家に住むことだけが価値ではなくなります。タイニーハウスは小さいぶん自然を近く感じられるし、部屋にこもるだけではない滞在を提案することにもなる。ここで過ごすことで、ふだんの暮らしを見つめ直すきっかけがつくれたらと思っているんです」

本格的な運営はまだまだこれから。あたらしくここを担当する人と一緒に、どんな時間を過ごしてもらうかを想像しながら、料金やオペレーション、食事の形をつくっていきたいと考えているそう。

「この時期は気持ちがいいから外で晩ごはんを食べるとか、ダイニングのメンバーと冬ならではのコース料理を考えるとか。シーツひとつにしても、環境にいい洗剤を使ってくれる業者さんを探すのか、自分たちで洗うのがこの場所らしいか。一つひとつ考えて、決めていきたいんです」

マネージャーのような、コンシェルジュのような、寮母のような。また会いに来たくなる、人懐っこい人に似合う仕事だと思う。

「いろいろな体験をすること、おいしいものを食べること。もしかしたら僕らが働いている姿を見て、なにか感じてもらえることがあるかもしれない。ここに来て強烈に変わってもらうというよりも、楽しい時間を過ごすなかで、いろいろな気づきのある場所を一緒につくっていきたいんです」

広大な土地を使い、長い時間をかけて育んでいく場づくりは、まだはじまったばかりです。

どこかにお手本があるわけでもなければ、誰かが正解を知っているわけでもありません。

地道に、心地良い空間やおいしいものをつくっていくことが、少しずつ世界を変えていく。ここで働く人たちは、それを信じ、日々妥協せずに実践し続けています。

ピンとくるものがあれば、まずはお腹をすかせてKURKKU FIELDSに行ってみてください。おいしいものと、心地よい自然が出迎えてくれるはずです。

(2020/1/31 取材 中嶋希実)

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