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同級生より大人で
先生よりもちょっと近い
斜めの関係で伴走する

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瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)。人口は約7500人で、温暖な気候を生かした柑橘類などの栽培が盛んな地域です。

この島にあるのが、広島県立大崎海星高校。この高校は6年前、生徒数の減少から統廃合の危機に直面しました。

島の高校を、なんとか残していきたい。そこで行政と学校、地域が一体となって始めたのが、大崎海星高校魅力化プロジェクト。

高校のカリキュラムを見直し、地域全体をフィールドにした課題解決の授業をつくったり、公営塾や学生寮を設立したり。島一丸となって、さまざまなチャレンジをしてきました。

今回は、学校内に設置されている公営塾のスタッフを募集します。

子どもたちと一緒に成長したい、自分の経験を教育に生かしたい。そんな思いを持つ人を待っています。

(取材はオンラインで行いました。現地の写真は提供いただいたものを使用しています)


大崎上島は、広島県と愛媛県のあいだに浮かぶ島。広島県の竹原港からフェリーに乗って30分ほどで到着する。

役場やお店が集まる中心地に建っているのが、大崎海星高校。島内外から集まったおよそ90人の生徒がここで学生生活を送っている。

まずは学校のことについて話を聞かせてもらうことに。オンライン通話をつないでくれたのは、校長の大久保先生。

「4月に赴任したんですが、すぐ臨時休校になってしまってね。なかなか生徒の顔が見られなくてつらい時期でしたが、今は私自身も先生や塾のスタッフに助けてもらいながら、生徒と一緒にいろんなチャレンジをしています」

大崎海星高校では、大崎上島学という授業を通して、生徒が地域と関わる機会をつくっている。

授業では、農業や漁業、機械などいくつかのグループに分かれ、地域の人に話を聞いたり、仕事を体験したりするそう。それぞれのグループは、生徒自身の興味関心に沿ってつくられていく。

最近行われたという2年生の成果報告会では、体験した仕事の魅力を伝える動画をつくって発表するなど、いろいろな工夫がなされていた。

「先代の校長は、発表の場が人を成長させるという思いを持っていました。人前で話すことって、やっぱりはずかしいじゃないですか。最初はうまく話せなかったり、質問に答えられなかったりする」

「けれども生徒たちはちゃんと練習したり、できる子を観察したりして学んでいくんですよね。一所懸命自分の考えや思いを伝えようとする。その姿を見ているとすごくうれしくなりますよ」

大久保校長も、これまでの思いを引き継ぎつつ、魅力化プロジェクトをさらにレベルアップさせたいと考えているところ。

「これからは変化に対応する力がより求められていくと思うんです。島内にある中高一貫校では、数年以内に海外から60名の留学生を迎え入れる予定で。そうなれば、島の子どもたちの環境も変わると思います」

「そういった変化って、決して島だけの話ではない。まずは島の変化を良いチャンスと捉えて、文化の異なる人とコミュニケーションする機会も増やせたらいいなと考えています。島という狭い環境だからこそ、外からの刺激をうまく力にしていきたいですね」


魅力化プロジェクトの柱のひとつである公営塾「神峰学舎(かんのみねがくしゃ)」は、高校の校舎内に設置されている。

塾と聞くと学校とは別で通うものというイメージがあるけれど、大崎海星高校では塾スタッフと学校教員の距離も近く、指導内容や生徒の状況について日々共有しているそう。

話を聞いたのは、2020年4月から働いている神田瞳さん。

神田さんは島根県の出身。大崎上島に来るまでは、地元の高校で教員をしていた。

「教育の現場に入ってみて、先生ってやっぱり忙しいんだなって実感したんですよね。もちろんわかってはいたけど、想像以上だったというか」

「教科指導以外でも、もっと生徒一人ひとりのやりたいこととか、悩みに向き合いたい。だったら一度教員を離れて、ちがう形で教育に関わりたいと思ったんです」

大崎上島のことは、全国の高校魅力化プロジェクトが集まるイベントで知り、興味を持ったそう。

働いてみて、どうですか。

「一人ひとりにちゃんと時間をかけてあげられるのは、塾のスタッフだからこそできることだと思いますね。勉強はもちろん、趣味の話から将来の悩みまで一緒に考えられるのは、すごくやりがいがあります」

塾に登録している生徒は現在60人ほど。全員が毎日来るわけではなく、それぞれが部活動や個人の予定に合わせて塾に行く日を調整している。

教科指導だけでなく、島外で働く人の話を聞いて将来のことを考える時間をつくったり、進学に必要な志望理由書に一緒に取り組んだりなど、関わりしろは大きい。

また、神田さんは非常勤で学校の授業も担当しているそう。教員の経験があるとはいえ、塾スタッフが授業も担当するのはめずらしいことなのだとか。

学校や魅力化スタッフ、地域の人たちがこの島で築いてきた土台があるからこそ成り立っていることだと思う。

「私、生徒からひーちゃんって呼ばれてるんですけど、あるとき『ひーちゃん聞いてー、やりたいことできたんだよね』って、話してくれた子がいて」

その子は学校の授業にあまり興味を持てず、勉強へのモチベーションに悩んでいた。

「聞いたら、中国語やりたいんだよねって。理由は台湾においしいものを食べにいきたいから、中国語を知ってると良さそうっていうことだったんですけど(笑)」

そこで神田さんは簡単な中国語の教材を用意して、放課後や時間が合うとき、一緒に勉強してみることに。

「中国語やってみたいって、学校の先生にはなかなか言いづらいと思うんです。やりたいことや興味があることを素直に話せる存在っていうのかな。先生っていう立場ではなく、個人と個人で関われるのが、私は心地いいです」

神田さんはいま、3年ある任期の1年目。ゆくゆくはもう一度地元で教育に関わりたいという思いを持ちつつ、任期満了後も島に残ることも考えているそう。

島には魅力化スタッフを経験した後、学校の授業に関わり続けている先輩もいる。将来を相談できる人がいる環境は、心強いと思う。


神田さんと話していると、ひときわ明るい声が飛び込んできた。

会話に加わってくれたのは、左から蒔田さんと千葉さん。ふたりとも大崎海星高校の1年生で、神峰学舎の塾生でもある。

千葉さんは島外の出身。学生寮で暮らしていて、「好きな食べ物はスイカとスパゲッティとカレーです!」と、元気よく教えてくれた。

「うちから見た塾の先生は、学校の先生より距離が近い大人っていう感じかな。寮に住んでいるんですけど、たまにひーちゃんが遊びに来てくれて、一緒にお菓子つくったりしてます。ひーちゃんはお菓子づくりが上手なんですよ」

千葉さんのように島外から来た生徒にとっては、1年生の最初は特に不安な時期。新しい環境で新しく関係性をつくっていくなかでも、同級生とはちがう距離感で話せる人がいるというのは、安心できるのかもしれない。

すると、それを聞いていた蒔田さん。

「学校内で会ったときも、昨日なにしてたん?とか、最近どう?って声かけてくれて。気軽に話してくれるので自分からも話しやすいですね」

「塾に行かない日が続くと、今日は来ないの?ってさみしそうな目で言ってくれるので、これは今日行くしかない!ってなります(笑)。勉強の振り返りシートに絵を描いたら、コメントを絵で返してくれたりする先生もいて、勉強もするけど楽しい場所だなって」

ふたりの話を聞いていると、塾の先生たちとの親しい間柄が伝わってくる。その距離感は、なんだか見ていて微笑ましい。


最後に話を聞いたのは、4月に魅力化スタッフに加わった勝瀬さん。

勝瀬さんが主に担当しているのは、夢☆ラボというキャリア教育授業。いろんな仕事の話を聞いて、自分は何をしたいのか自己理解を深める時間だ。

「こんな人の話を聞いてみたいっていう生徒の希望に合わせて人を探すことが多いですね。看護師やウェディングプランナーなど、なりたい職業に就いている人の話を直接聞けるので、生徒にとってもいい時間になっていると思います」

ときには、企画に生徒が興味を持たないことも。それもスタッフの学びにしながら、ボールを投げつづけることが大切だと話す勝瀬さん。

どんなふうに働きかけをするべきか。生徒の自主性を大切にしながら、スタッフのなかでも日々試行錯誤を続けている。

「ウェディングプランナーさんの回は、話を聞いたあとに島で結婚式をしたいっていう話を生徒がはじめて。じゃあ今度やってみようかって」

え。結婚式を、ですか?

「そうなんです(笑)。島に結婚する人がいて、式を挙げる予定がないってことで、じゃあ私たちで結婚式を開いてみようって」

そこからは夢☆ラボの授業を飛び出し、生徒たちが自発的に準備を進めるように。参加費から予算を逆算して、ウェディングドレスを買ったり、海岸に敷くレッドカーペットを用意したり。それぞれのアイデアも盛り込みながら形にしているところだそう。

「メイクは私がするとか、自分たちで手づくりできるものないかなとか。大人がなにか言わなくても、自分たちで勝手に動いていっちゃうのがめちゃくちゃいいなって思ったんですよね。塾の先生じゃなく、友達みたいな感覚で進んでいくのが、僕自身すごく楽しくて」

横から口を挟むことなく、ただ一緒に楽しんで隣を走ってくれる。そんな存在は子どもたちにとって何よりも心強いだろうな。

勝瀬さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「なんだろう…否定をしない人がいいんじゃないかなって思うんです」

否定をしない人。

「生徒のやりたいことや興味があることって、本当にそれぞれちがっていて。昨日と言ってることちがうじゃんっていうこともあるんですけど、『ほんとにそれやりたいの?』って問い詰めるんじゃなくて、『じゃあちょっとやってみよっか』って前向きにできる人」

「スタッフ同士も、これをやってみたらどうだろうって、日々試行錯誤を繰り返しています。ほかの人を見て刺激も受けるし、困ったときには相談できる。塾だけじゃなく学校も地域もおなじ方向を向いている場所なので、自分も楽しんでチャンレジしたいっていう人が来てくれたらうれしいですね」

ここで育った子どもたちが、どんな未来をつくっていくのか。まだその結果まで見ることはできないけれど、ここでは着実に明るい未来の芽が育っているように感じました。

先生でも“社会人”でもない、身近なひとりの大人として、できることはたくさんあると思います。

(2020/11/27 オンライン取材 稲本琢仙)
※撮影時にはマスクを外していただいております。
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