※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
学校祭や地域のお祭りなど、大勢の人とチームを組んで、何かを成し遂げたときの達成感。何気なく訪れたイベントで得られた、人やものとの心に残る出会い。
つくり手でも、参加者としてでも。イベントが持つ熱量に魅力を感じる人に、知ってほしい仕事があります。

フジロックフェスティバルでNGOの活動を紹介する『NGO VILLAGE』や、地球にも健康にも優しいライフスタイルを提案する『ロハスフェスタ』、京都祇園祭での『ごみゼロ大作戦』など、さまざまなイベントを手がけ、環境問題をはじめとする社会課題にアプローチしてきました。
今回は、イベントの立ち上げから当日の運営まで、ゼロから形にしていく企画制作スタッフを募集します。
(現地での取材は2019年12月19日に行いました。その後、新型コロナウィルスの感染拡大を受け採用活動を中断していましたが、再開のため、2021年4月12日に一部内容を変更しています)
渋谷駅から歩いて10分ほど。静かな住宅街にあるマンションの一室に、グリーンアップルのオフィスがある。
まず話を聞いたのは、代表の中島さん。

最初に緊急事態宣言が発出された2020年4月には、日本最大級の環境イベント『アースデイ東京』をオンラインで開催。
聞けば、それまでオンラインイベントを手がけたことはなかったそう。どうして実現できたのだろう。
「どのイベントも、実現に向けて想いを形にしていくプロセスは同じなんです。オンラインでもリアルでも、手法がちがうだけでやるべきことは一緒だと思っていて」
「どういうメッセージが伝わるのか、参加してくださる方のことを考えながら、関わる人たちとともにつくっていく。その根幹はずっと共通していること。オンライン開催はその後もすんなりと浸透していきましたね」

イベント全体の指揮をとり、クライアントと並走するコーディネーターのような役割を担っている。
普段は各自の担当イベントをめいめいに進めていくような働き方だけど、会社として初の試みとなった『アースデイ東京2020』のオンライン化に向けては、社員総出で力を注いだ。
「一丸となったことで新しい気づきも得られたし、チーム全体でノウハウやスキルを共有できたのがよかったですね。イベントに特化した感染症対策ガイドラインも、専門家へのヒアリングや文献をもとに新たにつくって。状況に合わせた提案の幅も広まりました」

学園祭の実行委員長を務めたり、学外イベントにもボランティアで関わったりと、とにかくお祭りやイベントが好きだった。
「そのボランティアで任されたのが、駅で車椅子のお客さんを誘導する係でした。ところが当時はまだ駅のバリアフリー化が進んでいなくて、エレベーターには一台ずつしか乗ることができなかった」
それではあまりに時間がかかってしまうし、階段を使うにもスタッフの人手が足りない。
するとその様子を見たほかのお客さんが手伝いに来てくれたという。
「スタッフもお客さんも関係なく、みんなで汗をかいて、車椅子の方たちを階段で運んで。そのときに、人の集まる場ってすごいなと感じました」
「多くの人が集まれば、困難にも対峙するパワーが生まれる。そんなイベントが持つ力を、社会が抱えている課題に結びつけたら、世の中をもっと良くできるんじゃないかと考えたんです」
大学卒業後はコンベンション会社での勤務を経て、『アースデイ東京』の事務局長を5年間務めた中島さん。2011年にグリーンアップルを立ち上げた。
「今まで手がけてきたイベントは、環境に関するものが多かったのですが、最近は、グリーンアップルというチームに対して依頼が来るようになって。SDGs、防災、障がい者スポーツ、認知症、一次産業支援、地方創生、特別養子縁組など、取り組むテーマの幅もすごく広がっています」

代々木公園を舞台に、防災用品の展示販売や避難時の動きを学べるブースなど、40以上の企業や団体がコンテンツを展開。グリーンアップルは運営事務局を担った。
イベントが生まれた背景には、防災を身近に感じていない若年層の存在があったそう。
「参加者は高齢者が多いけれど、どちらかというと、より訓練が必要なのは、いざというとき救助側にまわる若い人たち。このイベントには、防災訓練への入り口をつくるという目標がありました」
では、どうすれば若い人たちが、わざわざ防災イベントに足を運んでくれるのか。
ターゲット層にアプローチできるようなテーマを考え、出展者を集め、設営や音響などあらゆる協力会社とチームを組んで、イベントをつくりあげる。
たとえば、会場内を楽しくまわれるようにスタンプラリーを用意したり、VRで災害を疑似体験できるコーナーを設置したり。
さらに著名人のトークショーやコンサート、子ども向けの消火体験コーナーをつくるなどして、家族づれも呼び込んだ。

「本当に伝えたいメッセージがしっかり伝わって、訪れた人たちの次のアクションにつながるかどうかが重要だと思います」
次のアクション、というと。
「たとえば音楽のコンサートだったら、後で気に入った曲をダウンロードするとか、CDを買うとか。そうやってつながっていくことですね」
この防災フェスだったら、次のアクションは地域の防災訓練に参加してくれること。
でも、音楽イベントなどと比べると、ハードルは高そう。
「本当にそう思います。社会課題って答えが見えづらいし、何が正解かもわからない。一生懸命準備しても、うまく次につながらないかもしれない。暗中模索しながらやっていくのが楽しいのかなと思います」
「僕らがやっていきたいのは、イベントを通じて社会課題にアピールして、少しでも解決に導いていくこと。いかに社会を変えていけるかってことに、一緒にトライできたらいいなと思っています」

一方で仕事内容は多岐に渡るし、当日の運営スタッフまで含めてかなり多くのメンバーを取りまとめることになる。
「僕らは何もないところに入り、土台を整えて、お客さんを呼んで、終わったら片付けまでする。イベントを、最初から最後までつくる仕事だと思っています。今何をする必要があるのかいつも考えて、全体の指揮をとっていくことが大切です」
会場や日程、クライアントによってチーム編成や進行方法も変わるので、プロジェクトマネジメントの経験がある人に来てもらえたらうれしいとのこと。
クライアントからは、漠然としたアイデア段階で話を持ちかけられることも。そういうときは、具体的なアイデアを提案して、対等に意見を交わしあいながら思い描くイメージを一緒に形にしていく。
その責任や楽しさを知っているからこそ、「仕事は仕事」と簡単に割り切れない部分もあるという。自分ごととして仕事を捉えて、全力で取り組むことが必要かもしれない。
「全部一人で解決する必要はありません。イベントは、チームでつくるもの。音響なら音響、照明なら照明、それぞれのプロフェッショナルがいるから、安心していい。大切なのは『困ったときに、チームの誰に相談をすればいいか』をわかっていることだと思います」
次に話を聞いた二家本(にかもと)さんは、日本仕事百貨の記事をきっかけに、新卒で入社した方。
芸術大学出身で、学生時代から数多くのアートイベントの企画運営を経験してきたそう。

二家本さんが近年担当しているのは、「渋谷おとなりサンデー」という渋谷区のイベント。
毎年6月の第一日曜日を、近隣の人たちと交流を持つ日、「おとなりサンデー」と設定。6月の1ヶ月間、渋谷区内の住民やお店が主体となって、交流の場を企画してもらう取り組みだ。
「町会や商店街の組合から若い人が減っていって、地域コミュニティが廃れていくことに自治体は危機感を抱いていて」
「まずは近隣の人と顔見知りになるところからはじめてほしいと、このイベントを開催することになりました。毎年この日が、地域のつながりを考える一日になったらいいなって」
近隣住民が集まってガレージセールを開いたり、町会が芋煮をふるまったり、子ども向けのワークショップを行うお店があったり。最近では100を超える企画が行われるまでになった。

たとえば、毎年拠点となる地域を決めてイベントを開催。地元のキーパーソンに参加を呼びかけたり、興味のある人同士がつながれるような交流会を開いたり。モデルケースとなる取り組みは、どんどん発信していく。
毎年地域が変わるので、企画内容も変わっていく。スタッフは、柔軟な姿勢で仕事に取り組むことが大切になると思う。

「待っていても手取り足取り教えてくれるわけではないので、わからないことがあれば自分からどんどん聞きにいくのが大事。最初はうまくいかないこともあったけれど、回数を重ねたぶんだけ、経験も蓄えられてきました」
別のイベントで効果的だった雨天対策をしておいたり、リストに記載がなくても以前役に立った備品を補充したり。ちょっとした気づきや地道な準備が、スムーズな運営につながる。
「前回の反省を生かしてトラブルに対応できたとか、クライアントやお客さんからうれしい反応が返ってきたとか。自分の体も頭もめいっぱい動かしたぶん、いろんな気づきや達成感が跳ね返ってくると思います」
「帰りが遅くなることや、タスクが重なって忙しいこともあります。でも『このイベントが課題解決につながっている』という核の部分を忘れなければ、きっとやりがいを感じながら取り組めるんじゃないかな」
たくさんの人と協力して準備したことが、イベント当日に実を結ぶ。さらにそれが、社会を少し良くすることにもつながっていく。
イベントの力を、今あらためて信じてみたい。そんなふうに思う人は、ぜひ飛び込んでみてください。
(2019/12/19 取材、2021/04/12 再編集 増田早紀)