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地元の人、ほぼ全員が
山を持っている村で
林業をはじめる

メリメリ…と音をたて、木が徐々に傾いていく。

ドサッ!と大きな音が鳴り響くと、目の前には、人の背の何倍もある木が横たわっていた。

奈良県曽爾村(そにむら)。

面積の約9割を森林が占めるこの村で、林業を営む地域おこし協力隊を募集します。

技術は3年かけて学んでいくため、未経験でも大丈夫。村には協力隊を卒業し林業家として活躍する先輩や、移住者も多く暮らしているので、なじみやすい環境だと思います。

林業は楽しい。山奥の小さな村で、気持ちよさそうに働く人たちに話を聞いてきました。

 

曽爾村へは、名古屋駅から在来線で1時間半ほどの名張駅から向かう。バスに乗ると、あっというまにあたりは木で囲まれた。

バスに揺られること1時間、曽爾村役場に到着。

案内された会議室で、まずは地域建設課の大手さんに村について教えてもらうことに。

「曽爾村は、人口1400人ほどの小さな村です。村の面積の86%が森林で、そのほとんどが人工林。そして、たいていが民有林です。地元の人はだいたいみんな、多かれ少なかれ自分の山を持っているんですよ」

昔は、山で育てた木を薪ストーブやお風呂に使い、ときには自宅を建てる木材としても使っていたそう。

「当時は山の手入れも自分たちでしていたんですが、最近はみんな、放置しているか、林業家にお願いしているかのどっちかで。林業の担い手も減っているなか、このままでは山が荒れていってしまいます。そこで、協力隊を募集することになりました」

今回着任した人は、村の林業家のもとに弟子入りし、一から技術を学んでいくことになる。

 

「役場でも、山仕事してるのは僕だけやもんな」と続けるのは、一緒に話を聞いていた細谷さん。

協力隊のサポートをする企画課の課長で、細谷さんも自分の山を持っているんだとか。

「山入ったら、なんていうんだろうな…おいしい空気っちゅうか、まちとは違うねん。娘たちには『山はいらん』って言われるんやけど、それが寂しくてね。木材はもちろんだけど、それ以外にも山の活用方法はあると思うんよ」

「木育や森林セラピーとか、みんなが気軽に木に触れられる場所があったら、もうちょっと山への意識も変わるんちゃうかなあ」

山のなかで過ごす時間や間伐材の利用方法など、どうすれば曽爾の山を活かしていけるのか、「新しく来てくれる人にアイデアをもらえたらうれしい」と細谷さん。

「とはいえ、まずは怪我をせえへんように、技術を習得することが大事。村の林業家さんのもとで学んで、何年かしたら主軸となって活躍してもらいたい。最終的には人を育てる立場として、新しい世代にもつなげていってほしいね」

 

曽爾村では現在、協力隊の卒業生3人が林業家として活躍している。今回は、そのうち2人に話を聞かせてもらうことに。

役場から車を走らせること5分、森に入る手前で加藤さんが待っていてくれた。

6年前に協力隊として移住してきた加藤さん。卒業後は個人事業主として親方とともに林業を営んでいる。

「ここからは、トラックじゃないとちょっと厳しいと思うんで。後ろ、乗れますか?」

ガタガタと揺られながら森の奥へ進んでいくと、ほどなくしてトラックが止まった。

山主から依頼を受け、森林の環境を適切に管理していくのが林業家の仕事。伐採や枝打ち、雑草を刈り取る下刈りなど、1年を通してさまざまな作業がある。

今日は伐採をしているということで、実際の作業を見せてもらうことに。

「木を伐るときは、まずどの方向に倒すのかを決めます。別の木の枝葉に当たったら跳ねかえってくるんでね、その跳ねかえり方や重心、地形や風向きも考えながら、どこに倒したらベストかを考えていきます」

方向が決まったら、木に切りこみを入れていく。

切り口の位置はもちろん、角度や深さによって倒れ方は変わってくるんだそう。

「あとは、反対側にくさびを打ちこんで、ハンマーで叩いたりチェーンソーを使ったりしながら切り口を広げていくと、倒れます。危ないので、こっち側に立っていてくださいね」

そう言ってチェーンソーを入れていく加藤さん。やがてミシミシッと音をたて、ねらった通りの方向に木が倒れた。

工程自体は簡単そうではあるものの、思いどおりに倒すのは、きっとかなり難しいですよね…?

「そうですね。親方が口で説明してくれたり実践しているのを見たりしながら、同じようにやってみるんですが、最初は全然うまくいかなかったですね。何度も失敗しながら『ここは、もうちょっとこうしたらええ』って、手とり足とりものすごく丁寧に教えてもらいました」

「そもそも、最初はチェーンソーの使い方さえわからなくて。何回引っ張ってもつかないから、あれ?って思ってたら、『あんな、スイッチがここにあってな…』って(笑)。そっからのスタートでしたね」

基本を押さえても、状況にあわせた微調整は常に必要。何回も経験していくうちに、自分のなかにデータがたまって精度も上がっていくらしい。

「やっぱり親方はすごいですね。木を伐るときも、悩まない。パッと見たらもうこけてる(笑)。不思議なんですよねー。木もやたら素直に、ぽてんってこけてくれる。技術はさることながら、何十年っていう積み重ねで得た感覚的なものですよね。僕もあと10年はやらな、わからんやろうなって」

倒した木は、枝を切り必要な長さにそろえ、木材として売り出せる状態に仕上げていく。木材は村の市場などで売られ、間伐材も木質バイオマス発電の原料として使われるそう。

「手を入れたらこんなに綺麗になんねんなって、作業するたびに感じます。いい山になったやんかって思いながら山から帰るあの達成感は、ぜひ味わってほしいですね」

綺麗な山は、人が手を入れることによって保たれている。

加藤さんが林業の道に進んだのも、その気づきがきっかけだったんだとか。

「もともとツーリングが好きだったんですよ。それで、山のなかに入ったときにふと、この広さ全部、人の手で管理してんねんなって思って。スケールのでかさというか、ダイナミックさっていうか。そこからなんとなく林業に興味が出てきたんですよね」

「前職では、イラストレーターとしてキャラクターをつくってたんですよ。これが、意外と活かせてるところがあって。林業って、実はすごく想像力がいるんでね。どの木を伐ったらどんな山になるとか、どっちに倒れるとか。作業したあとどんな形になるかって、2、3歩先をイメージするのに、前職の経験が役に立っているんです」

今回の募集も、未経験でも大丈夫。

まったく関係のなさそうな仕事でも、加藤さんのように思いがけないところで、今のスキルが活かせるかもしれない。

「木を伐ると、その山がこれまでどうやって手入れされてきたか、よくわかるんです。年輪を見ながら、ここは90年前から誰かが手を入れてたんやなあって思うと、この山に関わってきた人の想いを感じますね」

「木って、自分の何倍もこの世で生きてきた存在じゃないですか。人生の大先輩に対する敬意は、大切に持っていたいなと思っていて。動かないけど生き物やなあと思うときもありますし、そういう想いを持っているかどうかで、作業の仕方って随分変わると思うんです」

 

「次は渡利くんのところですよね? 現場まで送っていきますよ」と、加藤さんのトラックで森のなかを進んでいくと、重機を使って作業している人たちが見えてきた。

そのなかのひとりが、土木工事会社の林業部門に勤める渡利さん。休憩中に話を聞いた。

「うちの会社は、木を伐る人、枝葉をそろえる人、重機を操縦する人って、チームで働いていて。多いときは6人くらいで作業しています」

渡利さんは協力隊時代、林業を学びつつ、山を活用するプロジェクトの一環で、マウンテンバイクのコースづくりに取り組んでいたそうだ。

「そのコースづくりは結局叶わなかったんですが、3年間やってみて、林業って意外と自分に合うかもなあと思ったんです。それで、卒業後も続けたいなって」

「チェーンソーを入れる瞬間は、これ伐っていいの…?っていうドキドキ感があります。木を伐ったときは、興奮状態におちいるというか、なかなか眠れなくなることもよくあって。猟師さんが、獲物を狩ったときの感覚にも近いんじゃないかな」

自然の音しか聞こえない、神聖さも感じるような空間に、チェーンソーの音が響く。手応えを感じながら、大きな木を倒していく。

猟師も林業家も、自然の恵みをいただくという点は同じ。毎日、命と対峙するような感覚がある。

「100年以上経っている木って、実際に見ると圧巻なんです。もう、全然違うんですよ。大きさだけじゃなくて、木肌とかも違いますし、ちょっと呆気にとられますよね。これ伐るのかぁって」

「大きな木を伐る前日は、どうやって倒そうか何度も想像します。右に倒したら絶対だめ、左なら安全かな? でも、いきすぎてもな…って。考えても考えても、心配になってしまう」

林業は、命の危険が伴う仕事。重症や死亡につながる事故も毎年起きている。

伐る方向を間違えたら、自分や仲間が下敷きになってしまう可能性もあるし、チェーンソーや重機だって、扱い方次第では事故の原因になりかねない。

失敗したらと思うと、やっぱり怖いですね…。

「身の安全が保てていれば、失敗はしてもいいんですよ。ここに逃げればいいっていう場所が必ずあるし、絶対に守らなきゃいけないポイントだけ押さえておけば大丈夫です。失敗して分かることもたくさんありますしね。うまく倒せなくて谷に落としてしまうとかは、僕も何度もやらかしてます」

事故を防ぐためにも、暗くなる前には必ず作業が終わるし、雨の日は休みになる。朝7時くらいから17時ごろまでが、平均的な勤務時間だという。

「早く帰れても、すぐ寝ちゃう日がほとんどなんですけどね。特に夏は、山のなかにいてもかなり暑い。10キロくらいの装備をしながら作業しているので、水2L飲むのは当たり前。毎日3Lくらい消費しながらヘロヘロになって帰ります」

「まあでも、体力も技術も後からつけられるものだと思います。バックアップするような体制もできてますし、経験がないなか僕らもここまでやってこれてますから。元気さえあれば、心配しすぎなくても、なんとかなると思いますよ」

 

加藤さんも渡利さんも「自分の手で伐ってこそ、感じるものがある」と話してくれました。

土や風の匂い、木屑が飛び散るスピード、木が倒れるときの音…。側で見ていただけでも、伝わるものがありました。自分で伐ったら、いったいどんなふうに感じるんだろう。

責任もリスクも大きいけれど、やりがいも大きな仕事だと思います。

(2021/6/8 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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