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「イベントで参加者にメッセージを伝えること、そして関わってくれた人たちが、また参加したいと思えるイベントづくりを大切にしています」
そう語るのは、グリーンアップル代表の中島さん。
グリーンアップルは、地球環境や防災などあらゆる社会課題をテーマとしたイベントのプロデュースや企画・制作をする会社です。
これまでに、フジロックフェスティバルでNGOの活動を紹介する「NGO VILLAGE」や、体験型の防災イベント「渋谷防災キャラバン」、平和について考える「PEACE DAY」など、さまざまなイベントを手がけてきました。
今回はイベントをはじめから最後までつくり上げる、企画制作スタッフを募集します。
基本的なパソコン操作ができれば、そのほかのスキルや経験は問いません。
人と関わることや、だれかの願いを一緒に形にしていくことが好きな人に、ぜひ知ってほしい仕事です。
渋谷駅から歩くこと10分ほど。国道246号線を横断した先の住宅街にあるマンションの一室が、グリーンアップルのオフィス。
はじめにお話を聞いたのは、代表の中島さん。中島さん曰く、自分は根っからの「お祭り好き」なんだとか。
「高校時代は、学園祭のことばかり考えている生徒でした。楽しい学園祭を1日でも長くしたいと思っていて」
とはいえ、期間を延ばしたいと申し出るだけでは、もちろん先生に受け入れてもらえない。
「学園祭は、その期間中に欠席する生徒がいたり、大量のゴミが出たりといった課題があったんです」
「それらの解決につながるような、社会的意義のあるムーブメントを起こせたら、先生たちの見方も変わるかもしれないと思って。生徒に呼びかけて、ボランティア活動をはじめました」
たとえば、障がいのある方々の野球チームに来てもらって、自身が所属する野球部と、両者が楽しめるルールで対抗試合を企画したり、学校周辺のゴミ拾いを行なったり。
ボランティア活動や環境問題に興味が高まり、中島さんは高校から大学にかけて「A SEED JAPAN」という環境NGOに携わる。
ここでは、フジロックやサマーソニックなど、環境志向の高い音楽フェスを裏方で支えた。
その後、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局長を経て、2011年にグリーンアップルを立ち上げる。
「うちの会社は、『あなたの会社のイベント部』とよく言っていて。主催者のクライアントと同じ気持ちで伴走しながら、イベントをつくっていきます」
「僕は、『仕事の報酬は仕事』と言っているんです」と中島さん。
どういうことでしょう?
「予算と企画に沿ってイベントをつくることはもちろんですが、どんな規模の仕事でもつくる姿勢は変わらない」
「大切なのは、来年も一緒にやりたいとクライアントやスタッフに思ってもらうこと。そして、イベントに参加してくれた人の意識をちょっとでも良い方向に変えて、新しいムーブメントを生み出すこと。このふたつなんです」
最近ではコロナ禍の影響で、例年と同じ形でのイベントが実施できなくなった。
そのなかで、どんなイベントをつくることができるか。グリーンアップルは、家でもイベントに参加できるようにと、オンライン配信も始めることに。
それまで、オンラインのイベントはほとんどやったことがなかったけれど、社員全員で力を合わせ、「アースデイ東京」をオンライン配信で実現した。
「日々学びながら新しい挑戦もしつつ、クライアントの要望に180%応えられるような企画や提案をすることが大切ですね」
最近ではSDGsや防災、障害者スポーツなどのイベントテーマに加えて、eスポーツやシニアの活躍の場づくりといった新しいテーマにも取り組み始めている。
「仕事柄、多くの社会課題に触れるので、自然といろいろなことに詳しくなるんです。それがやりがいや生きがいにもつながっていくことを楽しめる方と、一緒に働きたいですね」
とはいえ、さまざまなテーマを扱っているぶん、自分が詳しくないテーマの担当になることもあるかもしれない。
「初めて防災のイベント担当になったときは、自分からアイデアが出せなくて大変でした」
そう話すのは、プロデューサーの二家本(にかもと)さん。現在は主に防災関連のイベントの企画制作や、スポーツイベントで活動するボランティアのコーディネートなどを担っている。
二家本さんがグリーンアップルに入社したのは6年前。東京芸術大学在学中から、アートと地域に関わるイベントの企画や運営に携わってきた。
卒業後の進路を決めなくては、と思っていたころ、日本仕事百貨の記事で偶然出会ったのがグリーンアップルだった。
初めて担当したのは京都の祇園祭で実施した「祇園祭ごみゼロ大作戦」。
祭に伴い四条烏丸のメインストリートには、たくさんの露店が並ぶ。使い捨て容器や割り箸など、食後に出るごみをどう処理するかが課題となっていた。
このプロジェクトでは、のべ2000名を超えるボランティアと共に、エコステーションの設置やごみの分別作業、リユース食器の導入などを行うことに。
「四条烏丸は祇園祭の中心地で、来場者がとても多い場所。人の流れに埋もれないように、エコステーションは歩行者天国になった瞬間に設置するんです」
「そして、歩行者天国が解除される前に大量のごみを運搬してから、備品を安全な場所に移動、解除後に車で回収など、スピード感と的確な段取りが求められました」
碁盤の目のような京都のまち。備品の設置場所やボランティアの拠点、運搬用のトラックの動線など、道の名前によって話が進んでいく。はじめは道の名前がわからずに、打ち合わせについていけなかった。
そこで祭りまでの約1ヶ月間、ひたすら自分の足で歩いてまちの感覚を身につけ、事務局やボランティアスタッフ、施工会社や運搬会社など、たくさんの関係者とのやりとりがスムーズに進むよう努力した。
その甲斐あってか、プロジェクトは見事成功。初めての成功体験は、今でも印象深いという。
現在、担当しているのは「渋谷防災キャラバン」というイベント。
今年からはリアルでイベントを開催しているものの、昨年まではコロナ禍の影響を受けて、防災を啓発する番組をオンラインで配信してきた。
はじめてのオンライン開催となった2020年度、初回は『台風と豪雨災害』というテーマで、渋谷区で想定される水害リスクを取り上げた。けれど、最初は自身の知識が乏しく、進行台本が書けなかったという。
「渋谷川の歴史に詳しい郷土博物館の学芸員さんをゲストにお呼びすることになっていたので、その方に事前インタビューをして理解を深め、資料を見せていただきながら、伝えるべきポイントを少しずつ見出して演出プランを作成していきました」
一見華やかに見えるイベントの仕事だけれど、その背景にはこういった地道な努力がいくつも積み重なっているんだと思う。
「イベントによって準備する内容はさまざまで、慣れるまでは気力も体力も必要です。それを乗り越えて、イベントを形にできるようになるまで踏ん張れれば、楽しく続けていけると思いますね」
1歳児を子育て中の二家本さん。子どもが体調を崩して、急に休みを取らなくてはならないことも。
そんなときは、社内のメンバーと分担して代わりに打ち合わせに行ってもらったり、現場対応してもらったりしながら、子育てと仕事の両立を図っているのだとか。
グリーンアップルでは、そんなふうに自分のライフスタイルに合わせた働き方を取り入れることもできる。
インターンから入社して3年目となる池田さん。今年の1月から、秋田に拠点を移して東京との二拠点生活をしながら働いている。
高校生や大学生のときから、地域の音楽イベントにボランティアスタッフとして参加したり、学生団体に入ってイベントを企画したりしていた。
イベントに携わる仕事に就きたいと考えていたところ、大好きな「ロハスフェスタ」という環境イベントの運営に、グリーンアップルが関わっていることを知る。
「スタッフ募集はしていなかったんですけど、問い合わせフォームに『インターンをさせてもらえませんか?』ってメッセージを送りました」
無事インターンとして採用されると、翌日には名刺が用意され、早速先輩の打ち合わせに同行。
その後、イベントに使用する備品の準備や、出展団体候補のリストアップなどの事務作業を経て、イベント運営の仕事も担当するように。
「新入社員とか関係なく、イベントを担当します。わからないことがあっても、みんなそれぞれ別の仕事を担当しているので、聞きづらいこともある。でもそこは臆せずに自分から聞くのが大事ですね」
昨年から担当しているのは、「ピースデー」のイベント。ピースデーは国際的に9月21日に定められた、世界で平和を呼びかける日のこと。
今年はオンライン配信に加えて、代々木公園などでのリアル開催のイベントも取り入れた。
池田さんは、主催者や協賛企業、NPO、行政などあらゆる団体の間に立ち、イベント全体の企画や運営を進めていった。
「立場によって、取り入れたいアイデアはさまざまだけど、平和な世界を目指したいという想いはみんなに共通している。お互いを尊重しつつ、限られた時間や場所のなかで、イベントをどうプログラムしていくかが難しかったですね」
検討を重ねた上、親子連れが集まる公園では子ども向けのライブを、渋谷のコミュニティFMラジオでトークショーの放送などを行なう提案もした。
「出演者との打ち合わせや進行用の台本づくりなど、オンライン配信の仕事には慣れていたんですけれど、逆にリアル開催のイベント担当は初めてで」
参加者の動線を想定した運営オペレーションや、飲食の出店に必要な保健所の申請など。初めてのことが多くて戸惑ったそう。
仕事の幅が広く、大変そうな印象を受けるけれど、池田さんの話す表情は明るい。
どんなときにやりがいを感じるんでしょう?
「イベントが終わったときに、クライアントの方から『来年のイベントも池田さんが担当してね』って言われたときは、すごくうれしかったですね」
あ、中島さんが言っていた「仕事の報酬は仕事」って、このことだ。
自分が誰かの役に立ったと感じられたとき、イベントを成功させるまでの苦労は報われるんだろうな。
ところで、秋田と東京での二拠点生活はどんな感じでしょう?
「意外と大丈夫ですね。毎朝のオンラインミーティングでコミュニケーションをとったり、こまめに相談や連絡をするように気をつけています」
「社長に移住の相談をしたときは驚かれましたけど、『池田さんの働きやすい方法でいいよ』と言ってくれたので、ありがたかったですね」
一通りの仕事に慣れるまでは、先輩のそばで学ぶ必要はある。ただ、自分から積極的に力をつけていけば、希望に合わせて働き方も検討してくれる環境だと思う。
イベントを通じて、少しずつ増えていく人とのつながりや社会課題の知識。
それらの積み重ねが、次の仕事にもつながっていくし、自分自身のやりがいにもなる。そんな仕事だと思いました。
(2022/9/15 取材 小河彩菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。