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子どもたちの未来を想う
風待ちの島の大人は
あたたかい

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

瀬戸内海に浮かぶ、広島の離島・大崎上島(おおさきかみじま)。

造船と柑橘栽培が盛んなこの町は、風待ちの島とも呼ばれています。瀬戸内海を行き交う船々が休憩したり、船旅の準備をしたりして、いい風や潮が来るのを待つ。

島の外からやってくる人や物を受け止め、一緒に文化を育んできたこの場所が、今回の舞台です。

島内にある大崎海星高校では、町と学校が一緒になって魅力ある学校づくりを目指す「大崎海星高校魅力化プロジェクト」に取り組んでいます。

地域資源を活かした独自のカリキュラムに、高校生たちの学習サポートとキャリア教育をおこなう公営塾、県内外からの生徒を受け入れる教育寮の設置など。

地域に愛着を持ちつつ、世界に飛び立っていくような人材を輩出しようと、町をあげて様々なチャレンジを重ねています。

今回は、公営塾で働くスタッフと、生徒たちが暮らす教育寮のハウスマスターを募集します。

教育の経験はあると活かせますが、なくても大丈夫。大切なのは、長い目で生徒のためになる行動ができるかどうか。より良い教育のあり方を、チームとともに考えていく人を探しています。

 

広島空港から乗合タクシーで竹原港まで30分。大崎上島行きのフェリーに乗り換える。

島までは25分。景色を眺めてぼうっとするには、ちょうどいい時間。

到着のメロディーが流れたら、下船。

取材場所まで距離があるため、役場の方に迎えに来てもらう。

10分ほどして車を降りると、大崎海星高校の目の前に、ちいさなカフェが。

「ここは『ミカタカフェ』と言います。学生が学校以外の場で地域とつながる機会を持てたらと、元ベーカリーを改装してつくった場所です。学生がお菓子をつくって販売することもあるんですよ」

そう教えてくれたのは、地域と学校をつなぐコーディネーターを務める円光(えんこう)さん。大崎上島出身で、立ち上げのときからプロジェクト全体に関わってきた方。

8年前、人口減少による統廃合の危機にあった大崎海星高校。島に学びの場をなんとか残そうと、町と学校が手を取り合って魅力ある学校づくりに取り組んできた。

たとえば、総合的な探求の時間に実施している「大崎上島学」。

地域を知り、課題解決に取り組むなかで自分自身の生き方、あり方を考えていく3年間のプログラムで、これまで園児との交流イベントを開催した生徒が卒業後に保育士になったり、高校に昔からある車を修理した生徒がバスの運転手になったりしている。

ほかにもここ数年は、島で働く大人を紹介する「島の仕事図鑑」という冊子の制作を、高校生の有志が行っているそう。

地域と関わりながら、自分の未来図を描く。大崎海星高校の生徒がいきいきと活動する姿を見て、「ここで学びたい」と島外から進学する生徒も増えた。

現在の生徒数は97人。そのうち、40人ほどが島外生だそう。

「やりたいことがあればまずはやってみたら、と応援するのが大崎海星高校であり、この町の雰囲気なのかなと。自分の意思で挑戦する経験ができたら、将来なにか決断したときに、きっと行動に移せると思うんですよね」

さらに、プロジェクトに関わる大人の「やってみたい」を尊重するのも、大崎上島ならでは。

このミカタカフェも、今年卒業した公営塾スタッフの希望から生まれた場所。ほかにも、キャリア教育に興味がある塾スタッフは、大崎上島学のサポート役も兼務している。

塾の定例会議はコーディネーターと役場職員で実施、寮の運営会議ではそこに学校が加わるなど、それぞれが状況を把握、相談しやすい環境になっている。

「とはいえ、組織も違えば考え方も違う。どちらかというと思い通りにいかないことが多いなかで、一緒に前を向いて一歩を踏み出す方法を見つけるには根気強く対話することが大切だし、自分の主張を飲み込んでバランスを取ることも、ときには必要だと思います」

「そこが大変だけれど、面白いところでもあって。自分たちがいいと思うことを共有するなかで、学校が変わり、地域が変わっていく実感も得られる。一緒にいいものをつくろうと思う人と働きたいですね」

 

今回募集するのは、公営塾のスタッフと教育寮のハウスマスター。どんな人が働いているんだろう。

まず話を聞いたのは、公営塾「神峰学舎(かんのみねがくしゃ)」のスタッフ、高橋さん。3年前、大崎上島へやってきた。

神峰学舎では日々の自学自習のサポートに加えて、教科・難易度別の講座を開催。ほかにも、週1回、塾独自のキャリア講座「夢☆ラボ」の授業を通して、生徒たちのやってみたいことを探し、挑戦する機会をつくっている。

「話をするなかで、好きなラジオ番組のDJと話したい、と打ち明けてくれた生徒がいたんです。ただ、手が震えてて。オファーの仕方もわからないし、そもそも実現するかもわからない。不安な気持ちが大きかったようで」

「一緒にやってみようかと言った瞬間に、その生徒の目がすごくキラキラして。僕はメールの例をちょっと伝えたくらいで、そのあとはもう夢中になって自分で動いていました。それで、DJの方が本当に島に来てくれたんです。当日の講義も大成功で、その生徒が後日ラジオ番組に出演させてもらうことにもなりました」

やりたいことに出会い、一歩を踏みだすことができれば、あとはみずからの力でぐんぐん進んでいける。生徒の持つ熱量に驚かされたという。

「全部お膳立てしないように気をつけています。企画書をつくる時でも、書き方は伝えたほうがいいのか、調べることからやってもらうほうがいいのか。毎日試行錯誤なんですけど、それがハマったときはうれしく思いますね」

これまでの出来事を楽しそうに話してくれる高橋さん。その一方で、「楽しさとむずかしさ、両方ありますね」とも。

「たとえば塾では、生徒だけでなく地域の人も参加できる講座として、ゲストを招いてお話を聞く機会をつくっています。以前は大学受験の経験談で有名になったビリギャルとか、プロ野球選手とかに来てもらっていたんですよ」

いわゆる、わかりやすいロールモデルと直接交流することが、生徒たちにとっての刺激になると考えていた高橋さん。

ただ、もっと地域で活動している人の役に立てるような機会にしてもいいのでは?という意見もあり、方針転換をすることに。大崎上島の伝統行事に用いられる木造船をつくる職人さんをゲストに招くことになった。

「それを機に伝統行事に興味を持つ人が増えれば、文化継承の役に立つかもしれない。自分のやりたいことだけでなく、地域にどういう影響があるのかを考えることも大切なんだと、コーディネーターやほかのスタッフと企画するなかで学びましたね」

現在は4名のスタッフで運営している神峰学舎。高橋さんのようにキャリア教育に関心のある人もいるけれど、基礎学力の向上も大事な仕事。

なかには勉強が苦手な生徒もいる。どうサポートすれば、前向きに勉強できるか。新しく加わる人も、ほかのスタッフとも話し合いながら、一人ひとりに適した学びの形を考えていけるといいと思う。

高橋さんは、どんな人と働きたいですか?

「自立している人ですね。組織のことも考えつつ、自分で考えて動ける人。生徒も毎日変わるから、求められることが刻一刻と変わります。その状況を楽しみつつ、そこから学ぶことができる人と一緒に挑戦したいです」

「生徒とともに成長したい、と思える人がいればぜひ」と、高橋さんは話していた。

 

基盤が整ってきた公営塾に対して、もう一つの募集、教育寮のハウスマスターは試行錯誤しながら運営体制を築いているところ。

教育寮「コンパス」に移動して話を聞いたのは、昨年8月に着任したハウスマスターの西山さん。

西山さんの着任以前は、ハウスマスターの入れ替わりも多く、生徒への指導がなかなか行き届いていなかった。

共有スペースに私物が置きっぱなしだったり、遅刻があったり。共同生活をする上でのルールを守れていない場面もあったそう。

「着任してからみんなで細かく状況を共有して、一緒の方向を向いて走ってきた実感があります。今は、連携しているコーディネーターも、当直に入っている地域の方も、一貫した方針のもと指導できているのはいいなと思います」

教育寮には島外からやってきた生徒30人ほどが暮らしている。ハウスマスターは生徒たちが起きてから学校に行くまで、また帰寮してから就寝するまでの間、寮に滞在し、生徒たちの様子を見守り、遅刻欠席などがあれば学校に連絡している。

西山さんは、基本的に入口近くの事務所でそっと寮生を見守っているという。

面談で生徒とじっくり話すことはあるけれど、基本的には、なにか困ったことがあれば話しかけてもらうスタンス。そのなかで、注意すべきことがあれば個別に声をかける。

以前は立命館大などでアメフトのコーチをしていたこともある西山さん。人材育成という視点からキャリア教育に興味を持ち、大崎上島へやってきた。

「高校進学のタイミングで、島に行こうって選択ができるってすごいことだと思うんです。そういう行動力って、社会に出たときにもきっと重宝される。その素質をもっと伸ばしていけるようサポートができたらいいなと」

「そのためにも、まずは生活の基礎から。寮生のなかには当たり前にできている子もいるので、一緒に良くしていけたらと思います」

 

現地での取材から10ヶ月後。その後の様子を教えてくれたのは、大崎上島町役場の松永さん。自身も寮の運営に関わっている。

「今も遅刻などは0ではないですが、ルールがちゃんと浸透してきて、良い方向に変わっています。甘やかしすぎず、生徒が学校に楽しく通えるような声かけやサポートがハウスマスターには求められますね」

「教育寮の担当になるまでは、高校生くらいの年代の子どもと話す機会はあまりなくて。頭ごなしに指導するのではなく、どんなふうに思っているのか対話をしながら一緒に考えていく。絶妙な距離感での関わりが求められるのは、新鮮ですし、日々試行錯誤です」

コロナ禍で休止していた寮のイベントも復活しつつある。

今年は生徒発案で、新入生歓迎イベントやバーベキュー大会なども実施した。

「こちらから提案するのではなく、基本は生徒発信です。そのほうが絶対に長続きするイベントになるし、彼ら自身の思い出としても残る。私たちは出てきたアイデアの実現をサポートするのみですね」

「バーベキュー大会は、ハウスマスターも塾スタッフも連携して、1ヶ月半くらい準備で動きました。私たち大人にとっても、イベントをみんなでつくり上げた達成感がありましたね。これからはより地域の人たちを巻き込んだイベントができたらいいなと思っています」

うれしい出来事があればともに喜び、課題が見つかれば、どうすればよくなるかとことん話しあって考える。力を合わせて、ひとつのものをつくり上げる。

子どもたちとじっくり向き合いながら、仲間と同じ方向を向いて走っていける環境だと思いました。

(2022/11/7 取材 阿部夏海、2023/10/23 更新 増田早紀)

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