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まちも仕事も、自分ごと
観光で照らす
南信州・くだものの里

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

果樹園にテーブルを置いて、地域食材のフルコースを味わえるレストラン。清流の流れる森を歩く森林セラピーや、ワインやシードルの醸造所をまわるバスツアー。

長野県の松川町で開催されている、観光まちづくりプログラムの一例です。

地域にある資源に、新たな切り口で光を当て、まちの外から人を呼びこむ。長く深く関わってくれる関係人口を増やすことで、持続可能なまちづくりにつなげていく。

くだものの里として知られる松川町で、観光まちづくりに力を注ぐ人たちを紹介します。

一般社団法人南信州まつかわ観光まちづくりセンター。

今回、ここで働く人を二職種で募集します。ひとつは、ふるさと納税の返礼品として特産品の商品開発やマーケティングを担う人。もうひとつは、地域で新たな宿を企画・経営する人。

前者はWebマーケティング、後者は宿泊業、それ以外にも事業企画やプロジェクトマネジメントなどの経験が役に立つ仕事です。

自分のスキルや経験を地方のために活かしてみたい人、暮らしも大切にしながらクリエイティブな仕事に取り組みたい人に、ぴったりの環境だと思います。

 

東に中央アルプス、西に南アルプスを抱く松川町。東京からは、新宿から高速バスに乗り3時間半で到着する。

まちを車で走っていると、さまざまな山の表情が見えておもしろい。

そこかしこに果樹が植えられていて、温かくなったらくだものがいっぱい実るんだろうなと想像をめぐらせる。

住宅の多い中心部から、西の山のほうへ車で10分ほどの、観光まちづくりセンターの拠点へ。道路を挟んで向かいには、30年続く町営の温泉旅館「清流苑」がある。

出迎えてくれたのは、観光まちづくりセンター事務局長の片桐さん。

松川生まれ、松川育ち。長年町役場に勤めていたものの、より地域の観光振興に力を入れたいと退職し、第三セクターとしてこの組織を立ち上げた。

「センターができて5年になります。昨年10月に、観光庁公認の観光まちづくり法人に、正式に登録されて。法人格を持って、より安定的に事業運営できるようになりました」

松川には、くだもの狩りに訪れる観光客は多いものの、その多くが日帰り。

泊まりがけで長く滞在したいと思ってもらえる、より魅力あるまちにするために。観光客が増えることで、「自分たちのまちはこんなに素敵なんだ」と地域の人に感じてもらえるように。

観光まちづくりセンターでは、豊かな自然や食に、地域の人たちとの交流を組み合わせた特徴的な事業を企画・運営してきた。

「今は、自主事業の売上が全体の4割で、もっとも割合が大きいのが、特産品の企画販売です」

コロナ禍の新しい観光支援としてはじめた、まちの特産品の通販事業と、行政から受託しているふるさと納税事業の運営。

今回は、これらの事業をより大きくしてくれる人を募集したい。

産地直送のくだものをはじめ、りんごのシードルや干し柿など、松川の返礼品のラインナップは300品目近い。

なるべく多くの事業者さんに返礼品のサプライヤーになってもらえるよう、働きかけてきたんだそう。

「寄付者の方ってまちのファンになってくれることが多くて。直接農家さんにお礼の言葉が届くこともあるし、生産者の自信にもつながるんです」

地域のお菓子屋さんとともに、選ばれやすい価格帯に合わせたケーキセットをつくるなど、商品開発にまで関わっている。

全国平均と比べ、松川は一度の寄付額が多いそう。価値を感じてもらえる返礼品が多いからこそだと思う。

「運営を外部に委託する自治体は多いですけど、そうではなく我々が事業運営することで、手数料まで地域に還元できる。なにより、地域の宝のことは地域の人間が一番よくわかっています。地域の価値をつくる仕事は、やっぱり地元の人間がやらなくちゃいけないと思うんですよ」

事務的にふるさと納税を運営するのではなく、外とまちをつなぐツールとして。観光まちづくりセンターがこの事業に取り組む意味は大きい。

「魅力あるものをより多くの人に知ってもらうには、マーケティングの観点からのアプローチが必要です。それと同時に、『松川ならいいものがある』と思ってもらえるようなブランディングにも力を入れたい。新しく入る人と、ぜひ実現してきたいことですね」

取材中に立ち寄ったまちの直売所で驚いたのは、並んでいるりんごジュースの種類の多さ。

松川では当たり前でも、外の人間には特別に感じることがたくさんあると思う。その視点を大切に、積極的に提案していけるといいと思う。

地域を知るきっかけとなるふるさと納税事業に対して、「訪れたい」「また来たい」と思ってもらえるコンテンツを生み出していく必要もある。

それを担うのが、今回同時に募集する、宿泊事業の担当者。

「コロナの影響もあって、団体から個人へ、旅のかたちが急激に変化しています。その需要にあわせて、まちの宿泊施設全体のリブランディングが必要です」

宿泊施設が少ない松川。まちで最も大きい宿の清流苑は、主なターゲットが60〜70代で、ほかの世代へのアプローチはこれからという。

これからつくっていきたいのは、特に若者やファミリー層に向けた宿泊施設。

「空き家を改修して宿にするかもしれないし、キャンプサイトをつくるかもしれないし、既存施設のリブランディングをするかもしれない。正直、まだ何も決まっていないんです」

「入ってきた方と一緒にいろんな選択肢を検討して、優先順位を決めて手をつけていきます。新しい宿をプロデュースして、その企画から経営まで担ってもらうイメージですね」

すごく大きな役目で、本当にそんなことができるの?と思ってしまうのが、正直なところ。

実は、松川にはその前例がひとつある。

4年前にオープンした、ツリードーム。森のなかにあるグランピング施設で、観光まちづくりセンターが主体となって立ち上げ、今も経営を担っている。

これを目当てに松川を訪れる人もいるという。

ツリードーム事業の担当が、柳原さん。新たな宿泊施設のほうにも関わっていく予定だそう。

「もともとツリードームを企画したスタッフは、今は独立して違う事業で関わっています。僕は立ち上げから見てはいたけれど、経営や事業運営に関わりはじめたのは、ここ2年くらいです」

本腰を入れて経営することで、見えてきた課題もあるという。

「コンセプトや事業計画を詰めきれずにはじめてしまったので、本質的な価値を地域の人やお客さんに伝えきれていないんじゃないかって。いまあらためて、このツリードームで提供できる価値を言語化しているところです」

「新しい施設は、その部分からしっかりつくっていきたい。経営に関わったことのある人が来てくれたら心強いですね」

以前は東京で、調査研究のコンサルタントとして働いていた柳原さん。

奥さんの親戚の家が近かったことが決め手となり、6年前に地域おこし協力隊として松川へ。

センターの立ち上げから携わり、その後は正職員として、片桐さんとここまで走ってきた。

新しく入る人にとって、松川のどんなところが魅力になると思いますか。そう問いかけると、柳原さんはしばらく考え込んでしまった。

「なんでしょうね…。長野の南部とか、伊那谷とか、南信州っていう広い単位ではこの土地の魅力は言えるんですけど、松川だけで言うと違いを説明するのはなかなか難しいですね。ほかの土地に住んでいないこともあるし」

「話は少し変わるんですけど」と、柳原さん。

「最近、近くの山を歩くのが好きになんですよ。山に行くと自分のちっぽけさを感じるというか、自分の中身が入れ替わったような気持ちになる。自然のなかにいる感覚ってやっぱりすごく気持ちいいし、そこで長い時間過ごすと、日々生活している自分との違いが出てくるんです」

登山はハードルが高いかもしれないけれど、松川町内であれば気軽に自然にアクセスできる。柳原さんも、毎日徒歩2キロの通勤が気に入っているそう。

近い感覚のある人なら、松川はきっと居心地がいいまちだと思う。

「でも正直、どこでも住めば都だと思うし、その人自身の捉え方次第だと思います。ただ、僕の場合は、片桐さんがいたのは大きかったかな」

東京にいたころ訪れた移住フェアで、ひときわ熱心に語っていたのが、当時役場で協力隊の受け入れを担当していた片桐さんだった。

「自分ごと感があるというか。仕事だからじゃなく、本当に移住者と出会いたくて来ているんだなって感じたんです」

「異動しないでくださいね、なんて言ってたら、役場辞めちゃって(笑)。よく笑い話にするんですけど、やっぱり信頼できる人が近くにいるのは大きいですよ」

そんな片桐さんとずっと一緒に働いてきた柳原さん。

課題も含めて自分ごととして捉え、本気で地域をよくしたいと思って取り組んでいる。

新しく入る人には、そんな柳原さんの存在も大きな支えになると思う。

 

最後に紹介するのは、イタリア出身のクリスティーナさん。取材時はお休みだったので、後日オンラインで話を聞いた。

事業分野は違うけれど、「ここまで形にできるんだ」という例になるはず。

もともとは山梨県のホテルで働いていたクリスティーナさん。その後、長野県茅野市の観光まちづくりセンターに5年勤め、昨年12月に松川へやってきた。

「松川に初めて来たとき、どこを見ても果樹園が広がっていて、背景に山が見えて、とってもきれいでした。地域の食材も豊かで、これがまちの観光資源だと思ったんです」

「それを伝えるベストな方法を考えたときに、果樹園でゆっくり食事をするような企画ができたらすごく面白いなって」

クリスティーナさんは自身のアイデアをもとに、地域食材でつくった料理を町内の果樹園で楽しめる「Orchardレストラン」を運営している。

「食事の前には農家さんと一緒に農園を散歩します。果樹って収穫のイメージが強いけど、1年を通じていろいろな作業があって、とても面白い話が聞けるんですよ」

花が咲くころから実がなるまで、さまざまな農園で実施するので、そのときどきの旬を体験できる。

料理は、夫で料理人の坂元さんが担当。食材は、野菜やくだもののほか、肉も魚も松川や周辺地域のもの。

デザートは、地域のケーキ屋さんにりんごのケーキをつくってもらった。

「一番大切なのは、自分の仕事がまちの人のためになるかどうか。去年関わってくれた農園の方がすごく喜んでくれて、これでよかったんだって思いました」

外からどう人を招くか、だけにとどまらず、「地域の人たちのために」と考えること。

そんな観光まちづくりの原点を忘れなければ、本当の意味で持続可能な事業を生み出していけると思う。

「収支計画を立てて、備品も選んで、イベントやパンフレットもディレクションして。この規模の組織だと全部自分が関わるから、いろんな経験ができて全然飽きないんですよ」

 

記事を掲載するのは、今回で5度目になる観光まちづくりセンター。昔の記事から読み返してみると、組織がどんどん成熟し、事業規模が大きくなっていることがわかります。

そんなふうに成長できるのも、熱意を持って、自分ごととして仕事に取り組む人たちがいるから。

この人たちと一緒なら、きっといい挑戦ができると思います。

(2023/1/20取材 増田早紀)

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