株式会社水雅は、「自分たちが納得できるものをつくりたい」という大工職人たちの想いで、19年前に立ち上がった工務店。
最初は小さな仕事から始まり、設計、施工管理、家具制作、コワーキングスペースや民泊の運営まで、できることを一つずつ増やしてきました。
今では建築家から声がかかり、意匠性の高いプロジェクトを任される機会も増えています。
自分たちの信念で、仕事をつくり続ける。
建築に興味がある、手を動かしたい、こだわりを貫きたい。そんな人にとって、水雅の姿勢はきっと心を動かすものがあるはずです。

今回は、施工図作成、施工管理、現場サポートの3つのポジションで仲間を募集します。
施工図作成も施工管理も、経験があればうれしい。
経験はなくても興味があれば、現場サポートという役割もある。資材整理や清掃など、現場を支える縁の下の力持ち。施工図作成や現場作業に挑戦することも歓迎。
職種によっては、業務委託としてポイントで関わることもできます。
水雅のオフィスは、東京メトロの南阿佐ヶ谷駅から歩いて7分。
室内の壁も天井も、細い羽目板張りで仕上げられている。デスクの目の前には、アートやデザインの本が並ぶ。

この日はほとんどのスタッフが現場に出ている様子。ラジオの音が小さく聞こえ、静かな時間が流れている。
観葉植物が置かれた打ち合わせスペースで待っていると、代表の田代さんが迎えてくれた。

広島出身の田代さんは、音楽の道を志して上京したが、建築のアルバイトをきっかけにこの世界に飛び込んだ。
19年前に水雅を設立し、今では大工、施工管理、設計のメンバーを含む20人のチームに成長した。
「育てた大工が独立して、最近は一緒に仕事をする機会が増えてきました。現場を任せられるから、僕らの管理業務の割合も大きくなってきて。前回の募集で入った施工管理の人も活躍してくれていますよ」
「以前は5000万から1億円の住宅案件が多かった。引き続き住宅も多いけど、最近では数億円を越える規模の施設や法人向けのプロジェクトも。実績を見て、『水雅ならできる』ってご依頼していただけているんですよね」
プロジェクトの広がりとともに、チームの力もさらに必要になっている。

水雅では、住宅や店舗、別荘などの幅広いジャンルを手がけているが、常に判断は自分軸。
「これまでの記事でもずっと言っているけど、面白そうな仕事は、どうしても飛びつきたくなる。もちろん採算も考えるけど、“つくりたいものしかつくらない”っていうプライドは大切にしていて」
「言葉にするとむずかしいんだけど。見ればわかるかな」と、写真を見せてくれる。

わ、すごい。
普通の螺旋階段のように見えるけれど、幅は一定ではなく、横に少し引き伸ばされた形をしている。
「そうなんです。これは以前手がけた案件の、珍しい形の螺旋階段で。普通、螺旋階段って、真上から見るときれいな円を描いているでしょう?だけどこれは、『だ円形』のようなカーブを描いているんですよ」
「設計者からお願いされた段階で、木を使用すること以外、デザインや施工方法など、『どうやってつくるか』も含めて、施工者である僕たちにすべて一任されたんです」
楕円の螺旋階段を木質の素材でつくることは、はじめての挑戦。
「施工を経験したことがある人ならわかると思うけど、直線でできている木を組み合わせて、楕円形で上に向かってねじれていく階段の寸法なんて、再現できるわけがない。見事に壁にぶち当たりましたよ」
そんな難しい仕事を、どうやって進めたんですか?
「頼れるのは、3Dモデル上での寸法だけ。それを参考に、実際の現場で試行錯誤を繰り返しました。大きくつくってカットしたり、小さくつくりながら調整したり。両方を採用しながら進めたんです」
「たとえば、楕円だからカーブの具合が均一じゃない。とくに難しかったのは手すりです。カーブに合わせて斜めに昇っていく、複雑なねじれを持った曲面にぴったり沿わせる必要がありました」
何百枚もの無垢材を少しずつ削り出し、現場で微調整しながら、階段に沿うように組み上げる。

「完成形はあれど、そこにたどり着く過程に正解はない。これも施工の醍醐味ですよね」
「頭の片隅では『苦労してみんなで完成させた』というオモシロ話になるな〜、みたいなことを考えていて。2度と同じものをつくることはないだろうな、と思いながら、唯一無二のものを完成させたい、その一心でした」
緻密に、そして確実に。気の遠くなるような作業を積み重ねるようにして、階段はできあがっていった。
「まさに、現場の職人、施工製図担当、設計者など、関わった全員の知恵を結集して実現できた。予算内にも納めることができたし、完成したときの感動は今でも思い出しますね」
納得できるものをつくりたい。そのために多少無茶でも、挑戦する姿勢が水雅らしさ。
「僕らが好むものづくりって、つくる人の想いが建物に宿る。完成したものを見ると、なんかわかるんですよ。嘘くさくないというか」
「そんな心意気で仕事してきたから、現場には結構な荷重がかかる。そばで見てると、大変そうなんですよね。でも、つくる過程も、できあがった瞬間も、楽しい。だからこそ仲間を増やして、持続可能なかたちで挑戦を続けていきたいんです」
そんな水雅の情熱に惹かれて入社したのが、施工図の作成を担当する松井さん。写真は苦手ということで、作業中の姿を撮らせていただいた。

松井さんは大学で建築を学んだあと、ハウスメーカーの造園やランドスケープを手がける会社や、アトリエ系の設計事務所で経験を重ねた。
「将来を見据えて仕事を見直したとき、建築系の業界から離れてみようかなと、他業種を模索したこともありました。そんなとき、日本仕事百貨で水雅の事務職の求人を見つけて」
「水雅の仕事は幅広く、こだわりが詰まっていて、面白いなって。建築はずっと好きだったから、サポート役なら同じ業界でもいいかなと思いました」
入社後、事務職から徐々に施工図の作成を担当するようになり、今ではその仕事がほとんど。
「繁忙期は忙しいけれど、これまでの職場に比べるとずっと快適です」
松井さんの仕事は、建築家のイメージを具体的な図面に落とし込み、現場の大工がスムーズに作業できるように橋渡しすること。
単なるCADオペレーターとは異なり、設計者のビジョンと現場の現実を両立させる創造的な役割だ。
「意匠的な要望”と”施工上の都合”の擦り合わせがうまくいくよう、設計事務所と現場の両者の意見や意図を汲んで作図すること心がけています」

最近は、3つの新築案件を並行して担当。
そのひとつでは、建物の骨組みから、外壁や扉、さらには引き出しの取っ手など、家具の細かい部分の製図を行っている。作図精度の向上や設計の検討をしやすくするため、3Dを併用しているそう。
「図面をもとに、現場の寸法を確認しながら、建物完成後の見え方や使い勝手も想像しつつ、建具や家具、階段の寸法調整やおさまりの変更などを提案します」
「単に指示通りに描くのではなく、設計の意図と現場の作業性を考えて、両者が納得のいく図面を調整する。それが現場のミスを防ぎ、作業を円滑に進めることの手助けになる」
チーム全体でいいものをつくるためにも、つくる人と、手を動かす人それぞれに寄り添う視点が大切だと思う。
「もちろん、数ミリ単位の調整で何度も描き直したりと、忍耐力が必要なときもあります」
「でも、設計事務所から『細かく描いてくれて助かる』とか、現場から『わかりやすい』と言われると、とても嬉しい。案件や人によって最適な図面は違うから、いつも試行錯誤しています」

水雅には決まった教育制度はないけれど、「わからないことは何でも聞いて」と言ってくれる風通しの良さがある。自分で手を動かしながら、質問して学んでいけるとよさそうだ。
「感覚的な部分もあるので、実際に一緒に図面を見ながら話せたらと思っています。水雅は丁寧なものづくりをする会社。そこに惹かれて入社したから、大変なときもやりがいを感じます」
「去年の年末に入社しました。僕が1番下っ端です(笑)」
そう話すのが、施工管理の佐々木さん。専門学校で飲食店や物販店の空間デザインについて学んだあと、複数の建設会社で施工管理を経験してきた。

「さまざまな物件を担当しましたが、ルーチンワークや長期プロジェクトに物足りなさを感じて。もっとスピード感のある自由な仕事がしたいと悩んでいたとき、日本仕事百貨で水雅の求人を見つけたんです」
「20代から40代の若いメンバーが集まるフラットな雰囲気や、コワーキングスペースの運営や民泊への取り組みなど、ここなら新しい働き方ができるかもと感じたんですよね」
現在は施工管理として、代表の田代さんの補佐をしながら現場について学んでいる。
施工管理の仕事は、交通整理のような役割。
設計者との打ち合わせ、大工のスケジュール調整、資材の手配をこなし、複数の現場を行き来しながら全体を滞りなく進めていく。
「建築業界は分業制が基本で、鉄骨を扱う職人と木材を扱う大工がそれぞれ異なる作業を担当する。素材の特性や認識の違いから、現場では想定外の課題が生じることもあります」
たとえば、設計図では鉄骨と木材を90度で組み合わせれば隙間なく納まるように見えても、鉄骨の角に製造過程で生じる微妙な丸みが原因となり、実際には隙間や高さのズレが発生することがある。
「そんなときは、鉄骨のアールに合わせて木材の高さを微調整したり、接合部を現場で加工したり。場合によっては設計者に相談して図面を修正します。事前に素材の特性を予測し、職人さんたちと密にコミュニケーションを取ることが必要ですね」

水雅では、斬新なデザインや新しい構造に挑戦する案件も多いため、標準的な施工方法では対応しきれない場面もしばしば。
普通のやり方では納まらないからこそ、現場で柔軟に解決策を模索する力が求められる。自社に大工がいるから、すぐに連携して対応できるはず。
「社内外の協力者とは価値観や雰囲気が似ている人が多いんです。『みんなで面白いものをつくろう』って気持ちが強いから、利害を超えた一体感が生まれている気がします」
「建設業に疲れた人や、体育会系で泥臭いイメージにうんざりした人でも、ここなら違う価値観で働けるんじゃないかな。仕事量や内容も、自分のやりたいことに合わせて調整できるバランス感覚というか、仕事に対してしなやかでありたいと思う人が多いと感じますね」
本当に実現したい建築をどうしたら形にできるか、建設的に仕事を進めていく。それが、自分の納得できる仕事につながっていく。
試行錯誤しながら、常識にとらわれないデザインや機能をかたちにする。自分たちの手で「面白い」「美しい」と感じるものをつくりたい。
そんな想いがある人に、水雅はぴったりの場所です。
(2025/07/17 取材 田辺宏太)


