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どうして「道場」?取材に行く前に湧いたのはそんな疑問でした。
お話をうかがったのは、株式会社温泉道場のみなさんです。
温泉道場は、おもに日帰り温浴施設の立て直しや運営をしているベンチャー企業。企業のコンサルティングを専門としてきた代表の山﨑さんが、6年前に創業しました。
現在、運営する温浴施設はグループで5つ。得意とするコンサルティングの力を活かして、フランチャイズ店舗も生まれています。
今回ここで、新卒者・第二新卒者を募集することになりました。
ところで、どうして「道場」というのでしょう。その答えはお話してくれたスタッフの方たちの言葉のなかにあるように思います。
温浴施設運営の会社とひと口に言ってしまうのはもったいない。学びや成長の舞台がたくさんある職場で、それぞれの夢を実現してください。
この日は埼玉県熊谷市にある温浴施設・おふろcafé bivouac(ビバーク)でお話を伺う。
最寄りの籠原駅でタクシー運転手のおじさんに行き先を伝えると、「ああ健康ランドね!」と返された。聞けば30年近く地域で愛されてきたおふろ屋さんだったそうだ。
経営が振るわなくなってしまった健康ランドを温泉道場が引き継ぎ、2016年の秋に生まれ変わらせたのが、おふろcafé bivouac。
中に入ると、テントにハンモック、ボルダリングウォールまで設置されている。あたたかい照明のなかで、お客さんたちはごろんと横になって雑誌を読んだり、おしゃべりをしていたり。飲食する場所もあるから、一日中のんびりグランピングをしているような気分で過ごせそうなところだ。
おふろcafé bivouacのように、おふろとカフェにもうひとつエッセンスを融合させた “おふろcafé”は温泉道場が展開しているオリジナルのブランドだ。
このおふろcaféブランド全店の監修や新店舗の開発をしているのが宮本さん。おふろcafé2店舗の支配人もかけ持ちしている。
「最近僕はいろんな仕事を抱えていて、何屋かわからない状態ですね。新卒の教育も僕が担当しています」
ハキハキとした口調の宮本さんは今31歳。ずっと前からの知り合いかのように接してくれる気さくな人だ。3年前に転職してきて、すでに役員を務めている。
「地域を活性化するというのは、そこにある資源をうまく利用して元気にしていくことだと僕は思ってて」
「うちの会社って、地域にもともとあったおふろ屋さんのリノベーションを通じて、地域活性をしている。そのノウハウを地域で活かせる人材を輩出することを目指しているんです」
おふろについて語ってくれるのかと思いきや、話はなんだか思わぬ方向に。どういうことでしょう。
「人と人の間のより良い関係づくりや場づくりを通して、文化発信ができる人になれたら、どこに行ってもその人は活躍できる」
「ここでおふろ屋さんの運営を経験すれば、経営や接客にデザイン、いろんなビジネスを学べる。その経験を通じて将来独立をしたり、経営者になれる人を地域に増やしていきたいんです」
そう話す宮本さんが入社した理由は「経営を学びたかったから」。
以前いた会社では営業の仕事をしていたけれど、ぼんやりと社会に貢献する事業で起業してみたいと考えるようになったそう。
そんな折におふろcaféの支配人募集をしていた温泉道場を知り、転職を決めた。
どのようにして経営を学ぶのでしょうか。
「普通のサービス業の店長というと、販促も採用も給与計算も本社がやってくれる。だから、現場の接客が頭のなかでウエイトを占めてしまいがち」
「でも、ここでは支配人1人ひとりが担当する施設すべてを管理するんです。何十人もいるスタッフの管理に経理、細かいルールづくりまで任せてもらえる。より魅力的な施設にするための接客やイベントやポップも考える。より経営者目線で運営ができるようになります」
温泉道場は経営不振になってしまった店舗を引き継いで新しく再生させるため、今までと異なる手法でのアプローチが求められる。その分大変なことも多いが、臨機応変に対応していくという。
「本当に難しければ『じゃあ仕事のやり方を変えてみようか』となります。このあいだは僕もキャパオーバーして、担当店舗数をひとつ減らしてもらったことがありました」
今後やりたいこと、今の自分にできること。素直に話しても大丈夫だという安心感がここにはあるそうだ。
「うちはベンチャーだけどすごく柔軟。僕は経営を学びたくて入ったけど、仕事をしていく中でデザイン系の業務に興味がでてきたとか、接客を極めたいということになってもいい」
「ここでいろんなことに関わりながら、自分の将来を真剣に考えてほしいんです」
ちなみに今の宮本さんの夢は、日本酒づくりに携わること。どんなビジネスにするかは考え中なんだとか。
「漠然とやりたいとは思っていたんですけど、具体的にこうしたら経営ができるかなっていうイメージを最近は持てています」
「『地域』という言葉は、文化や人口問題など、その人の興味や問題意識によって定義が違う。それに関わる事業を全部まとめて、ここではグループ会社にしたっていいんです」
温泉道場では、社員たちが自分の将来を考えるさまざまな機会を用意している。社外のゲストを呼んだビジネスプランコンテストを開いたり、接客や経営を学ぶための視察研修の時間を設けたり。
そのひとつに、目標となり相談できる相手を増やすために行なっているメンター制度がある。よくある1対1の担当制とは少し違っていて、月に一度直属の上司以外について仕事をするというもの。
この日はたまたまメンター制度の日。宮本さんに会うために入社1年目の久保さんがおふろcafé bivouac に来ていました。
久保さんは、今は経営企画本部で会社全体の働き方の仕組みづくりやマーケティング、新卒採用などを担当している。本社でのデスクワークが多く、現場に立つことはあまりない。
温泉道場に入社した決め手は“稼ぐ力=経営力を身に着けさせたい”という社長・山﨑さんの言葉だった。
「学生時代に子どもたちの遊び場をつくる活動をしていたんです。そのとき感じたのは、いくらよい活動でも主催の人が抜けたら急に立ち行かなくなってしまうのではないかという不安定さでした。地域のなかでその活動を持続していくために活動自体を収益化・事業化できる方法を学びたいなって思って」
「大学院でデザインを学んでいましたけど、最初の面接のときから僕はデザイナーとしてではなく店舗運営や仕組みづくりに携わりたいと言ってました。事業や店舗開発のコンセプトを考えるといった、場づくりの上流に興味があるんですよね」
久保さんは新卒とは思えないほどしっかりとした貫禄ある話し方をする。そんな彼を見て、面接官だった宮本さんは「おもしろそう」と採用を決めたのだそう。
入社してみてどうですか?
「刺激的です。僕はこのあいだ三重県まで社長の業務に同行させてもらって」
「たとえば留学生の働き方について考える事や、働く人の暮らしを守るということが経営者にとって大事なんだよとか、そこでは生で経営についての話を聞くことができて。すごく勉強になりました」
久保さんのように社歴を問わず経営陣のなかにはいって学ぶこともできるし、店舗でシフト作成や給与計算といった業務を通じてマネジメントを学ぶこともできる。
「役割や立場はそれぞれありますが、誰かが代わりに仕事を進めてくれるだろうという気持ちは持たないほうがいいと思います!」
久保さんが入社して印象的だったというエピソードを話してくれた。
それは最近あった採用イベントでのできごと。久保さんは司会を担当することになっていた。
「まだ新人だし誰かがイベントの進め方や会場準備などの段取りを組んでくれているだろう、と踏んでいたんです」
ところが当日になってみると、何も用意されていない。久保さんはおどろくと同時に反省をしたそう。
「みんながお膳立てしてくれるという発想は甘かったのだと気づかされました。反省を活かし、任された自分から率先して働きかけるよう意識するようになりましたね」
続いてはおふろcafé bivouacで働いている津久井さんにもお話をしてもらいます。久保さんとは同期入社です。
フロントや清掃など日々の業務に加えてイベントの企画や施設内の装飾を担当。小柄で活動的なことから役員の宮本さんに“オコジョ”と呼ばれている明るくチャーミングな女性です。
大学でプロダクトデザインを学んだ津久井さんが入社したきっかけは、温泉道場のみなさんをお呼びして開催したしごとバーでした。
「来られていた温泉道場の方々に『就活がしんどい』っていう話を正直にしたんですよ。そうしたらとても温かく相談にのっていただいて、これだけ親身になって話してくれる人たちがいるなら入社してみたいなと思いました」
「あとはほんの少しの下心!」と津久井さん。どういうことでしょう?
「そのうち自社製品を出すんじゃないかなって思って。そのときデザインを担当したいんです。ここで自分のデザインしたものをつくってお披露目したいというのが最近の目標です」
「私はまだはっきりと将来の目標があるわけじゃない。でも現場で何が起きているのかを自分の目で見て、それを解決するためのデザインをしたいと考えています。お客さんとも直に接することのできるこの会社なら、それが学べると思いました」
入社して今4ヶ月が過ぎたところ。働いてみていかがですか?
「いろんなことがものすごいスピードで進んでいくので、ついていくのに必死です。新卒だと思ってのんびりしていたら置いていかれます」
「私は入社してすぐにワークショップの企画を考えてと言われて。支配人に相談していたのは最初だけ。とにかくやっていくなかでお客さんの反応を見て、次はこうしようと自分で考えてきました」
この日はちょうどバスボムづくりのワークショップが開かれていました。ワークショップも館内装飾も、企画や金額設定は津久井さんが自分で考え、やりたいことがあったら上長に伝える。細かな指示はあまり出されないから、自分で考えていく。
やりたいと言えばやれて、学ぶ環境がある。日々の仕事がそれぞれの目標につながっている。
宮本さんもお話にふたたび加わります。
「どの程度固まっているかは人それぞれですけど、うちの人たちは自分のやりたいことについて本当によく喋りますね」
「20代のうちははっきりビジョンが見えてなくてもいいと思う。なんでも熱中したら仕事にプラスになりますから。今の等身大の自分をぶつけてくれる人と、一緒にはたらきたいと思っています」
温浴施設というフィールドをつかって、自分を育んでいける場所だと思います。夢を語るみなさんを見て、とても健やかな気持ちになりました。
(2017/9/25 遠藤沙紀)