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「ビオトープがコンセプトのリゾートだから、“ビオリゾート”。でもそれがどんなものなのか、答えはないんです。まだ誰の頭の中にもない、今までに定義されていない業態をつくるところが、このプロジェクトの醍醐味だと思います」そう話すのは、株式会社温泉道場の代表・山﨑さん。
温泉道場は、温浴施設のリブランディングを通じて地域活性に携わってきた会社です。
現在リブランディングを進めているのが、「BIO-RESORT HOTEL & SPA O Park OGOSE(ビオリゾート ホテル&スパ オーパークおごせ)」。
埼玉県西部の越生(おごせ)町にある複合施設で、緑豊かな森のなかに、温浴施設やレストラン、キャンプ場やバーベキュー場などを備えています。
町が運営していたこの施設を2年前に温泉道場が引き継ぎ、“ビオリゾート”を掲げて変化している最中です。
今回は、この施設の企画・運営を担うマネージャー候補と、レストランでの調理やメニュー開発に関わる料理長候補を募集します。
とはいえ目指すゴールがどんなものか、正解はまだわからない状況。働く人たちも一つひとつ試行錯誤しながら形づくっているところです。
ビオリゾートという新しいスタイルで場づくりに取り組む人たちに、話を聞きに訪れました。
まず訪れたのは、埼玉県ときがわ町にある温泉道場の本社。
話を聞いたのは、代表の山﨑さん。隣町にあるオーパークおごせには頻繁に足を運んで、リブランディングについての打ち合わせを重ねているそう。
「リブランディングをはじめるときに、まずコンセプトをどうしようかと。豊かな自然が魅力の場所なので、やはりそれをキーワードにしたい。ただ “森”というコンセプトの施設はすでにたくさんありました」
「ほかとの差別化をするために、もう少し深みを出したいと考えて。思いついたのがビオトープの世界観でした」
ビオトープというのは、さまざまな生きものが共生する空間のこと。
単に自然を満喫して終わりではなく、生態系の循環や自然と人の関わりにまで思いを馳せられるような、学びの要素のある場をつくりたいと考えた。
でも、それがどうやってリゾートにつながるんだろう?
「それが、まだはっきりわかっていないんですよ。ビオトープがテーマのリゾートなんて日本にはないはずだし、私にも『こんな感じかな?』っていう漠然としたイメージしかない」
「正解のないものを形にしていくのは、おふろcaféをつくったときと同じやり方だと思います」
温泉道場が2013年から展開している、おふろcafé。
「おふろ×café×北欧ゲストハウス」、「おふろ×café×グランピング」など斬新なテーマを掲げて、地域で衰退しつつあったお風呂屋さんをリブランディングし、個性的な温浴施設に生まれ変わらせてきた。
「現場のスタッフも、最初は『おふろ×caféってなに?』ってところからはじまって。私の漠然としたイメージをメンバーに伝えて、お客さまの様子を見て少しずつブラッシュアップしながら、世界観をつくり上げてきました」
今や5店舗まで拡大し、連日多くの人で賑わう施設になった。
ただ、温泉道場を「おふろcaféありき」の会社にはしたくない、と山﨑さん。
「もっと多彩な引き出しを増やしていきたくて、今回リゾートにチャレンジしました。“ビオリゾート”が、おふろcaféに次ぐ新たなブランドになってくれればいいなと。温泉道場の第二創業のような気持ちでいます」
新しく入る人たちに求めたいのは、施設を生まれ変わらせるだけではなく、これからの温泉道場の核となるブランドを共につくりあげること。
思っていた以上に、スケールの大きなプロジェクトなのかもしれない。
「今までに定義されていないものをつくる楽しさはあると思います。だって新しくメニューを考えるにしても、ビオトープの料理って何かわかんないじゃないですか。ブランドの旗艦店として、そこから考えてつくっていかなきゃいけない」
「そういう意味では、裁量は広いですよね。逆に答えがないものを追求するのにストレスを感じる人は合わないかもしれません」
これまでは、もともとあったキャンプ場にグランピング用のキャビンを導入したり、温浴施設の内装をリニューアルするなど、ハード面からの取り組みをメインで行ってきた。
これからは、ソフト面に力を注いでいきたいと考えている。
「たとえばビオトープの世界観でわかりやすく考えると、虫取り体験のイベントとか。でも単なる虫取りじゃなくて、一段深くアカデミックにやりたいと思っていて」
「いまの都会の子どもたちって、セミやザリガニがどこに生息していて、どう生きているのかわからない子も多いんじゃないかな。生きものと自分たちの生活がどう関わっているかも学べたらいいなと思うんです」
接客面からも、ビオリゾートのあり方を定義していく。
「高級リゾートというよりはソーシャルな雰囲気の場をつくりたいですね。ある程度のサービスは提供しながらも、コミュニケーションはカジュアルに。まず自分たちが楽しんで、遊び心を大切に、お客さまをどう楽しませるか考えてほしいと思います」
別の日、現場で働く人たちの話を聞くために、オーパークおごせへ。
池袋から東武線で1時間の越生駅から、シャトルバスに乗り込む。広い敷地内の一角でバスを降りると、執行役員兼営業部長の松澤さんが出迎えてくれた。
「もとの施設の形態のまま運営しながら、少しずつ変化させてきました。設備面では、やっと第一段階の工事が終わったところです。リブランディングと言っても、まだまだ変わりはじめたところですね」
オーパークおごせには、値段もタイプもさまざまなキャビンがいくつも設置してある。
家族連れもカップルもシニアも、それぞれのスタイルに合わせて利用してほしいから、ターゲットを狭めないように心がけているそう。
「新しいことを企画するときに大切なのは、自分がワクワクできるかどうか。自分が楽しめるものをつくるのが一番だと僕は思っているんです」
たとえば最近の取り組みだと、ドームテントの中にプラネタリウムを仕込んでみたり、朝食に宇宙食を提供してみたり。スタッフが「面白そう」と感じたアイデアを起点に、さまざまな仕掛けが生まれている。
新しく加わる人にも、自分の視点でこの施設をもっと楽しむためのアイデアを、どんどん形にしていってほしいそう。
「もちろん施設の運営には、清掃や接客のような地道で根気のいる業務も多いし、マネージャーになったら売上の管理やスタッフの育成も求められます。そういう目の前の仕事をしっかりとやりながらも、遊び心は忘れずに仕掛けていってほしいなと思います」
オーパークおごせの経営を通じて目指すのは、越生町そのものを活気付けること。
自身も家族とこの町に住んでいる松澤さん。話題がそのことに移ると、穏やかだった表情がキリッと変わった。
「地域活性は全国で流行っているけど、ちゃんと利益を生み出して地域に還元することって簡単じゃないんです」
「僕は、この場所をきちんと成功に導きたい。自分の子どもたちの故郷になる町をもっと良くしたいし、その中心にオーパークおごせがあったらいいなと思うんです」
今のオーパークおごせは、長年利用してきた地元の人たちと、新しいブランドイメージに惹かれて訪れる人たちが入り混じっている状況。どちらのお客さまも大切にしながら、目指すビオリゾートの姿に近づいていきたい。
「コンセプトからずれるとしても、今でも平日は、昔からのお客さまであるシニア層向けにカラオケ大会とかもやっていて。疎外感を感じないように気を配っています」
「一方で、しっかりとリゾートにも向かっていかなきゃいけない。目の前のお客さまに応えながら、施設の成長を考える。それを大変だと思うか、やりがいと思うかですよね」
その難しさや葛藤まで含めて、リアルな地域活性の姿なのかもしれない。
「地域活性ってどういうことなのか、働きながら学んでみたいという人はウェルカムです。温泉道場は、その名の通り道場のような会社ですから。将来的に自分の地元で頑張りたいと思う人には、きっとここで学べることが多いと思います」
続いて話を聞いたのは、支配人の佐藤さん。1年ほど前に入社し、今は飲食部門を中心に、施設全体の運営に携わっている。
「今まで温浴施設で働いたこともあったし、大手の飲食チェーン店で働いていた期間も長くて。この仕事なら自分が培ってきたことが役に立つんじゃないかと思って入社しました」
入ってみてまず驚いたのは、任される仕事の範囲が広いことだったそう。
「チェーン店では、レシピも盛り付けも指定されて、それを効率良く調理・提供することが仕事でした。でもここは上からの指示はほとんどなくて、一から現場でメニューを考えていきます」
予算やコンセプトに合っていて、お客さまが喜んでくれるものなら自由に取り入れることができるという。
佐藤さんのアイデアから生まれたメニューもあるんですか?
「鯛めし、ですかね。グランピングメニューに、土鍋で炊いた鯛めしを加えたんです」
きっかけは「バーベキューで肉を食べたら、美味しいご飯がほしくなる」という佐藤さんのアイデアだった。
「ほかの施設にはないんじゃないかな。土鍋なら高級感もあるし、ちょっとリッチなグランピングに合うなって思ったんですよね。上手に炊けてお客さんが嬉しそうに食べているのをみると、してやったりって感じでね」
ニヤッと笑う佐藤さん。こんなちょっとしたアイデアが、お客さまのワクワク感につながっていく。
自分たちも楽しみながらお客さまと接していくのが、目指すリゾートの姿。
「子ども向けの料理におまけを付けたら喜ぶよねとか、バーベキューの食材もこんな盛り付けにしたら驚くよねとか。頭の片隅にいつも遊び心を持っていられるといいですよね」
今回料理人として加わる人は、料理長候補として既存メニューの調理提供に加えて、料理面からリブランディングに取り組んでいく。
「ビオリゾートというコンセプトに対して、料理でどんなアプローチができるだろう?」と日々考え、試行錯誤していくことになると思う。
自然豊かなこの場所を楽しむ人のための食事。
調理場で研究するだけでなく、ときにはホールでお客さんと接してみるなど、食べる人のことを想像しながらアイデアを出せるといいかもしれない。
まだまだ発展途上のオーパークおごせ。
だからこそ、学べることや挑戦できる余白も多いと思います。
なにより0からブランドを立ち上げる経験は、なかなかできることではないはず。
この新しいリゾートに心惹かれる部分がひとつでもあったなら、そこからアイデアを広げて、共に育てていってほしいです。
(2019/8/19、10/2取材 増田早紀)