※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「うちの店にオリジナル品はほぼなくて、ほかでも買えるものを集めているとも言える。だからやっぱり、セレクトが特徴なのかなと思っています。長く心地よく使えるものばかりが集まっているお店です」
「カタカナの商品でお客さまに笑顔になってほしい、驚いてほしい、そしてワクワクしてほしい。それが僕たちの根っこなんです」
そう話すのは、カタカナ代表の河野さん。
自由が丘にあるカタカナは、「日本のカッコイイを集めたお土産屋さん」がコンセプト。日本全国を訪れて集めた、つくり手の顔が見える雑貨や洋服を扱っているお店です。
今回メインで募集するのは、ものに込められたこだわりや、ものづくりの背景をお客さんに伝えるショップスタッフ。そして、お店での接客と並行して、商品の仕入れやつくり手とのコミュニケーションを担うアシスタントバイヤーです。
あわせて、オンラインショップの梱包・発送担当も募集中。
いずれも経験は問いません。何より大切なのは、ものが好きな気持ち。とくにカタカナに置いてあるものに心惹かれるかどうか。
ものが好きな人、人と話すことが好きな人。このお店に立つイメージができるかどうか、想像しながら読んでみてください。
自由が丘駅から歩いて5分ほど。
繁華街を抜けて、落ち着いた雰囲気に変わりはじめたころ、交差点の角に見えるお店がカタカナ。
入り口をぐるっと囲むように、商品棚がディスプレイされている。
中に入ると、洋服や器、本、アクセサリーなど、じっくり手に取りたくなるようなものばかり並んでいる。
レジの前で、お客さんと親しげに話をしていたのが、代表の河野さん。お客さんを見送ったあと、すぐこちらへ駆けつけてくれた。
もともとアパレル業界で働いていた河野さんと、店長であり奥さんの与輔子(よほこ)さんが、カタカナの運営の中核。
お店をはじめることになった原点は、今も店頭に並ぶ、秋田の伝統工芸品「曲げわっぱ」。
18年ほど前、闘病生活を送っていた与輔子さん。あまり食欲がないなか、曲げわっぱのお弁当箱に入れたご飯だけは、不思議ときれいに食べきることができたという。
「お弁当箱で味が違うなんて、正直あまり信じられなかった。でも、試しにぼくも使ってみたら、本当においしかったんです。それをきっかけに、伝統的な日本のものって、とてもすごいんじゃないかって思いはじめたんです」
日本でつくられたいいものが集まるお店をつくりたい。そんな想いからカタカナをオープンしたのが、2010年。
地元の人たちを中心に、多くの人に愛されるお店に育ってきている。
「子どもたちが『遊びに来たよ!』って入ってきて、コマを回したり絵本を読んだり。近所のおばあちゃんが『美味しいひじきが炊けたから』って持ってきてくれたり」
「以前働いていたのは駅ビルや百貨店に入るチェーンの洋服屋さんで、お客さんが流れていく感じが強かった。でもここは、根っこが生えているお店なんだなってすごく思いますね」
たしかに、地域に根を張り、お客さんとの関係を大切に育んできたのが伝わってくる。
「とてもうれしかった話があって」と、河野さん。
ここ数年、コロナ禍で家にいる時間が長くなり、大掃除をしたと話してくれるお客さんが増えたそう。印象に残っているのが、どのお客さんも「カタカナで買ったものは捨てずに残った」と言ってくれたこと。
「やっぱり、想いが込もっていて、自分が気に入って買ったものは、捨てずに使い続けたいと思うんだなって」
「僕たちは、つくり手さんのことを伝えたくてしょうがないんです。いいつくり手さんのものは、いい表情をしている。ものの背景まで知るのが好きな方たちが、ファンになってくれているんだろうなと思います」
昨年は、お店から歩いて5分ほどの場所に、ギャラリー「katakana shin」をオープン。
ものがぎゅっと詰まった賑やかな店舗と対照的に、ゆったりとした世界観で作品を表現できるスペースを目指した。
実際に案内してもらうと、向かいの神社の緑が見えて、とても静かな空間。
取材時に開催していたのは、「雪ガラス」という、神奈川の里山に工房を構える作家さんの展示。自然をモチーフに製作されたガラスの照明や鏡、モビールなどが並んでいる。
その作家さんは、まだこの場所を借りたばかりのころ、「カタカナがギャラリーをつくるならぜひ展示がしたい」と、一番に手を挙げてくれた方。
「切り取られた空間で展示ができることに、すごく感激してくれましたね。お客さまも何十分も滞在して、納得いくまで考えてご購入される方ばかりです。これから、この空間を活かしていろいろな企画をしていきたいですね」
ここまでが、今年1月の取材で聞いたお話。
10月はじめ、再びお店を訪れて、その後の状況を聞いてみる。
「shinは、ワークショップや落語会など、展示以外にもいろんな使い方ができていますね。この数年、会社はどんどん成長していて。前回の日本仕事百貨の募集でも、Webチームに3人のスタッフが入ってくれました」
店舗で新メンバーに研修をするなかで、カタカナらしさをあらためて見つめ直すこともできた。
「らしさって、言葉にするよりも、やっぱりお店に立って感じるべきものだと思っていて。お客さまとの距離の近さだったり、ものに対する僕ら想いの深さだったり。そういったものを何より大事にしているから、お客さまに喜んでもらえて、結果的に売上にもつながる循環が生まれるのかなと思います」
今月で13周年を迎えたカタカナ。入り口横には、記念企画がディスプレイされている。
毎年、周年記念日のタイミングで、ファンクラブの人たちと共同で企画を実施するんだそう。
「元クリエイティブディレクターで、よく企画の相談をしている、半分仲間みたいな常連さんがいるんです。ある日その方が、『河野さん話があるんだ。カタカナのファンクラブをつくりたいと思うんだけど』って」
ちょうど取材中も、よっ!という気軽な雰囲気でお店にやってきた、ファンクラブの応援団長さん。
ここまでお客さんに愛されるお店があるんだなあ。
「もちろん、いろんな価値観を持つ方がいるので、合わなければすぐに帰られる方もいますよ。でも、好きな人は何時間でもいられる。そういう方が、何度でも来ていただけるお店になっているのかな」
「カタカナに並んでいるものとフィットする人には、『ここはわたしのお店だ』って思っていただけるんだと思います」
今回募集する人も、そんなカタカナの空気をつくるひとりになる。
ショップスタッフとアシスタントバイヤーの両方に通じる働き方をしているのが、入社4年目の平岡さん。肩書はバイヤーではあるものの、基本はお店で働いている。
お店は11時オープン。開店前、外のディスプレイづくりから仕事がはじまる。
「棚を組み立てるところからやるんですよね。意外と重労働で、朝からちょっといい汗かけるくらい(笑)。お店の仕事って華やかに見えるけど、体力は必要かな」
営業時間内には、接客のかたわらポップを描いたり、商品の補充をしたり。平日は地元の人が多く穏やかな雰囲気、一方の週末は外から来るお客さんで混み合う。
19時にお店が閉まったあと、朝とは反対に棚を店内にしまい、レジ締めをして一日が終わる。
あわせて、バイヤーが随時対応していくのが、商品の発注業務。
「毎日必ず補充と発注の仕事は発生します。常に在庫を意識して、『この商品は納期1ヶ月だから、もう発注しておこう』とか。商品数が約500品番以上と尋常じゃないので、アシスタントとして入る方には、お店で体感しながら少しずつ覚えていってもらえればと思います」
長年扱っている定番品に加え、2週間に1回ほどのペースで変わるがわる企画展も実施。
作家さんの個展を開いたり、「生活の道具展」や「ゆかいな茶碗展」などテーマに沿った商品を集めたり。
企画の入れ替えの日は早めにお店を閉めて、みんなで棚をガラっと入れ替える。
企画で扱う商品を買い付けるのも、バイヤーの仕事。今は、河野さんと平岡さんが二人で分担している。
「展示会シーズンは、土日は全国のクラフトフェアを飛び回っています。今年行ったのは、富山、三重、滋賀、神戸、青森。いろんな地域をまわるので、全国の作家さんと出会えるんです」
「見つけたものは、どの企画で取り扱えそうか考えてリストにして。企画に当てはまらないものでも、お店に入れたいと思ったら代表と店長にプレゼンします」
今月取り扱う「SEAM.SHOES」というブランドも、1年前の展示会で平岡さんが見つけた商品。
秋田の老舗の革靴工場が、初めてつくったオリジナルシューズ。
甲の部分にゴムを使用しているので、手を使わずに脱ぎ履きができる。左右の足の大きさの違いや、その日の靴下の厚さに合わせて、中敷でサイズ調節も可能なんだそう。
「調整ができる靴ってほとんど聞いたことがなかったし、フォーマルからカジュアルまで馴染むデザインが好きで。展示会で初めて見たときから、絶対に取り扱いたいと思っていました」
「自分が惹かれているのはもちろん、その先のお客さんの顔が見えたとき、カタカナで扱いたい! と思いますね。あのお客さん好きだろうなと思えたり、店頭に並んでいるイメージができたり。自分で見つけてきて、その熱量のまま自分で売れるってすごく幸せなんです」
プライベートでも、家族や友だちと買いものに行くのが好きという平岡さん。相手が迷っていると「こっちがいいんじゃない?」とつい薦めてしまうそう。
自分が好きなものを伝えたい、相手に似合うものをアドバイスしたい。平岡さんと同じような経験をしたことがある人は、この仕事も向いているように思う。
「おすすめしたものを買ってくれたお客さんが、またお店に来たとき『あれ、よかったよ』って言ってくれる瞬間、めっちゃうれしいんですよね」
「同じ商品をまた買ってくれることもある。わたしたちの『伝えたい』っていう気持ちが、お客さんにも伝わっているんだなと思います」
取材後、お店で一目惚れしたレターセットと一筆箋を買って帰りました。
ホームページを見て気になっていたSEAM.SHOESも、平岡さんの話を聞いたら、やっぱり使ってみたくなる。
商品そのものが、純粋に魅力的。それに加えて、ものが持つ背景を知れるのが、カタカナでの買いものがワクワクする理由なんだろうな。
カタカナのもの、人、伝え方。いいなと思えたら、一緒にもっと大きくお店を育てていってください。
(2023/10/17 取材 増田早紀)
※一部、2023年1月の取材から引用、再構成しています。