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悩んだとき、迷えるとき。何気ない一言に背中を押されることってあると思います。
そんなお守りのように大切に残る一言は、近くでそっと自分のことを見守ってくれる人が届けてくれることが多いのかもしれません。
島根県の沖合に位置する、隠岐諸島。
そのなかでも島前(どうぜん)と呼ばれる、海士町(あまちょう)、知夫村(ちぶむら)、西ノ島町の3つの島が今回の舞台です。
海士町にある島根県立隠岐島前高校では、10年以上前から教育魅力化プロジェクトに取り組み、教育を通した地域活性化を進めてきました。今では高校生に限らず、若者と島々の新たな関わり方も生み出そうとしています。
今回はプロジェクトの軸となる部分をコラムで、現場で働くスタッフの話をこの記事でと、2本立てでご紹介しています。まずはぜひ、下記バナーからコラムをご覧ください。
この記事で募集するのは、隠岐島前高校で教員と協力して生徒たちの探究的な学びを推進していくコーディネーターと、島留学生たちが暮らす女子寮のハウスマスター。
学校内外でのプロジェクトや、日々の何気ない会話を通して地域と生徒をつなぎ、成長に伴走していく役割です。
あわせて、公立塾「隠岐國学習センター」で高校生、小中学生の学びをサポートするスタッフと、魅力化プロジェクトのインターン生も募集します。
向かったのは、隠岐國学習センター。古民家を改築した建物で、勉強に集中できるスペースもあれば、生徒が自由に過ごせるスペースもある。
魅力化プロジェクトのスタッフのオフィスはこの一角。この日は元インターン生が足を運んでいたようで、近況報告をする楽しげな声が聞こえる。
まず話を聞いたのは、高校コーディネーターの新立(しんだて)さん。関西から移住して6年目になる。
もともと教員を目指していた新立さん。学生時代、青年海外協力隊に参加した先輩の話に刺激を受けて、自身も協力隊に参加。アフリカに赴任していた。
さまざまな角度から教育の世界を見てみたい。任期後もそう感じていた新立さんが見つけたのが、隠岐島前高校の魅力化プロジェクト。
最初の3年は隠岐國学習センターのスタッフとして、高校生の学習をサポートしたり、進路選択の相談に乗ったり、キャリア設計のプログラム開発に関わったり。
現在は高校のコーディネーターとして、地域に飛び出して学びを深める、総合的な探究の時間のカリキュラム設計やサポートをしている。
ほかにも、保健体育や家庭科のゲスト講師として地元の人に参加してもらうなど、地域と学校、生徒をつなぐ役割も担っている。
印象に残っている、と話してくれたのは、コーディネーターを始めて2年目の出来事。
「毎年、高校で探究活動の発表会をしているんですけど、島の小学生も地域について調べたことを発表しに来てもらったんです。海士町では『こども議会』っていうふるさと教育に30年くらい取り組んでいるんですが、彼らの発表を聞いた高校生たちがすごく刺激を受けたようで」
「小学生がここまで深く調べて発表しているんだから、自分たちも頑張らないと」と、奮起した生徒もいたそう。
「そうは言っても、探究の時間はグループ活動ですし、モチベーションも人それぞれ。みずから手をあげて発言するのが得意な人もいれば、何も言わずにメンバーのことを気にかけている人もいる。それぞれに良さがあると思うので、生徒一人ひとりが主役になれるような伴走の仕方を心がけています」
「アポ取りの電話だって、生徒にしたらチャレンジじゃないですか。なかにはすごく緊張する子もいる。そんなときには、電話口での最初の挨拶だけ手伝って、あとは頑張れって背中を押してあげたり」
挑戦のハードルは、できるだけ小さいほうがいい。自信を少しずつ積み重ねるなかで、新しいことにチャレンジしてみようという気持ちになるかもしれない。
それが、生徒自身の成長にもつながっていく。
「新しくコーディネーターに加わる人は、自分の考えや正解を押し付けずに、まずは相手のことを受け止めてあげられる人がいいと思います。自分の常識を手放すことも必要ですね。生徒に対しても、大人に対しても」
一人ひとりの考え方に触れるうち、自分自身の視野もきっと広がっていく。そんな変化を前向きに楽しめる人だといい。
次に話を聞いたのは、女子寮のハウスマスターの澤多さん。
「外に出ませんか?ずっと建物の中にいると疲れますよね」と、こちらを気づかってくれる。
石川県出身の澤多さん。海外で働きたい!と、ブータンで教員をしていたところ、新型コロナの世界的な流行のため帰国することに。2年前、知人から誘いを受けて海士町へやってきた。
ハウスマスターの仕事は、主に寮生の暮らしと学びの伴走。寮は、自治寮として生徒みずから運営する仕組みになっているので、生活のなかでの悩み相談などに乗ることも多い。
また、寮生を見守る「島親さん」と呼ばれる地域のサポーターとコミュニケーションをとったり、地域の人からイベントのお誘いを受けて、寮生に声をかけて引率したりと、寮生と地域をつなぐ役割も担っている。
「寮生から希望をもらうこともありますね。めっちゃ釣り好きな子が漁師さんと仲良くなって、漁師さんの作業をお手伝いすることもありましたし、農業ラブな子が芋掘り大会を企画して、みずから参加者を募ることもありました」
地域の人と寮生とのかかわり方はさまざま。まずはハウスマスター自身が地域に入って積極的にコミュニケーションをとりつつ、寮生と地域の人がより良い関係性をつくれるようサポートすることも、ハウスマスターの大切な役割だと思う。
「ただ、これをしますって仕事が言語化されているわけじゃなくて」
着任したとき、男子寮の先輩ハウスマスターに仕事内容を尋ねると「わかりません。自分で考えてください」と言われたのが忘れられない、と笑う。
「その人は仕事がバリバリできる人だったので、最初は私もこうならないと!って焦っていたんです。ただ、時間を過ごすなかで、それぞれの生徒との関わり方や、互いの強みの違いがだんだんわかるようになって、同じにならなくてもいいんじゃないかと思うようになりました」
澤多さんのもとには、話し相手になってほしいと声をかけてくる子もいれば、「受験勉強が辛い」と泣きながら相談しに来る子もいる。
夜中までとことん話につきあったり、ただそばにいたり、ぎゅっと抱きしめてあげたり。目の前の生徒との時間を重ねていくうちに、「これが自分の役割かもしれない」と思えるようになった。
「寮生たちが気づかせてくれましたね。タスクをただこなすんじゃなく、自分のあり方を見つけるところから始める。それがハウスマスターって仕事なのかもしれません」
どんな関わり方をするかは、新しく加わる人次第。とはいえ、まずは高校生と過ごす時間を楽しむことが大事。
「多感で、思春期真っ盛りな時期だからこそ、すごく変化が見えやすいというか。半分大人で、半分子どもみたいな子たちが、毎日毎日変わっていく。めきめき成長していく姿にエネルギーをもらっています」
そんな澤多さんは、来年春から今の仕事をお休みする予定。憧れだったオランダで、ワーキングホリデーに参加するそう。
「悩んだけれど、年齢的に今年がラストチャンスだったので。これまでずっと教育に携わっていたから、今まで挑戦してこなかった分野にも挑戦してみたいです。自分をアップデートして、進化した姿で生徒たちの前に帰って来れたらいいなと思っています」
そういきいきと話す澤多さん。新しいことに挑戦する姿は、格好いい。
澤多さんは、どんな人に来てほしいですか?
「大人ぶらない人、ですかね。自分のなかに正解がすでにある、というよりは、生徒と一緒に迷えるくらいのほうが、生徒のなかにも入りやすいだろうし、自分の変化も感じられていいんじゃないかな」
「生徒からだけじゃなくて、私の相談事を生徒に話すこともあるんですよ。大人が全部正解を持っているなんてことはなくて、常に迷ってるんだよってことが伝わればなって。自分の本音をさらけ出すことで、生徒も本音で向き合ってくれると思うんです」
人と人とで向かいあうには、心身ともにエネルギーがいる。
「ちょっと疲れたときは、島を出てみるのもありですよ。島を出たら、まったく別の世界なので」と、澤多さんは話していた。
大人も子どもも関係なく、互いに学び合って、成長する。
魅力化プロジェクトが浸透しつつあるこの町からは、前向きなエネルギーが溢れているように感じました。
(2022/9/12取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。
教育魅力化プロジェクトを推進する島前ふるさと魅力化財団では、島前での暮らしを体験できる「大人の島留学」の運営にかかわるスタッフと、その参加者も募集しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
過去には、「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」コーディネーターの方と、隠岐島前高校の卒業生をお招きして、イベント「島の未来と教育ナイト」を開催しました。記事とは違った視点でお仕事のことを知っていただけると思います。よろしければ、ご覧ください。
【トーク部分はYouTubeでも配信中!】