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商店街を温泉から
ぽかぽかと沸かせよう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「おいしいごはんにまち歩き、そしてアウトドア。はじめていなべを訪れた人も、ここに来たら、色々なまちの楽しみ方に出会える。そんな、道の駅のようなおふろを育てたいんです」

2024年4月、三重県いなべ市阿下喜(あげき)に「いなべ 阿下喜 ベース(仮)」が誕生します。おふろ、飲食、宿泊からなるまちの複合施設です。

はじめるのは、株式会社旅する温泉道場。経営が難しくなった温浴施設を再生し、地域活性に取り組んでいます。

2017年からは、四日市温泉 おふろcafé 湯守座(ゆもりざ)を運営しています。

いなべの現場では、リノベーションに向けた解体工事がはじまったばかり。

ここ、いなべ 阿下喜 ベースを育てていく人を募集します。

「東海地方の20〜30代がいなべに何度も通いたくなる。そんな“旅の目的地”をつくりたいんです。同世代の人に、自分のお店をつくるような気持ちでチャレンジしてもらえたら」

そう話すのは、支配人の新(しん)さん。

特別なスキルや経験はいりません。入社後は、湯守座で研修をしてから、いなべの現場に入ることができます。

 

名古屋から約30km。車では1時間ほどに位置する三重県いなべ市。

ちょっとめずらしいローカル線でも行けると聞いて、今回は電車で向かうことに。

JRで名古屋駅から桑名駅へ。そこから乗りこんだのは、三岐鉄道 北勢(ほくせい)線。

線路幅の狭い“ナローゲージ路線”としては日本最長。出発すると、こじんまりとした電車はガタンゴトンと小気味よく揺れて楽しい。

どこかアトラクションのような北勢線に、風景や吊り込み広告を撮影する女性の姿があった。

温泉道場のメンバーで、いなべ市の地域活性化起業人の和田さんだった。

新卒で入社して4年目。現在はいなべ阿下喜ベースの準備を進めている。

今日は取材後に、Webサイト制作の打ち合わせがあるそう。サイト内にエリア情報も載せるため、北勢線をリサーチをしているという。

和田さんは、どうして今の仕事に就いたのだろう?

「わたし、奈良県の西吉野町というところの出身なんです。山深い柿の産地で、映画の舞台にもなるようなところ。昔からの建物を残したり、活かすことに自然と興味を持ちました」

「温泉道場は、不採算になった温浴施設を、カフェとして再生する『おふろcafé』というブランドにリノベーションしていました。“カジュアルなリノベ感”に共感したんです」

もう一つ惹かれたことがある。

「わたしが地方出身ということもあるのかな。日本全国、どこでも同じ空間をつくるんじゃなくて。四日市は四日市、いなべはいなべ、といったように、地域になじむお店を育てているところにも惹かれました」

「今日向かっているいなべは、まさにリニューアル中。イメージしにくいところもあると思いますが、旅する温泉道場が大切にしていることをお伝えできたら」

電車は、間もなく終点の阿下喜駅に到着。

徒歩3分のところで、いなべ阿下喜ベースのリノベーションがはじまっている。

エントランスに大きく「健康増進施設」と看板が掲げられている旧・阿下喜温泉。

「いなべ市が、市民の健康増進のため2006年に立ち上げた施設です」

おふろに加えて食堂、ホール、ジムが併設されている。

「主な客層は、地元のおじいちゃんおばあちゃんでした。数百円の入浴料を払って入浴し、おふろあがりは、たたみの休憩スペースへ。おじいちゃんは囲碁、おばあちゃんは女子会をしている。公民館のような場所だったんです」

プロジェクトのきっかけは、施設の所有者であるいなべ市から、今後の施設のあり方を相談されたことだった。

「市の第三セクターとして、指定管理契約で運営をしていたのですが、コロナをきっかけに大幅な赤字に。施設の存続が難しくなりました。そこで、旅する温泉道場が20年間の賃貸借契約を結び、運営していくことになりました」

旅する温泉道場は、これまでの業態にとらわれずに、新たなビジネスモデルを組み立てていく。

「入浴料を値上げしてしまうと、通いなれたおじいちゃんおばあちゃんの足が遠のいてしまいます。そこで、地域の健康増進には取り組みつつ、入浴料とは別のキャッシュポイントをつくることにしました」

それが、課金制の男女共用サウナ。

「今まで利用の少なかった地元の若い世代、そして愛知県名古屋市や豊田市といった周辺のまちからもわざわざ人が訪れる施設に育てていきたいんです」

新設するサウナは3種類。フィンランド式のロウリュを楽しめるサウナをメインにする。

「『自然と健康』をコンセプトに、いなべの自然資源をとりいれて、健康につながる体験を提供したいんです」

今後は、さまざまなアイデアを施設に落としこんでいきたいところ。

「いなべ特産の石榑(いしぐれ)茶を、サウナのアロマに使ってみるのは?」「川で録音した自然音を、BGMとして流せない?」「室内装飾として、森の植物をあしらってみよう」

一方で、スマートウォッチを貸し出し、心拍数の測定も行えるように。テクノロジーも取り入れて、健康を可視化したいと考えている。

自然と健康というテーマはどのようにして浮かんできたのだろう。

ここで、代表取締役の宮本がよく話すことなんです、と前置きして和田さん。

「今回、温浴施設の役割を見つめ直したんです。だって、体をきれいにするだけなら家のおふろでも間に合うじゃないですか」

「そこで浮かんだのが、健康でした。人が生きる上で、一番大切なものだと思うんです」

宮本さんは、おふろという仕事の価値をより高いものにできると考えている。

「いなべ 阿下喜 ベースが軌道に乗ると、お客さんが健康になれる上に、いなべの自然資源も活用できて、国の医療費も抑えられると思うんです」

 

おふろの価値を高める。

大きな目標を見すえて、コツコツと歩いてきた人がいる。2022年5月から旧・阿下喜温泉の番台にも立ってきた、支配人の新(しん)さん。

「表に出るの、慣れてないんですよお」と、カメラに緊張しながらも、話を聞かせてくださった。

「温浴施設の運営業務には、守りと攻めが必要です。守りはぼくがしっかり固めるから、今回募集する人には、攻めを任せていけたらいいな」

「守り」とは、おふろがトラブルなく稼働するための業務。設備メンテナンスや備品の在庫管理、経理、シフト作成などがある。

一方の「攻め」は、お客さんが何度も通いたくなるお店づくり。20〜30代の人が多く訪れる施設をつくりたいからこそ、同世代の人にチャレンジしてほしい。

「もの珍しさで、一度は遊びに来てもらえるかもしれません。それでおしまい、じゃなくて。春に訪れたお客さんが夏、秋、冬とシーズンごとに通いたくなるような体験を提供していきたいんです」

敷地内には、滞在拠点となるホテルもオープンする。

「2、3日滞在し、川遊びやサイクリングをしてみたり、まち歩きを楽しんだり。いなべの歴史や文化にも触れつつ、心身を整えてもらえたら」

アウトドアの遊びが盛んだったり、阿下喜商店街につぎつぎと魅力的なお店がオープンしているいなべ。平日でも多くの人が訪れている。

まずは、いなべ阿下喜ベースを知ってもらうことから仕事がはじまる。

スタッフのみんなとともに、サウナやホテルが提供できる体験を考え、企画におとしこみ、SNSや広告で発信していく。

「仮説を立てて、実施して、よりよくなるように軌道修正していく。その積み重ねでお店を育てていきます」

「この仕事の楽しいところは、自分で企画を立てて、ダイレクトに反応が見られること。『この企画はお客さんに刺さっているのかな?』その答えは、お客さんの表情なんです」

お店という現場には、さまざまな仕事がある。

浴室でのぼせてしまったお客さんを介抱することも、館内放送の方法を改善して、パートさんに指示することもある。ゆくゆくは売上を見ていくことも大事。

やることがたくさんあるというよりは、「試せることがいろいろある」職場なんだと思う。

あらためて、どんな人と働きたいですか?

「販促、広報、接客。経験はあったほうがよいけれど、それ以上に人を楽しませるのが好き、人の笑顔を見ると自分もうれしくなる。そんな人と出会えたらいいなあ」

入社後は、四日市の湯守座で研修をしてからいなべに向かう予定。

ここで新さんは、2017年の湯守座の立ち上げを振り返る。

「本棚をIKEAで選んで、自分たちで組み立てていきましたね。それから一万円札を握りしめて(笑)、古本屋さんであれこれジャケ買いして」

「本棚に並ぶ雑誌、館内の装飾、BGM。一つひとつスタッフの手づくりなんです」

自分たちで雑誌を手に取りながら、BGMを聴きながら、「この本は、この曲は、お店のコンセプトによく合うね」と話し合っていく。

そうやってみんなでお店をつくるなかで、お互いの人となりも知っていく。

「館内を見て『装飾がどんどん上手くなっていくなあ』とか、朝のBGMを聴きながら『あの人らしい選曲だな』とか。お店をつくる一つひとつの仕事のうしろに、人の顔が見える。それが、旅する温泉道場なんです」

ここで、顔をほころばせた新さん。

「ぼく、自転車が好きで。いなべの本棚にはサイクリングの雑誌を並べたいんです。サイクルスタンドも設置したいな」

ツアー・オブ・ジャパンのコースがあり、サイクリストが多く訪れるいなべ。

「スタッフ一人ひとりの『好き』を盛りこむことが、幅広いお客さんにとって心地よいお店づくりにつながります」

 

最後に、いなべからはじまる未来について話すのが、代表取締役の宮本さん。

出身は和歌山県。取材前日に、いなべに家を買ったばかり。

「今年、旅する温泉道場は和歌山県有田川町と包括協定を結びました。一緒に働く社員のなかには、岐阜県や奈良県で自分のお店を持ちたいという人もいます」

旅する温泉道場が取り組むのは、おふろの再生を通じた地域活性。

ここで、地域活性を“焚き火”にたとえる宮本さん。

「すでに大きい火が燃え上がっているまちばかりじゃない。火起こしからはじめるまちも、雨でぐじゅぐじゅになっていることだってあります」

「最初に、着火剤があると薪(まき)に火をつけやすい。だから、行政の補助金や助成金もうまく活用して、火を燃え上がらせて。でも、そこで薪が尽きてしまったらおしまい。やっぱり人なんです。なにかをはじめたい人たちが一緒に火を囲むことで、焚き火は燃え続けていきます」

順調に会社の事業が拡大していくなかで、一人ひとりが活躍できるフィールドもどんどん広がっている。

燃え続ける熾火(おきび)をじっくりと育てていきたい人も、いろんなまちで火を起こせるようになりたい人も。

まずは、いなべをぽかぽかと沸かせるところからはじめませんか。

(2023/8/28 取材 大越はじめ)

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