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子どものころから知っている
大切なことを手がかりに
DARUMAの糸とまた1歩

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

思い出してみると、小学校の教室にはいろんな「目標」が貼り出されていた。

大きな声で挨拶をしよう、友だちの気持ちを考えよう。

大人になった今は当たりのことにも思えるけれど、毎日ちゃんとできているか問われると、ちょっと考えてしまう。

そんな人間としての基本的なことを見直し、新しいフィールドを開いてきたのが、今回紹介する横田株式会社です。

創業113年の老舗糸メーカーで、真っ赤なダルマがトレードマーク。小学校の家庭科の授業や実家の裁縫箱など、ダルマの手縫い糸がある光景もまた、子どものころの記憶に結びつくものかもしれません。

明治から糸をつくる営みに一本筋を通してきた会社ですが、時代に合わせて商品も変化させ、ときには苦い経験も伴いながら、少しずつ前に進んできました。

近年はデザイン性の高い手編み糸やキットの企画で国内外にファンを増やしています。

今回は営業職として、大阪の本社で働く人を募集します。小売店との商談や海外出荷、そのほか展示会の運営など、仕事は多岐に渡ります。

手芸の知識や営業の経験などは問いません。目立たない仕事も誠実に、相手の立場に立って物事を考えられる人を求めています。



大阪市の中心部、地下鉄本町駅の周辺は、古くから繊維や衣料の問屋街。

横田株式会社の本社は、ここから歩いて10分ほどのところにある。

入り口にはダルマのロゴマーク。ミーティングルームのある3階のエレベーターホールには、昔の製品に使われていたシールやカードが飾ってある。

戦前から生産を続けている家庭用の手縫い糸、70年代の手芸ブームで売り上げを伸ばしたレース糸。パッケージを眺めていると時代の流れや会社の歴史が感じられる。

「昔の社員で、こういう資料を整理して取っておいてくれた人がいて。社屋を新しくするときに発掘して持ってきました。うちのロゴのダルマの顔は、厳しいだけじゃなくてちょっと可愛いんですよ」

そう紹介してくれたのは、創業者の玄孫にあたる横田宗樹(もとき)さん。34歳のときに5代目の代表に就任し、今年で8年目。会社の歴史に愛着を持ちつつ、新しい体制づくりにも積極的に取り組んできた。

なかでも力を入れているのが、手編み糸の企画開発。

自社工場を持ち小ロットから生産できる体制を活かして、素材や質感もさまざまな糸づくりに取り組んできた。さらに、その糸を使ってつくるニットアイテムの企画も自社で行っている。

セーターなどの作例をまとめたパターンブックは、「手づくり」と聞いてイメージする素朴さとは一線を画す。

2016年にはオンラインによる直営店をスタート。SNSなどを通して、ユーザーの声を企画に活かせるようになった。最近は海外の顧客も増えている。

昨年12月には、東京・恵比寿に念願だった実店舗をオープン。今は横田さん自身も、2週に一度のペースで店頭に立って接客をしているという。

店舗はお客さんとの新しいタッチポイント。オンラインとの違いを感じることはありますか。

「お客さまの言葉の“行間”のようなものが見えるのは、実店舗ならではですね。わざわざSNSに書き込むほどではないけど、お店でぽろっと漏れてくる『もっと〇〇だといいよね〜』っていうやりとりにこそ本音があるような気がして。ようやく情報の源泉に近づくことができた感じがします」

「あとは何より、取引先である小売店さんの気持ちがわかります。毛糸ってロットごとに色が微妙に違うので、お客さんはロットで揃えて買うんですが、その分店頭には半端な余りが残ってしまう。これを売り切るのは大変だなっていう、苦労も体感できました」

お客さんの気持ちを知るため、横田さんはときどき自分でも手編みに挑戦するという。この日着ていたセーターも、自分で編んだものだそう。

「このセーター1枚編むのに、だいたい80時間くらいかかったと思います。こんなに時間かかるのか、少し間違えただけでこんなにやり直すのか、編み方もこの説明ではわかりにくいなとか、発見が多いです」

相手の立場に立って考えるというのは、企業全体で大切にしている価値観のひとつ。

取引先やお客さんはもちろん、一緒に働く仲間に対しても、常に配慮や思いやりを持ってほしいと横田さんは言う。

それはこれまで、会社として苦い経験もしてきたからだ。過去に社内では、企画、生産、営業、それぞれの部署が別の方向を向き、ひとつのチームとして足並みが揃わない状態がだったことがあったという。

「僕が会社に入った当初は業績も伸び悩み、残業代も出ないなかで、みんなが数字を追いかけていました。今は僕のほうから『売り上げが最優先じゃない。DARUMAらしさが損なわれるなら、目先の売り上げにこだわらなくていい』と伝えるようにしています」

繊維の業界は歴史が長いだけに、古い商習慣や売り先優位の上下関係にこだわる取引先もある。理不尽な要求を受け入れれば、しわ寄せが社内の人間関係にも影響する。

「自分たちの商品を大切にしてくれない会社や、フェアに会話ができない相手なら無理に商売しなくていい。それでもやっていけるように、質の高いコンテンツをつくる方向に努力したいと思っています」

薄利多売ではなく、唯一の価値を感じてもらえるブランドに。

独自性の高い企画を軸とすることで、海外も含め売り先は増え、業績も伸びてきた。

「労働環境もかなり改善したんですが、最初からそれが当たり前だったわけじゃない。大変な時代を経験して残ってくれた先輩もたくさんいる。今でも不測の事態で残業が必要なことはありますし、そういうときに自分の担当じゃなくてもちょっと手伝う気持ちは持っていてほしいですね」

「全体で30人ほどの小さな会社なので、一人ひとりの存在は大きいです。僕はいつも採用のとき、クラスに転校生を迎えるような気持ちでワクワクしています」



「今は落ち着いた感じのスタッフが多いので、明るい人が来てくれるとうれしいです」

そう話してくれたのは、入社9年目で営業担当の丹羽さん。新しく入る人は、直接仕事を教わる機会が多いと思う。

横田株式会社では昨年から営業機能を大阪本社に集約し、4名で全国と海外の取引先に対応している。海外とのやりとりはメールがメインなので、英語は翻訳ツールを活用することもできる。

商談で取引先を訪ねる以外にも、見積もりや輸出書類の作成などのデスクワーク、電話対応、ときには梱包出荷やサンプル手配のために糸巻きなどの作業を行うこともある。

取引先は手芸関係の小売店だけでなく、最近は雑貨店や書店など業態もさまざま。月に1〜2回は地方に出張することも。

担当案件は基本一人で対応するため、移動やスケジュールの組み立てをある程度自分のペースでできるのも、丹羽さんの性に合っているそうだ。

「僕はもともと新卒から中小企業を目指して就活をしていて。組織が小さければ、裁量も大きいし、短い期間でいろんなことを経験できるだろうっていう“魂胆”がありました。そういう意味では、自分の理想に近い働き方ができていると思います」

もともとファッションに興味があった丹羽さん。経験を積むにつれて自分で企画を立てたりディスプレイの提案をしたり、興味が仕事とリンクする場面も増えてきた。

横田さんが大切にしている「相手の立場に立って考える」という姿勢を、営業の役割のなかで意識することはありますか。

「まずは相手の負担にならないように売る、ということですね。闇雲に量を売るのではなく、店舗の規模に合わせて相手の採算が取れそうな組み合わせを考えて提案するようにしています」

「あとは、ほかの営業担当の取引先や、直営店、OEMなど、相互の利害関係や相関図も意識しています。誰にどの情報を出すか、自分のコミュニケーションひとつで、ブランドのイメージも変わってくる。会社の顔になっている、という意識で丁寧に話を進めたいと思っています」



とはいえ、ここまで俯瞰的に事業の全体像を把握するには時間がかかる。

一昨年入社した西村さんも、先輩の背中を見ながら一つひとつ仕事を覚えてきた。

「入社後、最初に研修期間があるので、工場の加工現場を見たり社長の話を聞いたり。そのあとは先輩についてお客さんを訪問しながら実務を覚えていきました。自分もまだ日々の業務が完璧にできているわけではないので、もうすぐ後輩ができると聞いて、正直ドキドキしています」

横田株式会社のオフィスは、一部屋にすべての部署のデスクが並んでいる。隣にいる先輩だけでなく、ほかの部署の人の状況もよく見え、コミュニケーションがとりやすい。

以前はウェブ制作会社や生花店などの業界で働いていた西村さん。編み物や手芸にも縁がなかったという。

「毛糸に触れるのは小学校の図画工作以来くらいだったんですけど、最近は妻の祖母に教わりながらネックウォーマーを編んでみています」

対面での営業も、西村さんにとってはじめての経験。取引先は規模も年代もさまざまで、年配の方が運営する小さな店舗などを訪れて話をするのも、新鮮で楽しいそう。

遠方の取引先とはオンラインのやりとりが主流になってきた一方、ファックスなどのツールも現役で稼働中。効率だけでなく、相手に合わせたやりとりを工夫する場面もある。

手芸業界とはいえ、取引先には男性の担当者も多い。西村さんがもともと趣味で楽しんでいたスポーツや釣り、車などの話題がきっかけで、雑談が盛り上がり打ち解けられることも。

先輩の丹羽さんも、その部分には助けられているという。

「仕事に関してはまだまだ不勉強を痛感することも多いですし、自分の担当をしっかりこなして、そのうえで会社全体の動きを見られるようにしていきたいです。とりあえず今は、つくりかけのネックウォーマーを早く完成させないと。冬が終わってしまうので(笑)」

4年前から数回にわたりこの会社を取材してきて感じるのは、横田さんたちはあまり「求める人物像」を最初に限定しないということ。それよりも、出会った相手と何ができるか考えているのだと思います。

だからこそ新しく加わる人も、相手と呼吸を合わせるようにコミュニケーションをとり、相手を知るためのプロセスも楽しめるとチームに馴染みやすそうです。

みんなでつくり、届ける。その意識さえあれば、個々の持ち味が良い形で活かせる職場だと思います。

(2024/1/31 取材 高橋佑香子)

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