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動き考え、考え動く

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

考えること、動くこと。

そのバランスは仕事によってさまざまです。

手を動かすことでアイデアを形にし、その過程で浮かんだ課題を考える。解決の糸口が見えてきたら、確信はなくてもまた手を動かしはじめる。

今回募集するのは、考えることと動くことの小さなサイクルを次々に回していくような仕事だと思います。

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茨城・常陸太田。

このまちに、とある一軒家の裏庭からはじまった会社があります。

株式会社ラフジュ工房。アンティーク家具の仕入れや修理、販売などを行っている会社です。

日本仕事百貨でも何度か紹介してきたこの会社で、古くなった家具を修理し、現代の生活によみがえらせるリペア職を募集します。

水戸と郡山を結ぶローカル鉄道「水郡線」の常陸大宮駅で降り、駅前からタクシーに乗り込む。

行き先を運転手さんに伝えると、「ああ、あそこね」と一言。地元の人にはよく知られた会社のようだ。

15分ほど走ると、ラフジュ工房の四角い本社と三角屋根の工房が見えてきた。

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真っ白な本社屋は今年できたばかり。2階に事務所があり、1階は家具の展示会場となっている。

展示会場の一角に腰かけて、まずは代表の岩間さんから話を聞くことに。

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岩間さんがアンティーク家具にはじめて触れたのは26歳のとき。骨董屋で出会った和箪笥に惹かれて15万円で購入したものの、別のお店では7万円でより質のいい箪笥が売られているのを見つけてしまった。

「そのとき逆に、目利きの力さえあれば商売になると思ったんです。安く仕入れて修理し、付加価値をつけてネットで販売する。サイドビジネスとして裏庭ではじめました」

その後、この仕事にのめり込んだ岩間さん。居ても立ってもいられなくなり、8年勤めた会社をやめて独立する。

「ひとりでやってたんですけど、働きすぎちゃって。人を雇うことにしたのが最初の転機でしたね」

当初は自分を助けてもらうために雇い、経営が悪化したらやめてもらおう、くらいに考えていたそう。

ただ、雇った2人のスタッフが予想以上に一生懸命働いてくれたことで、考えが変わったという。

「それからですね、ビジネスとして真剣に取り組むようになったのは。一度雇った以上は、約束した金額は何があっても払わなきゃいけない。そう思って組織づくりをはじめました」

「個人でやる分には食っていければいい。でも経営になった途端、投資が必要になります。人を雇って規模も拡大しつつ、未来に投資する。日々真剣勝負ですよ」

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立ち上げから7年が経ち、従業員数は40名を超えた。家具の在庫は4000点以上。

けれども、これでもまだまだ足りないそう。

「ネットでものを売るとき、地域って関係ないんですよね。現に日本全国から注文をいただいています。ただ、センターテーブルがほしいと思って検索しても、うちでは数件しか出てこない。それって実は規模が小さいんじゃないかと思うようになったんです」

「売上げを伸ばすには、商品をよく見せたり、付加価値をつけたりと、いろいろテクニックもある。だけど、なんだかんだ言って品揃えと価格が一番大きいんじゃないかと。スタッフも50~60人と増やし、在庫も3倍ぐらいには増やしたい。お客さまが選べるだけの品数と買いやすい値段にしていきたいというのは、ここ数ヶ月で腹をくくって取り組んでるところですね」

工房のスペースも徐々に拡大していて、作業ブースは16部屋、実質30人が働けるほどの広さがあるという。

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ラフジュ工房がユニークなのは、そんなビジネス的気質と並行して、柔軟に挑戦できる環境が育まれていること。

「なんでも挑戦してみようというノリはあります。『同じ人間がつくったんだから、がんばればできるんじゃない?』ってね(笑)」

たとえば、専門的な技術を必要とする伝統工芸の金具にも一から挑戦。専用の道具がなかったため、硬い金属が使われている釘抜きを成形して、専用のたがねをつくるところからはじめたという。

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和箪笥にはじまり、高度な技術を要する部品や海外製の家具、さらには人形の修理など。家具以外のものを扱ったり、新品の家具を一からつくることにも取り組みはじめている。

「できなかったことができるようになるのは楽しいですし、ビジネス的にも他社にはないアドバンテージになります。『時間はかかっても、失敗してもいいからやってみよう』といつも言っています」

展示会場を本社1階に設けたのも、インテリアの販売や店舗ディスプレイの経験者がいたわけではない。長く使う高価な買い物だからこそ、お客さまに直接見て買ってもらえる場をつくりたいと思い、試行錯誤しながらこの空間をつくりあげた。

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「今週末も20組ほどいらっしゃる予定です。半分は県外からのお客さまで、お買い上げいただく成約率も高いですね」

「お客さまも喜んでくださるし、社員もお客さまの顔が見えるので、自分たちが必要とされていることを感じられますよね。その意味でかなりいい効果があるなと思っています」

柔軟にやってきたからこそ、できることが増えて規模が拡大してきたとも言える。

リペアの現場に目を向けても、マニュアル化できる仕事は基本的にない。

「古くなった家具を目の前にしたときに、何をどうすべきかを自分で考え、行動に移して形にしていくのがこの仕事の本質。同じ家具はひとつとしてないですから。1から10まで教えてくれるのが当たり前と思う人は合わないですね」

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「新人の教育も、以前は簡単なものの修理から任せてたんですが、今は一番難しいものから取り組ませていて」

それはどういう意図で?

「ボロボロの家具には全部詰まってるんです。どこまで直して、どこは直さないか。判断にあふれている。なので、一番ボロボロな家具をばらして組み立てられるようになれば、だいたいのことは応用できるようになります」

「聞かれれば教えますよ。聞くのもその人の力だから。あとはその人次第です。『めんどくさい』と思うか、『ここまで自分で考えてやっていいんだ!』と楽しめるか。そこが大きな分かれ目になるんじゃないですかね」

昨年入社した阿部さんも、最初にいきなりボロボロの箪笥を渡されたそう。

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「頭が真っ白になりました(笑)。どうしようかと思いましたよ」

「ただ、やってみればなんとかなるものです。少しずつ質問する回数も減っていき、いつのまにかひとりで作業していました。“なんとかなる”経験を繰り返すうちに、今回もなんとかなるって思えるようになるんですね」

新人のうちは、共同の大部屋で先輩や同僚とともに働く。1年もすると個別の部屋を割り当てられ、集中して作業できる環境が整っているという。

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大学時代に木彫を学んでおり、素地はあったという阿部さん。

「木を彫ることばかりしていて、まったく就職活動をしていなかったんですね。で、卒業してからどうしようか考えて。貯金を使いながら、就活も兼ねてあちこちを旅して回りました」

けれども、ピンとくる場所は見つけられなかった。

今度はどうしようか。そんなことを考えていたとき、知り合いから日本仕事百貨の記事を紹介され、ラフジュ工房を受けることに。

0から生み出すのではなく、直す仕事についたのはなぜだったのだろう。

「地元が新潟なんですけど、大学から近い燕三条市が刃物の名産地なんです。自分で使う刃物はそこで揃えていたので、鍛冶屋さんとやりとりするうちに道具にも興味が出てきて。いろんな道具を扱える仕事がいいなと思ったんです」

道具への興味が先だったんですね。

「そうですね。今は全部で70本は持っていると思います。このあたりは神社やお寺の境内で開かれる骨董市もけっこうあるので、個人的にはそういう楽しみもあります」

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工房スタッフでも、刃と柄の部分を別々に買っているのは阿部さんだけだという。

「仕事が終わってからも夜な夜な削ってますよ(笑)」と岩間さん。

阿部さんのように道具が好きだったり、歴史や文化への興味から入るのもありだと思う。どんな形であれ、ここでの仕事を自分の興味と重ねながら取り組める人がいい。

阿部さんはどんな人と働きたいですか。

「興味を持ってなんでも話せる人。家具ひとつとっても、この傷はどうやってついたのか。ありえないところにシミがあるな、とか。話していると、商品に対する見方、感じ方が変わってくるんです。自分たちが何を考え、何を直しているのか再確認することになるので」

そこへ工房長の刈谷さんが言葉をつなぐ。

「たとえば、木目がきれいに見えるようにつくられているのを発見すると、昔の職人と対話している感じがして。業務にぐっと深みが出るというか、楽しくなってきますよね」

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「丸い形をつくるにしても、糸ノコでガーっと切ったり、少しずつかんなで削るとか。引き出しは無限にあります。モノと対話しながら、そのなかで最善のものを選ぶ。知識よりもひらめきやアイデアが大切な仕事です」

過去に思いを馳せること。

それと同時に、現代の生活を見つめる視点も必要だという。

「古物を現代の生活にいかに取り入れるか。たとえば一番上の引き出しが欠損した箪笥は、元通りに直さず上段をオープンシェルフのようにして、レコーダーの入るテレビボードとして販売しています。幅の広い衣装箪笥は現代では使いづらいので、引き出しを小分けにしたり」

奥行きがありすぎる食器棚は、お皿の出し入れに不便なため、後ろ20cmを切断してリメイク。余った20cmの部分は廃棄する予定だったけれど、刈谷さんが改良し、壁掛けラックとして有効活用することができた。

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岩間さんは、「独りよがりにならないこと」を念頭に置いているそうだ。

「一般的に、アンティーク家具は当時の姿を残していることが良いとされるので、これらは邪道と言われかねない商品です。でも一方で、その考えは業界全体として美意識が凝り固まっているという見方もあります」

「固定観念にとらわれず、お客さまによろこんでいただける商品をつくれないかな?と考えて、つくってみる。うちの面白さはそこにあると思うんです」

個人の裁量は大きい職場だと思う。それは同時に、相応の責任を持つということも意味する。

「どんなふうに直して、いくらで売るか。そこまでをみんな考えながら取り組んでいるんですよ。それって一従業員というより、経営に近いほうに足場があるのかなって。ある意味、一人ひとりが個人事業主のような感じですね」

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どれだけ会社の規模が広がっても、ルーティンワークをこなすような仕事はないはず。

むしろ拡大している今こそ、個人のアイデアと行動力で事業の幅を広げていける人が求められているように感じました。

経験は問いません。新卒でも大丈夫。

自分の頭とからだをフル活用して働きたい人はぜひ応募してください。

(2016/11/22 取材 中川晃輔)

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